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HTML化した人:lain. ★
【第2次世界大戦】五大陸世界【開幕】
1 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします[saga]:2012/10/04(木) 20:52:35.27 ID:M4Opyf720
ここは何処かの惑星そしてその物語

様々な種族、大地、そこで繰り広げられる戦争、絆、意思
キミはその世界の住人となって自由に自分だけの物語を歴史を刻んでいって欲しい

聳える山脈、怒り狂う火山、地は荒れドラゴン、トロール、他にも気性の荒い勇猛な者達が暮らす赤の大陸
沼地、枯れた樹海、瘴気が漂い陰謀が戦慄する、ヴァンパイア、サキュバス、闇夜の貴族が治める黒の大陸
大森林、木々が生い茂り生命の力強い鼓動、それと共に生きるエルフ、ジャイアント様々な獣人が暮らす緑の大陸
広大な大洋、その中の海底都市。凛々しく存在する者達、セイレーン、マーフォーク、力強くも優しき者達が集う青の大陸
天空にその姿を見せる広大な大地、平原、秩序、法を護りし天使達、自由に空をかけるバードマンが暮らす白の大陸

様々な種族による因果を思いを胸に此の世界は回っている
具体的にどう生活すればいいかって?
それはキミの自由だ、己の信念をかざし正義同士のぶつかり合い、平和を望み愛を唱える慈悲
世界の動向を影で見届ける傍観者、他にもキミの行動次第でこの世界の歴史は変わっていく

その世界を変えるのは今此処を見ているキミ達だ
勇気をもって、この世界に降り立って欲しい、貴方に信じる者の加護があらん事を

【現在の利害関係】
赤の大陸の種族と黒の大陸の種族は人口の増加によって生息可能域が限界に達し、領土を広げるために同盟を結んで緑の大陸へ侵攻。
緑の大陸は白の大陸に救援を求め結果、赤&黒vs緑&白の戦争状態となっている。
現状で中立なのは青のみ。青の大陸は全てに対して海上移動手段を提供している。

【スレのルール】
・過度なエロ描写は原則として禁止です。
 どうしても必要な場合は、【禁則事項です】や【そして数時間後──】等々、暈しての描写をお願いします。
 18歳未満も閲覧する場所だというのを考えての行動を!

・権版キャラそのままの仕様や設定は禁止とし、オリキャラで楽しむことを推奨します。
 ただし丸ぱくりではなく、参考程度であれば大丈夫です。

・ロールしている相手キャラにも中の人はちゃんといます。
 自キャラによる無双は控え、自分も楽しみ相手も楽しませれるように気配りをしましょう。

・1人で国や大陸を破壊出来るといった、強すぎるキャラクターの作成は原則として禁止です。
 どうしても使いたい場合は、空気を読んで適切な使用を心掛けましょう。

・【〜に剣を振り下ろす。剣は〜の腹部に突き刺さった】のような確定描写は禁止とします。
 ただし【〜の攻撃を防いだ】といった防御に関する確定描写は、ロールのテンポアップのため推奨とします。

・スレの流れについていくため、書き込む前にはリロードを。
 もしかしたら、あなたと相手との絡みに乱入したがっている人がいるかもしれませんよ?

・最後に。
 次スレは>>950が立ててください。
 どうしても無理な場合は、他の大陸の住人へ代行依頼をお願いします

【雑談所:http://jbbs.livedoor.jp/otaku/14875/】
【Wiki:http://www38.atwiki.jp/fiveland】
2 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします[saga]:2012/10/04(木) 20:55:58.18 ID:M4Opyf720

【黒の大陸中心都市・シヴィルザード】


 都市の中央に建設されたの荘厳なる城。
 その中央塔に1つの“悪意”が舞い降りた。

 見上げる黒の異形の民達。
 そこに居たのは黒の大陸には存在しないはずの生物・・・ドラゴン。
 黄昏の赤い光に照らされたその黒曜の竜鱗は神々しく煌めき、背中には左右非対称に5枚の翼が広げられていた。

 しかし、誰もが1つだけ理解していた。
 あのドラゴンは“黒”だと。
 その禍々しくあふれ出る悪意が、見るもの全てに確信させていた。

「諸君達はなぜ戦争をせずに居られるのだね?」

 竜が語りだす。
 たとえどれだけ離れていてもはっきりと聞こえるその声は、念話の魔法が掛けられていた。

「諸君等黒の民は最も気高く、そして上等な種族だ。強く、理知的で、美しい姿をし、死すらも超越している」

「それに引き替え他の種族はどうだ? 赤は愚かで品性の欠片も無く、緑は野蛮でケダモノのような生活をし、
 青は生きる価値も無い拝金主義者達ばかり、白は我々を差し置いて自分達が世界を導く神だと思いあがっている!!」

「誇りに思うがいい、我々黒はこの五大陸で至高の種族だ」

「だが」

「この黒の大陸は、不毛だ。湿地には褐色の霧が立ち込め、穢れた土は毒を持った食料しか育まず、空は厚い雲に覆われ星も見えない」

 竜は高々に吠え猛る。

「他大陸では下等でケダモノの姿をした者達が! 平然と自然の恵みやマナの恩恵を受け! のうのうと無駄に生きているというのに!
 世界の頂点たるべき我々が! なぜこの薄汚れた土地で惨めに生きていかねばならないというのだ!?」

 竜の演説は熱が篭る。
 民衆は異形の先導者の演説に引き込まれていく。

「さぁ諸君。この世界の大きな矛盾、解決するにはどうすればいい?」
3 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします[saga]:2012/10/04(木) 20:58:02.83 ID:M4Opyf720

 広場は静まり返る。
 長い長い沈黙の後、俯いた民衆がポツリと呟く。

「・・・戦争だ」

 その単語が発せられた後、次々と民衆が声を上げる。

「戦争だ!」
「戦争だ!」
「侵略だ!」
「戦争だ!」
「奪い取るんだ!」
「我々が至高なのだ!」

 黒の種族の心には闇があった。
 貴族のような種族には根拠のない脆いプライドが、不死の種族には生きる意味を見いだせない虚しさが、
 怪物と呼ばれる種族には異形の姿への劣等感が、残虐な本能を持つ種族はそれを発散できない苛立ちが・・・。
 そして誰もが、この黒濁の地でみすぼらしく生きることに不満を持っていた。

 黒の大陸に集まり、積り、澱んだ数多の闇は。
 5枚羽の悪魔によって1つに収束された。

「そうだ、戦争だ! 赤の愚か者共を取り込んで骨の髄まで利用しろ! 緑のケダモノ達を皆殺しにして豊かな土地を手に入れろ!
  青の高飛車な傍観者達を高台から髪を掴んで引き摺り下ろせ! 白の傲慢な支配者たちを殲滅し、我々がこの五大陸を導くのだ!!」

「我々にはその権利がある! 我々にはそれができる力がある!」

「この五大陸を黒く塗りつぶせ! 我々がこの五大陸を統一し、黒の千年帝国を築くのだ!!」

 広場は歓声と熱気に包まれた。
 この日を境に黒の民の4割は、黒く塗りつぶされた5角形の旗を掲げた。


 世界を包む黒翼、侵略組織“ネグロ・アラ”が結成した。
4 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします[sage]:2012/10/04(木) 21:07:50.11 ID:9r7VnXdV0
[たぬき]

5 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします[sage]:2012/10/04(木) 21:08:21.91 ID:9r7VnXdV0
[たぬき]
6 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします[saga]:2012/10/04(木) 21:14:08.16 ID:M4Opyf720


五大陸にはそれぞれ五つの種族が住んでいた。

勇猛さを是とする赤の民、自然と共に生きる緑の民、
常に中立な立場で静観する青の民、正義と誇りを重んじる白の民、
理知と野心を宿す黒の民

かつてこの五大陸では五つの種族で戦争があった

しかし平和と愛を知る者達が集い、力を合わせ戦争を抑止した
戦争は激化することなく、被害者はほとんど出ない睨みあいのような状態になり、
結局大きな動乱も無く、戦争は終結した


・・・ように見えた
7 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします[sage]:2012/10/04(木) 21:30:57.30 ID:hTGL/mCs0
正直今まで居た人がやってきたこと全てを否定してるよね
リセットと何も変わらん 何もだ
8 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします(関西地方)2012/10/04(木) 22:13:34.59 ID:tyMwCGoNo
>>3

「――――――Attention―――皆の者準備は良いな
作戦の概要は以上だ、なに訓練と大した違いは無い」

「有るとすれば、これが実践であるということだ術式に撃ち抜かれれば即死だと思え
油断も驕りも恐怖も、全てが諸君らの尊い命を啄ばむものと思え
その事を肝に銘じておけば我等に敗北は無い!」


白の大陸は何時に無く臨戦態勢にあった
―――黒の大陸で起きた蜂起、それはまさしく秩序を一とする彼らへの宣戦布告を示していた
彼らに退却の文字は無い、調律者としての矜持が彼らを死地へと駆り立てる

それが例え、死に行く戦であろうとも


「さあいざ行かん、我等は殉教者!世界の秩序を正す者!」


統率者の言葉に導かれ皆が声を揃え叫ぶ


「「「「朱き反逆者は朱を以って沈め!」」」」

「「「「蒼き反乱者は蒼を以って制す!」」」」

「「「「翠の者には安らぎを!黒き者には罰を!」」」」

「我等は調停者!全ての諍いを白へと還す者達なり!」

「「「「今こそその全知全霊を以って!」」」」

「第二次クルセイドロン征空騎士団��Lost Prophets�℃Qる!!」


羽を広げる五騎のクルセイドロン―――白の大陸に於けるメジャーな種族だ
機械によって構成された白の翼を持つ全長5mほどの人型の機械
スリムなボディは余計な装備を排除した高速機動型のそれであることを窺わせる
中の一騎―――両肩の十字架のついたポッドを朱に染めた隊長機が先導し宙を駆ける

夜を駆ける五つの影は夜風を白く切り裂き暴風を巻き起こす
神速と形容するに相応しい速度で黒の大陸へとその姿を現すだろう

世界を侵陵しようとする黒を制裁するために――――――
9 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします[saga]:2012/10/04(木) 22:31:15.13 ID:keOey2sc0
>>8

「警報です、白の中規模一個師団が空から接近中!」

 管制塔で千里眼の術を作動していたヴァンパイアが息を切らして飛び込んできた。
 玉座の間に座り込んでいた黒い竜は首を上げる。
 首都の最も権威ある城は既にこの竜の手に渡っていた。

「ほう・・・」

 白、という単語が聞いただけで周りの物がいきり立つ。
 溢れんばかりの負の感情は今まさにその矛先を向けようとしていた。

「我々ヴァンパイアの空戦舞台にお任せを、必ず仕留めてごらんにいれます!」

「いや、規模から言って単なる斥候だろう。ネグロ・アラの初陣の相手には地味すぎる。
 我々の旗揚げはもっと派手な対戦・・・そう赤以外の三大陸を戦慄させるような大戦でなくてはならない」

「しかし、それでは・・・」

「私が出よう」

「な!?」

 黒い竜が起き上がり、吹き抜けの天井を見上げる。
 清き志と強い信念を持った騎士団達は、
 自ら��暴君″を名乗る首領が自らに破壊されることになってしまった。

「ね、ネロ様!! わざわざ貴方様が戦わずとも!!」

「いい機会だ、私の力を諸君等にお披露目しよう」

 漆黒の五枚羽をはためかせ、ネロと呼ばれた黒竜は吹き抜けを急上昇する。
 巨大な窓を突き破り、外に飛び出し、はるか遠くの騎士団を見つめた。

「さぁ、相手になってあげよう。自らを神の代行者と名乗る偽善者共め」

 黒竜の背後では黒く塗りつぶされた五角形の描かれた旗が風にはためいていた。 
10 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします(関西地方)2012/10/04(木) 22:43:43.00 ID:tyMwCGoNo
>>9

管制塔からそう距離を取っていない上空、騎士団は一端動きを止めた
トラブルがあったというわけではない、あったとすれば一つの異変であった
正義に縛られた彼らの動きを止めるぐらいに激しい��気配��

それがたった一つの竜から放たれているものと気づいた瞬間
彼らの内誰もが皆息を呑んだ


『ほ、報告します……!!前線に出ている敵は……!!一騎です……っ』

〈馬鹿な!我らは白の大陸屈指の精鋭だぞ!自殺行為だ!〉

「……落ち着け、それほどまでに己が力を誇示したいというわけだ
どうしようもない愚か者だ、ならばその驕り!組み伏せるには十分すぎる!」

「両翼開け!フォーメーションを取る、一点突破で決めるぞ!
大きすぎる態度の報酬は高くつくことを教えてやれ!!」


了解の言葉が空中で爆ぜる、途端扇を開くように隊列が動く
リーダー騎を中心に両翼に二騎ずつ、斜めになる形で広がっていく
再び加速、速度をぐんぐんと上げ一気にネロとの間合いを詰めていくだろう

唸りを上げる一対の翼、風を受け更にその速度を増していく
トップスピードへと踏み込むその巨大な機体残像すらも夜に溶けるよう
並の生物であれば存在すらも知覚できないほどに、その存在は圧倒的であった


「FIRE!!」


空中に手を翳す各個の騎体、途端その巨大な指先に魔方陣が出現する
金色で描かれた魔方陣は三角形を二つ重ねた六角形の形で
ルーンのような文字列が統制を保って周囲に渦巻いている

コンマ数秒遅れた後、魔方陣から巨大なレーザーのような光の奔流が放たれる
高濃度の魔翌力の集合体、爆発の力を含んだ高威力、高速度のレーザーがそれぞれから放たれる
夜を白く切り裂く五つの閃光、それらは真っ直ぐにネロを穿とうとするだろう

そして放ったと同時に彼らは加速した状態で飛び去っていく
そのまま一旦隊列を崩しつ、再び元の隊列に戻ろうとしているのだろうか
随分と鍛錬を積んだ部隊であることが伺えるだろう
11 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします[saga]:2012/10/04(木) 22:59:13.48 ID:keOey2sc0
>>10

「ほう、黒以外の種族なのに私の前に立っても��動ける″のか」

 放たれた5本の魔法による高密度の熱線。
 しかしその攻撃は。

「アグロ」

 熱線がネロを直撃する前に消滅してしまう。
 最新鋭の魔法攻撃は、たった一言の古代術式詠唱によってかき消されてしまった。

 ネロは不敵に笑うと、わずかに一瞬思考停止していたクルセイドロンに急接近し、その頭を掴んだ。
 並んでみればこの黒竜はクルセイドロンよりも小柄だ。
 しかし相手に抱かせる恐怖は身の丈数十メートルの巨竜よりも、ずっと��悪質″だった。

「自己紹介がまだだったね、私の名前はネロ。ネグロ・アラの首領だ」

 ミシミシと不吉な音が掴まれた頭から響く。
 そのクルセイドロンの両肩には十字架の付いたポットが装備されていた・・・。
12 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします(関西地方)2012/10/04(木) 23:12:43.41 ID:tyMwCGoNo
>>11

彼らには各個、高性能な音声探知装置が組み込まれている
白の大陸の魔翌力によって増強され運用されるソレはネロの言葉をハッキリと認識させ
同時に驚愕の色を浮かべさせた、五騎全員が同時に戦慄したのだ


『��アグロ�≠セと……!!文献でしかお目にかかったことねぇぞあんな術式……!!』

〈怯むな!どうせ古代術式一つ覚えていきがってるマッドに決まってやがる!
だとすれば恐れることはない!もう一撃……っ――――――!!〉


残った四騎の動きが硬直する、蛇に睨まれた蛙とは月並みな表現ではあるが……
まさしくそう、としか言えないほどに、その光景は圧倒的な力の差があった
超過駆動する翼のきしむ音が雑多なノイズとなって虚空に吸い込まれていく

声にならないうめき声を上げる頭を掴まれた一つのクルセイドロン
朱に染まった十字架を備えたその雄雄しき身の持ち主は


『隊長おおおおおおおおおおおおおおおお!!!』


爆発する風、後部に備え付けられたブースターが唸り加速の術式を打ち出す
ミシミシと間接が悲鳴を上げながらも最高速度の加速をその身に押し付ける
トップスピードで加速した一騎のクルセイドロンは真っ直ぐに頭を掴まれた隊長の元へ突撃しようとする

音速を超えたことにより生じる衝撃波が渦を巻いて彼の後ろを叩く
仲間達も唖然とし、その行為の行く先を見つめているだろう


「若造が……!!貴様ごときに心配されるほど、落ちぶれてはいないわ!!!」


頭を掴まれたままのクルセイドロンが苦しげに右手を伸ばす
その手の先は彼へと突っ込んできた仲間の一騎へと向けられ
魔方陣が出現すると衝撃波が発生、その一騎を弾き返すだろう

そうして間髪いれず、その両手でネロの手を、彼の頭を掴むその手を握ろうとする


「ならば問おう……!!一体貴様は何を企み世界へ反乱を起こす!!
世は荒れ、赤に青、緑に白……そして、そして貴様の部下達も!!皆が傷つき苦しみ散っていく!!
そしてその先にあるのは荒廃しきった土地だけだ!正義も秩序もない絶望の世界だ!!
貴様は……貴様は世界をどのようにする気だ……!!」


渾身の力と形容するに相応しい、その両手の力、腕をへし折るような勢いで力がかかる
雄弁に語る彼の瞳は強い意志の色で染まっているだろう――――――
返答次第ではただでは於かぬと、歴戦の勇士が肉薄する
13 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします[saga]:2012/10/04(木) 23:36:55.27 ID:keOey2sc0
>>12

「なぜかって? 驚いたな、貴様等白はもっと頭の固い処刑人かと思っていたが」

 ネロは意外そうな表情をする。
 その威圧感は若干緩み、周囲の空気が穏やかになった。

「そうだな、我々黒の民は虐げられ、差別され、この不毛の地に追いやられている。
 食料の生産能力も乏しく、餓えて同種の死体を貪ったキルヴェーラの集落の話などいくつも聞いた」

 ネロは感情の籠った声を上げる。
 クルセイドロンの頭を握る手に力がこもる。

「我々は憎いのだよ! なに不自由なく生きていける他の大陸の者達がな!
 我々はこの不毛の地から出たい、我々だって温かな日差しを浴びて野を駆け回りたい!
 黒の大陸全ての種が餓えずに暮らしていける世界を作りたい! 我々だってこの世界の恩恵を受けたいのだ!!」

 黒の大陸の悲痛な叫び。
 貴族階級の者も多いが、その暮らしは決して優雅とは言えない。
 貴族のイメージの強いヴァンパイアですら、姑息な小遣い稼ぎに精を出しているものがほとんどだ。

「だが、まぁ・・・一番の理由は」

 ネロはクルセイドロンの頭から手を離すと同時に。

「楽しいからだな」

 歪んだ笑みを浮かべ、頭を掴んでいた手でクルセイドロンの腹を貫いた。

「好きなんだ、戦争が。全力を掛けて殺し合いをしている者達を見るのが!
 血で血を洗うような残酷な場面が! 兵士が致命傷を与えられながらも相手を殺そうとしている様などを見ると絶頂してしまいそうだ!」

「私はね戦争の為に戦争を起こすのだよ! 史上最大級の殺し合いだよ! 五大陸の種族の全てを賭けた戦争が起こるのだよ! 実に心が躍る!!」

14 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします(関西地方)2012/10/04(木) 23:53:09.70 ID:tyMwCGoNo
>>13

白で統一されたクルセイドロンの腹部が朱に染まる
それはまさしく壁に打ち付けられた彼岸花のよう、磔刑に処される愚かな罪人のよう
光景に皆が息を呑む、それはその場にいるクルセイドロンだけではなかった

それは明らかなる宣戦布告、砂上でどうにかバランスを保っていた五つの大陸をバラバラにするほどに
民は怯え兵は猛る、それらは全て、一つの暴君の出現によって引き起こされた
勝利宣言のような歌声を忌々しく吐き捨てる声が一つ、紡がれた


「笑わ……せるな……!!貴様の……貴様の愉悦が為に……!!世界を巻き込んでたまるものか!!
分かっている……のか、これまで、どれほどの血が流れ、どれほどの民が死んだのか……!!
決して平和とは言えぬ……!!だが、少なくとも平穏ではあった……!!
その生活を、貴様如きに壊させて……たまるものか!!」


喀血する眼前のクルセイドロン、最早限界が近いのであろう
腹部を貫かれ虫の息といっても言い、死はすぐそこにまで迫っている
それでもなお、彼は叫ぶ声を振り絞り音を奏でる

貴方の声に惑わされぬよう、民に民衆に抗ってほしいがため 
それは同時に周囲にいる仲間へと伝える、遺言のようであった


「……意外そうだな、私が……こんなことを尋ねる、など
そりゃそうだ、貴様らから見れば、私たち白の者は頭が固いと言われても仕方が無いだろう……
――――――だからこそ、だ、結局私たちは心の底まで頑固者なんだよ」


暴君は感じ取れるだろう、眼前のクルセイドロンからエネルギーの反応を感じるのを
それはまるで燃え尽きる前の蝋燭の一滴、雄雄しく咲き誇る一瞬の煌きのよう
均等に彩られた機械の顔がほのかにその表情を三日月のように歪めた


「貴様に捕らえられた瞬間から発動していた魔法だ……
我を構成するエネルギーを分解、それを放出用のカタパルトへと分割配置
射程は短いが……この距離なら十分だ……!!
――――――貴様の野望の続きは、地獄で共に語りあおうぞ」


瞬間、彼の体が光に包まれる―――否、高濃度の魔翌力が発光しているのだ
それはまさしく日輪が如く、並の生物であれば触れてしまうだけで消滅しそうなほどのエネルギー
クルセイドロンを構成する大量の魔翌力を、全て攻撃翌用の魔翌力へと昇華したのだ

同時にそれは破裂する、強烈な爆音と共に彼を中心に強大な爆発が起きる
高濃度のエネルギーの爆発は破壊を生み付近にいる生物を跡形も無く分解するだろう
それは所謂��自爆�=\――超高位に位置するクルセイドロンの命を賭けた一撃だ

殆どの生物であればひとたまりも無い一撃である
暴君に果たして、報いることはできるだろうか
15 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします[saga]:2012/10/05(金) 00:06:05.59 ID:1wVrMX8W0
>>14

「いいな、素晴らしい。その正義感、己の支配を一片も疑わぬ盲目さ! きっと私の戦争を素晴らしく彩ってくれるだろう!!」

 戦士の決死の叫びすら嘲笑う、暴君 ネロ。
 死をも覚悟した戦士の言葉すら、この竜には大好きな殺し合いの一部に過ぎなかった。

 しかしエネルギーの流れが変わった時、ネロの表情が変わった。

「なん、だ・・・何をする気だ!?」

 高濃度の魔力が発散し、熱エネルギーとなる。
 灼熱の閃光がネロとクルセイドロンを包み込んだ。
16 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします(関西地方)2012/10/05(金) 00:14:10.54 ID:jJSR4nuao
>>15

爆ぜる音は高らかに、葬送曲のように厳かに響き渡った
息を呑んでいたのは他の四騎のクルセイドロン達
その誰もが、目の前で起こった出来事を理解できずにいた


『……っ……皆いくぞ、隊長が……隊長が道を開いてくれたんだ……!!』

〈お、おい……!!そんなの、マニュアルにないだろ!まずは代理で隊長を決めないと……!!〉


困惑した様子のクルセイドロンをもう一騎が叩く
機械と機械が触れ合う金属質な音色、だがそれはどこか血の巡った響きでもあった
炸裂する怒号、それはまるで自分に言い聞かせるように


『なら、なら俺が隊長になる!今が好機だ、今を逃して何時いけるって言うんだ!
隊長がネロを倒した、なら残っているのは烏合の衆のみ!
隊長の残した��Prophet�≠�……無駄にする気かよ!!』


言葉はもういらなかった、彼はそう吐き捨てるように叫ぶと、空中で身を翻す
白で構成されたボディが月光に照らされ、その色合いを増す、光沢が鋭い色に染まる
金属よりも艶やかな彩りが、吐息のように白く染まると、そのボディを高らかに謡った

やがてその身は動く、翼を広げ加速を始める
風を切り一直線にその身をネロが居た場所へと直進させる
狙うはそこに集まっている黒の軍勢、今ならばやれる、と確信しているのだろうか
17 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします[saga]:2012/10/05(金) 00:29:43.49 ID:1wVrMX8W0
>>16

「まぁ、待ちたまえ。君達にはもっと重要な任務があるだろう?」

 突如現れた4つの古式魔方陣がクルセイドロンを呪縛した。
 朦々と煙の立つ中で、煤だらけで、鱗は焼け剥がれ落ちてはいるが。

 健在の暴君がそこには居た。

「驚いたよ、私の使える最大級の防御術式の結界すらも吹き飛ばすとは。
 あと3倍ほど威力があったのなら私の命が危うかったな」

 ユラリとネロは4機のクルセイドロンを見つめた。

「さて、私の抹殺に失敗した君達には重要な任務がある。
 『隊長がネグロ・アラに殺された』、『ネグロ・アラどころか黒の民全ては悪の権化だ、殲滅しなければならない』と、本拠地に帰って報告してくると良い。
  たった5機ではなく白の大軍勢を率いて、我々ネグロ・アラと戦争をするのが、隊長の敵を討つための最善手だと思うがね」

 古式魔法陣が消失し、クルセイドロン達は解放される。

「もし君達がそんな簡単な判断もできない愚か者なら、もしくは隊長の敵を討ちたいとも思わないような薄情者なら」

 ネロは口を開ける。
 黒色の魔方陣が口の前に展開した。

「うっかり殺してしまうかもしれないな」
18 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします(関西地方)2012/10/05(金) 00:42:22.62 ID:jJSR4nuao
>>17

ありえない、と誰もが思った隊長の放った攻撃は上位の魔物ですら一瞬で消し飛ばしてしまう代物だ
例え生き残ったとしても再起不能な深手を負っている、そう考えるのが普通なのに
眼前に踊る暴君は、その身を焦がしただけで健在しているのだ

息を呑む4騎のクルセイドロン、それは圧倒的な力の差を示している
この4騎が同時に挑んでも傷一つ与えることすらできないであろうことを

彼の言葉の通りだ、眼前の暴君は白の大軍勢―――否、白と緑の大軍勢を率いて
それでようやく対等に戦えるという代物である、ということがハッキリと分かった

だからこそ――――――だ


『……っ諸君らに問う……!!我らは、我らはなんだ……!!』

「「「我らは殉教者!世界の秩序を正す者!」」」


翼を広げる四つの騎影、神々しいまでの白が暗闇を裂く
それはちっぽけな光、夜闇に浮かんだ赤子のように弱弱しい灯火
吹けば消えてしまうような塵芥に過ぎない砂糖の如き焔

「「「朱き反逆者は朱を以って沈め!」」」

「「「蒼き反乱者は蒼を以って制す!」」」

「「「翠の者には安らぎを!黒き者には罰を!」」」

『我等は調停者!全ての諍いを白へと還す者達なり!』

「「「今こそその全知全霊を以って!」」」

『第二次クルセイドロン征空騎士団��Lost Prophets�℃Qる!!』


爆ぜる四つの騎影、弾丸のような速度で真っ直ぐとネロへと向かうだろう
それぞれの瞳が伝える、ここで[ピーーー]ばもろとも、と
彼らは皆覚悟を決めた例え愚か者と後世に語り継がれても

ここで今、命を賭けずどこで費やす、というのだろう

刹那の間の後、ネロへと肉薄する距離へと接近を試み
十分に距離を詰められたと判断した後、彼らもまた��自爆�≠�行う
威力はやや隊長が行ったものに劣るが、それでも十分な威力があろう

��あと3倍ほど威力があったのなら私の命が危うかったな��

ならば4倍の威力で参ろう、と彼らの声が聞こえそうなぐらいに
この行動が成功したならば、ネロへとダメージを与えることができるだろうか……?
19 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします[saga]:2012/10/05(金) 00:53:52.46 ID:1wVrMX8W0
>>18

「そうか、ずいぶんな愚か者だな」

 隊長機の自爆とこの4機の自爆には状況的に2つの違いがあった。

 1つ、対象と既に充分接近しておりなおかつ対象を拘束していた。
 2つ、その対象は今は迎撃準備を完了している。

 この2つの決定的な違いは。

「ヴィーオーラ」

 あまりに非情な結果を招いた。
 魔方陣から現れた4本の黒い稲妻は滅茶苦茶な軌道を描きながらも、
 正確に4機のクルセイドロンを撃ち抜き、破壊した。
20 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします(関西地方)2012/10/05(金) 00:57:43.85 ID:jJSR4nuao
>>19

墜落していく四つの騎影、それは世界の終末を告げるギャランホルンの音にも似た音色
物言わぬ骸と化した彼らは地面へと叩きつけられると、それはまさしく凱旋の証であろうか
やがて夜は深くなり、澄んだ色を見せず、黒色の空を強く染めていくことになる

各大陸では賢者と呼ばれるモノ達が集まり、この布告に対し如何様に接するか議論を交わしているであろう
あるモノは従い、あるモノは抗い、またあるモノは流れに身を任せていくのだろう
劇的に切られた戦いの火蓋、いかなる形へと、この世界を変化させていくのだろうか


/この辺りでしょうか、お疲れ様でしたー
21 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします[saga]:2012/10/05(金) 01:08:34.00 ID:1wVrMX8W0
>>20

「くはははははは、くははははははははははは!!
 ありがとうLost Prophets、君達の雄姿は見ていて実に��楽しかったよ"!!」

 黒の大陸の首都の上空に、暴君の高笑いが響く。
 黒よりも暗く、闇よりも邪悪。
 この暴君の五つの大陸を使った��砂遊び″は加速していく。

「さてさて、どうしたものか。これが戦争の引き金になってくれればいいのだがな。
 まぁ彼らを慕っている者達もいただろう、そ奴らの恨みを買えただけでも良しとしよう」

 ネロは5枚の翼を翻し、城へと戻っていく。
 黒の種族の代弁者の仮面を被ったこの悪逆は、既に次の計画について考えを巡らせていた。
22 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします[sage]:2012/10/05(金) 12:39:50.57 ID:cEgevPWqo
赤の大陸──荒野

この地は荒れ果てていた。それは何年も、何百年も昔から変わらないことだった。
地を掘れば石や鉄屑こそ出てきても、木の根などは枯れたものが出れば良い──
そんな、黒の大陸とはまた毛色の違った不毛の地が赤の大陸だった。


「……未練だ」


ぽつりと。荒地に落ちた一滴の雨粒のような声があった。
褐色の肌に水色の右目。赤い髪紐で縛られた白髪。
顔の四半分や左手の指の3本が機械化している、女のスチームメタルが発した声だった。


「一人で国盗りは……流石に無謀、か?」


ぽつぽつと呟かれるその言葉は──或いは戦に関連したものか。
前回の戦争からそう時間は経っていない。
傭兵が好むような衣服を身に着けている彼女は、もしかしたら此の大陸ではそう珍しくもない戦闘狂のたぐいなのかもしれなかった。
23 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします(関西地方)2012/10/05(金) 12:50:44.81 ID:JcDcJnuao
>>22

彼女の耳に入るであろう何かが引き倒された音
誰かが強く地面へと打ち付けられた、と形容すべき機械と地面が触れる音
視線を向けてみれば、10m先の荒野に一つのスチームメタルが倒れているのに気づくだろう

そして即時理解するであろうか、それがいつものような他愛のない小競り合いにすぎない、と
事実ネグロ・アラの出現以降世界の様相は刻一刻と変化しているのだ
それは安寧とか平穏とかとはほど遠い、戦乱の色をはらんでいて……

これもまたその一種と、取られても仕方がないのだろう


「……ああ良かった、そこの姉ちゃん、この出来損ない埋めといてくれね?
少し叩いただけで壊れやがって、全く以て期待はずれだわ
こんなんじゃ、今の世の中生きていけねえよな?」


声をかけるのはその倒れたスチームメタルの側に立つ一つの姿
量産品と呼ぶにふさわしい体の半分を機械化した無骨な姿のスチームメタルである
やけになれなれしい口調で貴女へと声をかけると、その身を其方へと向けるだろう

一つ二つと歩み寄る機械の足音、荒野を踏む音は乾いたコンクリートを叩く音に似ていた
空を見上げれば幾重もの騎影が高速で移動をしている、戦闘に向けた準備であろうか
曇天で覆われた鉛色の空は、ほのかに赤みがかかった夕焼けにも似ている


「にしても姉ちゃん、随分と良いボディしてんじゃないの
その指の機構とか垂涎ものだぜ、少し見せてくれねぇかな?」


彼はやがて互いの距離を埋め、貴女へと慣れ慣れしく話しかけるだろう
そうしてためらう事無くその機械化された指先へと、機械化された手で触れようとする

そして触れることに成功したなら、彼の指先で術式が発動する
掌サイズの魔法陣から爆発が発生、貴女の手を吹き飛ばそうとするだろう
彼の纏う雰囲気、そこから殺気を読み取ることは容易であろう
24 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします[sage]:2012/10/05(金) 13:04:46.52 ID:cEgevPWqo
>>23

ふと、自分以外の音がした。
あまり穏やかではないその音に。彼女の表情は右半分だけが微かに歪む。
女の背には、巨大な機械剣があった。彼女の身長よりも僅かに長い、無骨な両刃剣。
刃渡り101cm、柄の長さ79cm──≪天龍≫の銘を持つその剣を抜こうかどうか。

僅かに悩む脳裏を、男の声が掠めていく。
──余計な雑音が聞こえると、正直に彼女はそう思っていた。
戦いたいなら戦いたいと、そういえばいいじゃないか、と。

あまり穏やかではないその声に、彼女の表情は右半分だけが微かに歪む。
その表情は、愉悦を孕んだ笑みの形をしていた。


「────生憎と、断り方を知らぬ」


互いの距離が詰められ、触れらるその前に。
女はたん、と後ろへ飛んで左手で背中の大剣を掴み──

その、見た目だけでも重量が推し量られる、決して軽くはないその武器を
・ ・ ・ ・
力任せに、ただの腕一本だけで抜き放ち、彼の左肩から斜め下に向けて打ち振るおうとしたのだ。
25 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします(関西地方)[sage]:2012/10/05(金) 13:15:26.92 ID:JcDcJnuao
>>24

おいおい勘弁してくれよ、と思った貴女の持つソレは鉄塊と呼んでも差し支えのない代物で
ソレを片手で振るう女なんて、夢物語にしか思えなくて
ついたため息はほのかに風に濡れると、吐息のようなわずかな音をたて

大剣は振り下ろされるだろう、そのまま一気に地面へと降り立つほどに
彼は抵抗をしない、従ってその身は砕かれ地面へとたたきつけられ粉々になった
────────はずであった


「ったく、まーた悪い癖だ、どうにもこの性格だけはどうにもならねぇわ
まぁ目の前にこんなイイ女が居たら、手ぇ出さない選択肢なんかねぇわな」


声が響く、見れば貴女の背後数mに新たな人影が出現して居るであろう
整ったセミロングの黒髪をなでつけ、紺色の高級なスーツに身を包んだ長身の青年
見た目は人と大差なく、言葉を紡ぎつつ彼はネクタイのずれを直した

瞬間、貴女の大剣の下で粉々になっている破片が煙となり消えていくだろう
つまりは完全なる偽装、その身をスチームメタルへと擬態していたのだ
そのような芸当ができる種族など、ドッペルゲンガーを置いて他にはいない


「折角良い被り物手にいれてそれなりに楽しく赤の大陸をぐちゃぐちゃにしてやろうと思ってたのにな
仕方ねえや、俺ってば一流の道化師だから、ドジやってバカやって、何もかもできの悪いジョークにしちまうんだ
つーわけで姉ちゃん、ちょっくら俺のプレジデントの為に死んでくれね?」


端正な顔が揺れる、ほほえみにも似た苦笑にも似た、朧な表情で
彼は右の手を貴女へと向け、静かに声を濡らした
刹那出現する魔法陣、掌より数サイズほど大きい黒の魔法陣だ

そうしてそこから一筋の黒い炎が出現し、貴女へと襲いかかるだろう
威力はそこまで高くないが早い、様子見と言った当たりか
26 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします[sage]:2012/10/05(金) 13:29:21.58 ID:cEgevPWqo
>>25

「──ドッペル、なんとかか」


最早斬れ味の良さなど求めなくともよさそうな大剣。
その下で粉々になりながらも尚聞こえる声に、女は黒の種族を思い浮かべていた。
生憎と名前までは完全に思い出せなかったものの──
このドッペルなんとかは戦いを求めており、自分を殺そうとしていて、剣の届く範囲にいる。

それさえ分かっていれば、彼女には十分だった。

地面に食い込む剣を片手で持ち上げる。常日頃持ち歩いている愛剣を、重いなどとは感じていなかった。
後ろを振り返る。相手は魔法とかいう、あまり得意でないものを使ってくる。
そして剣をまたぶん回そうと──。炎。


「────っ!」


武器回収の一手が、最初の攻防を決める。
剣を振ろうと相手を見たその刹那に見えた黒焔──何かを考えるより先に、身体が動いていた。
辛うじて避けた、とは言いがたかった。
青年から見て女は左へと跳躍したが──生身の右腕にはしっかりと、炎に舐められた痕跡が残っていた。
27 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします(関西地方)[saga]:2012/10/05(金) 13:40:40.14 ID:JcDcJnuao
>>26

その動きを見て彼は心の中で感嘆する、素早い身のこなしだと
それに加えてあれほどの大剣をまるで体のように取り扱っている
こりゃ当たりかな、と小さくほくそ笑んだ


「ゲンガーね、ドッペルゲンガー姉ちゃん意外と物覚え悪かったりする?
まあ赤の大陸の奴らなんてどいつもこいつも脳みそまで筋肉で出来てるバカばっかだけどさ
その分力が強いのなんのってプレジデントも口うるさくてさぁ」


やれやれと言ったように肩をすくめる彼、ほんの一瞬まぶたを閉じて大げさなリアクションをとる
そうして大きくため息をつくと、困ったもんだろ、と同意を求めるように笑いかけるだろう
優男と呼ぶにふさわしい演技がかった動作は貴女にどう受け止められるだろう


「だから俺が派遣されたってワケ、チョロいもんだぜ?どいつもこいつも呆気なかったもんさ
その内ちょいと気前の良いバカンスみたいに思えきたんだけど、ココって暮らしにくいったらありゃしねぇ
そろそろ一端帰ろうかって思ってたトコに姉ちゃんみたいな別嬪さんが現れたってわけ
加えて腕もたつときた、この娘を殺して持って帰ったらめでたく俺も本社で片手団扇ってわけだ」


そうして頬を歪める、端正な顔に刻まれる相応の笑み
上品な笑いではあるが、その裏の心はどこまでも下色めいていて
嬉しそうに手を開きながら、魔力を貯めていくのだろう


「こっちにはアンデットの技術もあるし、死んでも操れる変態ばっかだし
姉ちゃんが死んでもキッチリバッサリ黒の大陸のマドンナとして迎えてやるからさ
安心して逝っちゃいな────────なんてな」


そっとさしのべる右の手、瞬間魔法陣が手の側に三つ出現し、黒いバレーボール大の塊が出現する
ソレはまっすぐと貴女へと向かい、貴女にぶつかろうとするだろう
触れたなら貴女にかかる重力が数倍になり、大剣を持つのに不自由が生じるかもしれない
28 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします[sage]:2012/10/05(金) 13:59:14.19 ID:cEgevPWqo
>>27

「……名前など、ただの後付けだろう
 ソレがそういうものだ、と理解できておけば、困りはしない」


──「雷」が雷であるという現象さえ分かっていれば、「雷」という名称は必要ないと彼女は言う。
確かに彼女にとっては、困りはしないのだろう。
日常生活には支障をきたすだろう思考ではあったが……彼女の想定している「生活」とは、戦争野中にあるのだ。

男の言葉には、あまりよい心情を抱いてはいないのだろう。
攻撃された時や剣を振るうときは微かに浮かぶ口元の笑みが、いざ言葉を交わすと途端に消える。
そもそもが戦いに悦を見出すのか、或いは感情の表現が苦手なのか──。

──熱により爛れた右腕ではなく剣を持つ左手に意識を向かわせる。
そうしてやっと、歪んだ三日月が口元に宿る。
闘争の赤と、陰謀の黒──嗤い方を比べれば、きっとどちらも、大差ない。


たんっ。荒野を蹴る。
まっすぐに向かってきているのであれば、避けるのは比較的簡単だった。
1つめ、左へ跳んだ。2つめ、身をかがめる。それでも前へ前へと走って──3つめ。
斬った方が早いと判断したのは、よくある戦場での誤ちだった。

切っ先が黒い塊へと触れる。──斬れる、次は、と思ったその時。
急に、使い慣れているはずの相棒が重くなり。そして、その次の瞬間。

彼女は即座に剣を捨て、まだ動ける身体を使い。巨大な剣を振り回すその左腕の腕力を持って
────全力で、ドッペルゲンガーの顔面を殴りに行った
29 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします(関西地方)[sage]:2012/10/05(金) 14:13:56.71 ID:JcDcJnuao
>>28

なるほど、と彼は心の中で思う……貴女という存在がどういうものか分かったような気がした
だから同時に厄介だと感じた、少なくとも彼の口車には乗ってくれなさそうで
つれない女の子はやだな、と月並みなことを感じてたりするのだろうか


「そういうもんじゃないぜ、名前ってのはそのモノの本質を示すのさ
俺達は名前があって初めて物事を認識できる、描かれてない事は存在していないに等しい
自分が自分であると証明してくれるモノは名前以外には存在しないんだぜ」


ほら──────


「姉ちゃんの武器にも名前があるんだろ?」


つまりは貴女にとっては相棒と同義である、と彼は読んだ、だからこそその大剣へと攻撃をかけた
相手の行動が鈍る結果となれば、彼にとっては十分にプラスとなる
そして貴女の動きが崩れた、読み通りだ、とその端正な表情をほほえみで歪め────

ソレはすぐさま、拳で歪むこととなった


「っ────!!なんつぅ馬鹿力だよ……!!」


吹き飛ぶ彼の体、直撃した拳から受けたダメージが、そのまま体全体を駆け抜ける
荒野へとたたきつけられて数秒、意識がとんでいきそうになる
膝をついた形で立ち上がろうとし、数度苦しそうに息を吐き出した

やがてよろよろと立ち上がると貴女へとまっすぐ向き直るだろう
その表情からは笑みが消え、ただひたすらに悔しげであった


「……なるほどね、価値観の違いってワケだ……そりゃ相容れないわな
プレジデントが嫌う理由が分かったぜ、他の倫理観やら考え方ってのは理解できねぇし、する気もおきねぇ
だからこそ余計に屈服させたくなるってのは──────まあ俺たちの性ってワケだ」


ネクタイへと指先をかける、わずかに引きずり下ろして呼吸を楽にする
体内に残るダメージは決して少なくない、我ながらミスったもんだ
だからこそこの借りは────キッチリ返してもらいたい

右手を一度、大きくヨコに広げる────ちょうど、自身の前を横切るように
そして軌道に出現する大量の魔法陣、間髪いれずに黒いレーザーのような奔流が放たれる
威力も速度も弱い、ただ数が多く、貴女の接近を拒もうとするだろう
30 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします[sage]:2012/10/05(金) 14:32:58.69 ID:cEgevPWqo
>>29

じぃ、と。何かを殴った時の反動が左腕に僅かに奔る。
その口元は、やはりまだ歪んでいた。
名前があるとか、どうとか──先ほどの会話は、青年と一緒に脳裏から叩きだした。
戦場では、余計な思考は致命的な何かをもたらす。それは経験からくる、反射的な行為でもあった。


「侮るなよ、黒の種族。私の武器は、≪天龍≫だけではない──!」


赤の種族は戦闘狂で、愚かだとよく言われる。
その表現は、決して誤りではないけれど──。
赤の種族が愚かだと、そう言われるのは。

己の身体をも、武器として考えてしまうことがあるからなのだ。

このスチームメタルも、その例に漏れなかった。
ひとつの武器が一時的にであろうとも使えなければ。もうひとつの武器を、己の身体を使えばいい。
それはきっと、戦いのどこかに優雅さをも求める黒の種族とは相容れることのない思考なのだろう。


もう一撃を喰らわそうとして、地を踏んだ。
しかし数歩地面をかけようとして──青年から、厄介そうなものが放たれる。
数は多く、無理に近づこうとすれば思ったよりも大怪我を負いそうだ。

そう判断した彼女は今度は大きく後退し、大剣の元へと急ぐ。
身体をいくつかの光が掠めていく。数発程度であれば、問題はなかった。
服の一部がレーザーに焼かれるも──それもまたあまり気にはしていない。

ぐ、と彼女は落ちている大剣を拾い起こし、その刀身を小さな盾代わりにしようとした。
焼かれる僅かな痛みに少しばかり不快感を覚えながら、彼女は大剣のことを考えていた。

「あの、妙な重さはもうなくなっているかどうか」──

この青年と戦うのに素手だけでは不安だと、そう判断したのだろう。
31 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします(関西地方)2012/10/05(金) 14:46:21.13 ID:JcDcJnuao
>>30

大剣は元の重さに戻っているだろう、それほど強力な術式ではなかったようだ
まっすぐに此方に向かってくるとばかり思った彼は一端退避し武器を得ようとする貴女を予想できなかった
それは後に大きな差として現れるのだろう、だとすれば、彼の不利さは否めない


「全く……姉ちゃんのその体そのものが凶器ってワケかい
まぁ、別の意味での凶器も在るんだが、なかなか使ってくれそうにないしな
でもな姉ちゃん、俺達はやっぱり、そういう種族じゃねえんだわ」


赤の種族が愚かであるならば、彼らもまた愚かと形容されるべき存在であろう
どのような戦いでもスマートに優雅さを求めようとする
己の価値観に則り戦う彼らは赤の者から見ればまさしく愚者なのだろう

一つ踏み出す彼の足、高そうな汚れ一つ無い革靴で地面をなでる
顔面に入った拳のダメージはまだ抜けきっていない、焦点も未だに合わないようで
けれども、歩み寄る速度は決して遅いわけではない


「相手が接近戦をしかけるっつーのに遠距離からちまちまやるのは具合が悪いったりゃありゃしねぇ
そりゃつまりお約束ってワケだ、筋書きだってるとでも言えばいいのかい?
考えてみれば当たり前のこったな、コメディアンってのは客の期待に応えるのが仕事だ
だから精々、つまんねぇジョークでも飛ばしながら大袈裟に倒れてみせようか」


貴女が剣を握り、此方へと向き直ったタイミングで、彼が強く地面を蹴るだろう
加速する彼の肉体、無手で向かうという自殺行為にも似た接近
それでも灯火の下の表情は、歪んだ三日月のように揺れていて

貴女に接近したならば、右足で強く地面を踏みしめ軸にし
身を大きく捻り、大きく円を描く形で身体を頭上から見て半時計回りに捻る
そうして高く振り上げた左足で後ろ回し蹴りを顔面へとたたき込もうとするだろう
32 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします[sage]:2012/10/05(金) 15:05:31.09 ID:cEgevPWqo
>>31

≪天龍≫を手にした時、彼女の三日月が嬉しそうに輝いた。
一時的に捨てたものとはいえ、やはり戦闘の際には剣を持っているのが落ち着くのだろうか。
或いは──普段から持ち歩いている「重石」がなくなり、具合でも悪かったのかもしれない。


──剣を捨て、殴りに行ったことが。或いは剣を取りに戻ったことが青年にとっての予想外ならば。
青年がわざわざ此方へと近づいてくることが、彼女にとっては予想外だった。

利点が、ない。少なくとも彼女はそう考えている。
自分の武器は剣と素手。ならばずっと遠距離攻撃を続けていれば勝機もあるだろうに──。
優雅さだの、期待だの、絵面だの。そのようなことはとんと理解出来ない彼女にとって
青年の行動は正に「理解不能」なものであった。


その、理解不能という名の不意をつかれた彼女は──そのために、行動がわずかに遅れた。


剣を握る。相手が接近してきた──何故。
左手だけではなく、右手も剣へ添える。火傷のせいで、いつもより少し握りが悪かった。
──そのまま。相手が右足で地面を踏みしめ身体を捻り脚を高く振り上げ……


「…………っ、………………!!」


顔面へと叩きこまれた脚。きっと其処へは、鋼を踏んだかのような感触が伝わるのだろう。
機械化した、女の左目。ソレは危険を教えるかのように、ゆっくりと点滅を繰り返していた。

だが、相手になす我儘にされる彼女ではない。
両の手で握りしめた、機械剣。蹴られた衝撃で、思考能力は落ちていたけれど。
それでも、剣を振るうという本能的な衝動までは、失っていなかった。

渾身の攻撃を受け、のけぞる彼女。その反動を利用し、或いは「そうすること」で体勢を元に戻そうと──
片手だけでも威力のある≪天龍≫を、彼の胴体付近へ、ほぼ目眩まし状態で、しかし全力で振るおうとした。

幸か不幸か。彼に向いていたのは刃の部分ではなく、大剣の横っ面──腹の部分。
確かに斬れはしないけれど、それでも……最早鈍器と化した≪天龍≫が与えるダメージは、想像に難くない
33 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします(関西地方)2012/10/05(金) 15:18:33.97 ID:JcDcJnuao
>>32

足先に感じる感触は重い、だが彼の狙いはそこではなかった
彼の種族はドッペルゲンガーである、すなわち擬態を得意とする種族だ
それこそ何でもありと言っても差し支えがない、彼は足先をある物体へと変化させた

それは青の大陸直伝のスキャン能力を兼ね備えた機構である
彼はソレを使い、触れた箇所から貴女の機械としての性質をスキャンしようとする
仕組みから素材、さらには作り方まで、もしかしたら彼はスキャンできるだろう

しかし、その代償はあまりにも大きい


「そりゃそうだろう……っ!観客が楽しみにしてるのは痛快な娯楽だ!
バイオレンスでグロテスクで飛び散るぐらいにシュールな場面が一番だろ!
……ったく、やってられっかってんだ────!!」


すぐ側まで迫る刃、彼の肉体など歯牙にもかけぬ暴虐の一撃
圧倒的力と速度をはらんだ刃が、彼の身を食いちぎろうと身を寄せる
その刹那、彼の表情が揺れる、苦しみでも憎しみでもなく────笑みの表情へ

それははっきりと、貴女からでも見てとれるだろう


「────��F.C.P.R.E.M.I.X.�=I!」


彼の体が溶ける、否、彼の腹部が霧となり、貴女の刃をすり抜けるだろう
刃は霧をかき乱すだろう、しかし貴女の手に残る感触はひどく虚ろなはずだ
彼はその身を後方へと飛ばし、地面へと再び立ち上がる

霧が彼の元へと戻っていき、再び無傷の体を作り上げる……が


「っ……!!これ以上は……無理っぽいな……!!
あばよ姉ちゃん、アンタのお陰で、俺のクビは免れそうだ!
今度はそっちからこっちに来なよ!そしたらとびっきりのジョークでもてなしてやるよ
俺の名は��コメディアン�″ナ高にマッドでピッタリな名前だろう?」


かくん、と彼は膝をつく、内臓がいくつかやられたようで口元からは血が滴って
それでも笑みの形は絶やさず、楽しそうに笑みを向けると
日差しに溶ける吸血鬼のよう、その身を溶かして消えていくだろう

戦闘の結果でいえば、彼の敗北だ、またいつか、ときっと思っているのだろう
34 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします[sage]:2012/10/05(金) 15:35:10.61 ID:cEgevPWqo
>>33

彼女の機械としての性能は、恐らくは中の上、といったところだった。
機械化されたところは現在見えている箇所と、後は背中だろうか。
とはいえ、機械化されている背中には高出力のブースターがついており、短時間ながらも飛行を可能としているのであった。
加えて、そのブースターのエネルギー供給源は、体内に新たに生み出されていた特有の体内器官。
身体に取り込んだエネルギーをブースターを起動させるエネルギーに変換する特殊器官であった。


ならばこれまで、散々彼女が見せていた馬鹿力は、といえば──。
それは完全に。完全に、彼女の努力の賜物だった。
腕の筋肉組織には機械の欠片もなく、ただただ生身のもの。
どれほどの代償を払って、どれほどの痛みを伴って現在の肉体を手に入れたのか。
記憶まではスキャンされなかったものの、彼女の苦痛の一旦は、垣間見ることが出来たかもしれない。


「…………っ、あ──?」


つぅ、と。生身である証の血液が、鼻腔から垂れる。
斬ったはずなのに、霞を斬ったかのような──酷く、虚しい感触があった。
無理やり戻した体勢を更に安定化させるためにその場で鑪を踏み、続く第二撃、三撃に備えようとするも……。


「────カナン・ブルーム。次は、仕留める」


律儀なのだろうか。それとも、次こそはという自信でもあるのだろうか。
剣を握り締める手を緩め、消えていく彼の姿をただただ見送り──。
口いっぱいに広がる血の味に表情を歪めながら、低い声でぼそりと呟いたのであった。


/わー、お疲れ様でした!ありがとうございました!
35 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします(関西地方)2012/10/05(金) 15:38:21.21 ID:JcDcJnuao
>>34
/お疲れ様でしたー
36 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします[sage]:2012/10/05(金) 20:14:28.99 ID:5X8//S1jo
“ 従空墜つ 信じ難い『噂』である ”

「そう…この目で確かめるまでは……だ。」

空の果実が身を隠し、揺れる海面が闇へと染まる
暗雲立ち込むその場所は──空の銀光さえも隔てるもの


【黒の大陸、海辺__荒漠とした原野】

突如静寂を破りし音は響いた悲鳴、海辺の小さな関所からその音は響き渡った
その場所へと目を向けてみれば大地に伏すのは2匹の亡骸と、それに下目を向ける一人の白

「大した言われようだな、白の侵入者……ね… やはりあれは……」

白銀の鎧に長く絹糸の様な白い髪、背には大きな2対の翼、戦に汚れた『白き』翼を持つ女性
そして布により刀身が巻かれた大剣を右手に下げて
その姿から察するに白の使徒、騎士或いは執行者か──。

紡ぐ言葉は彼女が何かを確認する為、その場に降り立った事を匂わせている様であり
布告、ある騎士団の失踪に関する事なのだろうか
37 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします[sage]:2012/10/05(金) 20:16:31.44 ID:5X8//S1jo
>>36
/一行目、訂正です従空→征空
38 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします(関西地方)2012/10/05(金) 20:20:52.42 ID:la1hKWkCo
>>36

漣の音が一際大きく鳴り響くだろう、それはまるで迷い込んだ獲物を知らせるかのように
岸壁を叩く海音が、怒号のように爆ぜると、やがてソレは破裂する土砂降りのように蠢く
常夜の空が雷轟を響かせて、予期せぬ侵入者を隔てる

瞬間、激しい音が響いたかと思うと、波がいっとう激しく揺れた
それは海岸を乗り越え、鞭のようにしなりながら貴方の周囲の地面を叩くだろう
途端に響く地鳴りの音地面を揺らすほどの強大な衝撃が地面を襲ったのだ

そうして波は一本の奔流のように固まり、鞭のように再び蠢く
ソレはまるで誰かに操られているかの如く、その身をねじり一本の線と為す

そうしてできるであろう巨大な波の奔流
空中で一つ唸ると、貴方へと叩き下ろされるだろう

言うまでも無く威力は強大、当たれば一たまりも無い
だが、波が操られる予兆が無かったのもまた事実である
術者は波の中にでもいるのであろうか
39 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします[sage]:2012/10/05(金) 20:57:33.23 ID:5X8//S1jo
>>38

天使はインプの亡骸から目線を上げ、周囲を見渡し足を踏み出そうと大剣を強く握る
その足を一歩、前へと進めた頃であろうか突然に響く漣の音

大海嘯の如く此方に迫るその音に天使の表情はより強く厳しいものへと変わりゆき
視界に入ったのは巨大な波の奔流

「なっ……! にっ──ッ!」


それを視界に入れた瞬間天使の撮った行動は大地を蹴りその翼を大きく羽ばたかせ後方へと飛び立つ事
酷く音を立て襲い来る、その様な全長はあったもの、インプの門番を片付け、多少の油断があったのは事実


攻撃の第一波は後退することにより辛うじて回避する事が出来たのだが──
天使の着地と同時であろうか、まるで生きているかの様に鞭打ち叩き降ろされた奔流が天使へと鉾先を向け遅い来る

「────!!」

万全では無い状態から飛び立った事により天使は着地した瞬間に身体のバランスを崩していた
そんな状態の天使に向けて襲うその奔流

「クッ……ッ!! チッ──!」

その波が天使の身体を直撃する刹那、天使はその右翼を羽ばたかせ左の方へ避けようと。
しかし…それはその場に紅く染まった白羽を散らす事となる、一枚の右翼の頭頂を抉ったのだ
致命傷は避けることが出来た、だが当たれば一溜まりもなかっただろう
天使は右手に握った大剣を深く握りしめ、その体勢を立て直そうとするだろう

波の動きを警戒し、今より離れた場所、海面よりはなれた場所へと
40 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします(関西地方)2012/10/05(金) 21:07:04.49 ID:la1hKWkCo
>>39

回避された水流はやがて空中で弾け、水となり流れていく
地面を流れ、そしてそのまま海へと還るようにその身を消すだろう
後に残ったのは静寂、ただひたすらに静かな無音の空間

――――――そして、それをかき消す優美な音色が一つ


「あらあら……良く避けたわね、ふつうの生物だったら今ので死んじゃってたのに
だとしたら、そうね―――少しは楽しめそうなお客様が来たのかしら
ねぇ、そうでしょう?かわいいかわいい天使さん」


足音はしない、ただひたすらに優美な歌声
それはまるで麻薬のよう、脳内にとろけて染み込んでいく危険な旋律
何かしらの力が働いていると確信できるだろう、それほどまでに艶やかで

夜空に響く甘い甘い音色、ソプラノの音が空間を支配していく
やがて一つの影が世界に落ちる、伸びた形が空をうっとりと撫でる
――――――体勢を立て直した天使の頬に、そっと手が伸びて、触れようとするだろう


「きっと貴方の羽はもがれて、華奢な胸は杭で打ちぬかれて
やがて並ぶは箱の中、冷たい冷たい標本箱の暗い底
今か今かと、その瀟洒な喉を震わすのでしょう?」


後方へと出現する、一つの存在、圧迫するような魔翌力が貴方へと放たれるだろう
指先はきっと冷たい、まるで氷で出来た彫像のよう、雪のように白い肌が溶ける
ふふ、と零れた微笑の旋律が、したたるように流れ落ちるのだろう

鮮血のような淡い朱の長い髪に真紅の澄んだ瞳
抜群のプロポーションを一糸纏わぬ全裸姿であらわにして
ほんの僅か身を隠す薄手のレースの白い被衣を纏った女性
白い太股にスズメバチの、股間には蝶のタトゥーが刻まれている
41 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします[saga]:2012/10/05(金) 21:11:26.27 ID:J1cYYX9P0
>>38>>39

「騒がしいかと来てみれば、忌むべき白と何者かが交戦中ですか」

 霧のように現れる存在。
 白い肌にオールバックにした金の髪、そして左目に付けられたモノクルは
 彼が高位のヴァンパイアであることを示していた。

 紫のマントのような翼を広げ、魔方陣を展開する。

「さて、どういう状況なのですかな?」

 魔方陣からは彼の使用人である、7人のキョンシーが
 それぞれ青竜刀や魔法銃を構えゾロゾロと現れた。
42 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします[sage]:2012/10/05(金) 21:35:05.27 ID:5X8//S1jo
>>40

燐粉散る如く赤き血潮は天使の軌跡になぞられる
だが怪我自体は大したものではない、これほどの痛みなど数々の戦場を駆け抜けていた天使にとっては問題はないのだ

そしてその場所へと逃れられた時には、その場には先ほどまでの激情の表情は消えていて


「────」

静寂の間に奏でられる音色だけが響いていた
何処から響くものであるのか分からない、脳裏に直接語りかけるような“ 心地よく気味の悪い音 ”

その白き瞳はその場で左右に動かされ、天使はその景色に意識を向ける
その声に流されぬ様、集中を高め辺を警戒する

────その時、流れる様な言葉
後方から感じる、強き魔翌力の影

「可笑しな事を企てていると耳にして来てみたが……」
「黒の解答は…“そういう事であるのだなッ──」

天使はその言葉を放る様に吐き出しながら、魔翌力を感じた方向放たれた魔翌力に剣圧を振り抜くだろう
身体に触れさせはしない、間合いに入るならばその大剣が牙を向く

そしてその圧迫されるような魔翌力から自身への自信を失わないた為、誇りの剣を振り
その魔翌力に圧迫されない為の行動でもあるのだ。
43 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします[sage]:2012/10/05(金) 22:01:07.79 ID:5X8//S1jo
>>40−41
/>>42は取り消しで此方でお願いします、ごめんさない。


その手を払おうと大剣を振り抜こうとしたその瞬間
緊迫とした緊張の中、突如と響く声

(敵は後ろに一人、あと一人……振りな状況ではあるがこれも敵地…覚悟の上の事…)

全裸の女性に背を向けていた状態の天使の行動は
一つの声により対処が変わる、注意すべきは一人では無い


(今此方から手を出し隙を作るのは不味い……であれば…。)

天使の行動は一つ、その背の翼は羽ばたかせ、前方へと飛び立つ事
先ずはその2つの敵影を目視する事から始まるのだ

そのまま天使が何の邪魔も入らずに、前方へといけたのならば
天使はその場で振り向き、敵であろう2つの影へと瞳を向けるであろう

剣先を天にかざし、大剣の柄を握る両手は顔の真横、所謂上段から攻撃を繰り出す事を目的とした構えである
天使の口は動くことはない、ヴァンパイアへの解答にも、全裸の女への言葉にも言葉を返すことはなく

ただ剣を構え、見据えるのみであり
44 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします(関西地方)2012/10/05(金) 22:05:16.03 ID:la1hKWkCo
>>41

あらやだ、と彼女は心の中で零す、折角の楽しみの最中に��嫌な奴�≠ェ現れたから
黒の大陸に属する彼女にとって、現れた彼は手を組むべき存在なのだが
彼女としては久方ぶりにやってきた美しい少女を、この手で弄びたいと思っている様子で


「何しにきたのかしら、下世話なヴァンパイアなんてお呼びじゃないわ
アンタみたいなのの手にかかったら、綺麗な天使ちゃんがグールかなんかになっちゃうじゃない
お分かりかしら?お呼びじゃないのよアンタなんか
早く城に帰って好きなだけ自分トコの使用人の血液を吸ってなさいよっ」


そう言って彼女は露骨にべーと舌を出すだろう、白い素肌に赤い色がにじむ
唯一の着物である被衣を身に寄せながら、柔肌を溶かすように滑らせた
じとーっと見つめる真紅の瞳が、明らかに敵意をむけている

噂では聞いたことがあるであろう彼女という種族―――��セレナーデ��
歌姫とも呼ばれるその種族はその異常な歌唱力で万物を操ることができるのだ
だが個体数が絶対的に少なく身体能力が低いため、黒の大陸では数を減らしつつある


「……聞いていないって感じかしら、良いわ、私が相手したげる
でもネロに怒られるのはアンタだからね、知らないから」


彼女は貴方が従えるキョンシーを見て露骨に顔をしかめて、早とちり加減に行動を開始するだろう
意外と我慢強くはないようで、むすぅ、と若干膨れ面な様子
全裸に纏った被衣を纏いなおすと、高らかに澄んだ音色を響かせるだろう

��Secede�≠ニ呼ばれる独自の発声方法で紡がれる歌声は、言葉で表すことが不可能な旋律で
伸びの大きく澄んだ音色が、荒波を鎮めるが如く広がっていく
そして、貴方の使役するキョンシーの内二人が貴方の制御を離れ勝手に動き出すだろう

本来であれば7体全員が彼女の支配下に於かれても仕方が無いほどの魔翌力
それをとどめておけるのはやはり高位のヴァンパイアたる由縁であろうか
彼女の支配の能力はだいぶ薄まっている、彼本体が直接キョンシーに語りかければ

あるいは再び貴方の支配下へと戻るかもしれないだろう

>>43

前方へと跳んだ貴方、彼女はその様子を眺めつつ、ため息のような言葉を漏らす
向かう視線は>>41へと、非難するような表情で
少女のようなけだるい色を孕んだままで――――――

クスッと歪む彼女の表情、絵画のように整った笑みが、その身を震わせて響かせる
月光が被衣を透かして、その白さを艶やかに染め上げると、その下の素肌が乳白色に彩られる
彫刻のように均一な柔肌を彼女は恥らうことなくさらけ出して


「私の弁証はこれでおしまい、後は貴方を私の手で絡め取るだけ
お家に持って帰ってやさしく愛を込めて世話をしてあげる
だから、私の歌に――――――溶けなさいな」


揺れ動く彼女の小さな唇、傷を撫でた右手が胸元に触れる
しんしんと降り積もるような音の奔流、ソプラノの旋律が河のように流れていく
音と音が重なり合って交響を奏でるとそれ大きな形を作り上げる

瞬間、貴方の足元の地面が隆起し、空中の貴方へとぶつかろうとするだろう
やがて地面から吹き上がるマグマの奔流、先ほどの水流よりは量が少ないが、エネルギーは十分だ
一度大きく空中に舞い上がると、雨のように細い炎を撒き散らすだろう
無論それらは>>41へも飛び火する
45 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします[saga]:2012/10/05(金) 22:23:31.03 ID:J1cYYX9P0
>>43

「ククク・・・黒の大地へようこそ天使さん。
 この大地に白が足を踏み入れるというのはつまり覚悟の上なのでしょう?」

 クスクスと上品に笑うが、隠しきれない憎悪と敵意。
 赤い虹彩の目は天使を睨むような色を孕んでいた。

「最近の白は愚かですね、この間も精鋭とやらがネロ様に直々に撃墜されたばかりだというのに」

 広げられるマントのような紫の翼。
 その内側には、侵略者の証明たる黒い五角形の刻印。

「さぁ、その命を散らせてしまいなさい。放て!」

 魔法銃を持った2体のキョンシーが天使に銃口を向けた。

>>44

 しかしその2体は突如銃を手放し、ふらふらとセレナーデの元へ行ってしまう。

「なっ! 支配系の術式! 邪魔する気ですか!?」

 このヴァンパイアはセレナーデに向けて声を上げる。

「このっ! 戻りなさい!!」

 ヴァンパイアの手から光る糸のようなモノが飛び出し、
 ふらつくキョンシーに傀儡のように繋げて無理に引き留める!

「・・・まったく! 奔放すぎますよ! あと偉大なるネロ様を呼び捨てにするとは!!」

 内輪もめ。
 どうやら黒も一枚岩ではないようだ。
 それがネロの支配率4割という数字に表れていた。

「!? こんどはマグマ!?」

 慌てて術式の結界を張り、身を守るがその結界に入りきらなかった何体かのキョンシーが被弾していた。

「この・・・っ! いい加減にしないといかに同族といえど容赦しませんよ!!」
46 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします[sage saga]:2012/10/05(金) 22:25:31.22 ID:M7r//eTTo
「あぁ、美しィ。
 なんと生命に溢れ、静謐な気に満ちているのだァ。
 この胸の高鳴りは間違いなく――――恋ッ!」

緑の地、静謐な精霊達の気配に満ちて��いた�$Xの広場にて一人の細長い柱のような影が声を放つ。
異様に艶と張りの有る、いうなればオペラ歌手のような、しかしながらわざとらしい程に芝居を含んだ所作と声色。
両手を広げた後に、長身痩躯の偉丈夫――異常夫は己の身を掻き抱き、地面に膝を付き震えを覚えた。

「精霊、未だ幼き精霊ではないかァ!
 ああ、その無垢に煌く瞳に怯えを宿したその姿……、美しい、感動的だ!」

視線の先には、背から虫のような羽を生やした10にも満たぬ幼子が有る。
足の腱を切られているのか、少女はただ声も出せずに怯えるだけ。
そんな少女に覆いかぶさるように、腐臭を放つ黒のアンデット――エルダーリッチはその手を伸ばす。
芸術品を扱うような繊細な手つきでそのやわらかな頬を撫で、安心させるように鉄仮面の奥の瞳を細めたエルダーリッチ。

「なに、怯えることは無い。私は君を愛している、否、今から愛す、今から君に恋をしよゥ。
 君の無垢さが私には眩しい、君の生命力が私には恐ろしィ。
 だからこそ、私は君を抱擁しよう。だからこそ私は!君に……接吻をしよう。
 だからこそ私は、故にこそ私は――君を��恋人�≠ノ……」

大仰な動作で細身のアンデットは少女をいとも容易く抱え上げて。
少女は怯えと困惑の入り混じる表情で暴れ始めるが、その動きは次第に蜘蛛の糸に囚われたように緩慢になっていく。
少女を抱えたまま、異常のアンデットは体を蠢かせ。

直後、地面が波打った。

否、波打ったのは大地ではない。
ならば何が波打ったのか?
それは、虫だ。それは、死体だ。
大地を埋め尽くしていたのは、無数の妖精種の死体だった。
そして、その死体から無数のウジ虫や蝿が湧き立ち、アンデットのローブの裾や袖から入り込んでいくのだ。
人間の赤子ほどもあるアリが妖精の四肢を選定し、もぎ取り献上物として運送を始め、他の死体は虫達の食料へと貶められていた。

「あぁ……かわいそうに、友も親も失い、その足ではもはや歩くことも叶わない。
 だが、案ずる事は無い。私が友だ、私が親だ、私が君の��恋人�≠セ。
 君は――私と一緒に付いてきてくれるね?」

声の出せぬ妖精の少女に鉄仮面を擦り寄せるようにして同意を求める異形。
その声は、這いずる毛虫の様に精神に入り込み、その精神に虫食い穴を作り出していく、異様な色を含んだもの。
怯える少女は優しい声音に絆され、そのまま首を縦に振ってしまった。

ここは比較的黒の土地に近い地域だ。
黒の民でも、緑の民でも此処にたどり着く事は不可能ではないだろう。
47 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします[sage]:2012/10/05(金) 22:36:11.21 ID:5X8//S1jo
>>44

(話聞く限り……仲間のようだが…)
(まぁ良い…何方にせよ2人纏めて……ああ…そうだ────やるしか無い)

ヴァンパイアとセレナーデのやり取りを背に飛び立つ天使の思考は
その会話の内容より、自身への指揮の向上へと向けられていると言える
個々が死地になるかもしれない

もしそうだとしても…簡単には死なない、攻めて一人だけでも
せめて手負いの傷だけでも……と。

────そして。

再び奏でられる魔の旋律、その美しい歌声と裏腹に周囲からはまるで叫び声を上げるように「何かが」唸る音がする
まるでその美声に歓喜を上げる様に、その旋律と交わるように大きくなり

その音、その現象に警戒し天使は器用に四翼を羽ばたかせ宙で身体を回転させるのだ
そして視界に入った光景は────

「くっ──。」

天より降りし炎の雨、きっとその一体はその雨により燃え盛ることになる
そのひと雫でもあたるのならばきっと多くの炎に焼かれる事になる

「小賢しい真似をする──ッ!」

それ故天使の取る行動はその右手に持った大剣を後方に飛びながらもセレナーデに投げる事
直線に、回転しながらも投げられた大剣はその火の雨の中を潜りセレナーデの元へと、その牙を下すのだろうか

「グッ……」
(クソッ………体勢を維持できない……)

そして何方にせよ──セレナーデの放った火の雨の幾つかは天使に襲いかかり
>>45からの銃弾は天使の左手の掌を貫く事になる
一枚の羽を負傷した故、その大剣を投げる行動をとった故、天使はそのまま後方へと落ち、大地に打ち付けられるであろう


そしてその大剣は意思のある生きた剣であり、弧を描くように、ヴァンパイアの後方から直線に
天使の元へと帰って来るのである
その軌道上、何も隔てるものが無いのなら…と言った話ではあるのだが
48 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします(関西地方)2012/10/05(金) 22:47:23.30 ID:la1hKWkCo
>>45
ちっ、と彼女は大げさに舌打ちするだろう、恥も外見もない
貴方の言葉に答えるように彼女は言葉を紡ぐ、糸を重ねるように丁寧な音を
音色は一流のオーケストラのように芳醇で、それでも中身は、結構適当で


「どーちーらーがっ邪魔してるんでしょーね!私の獲物に手ぇ出してさ
もー!そんなにたくさんあるんだから少しぐらい分けてくれていいでしょ!ケチ!
それにどう呼んでも良いじゃない、確かに彼の強さは魅力的だけど……少し乱暴すぎるしぃ
んー……そうね、ダーリンって呼んであげたら、大陸の一つぐらい、私にくれるかな?」


キャラがぶれてると言いたげなくらいにコメディチックな発言を零して
キャーと言いたげにほっぺたに手をあて、腰をくねくねすると、肌に刻まれたタトゥーが揺れる
白い素肌に刻まれたいくつかの文様はハッキリとした形を浮かべて

それでも冗談を言うのはほんの少しで、元のような表情に戻って
彼女は真紅の瞳を投げかける、にくったらしいぐらいのヴァンパイアへ
それは同時に、相手の強さというものを知っているからこその表情なのだろう

「どうぞご自由に、容赦してくださいなんて誰が言ったのかしら?
大体私、ヴァンパイアって元々嫌いなのよプライドばっか高い上に死ににくいし」

それに、と言葉を続ける彼女

「��歌姫�<Nラレッタ=ギャラルホルンの前に、そんな木偶並べないで頂戴」

揺れ動く彼女の被衣、全裸の身を撫でるように泳ぐ
伽をするような怠惰なしぐさが、溶けるような旋律を紡ぐと
彼女の指先へと周囲の空気が集まっていくだろう

そうして放たれる小サイズの竜巻、キョンシー数体を遠くへと吹き飛ばそうとする
ヴァンパイアの支配域から離脱させることで貴方の手数を減らそうとしているのだ

>>47
マグマの雨をくぐり放たれた鋭い槍のような一摘
彼女の表情が思わず歪む、自分から敵を作っておきながら何をしているのだか
被衣が揺れる、彼女の身をそっと抱きかかえるように――――――


「あら嬉しいわ、ソレ、大切なモノじゃないの?
ブーケトスにしちゃ中々派手だけど……嫌いじゃないわ!」


再び謡う彼女の旋律、空間を震わすほどに高濃度の魔翌力を孕んでいて
巻き上がる風、彼女の眼前の空間へと集まっていく
彼女の両手が真っ直ぐに剣に向かって伸びるだろう

そうして彼女は空間ごと捻じ曲げる、大剣の軌道を思いっきり左にそらす
ソレは彼女の左後ろにいるであろう>>45にぶつかるような軌道で
嫌がらせと防御を両立させようとしたのだ

―――だが、彼女の左腕を深く剣はえぐるだろう


「あぁ……んぅ……ふぁ……っ……相変わらず防御力ないわぁ……もう
でも貴方も同じくらいの傷ね……悪いけど、あんまり手加減してらんないわ……っ!!」


彼女の左手が水平に伸びる、零れ落ちる血液が、夜を真っ赤に染めていく
被衣は血に濡れず、素肌の傷を夜に透かして、その色をハッキリと明かして
全裸に刻まれた傷跡が、まるでタトゥーのように響き渡るだろう

血液が増殖する、彼女の傷跡からまるであふれ出る様に、大量の血液が零れ落ちて
それは一筋の槍のようになり、大地に打ち付けられた貴方の羽を突き刺そうとするだろう
49 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします[saga]:2012/10/05(金) 23:14:31.16 ID:J1cYYX9P0
>>48

「この・・・っ!」

 ギリギリと歯噛みする。
 翼の内側にある黒の五角形を撫で、
 あまりにも自由な黒の種族に吐き捨てるようにつぶやく。

「はっ! 黒の意志も理解できないとは! 大方そんな理由であなたの種は絶滅しかけているんでしょうね!」

「そんな者は私が直々に・・・!?」

 突如現れた竜巻に残ったキョンシーが全て吹き飛ばされてしまう。
 プルプルと白い肌の顔を真っ赤にして、とうとう堪忍袋の緒が切れたようである。

「詠唱も無しに術式の発動を・・・!?
 いや、それよりよくも私の配下を・・・! もう許しません! 黒の大陸に、ネグロ・アラにあなたのような者はいらない!!」

 正面に血のように赤い魔方陣を展開し、詠唱を始める。

「夜の眷属に仇名す者に真紅の鉄槌を! スカーレット・カノ――!?

>>47

 狙いはそれたものの、意志を持った大剣が飛来し、紫の翼を切り裂いた。
 突如の事に、ヴァンパイアは詠唱を中断してしまう。

「くっ・・・! おのれ! どいつもこいつも・・・!!」

 あまりの怒りに青筋を浮かべるヴァンパイア。
 その様子には貴族らしい優美さの欠片も残っていない。

「まとめて消し飛ばしてくれる!!
 黒の大地に溢れる闇のマナよ! 今こそ万雷と化して仇名す者を焼き尽くせ!! アーデッド――

『待て』

 突如、辺りに声が響く。
 それは念話の魔法がかけられた、おぞましい5枚羽の悪魔の声。

「ね、ネロ様!?」

『いかなる理由があろうと、同族同士での戦闘は認めない。それは私の望む戦争ではない』

「し、しかし!!」

『2度は言わすな。退け、これから重要な作戦会議がある。君にもそれに出席してもらいたい』

「くっ・・・、は、はい!!」

 赤い瞳のヴァンパイアは2人をギロリと睨み返すと、テレポートの術式を発動し、そこから退場した。

『それとミセス・クラレッタ。ネグロ・アラは黒の種族ならいつでも歓迎だ。
 その気になったら是非同胞になっていただきたいね』

 その邪悪な声を残し、ネグロ・アラの二人はこの場から完全に退場した。


//すいません、この辺にて切り上げさせていただきます!
ありがとうございましたー!
50 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします(関西地方)2012/10/05(金) 23:32:10.60 ID:la1hKWkCo
>>49

貴方の言葉はタブーに近かった、彼女の感情の一番奥に近い部分をえぐるようで
表情が曇る、唇の端をかむように、その表情から余裕を持った色が消えて
貴方の堪忍袋の緒が切れると同時に、彼女もまた爆発しそうで――――――


「望むところよ!こんな恥知らずのヴァンパイアがいる組織なんてコッチからお断りよ!
さあ耳を澄ましなさい!貴方一人の為に歌ってさしあげるわ!
その体を!歪ませて!捻らせて!震わせて!砕け散りな――――――っ」


彼女の言葉が止まる、激情に駆られた彼女すらも止めるほどのプレッシャー
息を呑む音が、呼吸をする音が、やけに大きく聞こえて―――自身という存在が希薄に感じられるぐらいに
針の筵で佇むような圧倒的な嫌悪感が、そして慕情が、彼女の身を襲った

それほどまでに黒の大陸に住むものにとってネロという存在は絶対であった
敬称を付けて辿られる彼女の名前、それだけでも彼女の身を紅潮させるには十分で
頬が真っ赤に染まって、今にも爆発しそう、で


「ふぁ……あっ!はい!も、もちろんです!!……そ、それにぃ……
ミセス、だなんて呼び方せずに、もっと親しく、クラレッタで良いですよぅ
もしくは……貴方様のミセスになってさしあげ――――――」


ばっと被衣を開くようにその身をさらけ出す彼女、まさしく一糸纏わぬ裸体
生娘のように頬を赤らめながらも、期待しているように視線をそらしたまま
そぅと辿るようにその顔を真っ直ぐに向けると、そこにはもうネグロ・アラの二人はいなくて

そそくさ、と再び被衣を羽織るだろう

/お疲れ様でしたー
51 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします[sage]:2012/10/05(金) 23:36:02.06 ID:5X8//S1jo
>>48

翼に力が入らずその身体は急降下し大地が身を削る、しかしその中でさえ天使は視線を外す事はない
黒の敵から、その制裁を下すべき相手から

そして一つの違和感に気付くのだ

(セレナーデ──、奴の力を見るにあの様な使い魔の類等は必要は無いはず…何故態々無駄な事をした──?)
(何故奴は── いやっ!こんな事を考えている場合では無い…!)

大剣を投げると言った行動によりその間は敵からの追い打ちを避けることが出来たのであろう
しかしその大地に衝突した傷は決して軽傷とは言えないもの
天使はその全身に力を入れる様に、その身体に悲鳴を上げさせゆらりと、ゆっくりと立ち上がり
目にしたのは歪む空間に抉れる腕、そしてまたも不可解な相手の行動の数々であり


(やはり単純な攻撃では仕留める事はできぬか……)

だが今はその様な事を考えている余裕は無い
やるべきことはただ一つ、その悪意を屠る事──命にかけても…だ

(体力は残っているか──?ああ、残っている 間合いは十分か、ああ十分だ)
(そうだ、あと一撃放つ程度であれば、一撃を放つだけの体力は残っている)

ゆえに天使は己に問う誇りに問う
そしてその思考を張り巡らせながら、セレナーデの方向えと走るのだ

(私の相棒は間に合うのか──? ああ間に合うさ、アイツを信じよう。)

翼はもう使えない、だがまだ脚がある左手はもう使えないだが右手がある

(────私は生き残れるのか?──────分からない。)

「我はイスラ!この様な場所で死にはしないッ────!!」

言葉と同時に天使の羽が光を出す、そしてその力を開放する
彼女の力は身体能力自身を向上させる事、唯でさえ高水準を持つ彼女が
その力を上乗せするのだ、上げる力は速度、敏捷と言えば良いだろうか

その動きは高速──、最後の手段と言える特攻
セレナーデに辿り付くまで多くの羽が身に突き刺さる、しかしその動きは止まることはない


貴方の正面まで来たならば、戻ってくるであろう大剣を手に取る為に右手を上げる
もし邪魔が入らなければ天使はその大剣を手に取りそのまま貴方に向かい振り下ろすであろう

だがその行動は隙だらけであるのだ、敵の目前で右手を掲げる行為──それは捨て身であるが故出来る事
そしてその一撃を振りぬいたとしても──天使の意識はそこで途切れる事となる

身体に刺さる自身の羽、そして力の行使による身の負担
貴方にもしも大剣が振り下ろされたとしても──貴方が生きてさえいれば、その後天使の抵抗は無いのである
52 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします[saga]:2012/10/05(金) 23:36:41.76 ID:J1cYYX9P0
>>46

 突如、魔力を持った翠の風が這い寄る虫達を吹き飛ばした。
 猛禽類のような鉤爪が鉄仮面からひったくるように、しかし優しく少女を掴み異形の愛から距離を取る。

 そこに現れたのはドラグリフォン。
 羽毛のように柔らかい竜鱗には苔が生し、鷹のように鋭い目には明確な怒りが燃えていた。
 彼の名はケツアァル、この森に住まう竜。

 彼は怒りに燃えていた。
 汚れた存在がこの森に足を踏み入れたこともあるが、それ以上に。
 弱く、抵抗できない者へ自分の欲望を押し付けるその身勝手な様が逆鱗に触れた。

「ヒュロロロロロロロロロロロロロロロ!!」

 竜の咆哮のような、鷹の遠鳴のような。
 そのどちらとも言えない怒声が異常な愛の伝道師に向けられた。

 ケツァルは言葉を知らない、だがその声には。
 確かに『出て行け』と言っているように聞こえた。
53 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします[sage saga]:2012/10/05(金) 23:44:57.15 ID:M7r//eTTo
>>52
「おぉっと」

驚いたような声を漏らしながら男は尻もちを付く。
が、すぐに足元の大蟻に押し戻されて体勢を取り戻す。
顔を上へと上げれば、視線の先には竜がある、そしてその鉤爪には恋人となるべく手に入れた少女が見えた。
アンデットは、それを見てうろたえるような所作を見せるが、直後に恍惚としながら身を捩り始める。

「やれやれ――略奪愛だねェ?
 いやはや、強すぎる愛と言うものは古今東西身を滅ぼすものと相場が決まっているものだァ。
 それにしても、なんと優美かァ。……美しいね? その翼も、その苔むした身も、その鋭い瞳も」

体から僅かに瘴気を漏らしながら、両手を広げて迎え入れるように竜に語りかけるアンデット。
相手の意見など知ったことではない、只愛情を感じさえすれば相手がどう感じようともどうでも良い。
己の愛に応えぬ者が居るならば己の愛に己の手で答えさせてしまえばよいだけのこと。

「君も愛したい所だが、愛するべき君を怒らせるのも少々困ってしまうねェ?
 今日の所は素直に帰ろうと思うから、君の手に有る私の��恋人�≠�返してはもらえないだろうかァ?」

温和な口調で、幼子に言い聞かせるように頭を下げ頼み込むアンデット。
その所作だけを見れば悪人のそれではないが、その内面は間違いなく悪。
この男に少女を返せばどうなるか、少なくともろくなことにはならないのは間違いないだろう。
54 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします(関西地方)[saga]:2012/10/05(金) 23:54:18.62 ID:la1hKWkCo
>>51

立ち上がる貴方の姿に、彼女はふふ、と小さく笑みを浮かべた
それでこそ白のものである、と心の中で貴方へと賛辞を送った
同時にそれは貴方への同情でもあった、この状態であれば彼女の勝利は確実だとも


「素晴らしいわ、それでこそ白の大陸の天使様と言えるものねイスラ
でもね、私の力は貴方にとって最悪の相性なのよ」

「私の声で作られた旋律は��Sound Garden�≠ニ呼ばれる空間を作り上げ
��Audio Slave�≠ニ呼ばれる術式で、ありとあらゆるものを支配下に置くことができる
それが私―――クラレッタ=ギャラルホルンの��Alice in Chains�=v


彼女は唄う、賛美歌のような雄雄しき響きの旋律を
重ねあわされる歌声は、一つの共鳴を生み出し、空間を揺れ動かすほどの魔力を放つ
彼女が本気を出せば、空気を炸裂させ、貴方の接近をつぶすことなど容易なのであろう

そして彼女はソレを行おうとする、ただでさえギリギリの負荷をイスラは自身にかけているのだ
ただ途切れさせるだけで貴方の行為を中断させ、彼女の勝利が確定することとなる
――――――しかし


「っ……やばっ、唄いすぎた……っ!!
大体、あのヴァンパイアが邪魔するから……っ!!」


彼女の歌声が途切れる、そりゃそうだ、唄い続ける行為は喉に極大の負荷をかける
華奢な喉は大声を出すのも一苦労しそうなほどで、彼女のリミットは意外に近いのだろう
彼女はあわてる、その間にもイスラは彼女との距離をどんどん、と詰め――――――

彼女は咄嗟に被衣を前方へと泳がす、魔力でコーティングされた被衣は時に絶大な盾となるのだ
しかし、それは大量の魔力を必要とする、振り下ろされる大剣を、受け止めるであろう被衣
貴方の攻撃が止む頃には、単なるボロきれのように、被衣はなっているだろう


「……はぁ、コレ破壊するなんて……どんだけ無茶苦茶な威力なのよソレ
お蔭様で私はただの痴女よ、痴女、全裸で黒の大陸とか一体何の罰ゲームよ
あーあ、一体どうしてくれようかしら、この娘」


おそらくは地面に倒れているであろうイスラ、彼女としてはどう対処すれば良いか考え込んでいる様子で
その手に握った被衣の破片を、元の魔力へと戻して、自分へと還元した
同時にどこからか彼女の手に一つの袋が出現するだろう

――――――それは��のど飴�#゙女はソレを一つまみすると自分の口へと放りこむだろう
55 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします[saga]:2012/10/05(金) 23:58:26.25 ID:J1cYYX9P0
>>53

 ケツァルは言葉を知らない。
 だが悪意には、他者の感情には一際敏感だった。

 そして未だにこの弱き者を諦めず、
 なおかつこの森の妖精たちを大勢殺しておいて反省の見えぬその態度には、
 火に油を注ぐだけだった。

 ふわり、鷹竜とわずかに飛翔したかと思うと
 アンデットの居る場所が、鉤爪の付いたもう片方の足で踏み抜かれる。

 地が震え、衝撃波が木を揺らす。

 風のマナを纏ったその踏みつけは、まるでその場所を爆心地のようにクレーターを残した。
56 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします[sage]:2012/10/06(土) 00:07:48.33 ID:OOQVdmVio
>>51>>54

────ばさり。その場に、イスラのものとはまた違う羽ばたきが、ひとつ。
大気を震わせるのは吹雪が如き零度の咒式。
白き光景を連想させるその音と気配──どの大陸の所属であるかは、主の姿を見るまでも、ない。


「──エティは、警告します。その天使(マルアハ)から離れなさい、と」


黒き夜空に舞うは純白の翼と新雪が如き法衣。
月の光を帯びて、「彼女」の、ワインレッドの長髪が風に棚引いた。

ソレは、まだ若き天使。つい最近≪円卓の騎士≫になったばかりの少女だった。
彼女の左耳には三日月と星をあしらったシルバーピアスが彩りを添え
穢れ無き法衣の上には──紅き紅き咒式が、まるで血管のように這い回っていた。


武器は持っていない。
しかし、衣に隠された彼女の右腕の部分からは、少女には似付かわしくない≪爪≫が、僅かに覗いていた。
──最早意識のないイスラは、その爪は見えないかもしれないけれど。
その爪は、きっと。イスラが知らない、少女の一面でもあった。

/では、よろしくお願いしますー!
57 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします[sage]:2012/10/06(土) 00:10:42.34 ID:bLjZ7xYvo
>>54>>56

────鉄の音が響いた、激しくぶつかり合う鉄の音、その手の感触は肉を裂く物ではなかった
そう、防がれたのだ…
イスラの身体は力なくその場で倒れ、弾かれる銀の十字は中を舞い
そこより離れた大地に突き刺さる



全ての行動は上手く行ったのだ、セレナーデの正面まで詰め寄ることができた
相棒である大剣も振り下ろす右手へと戻って来た

だが────上手く行きすぎたのだ、それは相手にとっても──

セレナーデが言う通り、天使はこの敵との相性は最悪のもの
である、ただ上手く行ったがゆえに近づけた、上手く行ったが故、法衣が剣閃を弾いた

流れる静寂の中でセレナーデの愚痴と、イスラの大地に伏す音が聞こえるだけだった
完全に意識が無い状態、何もなければのど飴も難なく喉えと通るだろう

何も出来ないのだから、それは口内で溶け何らかの影響を与えるのだろうか

天より降りたもう一つの翼の音も聞こえない、ただ大地へひれ伏す彼女の姿が
きっとエトワール、彼女にも見えるであろう
58 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします(関西地方)2012/10/06(土) 00:18:28.64 ID:u7UgnKNNo
>>56-57

彼女の注意がもう一つに傾く、そうして歪む、表情に浮かぶ三日月のような笑み
今日は大漁だと心の中で思うと、その表情を確かな形に彩らせた
そうして向き直る全裸の彼女、どこからどうみても痴女である


「あら、援軍?……それとも、個人的な手助けかしら?
嫌いじゃないわ、ええ……むしろ、とっても好き
でもね、少しばかり遅くは無いかしら――――この戦いは終わってしまったのよ」


少女へと向き直る彼女の姿、一糸纏わぬ裸体が、月下に露わとなる
股間に刻まれた蝶と太ももに刻まれたスズメバチのタトゥーが、唯一の装飾のよう
右手をそっと、左腕の傷跡に触れさせると、その笑みを艶やかな形に変えた


「貴方の大切なイスラちゃんは私が倒して、私のモノになっちゃったの
貴方達の正義では人のモノを取ることはいけないことって定められてるんでしょう?
だったらどうするのかしら、それでも、力づくで、奪い返してみせる?」


一つ貴方との距離を縮めるだろう、彼女の右手が虚空を撫でる
そうして再び、彼女の口が動く、艶やかな唇が、滴るような夜空に染み入る
再び包まれた旋律はただただ荘厳な夜想曲で―――――

彼女の手へと、イスラの相棒でもある大剣が移動していくだろう
��Alice in Chains�#゙女の歌声の持つ支配の能力でその剣を支配しようとする
そうして成功したならば、その剣を真っ直ぐに目の前の貴方へと向けるだろう
59 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします[sage saga]:2012/10/06(土) 00:21:13.08 ID:LC12VTx+o
>>55
天から襲いかかった爪を受け止めたのは、死体。
妖精たちの体内には筋繊維に絡みつく形で無数の虫が張り巡らされ、寄生していた。
続々と足元の肉片と化した妖精たちが立ち上がり、淫らに、または幼子のようにアンデットに絡み付いていた。

傍らの妖精を掻き抱き、腐り落ちウジの湧く額に鉄仮面の唇を落とし。
おもむろにアンデットは竜を見据えていた。
竜を見据える鉄仮面の奥の双眸は、不気味すぎるほどに澄み切った紫色だ。

「流石にその抱擁は荒っぽいねェ?
 君のそのたくましい爪に幼気な少女を託してはおけぬよ。
 愛する者の為に戦う――美談だね、とてもとても私は偉い人間のようだねェ」

死霊と化し、もはや豊穣など見る影もない妖精のアンデットを操るアンデットはくつくつと笑う。
今の時点で、この森のこの地域は、��黒色�≠ノ染め上げられていた。
飛び散る血肉には既に魔虫の卵が産み付けられ、急速に蛆虫と蝿を生産していた。
蛆虫は大地の草の尽くを食み、そして成長し腐臭を散らし、森の隅々を犯さんと羽ばたいていく。

「――風は死せるよ。
 蠱陣、展開。��Born Again�=v

飛び回る無数の小蝿の動きに法則性が生まれ、空中で虫達は魔法陣を作り始めた。
同時に、大地を這いずる毛虫や蛆虫が大地に潜り込み、この緑の土地を土壌から汚染せんとしている。
もう既にアンデットの立つ場所は黒の土地と変わらないほどの瘴気を持つに至っている。

「ここが緑と思っているようだがねェ?
 もう、此処は黒だ。そしてその少女は黒の民であり、君のしている事は黒の民への暴力にほかならないね。
 ――さあ、返してもらおうか。略奪者。そして、待っていたまェよ? 美しい、お嬢さん[フロイライン]よ」

両手を広げ、無数の死せる妖精を従えて。
愛の伝道師は身勝手な愛を持って竜へと歩みを進めていく。
60 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします[sage]:2012/10/06(土) 00:32:13.71 ID:OOQVdmVio
>>57

びし、と。少女の袖口から見える右手に、血のような咒式が纏わり付く。
それと同時──この場を覆う冷たき気配も深みを増した。
少女の口調には、怒りの色が込められていた。
静かな、静かな。それでも確かにある、怒り。
普段は物静かな少女ではあるのだが、それはきっと、味方を、仲間を傷つけられたことに由来するのだろう。


「……エティは答えます。イスラは、モノではない」
「ならば──これからする行為は違法ではなく、また、なにより……」
「奪われた≪仲間≫を取り返すことは、なによりも我らが正義に基づく行為である、と」


──少女の、葡萄酒色の紅髪の色合いが変わる。
帯びた朱は静かに静かに抜け落ち、ロゼのような淡い紅色になり。そして──最後は完全に色がなくなるのだ。
瞳と身を纏う咒式以外は純潔を示すが如き、白き少女。

だが……それは、その一部は、少女ではなくなってしまっていた。
咒式のまとわりついた少女の右手。その部位は、少女の姿から思わせる細腕などではなく。

鋭き五爪を杭のように生やした、白き怪物のような右腕となっていた。

紅い咒式はまるで異形の血管であるかのように腕の中や表層を蠢き。
体内から吐き出すかのように、腕の周囲には紫電がぱりぱりと迸っていた。

す、と少女は右腕を女へと向ける。
そこから──まるで開戦の合図であるかのように、妖艶な刺青の掘られた肢体へと紫の雷が放たれた。
61 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします[sage]:2012/10/06(土) 00:36:34.31 ID:OOQVdmVio
>>60
/安価に>>58も追加してください、申し訳ない……
62 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします[sage]:2012/10/06(土) 00:37:33.52 ID:bLjZ7xYvo
>>58
セレナーデが剣を支配しようとするならば、考慮に入れることは幾つか有る
その剣の意思に勝つ必要がある、剣の魔翌力に打ち勝つのであればその剣を手に取ることも出来るであろう
だが貴方の魔翌力が外的に剣という物体のみに作用するのであれば剣を無理やり手に取ることも可能だ

そしてその剣の特性、支配できたとし、その剣の特性が生きているならば持ち主が卑怯な行動をとった場合に限り
その剣は振りぬくことすら出来なくなる

全てはその剣を持つ持ち主の行動次第、という事であり

/この大剣少々面倒な設定つきなのです……
63 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします[sage]:2012/10/06(土) 00:40:28.04 ID:bLjZ7xYvo
>>61
/今は気絶中ですのでお構いなくです!
64 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします[saga]:2012/10/06(土) 00:41:00.20 ID:xTtcmADW0
>>59

「・・・」

 黒に染まった緑の大地に、鷹竜の目からは涙がこぼれた。
 そして腕に掴んでいた妖精の少女を、頭の上に乗せる。
 本当は一番安全な口の中に入れたかったが、それにはこの竜は少し小さく、妖精は少し大きい。

 これから行う強行策にはおおよそ、ここが一番安全な場所だろう。

「ヒュロロロロロロロロロロ!」

 ケツァルは嘶く。
 ここは既に黒の土地、風の魔法は使えない。
 ならば手段は1つ。

 己の肉体と力のみで、あの悍ましき者を叩き潰す。

 わずかに空から滑空し、一気にアンデッドの前へ突進する。
 纏わりつく死体など気にせず、ただ単純に力押しで進む。

 陽性だった者達の体液で羽毛が汚れ、数多の虫は羽毛から入り込んでケツァルの肉を食い破る。
 それでもこの竜は突進をやめない。

 全てはこの邪悪なものを倒す為。
65 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします(関西地方)[saga]:2012/10/06(土) 00:44:50.92 ID:u7UgnKNNo
>>60>>62

肌を撫でる冷たい感触、頬に触れる殺意の香り
それは紛れも無い本物の怒り、彼女の身体の底を疼かせる
核に集まる充血するような感覚はきっと、高揚にもにた昂ぶりなのだろう


「良い答えね、百点あげたくなっちゃう
でもねエティ正義を行使するなら覚えておかなきゃならない事もあるの」

それはね――――――

「正義を行使できるのは本当に力があるものだけってこと
力の伴わない正義派単なる睦言に過ぎないわ、寝室で殿方に語るしか能の無い夜伽話
ならどうしましょうか―――自分の正義を貫くために、貴方は一体何をするのかしら」


彼女の両手が一つに重なる、それはまるで肌を寄せ合う恋人たちのようでもあって
すぅ、と溶けた吐息の形を、その手はなぞって、ほのかな憂いに湿らせるのだろう
それはただただ果てない慕情のような、恋慕にも似た怠惰な行為で

彼女は剣を廃棄するだろう、剣を支配するには、既に剣を支配している力を乗っ取る必要があるのだ
そんなことに力を使っている余裕も隙もない
――――――それほどまでに、眼前の少女は、強い決意を携えていた


「足りないわよそんなものじゃ!私の野ざらしの体に傷一つ付けることできないわ!
貴方の思い馳せるイスラは私の体に傷をつけた!この肢体を自身の意思で傷つけた!
貴方にそれができるかしら、イスラを超えて、私を倒すことができるのかしら」


震える夜空、彼女の唇が更なる形へと姿を変える、細い喉がはちきれんばかりに震える
空間を支配する彼女の歌声、紫の雷を一瞬でかき消してしまうほどにその力は激しい
安易な飛び道具はそれこそ彼女に傷一つつけられないのだろうか

彼女は眼前に右の手を向ける、整った小さな横顔を、その手にそっと寄せて
途端空中に魔力が集まる、数秒後衝撃と共に空から雷が一筋落ちてくるだろう
貴方の紫の雷に対する意趣返しといったところか

/>>62剣の特性把握です!
66 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします[sage saga]:2012/10/06(土) 00:52:24.68 ID:LC12VTx+o
>>64
「ははははっ……、中々に紳士的だ、君は。
 そんな気高い姿も、優しい姿も――たまらなく穢したくなってくるねェ?」

仮面の口元をがちりがちりと噛みあわせながら、アンデットは笑い声を響かせる。
純粋にすぎるほどに輝きを持つ紫色の瞳には魔力が宿り、声色には吸引力すら感じさせる魔的な響きが篭っていた。
年月をどれだけ死に続けているかはもはやこのアンデット自身ですら覚えていないが、少なくとも並よりは遥かに長い。
だからこそ、伯爵位を持ち、エルダーの称号を得ているのだから。

「ああ――そんなに、そんなに情熱的にアプローチを駆けてくれるとは、嬉しいよォ!
 さあ、さあッ! 私の胸に飛び込んできておくれ、私の王子様よ! 安心しろ、恐れるな!
 君は今、私の抱擁を受けるために生きている! さあ、私の胸に杭を穿て、その意思で私の心を射止めてみせろ!
 愛しているよ、名も知らぬ鷹竜様よ――!」

だが、その膨大な魔力は、鷹竜に大して敵性の意思で放たれることは無かった。
鷹竜の嘴は死霊の腹部を貫き、貫通していた。
しかしながら、気がつくことだろう。
この死霊の肉体は8割方ハリボテのような代物でしかなかったということに。

「痛かったろう、辛かったろう、苦しかったろう、憎かったろう?
 もう、そんな思いをする必要はないのだァ。
 私が、君も、君の救おうとした少女も恋人にしてあげるから、皆で一緒に幸せに暮らそう。なァ?」

鷹竜の翼をへし折るかのような強い抱擁をアンデットは鷹竜に向けてしようとする。
同時に、周囲の吹き飛ばされた妖精の死体達も壁のように押し寄せ体を貫通している鷹竜をそのまま抑えこもうとするだろう。
体内からは無数の毒虫が這い出し、傷口から体内へと潜り込もうとしていた。
67 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします[saga]:2012/10/06(土) 00:59:07.63 ID:DqGLcrEDO
>>62>>65

「────そう」


≪雪ノ女王≫──その異形の腕のことを、異形を呼び出す己が力を、少女はそう名付けていた。
その異能が、異形が。己の何を犠牲にし、犠牲にし続けているか。
──それはまだ、語られることのない物語であった。


怒りや憎悪の感情は、波が引くかのようにそっと少女の中から薄らいでいっていた。
代わりに彼女の中に満ちていくのは、氷のごとき冷静さと、雷のごとき鋭き殺意。


ひゅう!と風を斬り、少女が動いた。
弾かれるかのように翼を空に打ち付け、引き絞られた弓のように少女は女へと近づこうとする。
ばちり、と。少女が元居た場所に、雷撃が堕ちた。
だがそれを彼女は意に介さず、振り向くこともせず。

──少女が距離を詰める度。感じるだろうか。
火傷を負いそうな程に冷たい空気が、少女を護っていることを。

少女が女へ向け、右腕を振るう。
女の何らかの行動により距離が離れてしまえば、その攻撃はナイフのごとき氷柱を女へと生み放ち。
距離が詰められたままなら──凍てつきそうな気配を纏った異形の爪が、女の身体を、腕を、あるいは胴を切り裂き、朱へ染めようとする。

/携帯からー
68 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします(関西地方)[saga]:2012/10/06(土) 01:11:55.86 ID:u7UgnKNNo
>>67

早い、と彼女は感じた、彼女の計算より早く相手の接近が彼女へと��来た��
彼女自身の戦闘能力は酷く低い、故に防壁としての被衣があったのだが
先の戦闘でソレを失ってしまった、ならば―――とるべき手段は限られている


「……そんな冷たい表情してちゃ、勝利なんて掴めないわよ
感情は力よ、誰がどう言っても私はそれが正しいことを、知ってるんだから
感情があるから唄は響き、感情があるから唄が力を持つの」


距離はどんどんと短くなる、ほんの少しの猶予も無い
彼女の口から零れ落ちた旋律、ひどく短い吐息のような断片で
唄と呼ぶにはおぼろげな、花びらのように可憐な一句

それでも彼女の力を行使するには十分であった
彼女の持つ支配の能力、それを直接彼女へと接近する少女へと行使した
まるで地面に打ち付けるように、身をその場で固定しようと能力を扱う

だが完全に動きを止めるには時間が足りないだろう
彼女の狙いは動きの遅延、彼女へと刃が届く時間を遅くしようとし
成功したならば、貴方を飛び越えるように、彼女の身が飛び上がるだろう

一つ大きく前へと踏み込むと接近する少女の頭を、右手で軽く跳ねて
内股で貴方を飛び越えるように後方へと回り込もうとするだろう
折り重なった太ももはスズメバチのタトゥーを揺らした


「単身で黒の大陸に攻め込んできたんだから、これぐらいの覚悟できてるよね?
死ぬほど痛いけど……!!我慢しなさい……!!」


張り裂けそうなほどに喉を振るわせる、地面へと着地しようとしながら新たな歌を育む
瞬間、少女の上空に黒の魔力が収縮していることに気づくだろうか
黒の大陸に満ちる、瘴気のような負の魔力、それを貴方の頭上で集めているのだ

もし少女がその場でもたもたしていると、それが叩き落されるだろう
掻き毟りの力を孕んだ、瘴気の固まり、触れてしまえば削ぎ落とされるように身をえぐられるだろう
69 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします[saga]:2012/10/06(土) 01:12:51.64 ID:xTtcmADW0
>>66

「グルルルル!」

 死骸に包囲され、肉厚で押しつぶされそうになる。
 鷹竜は完全に見誤っていた。
 怒りに任せて冷静な戦いを忘れた。

 無数の死骸に包まれる。
 ここで自分が朽ちるのはまあいい。

 だが・・・。

「キキキキキィイイイイイイイイイイイイイイ!!」

 鉄仮面へ向けて金切声のような叫びをあげた。
 それは明確な��拒絶″の意志。

 死んでも貴様などを愛さないという絶対の誇り。

 鷹竜は全身の力を込めて羽ばたき、死骸達を振りほどく。
 全身を虫に食い破られ、体は真っ赤に染まり血が滴る。

 そのまま鷹竜は森の聖域ともいうべき場所へと飛び立った。
 全身からの出血、既に虫は内蔵すら犯していた。

 おそらくこの竜は長くない。
 だがこのたった一人の生き残りだけは死んでほしくない。

 ケツァル、敗北。
 名誉を捨てた、しかし迷いも後悔も無き撤退だった。


//この辺で逃げさせていただきます!
70 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします[sage saga]:2012/10/06(土) 01:23:28.53 ID:LC12VTx+o
>>69
「――おや、ふられてしまったね?」

鉄仮面の奥の、決して揺らぐことのないガラス玉の瞳は煌めいた。
死骸を振り払い、天へと羽ばたいた半死半生。
それを見上げて、腹部に大穴の開いたアンデットは肩を落とした。

「その少女の事は君に託そう。何時か私が迎えに行くから、それまではね」

蟲が大人しくなり、これ以上傷を深くする事は無い。
しかしながら、蟲は体内の奥深くに潜んでいる為、全てを取り去るのは難しい。
命綱をこちらで握り締めながら、真綿で首を締めるようにここで助かるチャンスを与えるのは、この男が外道故か。
否、外道だからなどではなく、この男は心の底から死んで欲しくないし、幸せになって欲しいだけだ。

ただ、彼の愛は言うなれば愛玩動物や愛用の道具に向けるそれと同じもの。
愛する者がより美しくなるように肉を刻み、愛する者がより幸せになると信じて躾という感性で精神を裂くのだ。
妖精の少女リーフィとケツァルに呑気に手を振りながら、アンデットはうなだれて背を向けて歩き出した。

「――世界平和にはまだまだ遠いねェ?
 ラブアンドピース、それが世界を救うというのに、世の中はわからず屋だらけだ。
 ……さ、幼子たち。君たちは今日から私の家族で私の恋人で私の人形だネ。
 君たちは間違い無く幸福で、ここから先に行く場所は平和で満たされた場所だよゥ。
 愛に満ちた世界で、君達は私と伴にある。……さあ、返ってからじっくりと――愛してあげようか」

数十人の死体となった妖精と、無数の魔蟲を従えて、死霊の主は闇の土地から闇の土地へと帰っていく。
死霊の主は愛と平和を謳い、世界の為に戦う正義の戦士である。
彼の夢が叶うのは、一体何時になるのだろうか……。
71 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします[saga]:2012/10/06(土) 01:30:20.15 ID:DqGLcrEDO
>>68


少女は確かに、怒りを覚えてはいたのだ。
すぐ近くで倒れている天使は、少女は独りではないと、仲間がいるのだと教えてくれた存在であった。
そんな天使を──同族を、仲間が危うい目に遭っている中で、その要因に怒りを向けない程、彼女は非情ではなかったけれど。
それでも。急速に引いていく己の激情に関して、少女は疑問どころか違和感すら、抱くことはなかった。


「──否。感情が豊かなだけでは、勝利は出来ない」


初撃は互いに不発。
だが、さほど多いとは言えない少女の戦闘経験に基づいて尚、そのようなことは珍しくないのを彼女は知っていた。
問題はその後の追撃。名よりも荒々しい異形の為した現象は──空振り。


少女の声は、酷く静かだった。
地に伏せている天使の意識があれば、少女の言葉に驚くだろうか。案外、異を唱えるかもしれない。

ぴたりと、一瞬ではあるが少女の身体が止まった。
焦りや驚愕といったものは、少女の表情に一切浮かばなかった。
たん、と──敵が背後へ降り立つ気配を感じたのと、身体が動くようになったのはほぼ同時。


振り返り、異形の力を行使──咒式、雷。
先ほどよりも強く鋭い、無情な雷電。それがばちりと音を立て、小さな竜のごとき動きで女へ迫り……!


「ぅ、ぐ──っ、……っあ、あ────!」


その結果。少女は黒き魔力を幼き身体ですべて、受け止めることになった。
苦悶の声が、苦痛を堪える悲鳴が、夜の冷気を震わせ。
術の効果か。少女の服の至るところがずたずたに、強引に破いたかのように切り裂かれた。
その、裂かれた場所からちらりと見え隠れするのは──
衣服を這っていたのと同じ。まるで呪いを受けているかのように存在する、おびただしいまでの赤い咒式だった。
72 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします(関西地方)2012/10/06(土) 01:44:33.72 ID:u7UgnKNNo
>>71

目の前の少女に起きている��異変�≠サれは高すぎる力の代償にも思えた
だからこそ、か……負けたくないと小さく彼女は感じた
種族の違い、所属する大陸の違い―――そんな些細な違いなどではなく
純粋な、彼女の感情、何かを犠牲に戦う少女に負けたくないと思っているから


「あら……平行線ね、だったら無粋な言葉は無しにしましょう……!
結局は最後に残った方が正しいの、それなら貴方も分かってくれるでしょう?」


着地はほぼ背後本来ならば雷を回避できる距離ではない
しかしながら、彼女の能力は��支配�≠フ能力である
魔翌力が十分であれば、その速度ですらも彼女の意のままに操れるということだ

再び響き渡る歌声、ソレはどこか悲しそうな音色を孕んでいて―――
虚空へと焦がれる果てない思いを代弁するかのごとく瀟洒に響いていくだろう
やがて音色は力へと姿を変え、迫り来る雷電へと干渉を始める

雷電の速度を低下させると彼女の目の前の地面が隆起する
地面が板のようにめくれ上がり、壁のように出現したのだ
雷電を防ぐには薄い、だがそれでも威力を弱めることができる、そう狙って


「んぅ……くっ……あっ……!!駄目っ……んぁ、ぁぅ……」


雷の槍が彼女の右肩を貫く、焼け焦がれた上に傷跡は深い
鮮血が素肌に滴り落ちて、まるでインクを零したかのごとく彼女の裸体を濡らす
くしゃ、と足が崩れ落ちそうになる、人形のように細い両足が、折りたたまれていく

何とか立ち上がり、呼吸を整えようとするも、大きく両肩が上下する
ダメージは大きく、それによって刻まれた傷跡も深い
苦しそうに吐息を零す辺り、喉も限界に近いのだろうか


「……駄目よ……そんな咒式使ってたら……遅かれ早かれ死んじゃう……から
そこまでして、正義を行使するの―――それとも、何か他に理由があるの?
分からない、分からないわ……貴方達、白の者達が考えることが」


それはまるで吐き出すような、わめくような言葉の奔流
ソプラノの旋律がひどく弱弱しく揺れる、今にも崩れ落ちそうな砂上で傾く
一本の糸のような音色が、夜に解けていくだろうか
73 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします[saga]:2012/10/06(土) 02:07:00.59 ID:DqGLcrEDO
>>72


黒き種族。白き種族。妖艶な女。純粋な少女。
感情を賛美する女。感情を軽視する少女──。
所有物を巡り、或いは仲間を取り返そうと戦う彼女たちは、おもしろい程に正反対な性質を持っていた。
ここで出会い、力をぶつけ合うのは──何かしらの、巡り合わせなのかもしれない。


「が、……っ、」


女の魔力の為した業により、びくんと筋肉が痙攣する。
身体の内から、血管ごとめちゃくちゃに掻き毟られる痛み。
それは少女に纏わりつく冷気でもどうしようもない程に、激痛で。灼熱の炎に放り込まれたかと錯覚しそうなまでだった。
ぽたぽたと、中から引き裂かれた皮膚が鮮血を吐き出し、少女の服を、肌を、髪を斑に染めていく。


──だが、まだ戦いは終わったわけではない。
ごぼ、と喉の奥から込み上げる血ヘドの塊を地面へと吐き出し。
今にも倒れそうになる膝は、無理矢理に自分を誤魔化して、支えた。

──後一撃。耐えて、放てば。限界が、くる。
果たして仲間を連れて戻る余力があるだろうか。
そんなことを少しばかり考えたが、答えはまだ出せなかった。


「……騎士であるため、育てられた」
「護るため──国を、同族を、仲間を」
「──。エティは、答える。私は、私の居場所を、護る」
「それが出来るならば……命だって、賭ける」


──感情よりも深くに根付く其れを、人は「信念」とでも呼ぶのだろう。
だが……見方によってはそれは。白に染まる彼女は。
白の大陸の洗脳教育による、あわれな被害者──のようにも見えるのかもしれない。


「──我が身を依代に、我が命を供物に、我は乞い望む」


それは、戦いの終結を知らせる唄だろうか。
ずるりと、少女の右腕──異形の腕の咒式が蠢き。
二の腕程度までにしか変化していなかった腕の「根」がびちびちと、少女の鎖骨付近にまで伸び絡まる。
変化の拡大──それが何を表すのか。黒き彼女は、その予測がつくだろう。

そして、養分を得た植物が繁栄するかのように。
先ほどよりも冷たく、痛いまでの冷気が周囲に満ち。ばちばちと少女の周りに紫電が溢れ──
74 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします(関西地方)2012/10/06(土) 02:21:44.13 ID:u7UgnKNNo
>>73

莫迦らしい、と吐き捨てる事が出来たらどれほど楽であっただろうか
少なくとも、今の彼女にはその��信念�≠ニいう言葉の意味が理解できない
だからこそ、それほどまでに少女の可憐な身を動かす思いのわけを知りたいと思うのか


「そう、貴方は……命を��そんな事�≠フ為に使うのね
私には理解できないわ、自分の居場所なんて今いる其処にしか無いのだから
命さえあれば、どんなトコでだって、新しい居場所を作ることができるの」


真紅の瞳が揺らめく、ため息一つ零しながら


「やっぱり、平行線ね―――そう、言葉でなんか解決したくない
ねぇ、いたいけな少女の体に寄生して、命を削って、そうして生まれた力なんかに
負けるだなんて、絶対に嫌!」


謳歌する戦いの賛歌、空間を轟かす英雄の唄
喉から血が出てきそうなぐらいに、彼女は高らかに唄う、その声が届かずとも
きっと貴方と彼女は平行線上に存在する二つの極点なのであろう

その思いも行動も永久に重なることのの無い世界に生きていて
だから、その二つが重なる零の境界線を、辿るように彼女は歌う
やがてその声は空へと上り、永遠の詩となって響き渡る


「さあ、これで……終幕よ!!」


彼女の攻撃は一つ、貴方の頭上でエネルギーが収束していく
雷を落とす、ただそれだけの行為―――けれどもダメージが蓄積している身ではそれで十分であろう、と
振り上げた右の腕、その腕越しに貴方の姿を眺める

少女を蝕む根を絶とうと、彼女の右手が振り下ろされる
雷が夜空を切り裂き、一直線に下へと落ちてくるであろう
衝撃に身が吹き飛ばされそうになる、振り下ろした右腕を支えるように左手で握る

ぎゅぅと閉じた瞼、伸びた睫が素肌に濡れた
75 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします[saga]:2012/10/06(土) 02:39:26.75 ID:DqGLcrEDO
>>

「理解されなくていい──」
「同情も、軽蔑も、恋慕も、憎悪も……!」
「全部全部、私はいらない……不要な重みになるだけ!」

「──絶望せよ!我が絶対なる主はそなたの全てを受け入れる!」


──どん、という低い音が響く。
放たれるは、吹雪というより嵐に近い、現象の奔流。
ただ一箇所を狙い解放された異形の力は──炎さえも凍てつかせる冷気と、それを糧にする龍の如し紫雷が
同時に、女の肉を焼き凍らせ引き裂き食いつくそうと、黒き妖艶へ殺到する。


だが──それを放った彼女もまた、無事ではない。
根を断つように打たれた雷は、再び少女の身体をびくりと跳ねさせ、きゅ、と海老のように背を仰け反らせる。
悲鳴は、零れない。それほどの苦痛。
白かった翼は堕天のそれとは違う、焦げたかのような黒墨がいたるところに染み付き。
女が嫌う異形の腕もまた──中からの痛みと外からの痛みにより、タンパクの燃える嫌な臭いを溢れさせていた。

流石の少女も、この一撃に堪える程強くはなく──
すぅ、と異形の腕が細く白い、柔肌を持つ普通の腕へと変わっていった。
そしてそれと同時に、少女の髪が徐々に紅を取り戻していった、が──。
未だ、少女の腕や服には咒式が蠢いていた。
少女は解き放たれたわけではない。ただ、一時的に異能を解除しただけなのだ。

かくり、と──少女は膝をつく。
意識はかろうじてあったが……今の状態では、何も出来ないはずだった。
76 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします(関西地方)2012/10/06(土) 02:47:45.16 ID:u7UgnKNNo
>>75

声の無い音が漏れる、限界を迎えた喉は一呼吸する度に焼けるように痛む
それでも紡ぐ音色は貴方の思う真実を叩きのめそうとする悪鬼の叫びにも似て
消えそうな掠れそうな言の葉を、強く紡ごうとした

奔流が彼女へと向かう、爆ぜるような現象の爆発は、巨大な衝撃を生み
彼女の表情すらも読み取れない勢いで、彼女を飲み込むだろう
そうして奔流はぶつかる――――――そしてその跡には、何も残っていないだろう

やがて、どこからか歌声が聞こえる、終幕を告げる静かな歌声が
響き渡るソプラノの音色、五線譜に描かれない特異な巡音
けれどもそれは、どこか悲しげで、それでいてハッキリとしているだろう

やがて歌声は消え、彼女は去っていった、ということを理解できるだろう
痛みわけに近い形ではある、けれども貴方は大切な人を守れたのだ
―――その意味では、貴方の勝利と言っても差し支えないだろう

響く夜の騒ぎは深く、曇天の空には月が見えないくらいで
それでも響く時の歌声は、沈み行く夜に終わりを告げるのだろうか


/お疲れ様でしたー長時間ありがとうございました
77 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします[saga]:2012/10/06(土) 02:57:57.04 ID:DqGLcrEDO
>>76

──ちりん、と。少女の片耳を飾る銀色が、月光を弾いた。
少女の髪に色が戻るのはひどく緩やかだった。
今は、白か淡い桃色か判断がつかない──その程度。
弾かれた月光は、少女の頼りなさそうな白髪へすぅとのまれていったけれど。
それは、少女が喪った何かを哀する、天空からの気まぐれな贈り物なのかもはしれなかった。


──追撃が来なくことから、少女は女が去ったことを知る。
痛みは、髪に色が戻るよりも早く引いていた。……地に触れた実感は、最早なかった。


イスラ、と。少女は倒れる天使を強く揺さぶった。
力加減がわからないのか──それは少しばかり痛いかもはしれなかった。
朦朧としている意識の中で、少女は同胞に、共に帰ることを促す。
休息が必要ならば、少しばかりの休息を取り。そうして、少女たちは白の大陸へと帰るのだろう。

/お疲れ様でした!
78 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします[sage]:2012/10/06(土) 03:14:11.38 ID:bLjZ7xYvo
>>77

確かに声が聞こえた、何処かで聞いた声がした暗い暗い闇の中にその光が差した

天使の瞼が開いた時、目の前にには何処かで見た顔、そして声

「そうか…エトワール────」

まだ死ぬには早過ぎる、こうやって……迎えに来てくれる
そんな大切な仲間がいるのだから、そう、私は独りでは無いのだから



そして彼女等、白の騎士は白の大陸えと翼を広げ何時かは羽ばたくのだろう
エトワールの傷のついた姿を黙って見て彼女は一言呟くのだ

「ああ、帰ろう──」


私達の居場所へ────。

/お疲れさまでした!
79 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします[sage]:2012/10/06(土) 20:06:33.89 ID:bLjZ7xYvo
>>77
鮮血の紅が四翼を染めて、左の手甲を貫く銃痕、火に焼けた肌
彼女の身体を揺さぶるたび、肌に触れる長髪は小波の様にイスラ自身の体を摩り
地に流れる紅へと触れる、その身体はまるで命の無い人形の様に力ない。

しかしエトワールの小さな手には、きっと。
イスラの体温、その鼓動が伝わる “生きている” そう感じさせるものがきっと──。
そしてイスラにもそれは届いていているのだろう…エトワールの手から伝わる暖かいものが…きっと。

「──ンッ…」

うなされる様に零れた言葉と共にイスラの身体がぴくり、と動く
そして閉じた瞼は開かれ、イスラの白い瞳の中にワインレッドが写りこみ

「……エ……ト…ワー…ル……?」
「私は……そうか…」

状況を把握出来ていないのか、その言葉は何度も途切れるが
次には辺の景色を視界に入れたようで。

「あの女は……?何故お前がここにいる…?その怪我は──?どうし……   ッツ──」

言葉を連ね起き上がろうとするも、その痛みが走り
自身の身体を見て溜息を吐く

/置いておきます!
80 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします[saga]:2012/10/06(土) 21:36:49.44 ID:CwTbkeOK0

――深海の森、草原にて

「カロロロロロロロロ・・・」

 傷だらけのドラグリフォンが舞い降りた。
 腹には呪いともいうべき数多の虫が寄生し、
 全身から流れる血が羽毛のように柔らかい竜鱗を赤く染めている。

 息も絶え絶えに、草原に舞い降り。
 首を下して守ってきた妖精の少女を地に降ろした。

 この若い鷹竜の名はケツァル。
 黒の者からの戦闘に敗走し、命からがらこの少女だけを乗せてここへ来たのである。
81 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします[sage]:2012/10/06(土) 22:31:13.39 ID:bLjZ7xYvo
>>80

“嘘──戦争は終わったはずなのに 戦争は終わったはずなのに──”

「なんで……」

風吹く緑の海、銀光差し込むその草原、一つの影が空を見上げて呟いた

深く被ったフード、浅い茶色のクロークを羽織る者
声から察するに女性の様ではるのだが、その素顔はフードの闇に隠れていて

「────あれは……?」

その中に空から舞い降りるドラグリフォン、ひとつの影はその鷹竜の方へと足を運ぶ
そしてその傷ついた2匹の方へと近づけたならば影は一言

「あの………?その怪我どうしたんですか……? 早く手当しなきゃ……」

そう呟き、更に貴方達の側へと歩み寄ろうとするだろう
クロークを羽織った影を見てその者達は怪しく思うのだろうか

そしてもし貴方が魔翌力の類を感じ取れるならばその影から2つのマナの流れを感じることが出来るであろう
その緑の魔翌力と────もう一つ

黒の魔翌力を
82 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします[saga]:2012/10/06(土) 22:43:53.45 ID:CwTbkeOK0
>>81

「!」

 突如現れた気配にケツァルは身構え、
 妖精の少女を庇うように前に立ち、目を光らせて威嚇する。

「クルルルル・・・!」

 しかし目を細めて、突如現れた来訪者をまじまじと見つめると。
 すぐに警戒を解いて、翼を畳んだ。

「ヒュロ・・・」

 それから頼み込むように頭を下げて、
 妖精の少女を嘴で押す。

「・・・」

 妖精の少女の目に光は無く、脚の腱が切れて立てないのかヨロヨロとふらつき、
 やがて転んで這いつくばってしまう。
83 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします[saga]:2012/10/06(土) 23:01:35.19 ID:DqGLcrEDO
>>79

イスラ、イスラ、──それは今にも消え入りそうな声で紡がれる言葉だった。
きっと、そうしていなければ彼女自身が己を保っていられなかったのだろう。
──眼前の相手の名を呼ぶエトワールの表情は、頑なというよりはむしろ感情が抜け落ちてしまったかのようなものだった。
そんな表情のまま、まるで相手のことが心配なように振る舞っている彼女の姿は……他者から見れば、ひどく虚ろなものだったに違いない。

イスラ、イスラ、──彼女は呼ぶ。
呼びながら、今にも消えそうな糸を離したくないかのように、イスラの身体を強く揺さぶる。
体温や鼓動だけでは不安なのか。或いはイスラの命の気配が伝わっていないのか。
エトワールはイスラが明確に生きているとわかるまで──目を開き、声をあげるまでは彼女を揺さぶり続けていた。


──イスラが目にしたエトワールの姿は、普段の彼女の姿とは少し違っていた。
いつもは蕩けるように紅いワインレッドなのに──今は、水で薄めてしまったかのように、ただ淡い。
それは、少女が今傷だらけであることと関わりがあるのだろう。


「……エティは報告します。イスラと交戦していた者は撤退。」
「この傷は、黒の種族と戦った時に負ったものです、と──」


──その声に込められた感情は、ひどく希薄だった。ない、と言って差し支えないほどに。
エトワールは普段から、感情が豊かな方ではなかったが──これほどまでではない。
髪の色と一緒に、心の色をも抜け落ちてしまった……そんな気が、するだろうか。

白の大陸で最後に会った時は、こうではなかった。
ならば──先ほどの戦闘で何かがあったと判断するのが妥当、だろうか。

/返しておきますー
84 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします[sage]:2012/10/06(土) 23:08:52.58 ID:bLjZ7xYvo
>>82

「大丈夫……私は貴方を傷つけたりはしないから……」

鷹竜の威嚇に影は怯える様子もなく進める足を止め
紡がれる言葉は威嚇される事が分かってかの様に静かで落ち着いた声

怖く無い、そう言えば嘘になる、だけど影は分かっていたのだろう
外套に見を包み、その姿を見せない自分を外敵であると認識するであろう事を

「大丈夫……大丈夫だから…」

そして鷹竜が翼を閉じたその時、影はゆっくりとまた足を運ぶであろう
頭を下げる鷹竜の行動には、彼自身が痛みを訴えていると思っていたのだが

「貴方…ひどい怪我をしてる………その身体じゃ危険過ぎる……」
「…?何……?何処か痛いの……?」

「──────え…っ…」

嘴で差し出された者を見て、影の声は静かな声から一転し、深刻な音が交じり

「……妖精……?これは……  酷い……なんで……こんな…」

足元へと這いつくばる妖精を見、影はその場にしゃがみ込みその妖精をそっと抱き上げようと腕を伸ばすだろう
灰色の肌を持つ影の腕、その腕が妖精の方へと向けられる
もし抱き上げる事に成功したならば、その腕は優しく妖精を抱擁し、その身体を優しく撫で貴方の方を見るてこう紡ぐ

「何があったの…?こんな事になるなんて……?」
85 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします[saga]:2012/10/06(土) 23:37:14.45 ID:CwTbkeOK0
>>84

「ヒュロロロロロ・・・」

 ケツァルは若い竜故、言葉を解せない。
 妖精の少女も虚ろな目で見返すばかりで、言葉を失っているようである。

「・・・」

 妖精の少女は、何も言えわず。
 ケツァルの傷口の1つを指さす。

 そこからは。
 黒の魔力を孕んだ虫がコロリと落ちた。

 肉をどれだけ貪ったのだろうか。
 蛭のようなそれは丸々と太り、地面をコロコロと転がった。
86 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします[sage]:2012/10/07(日) 00:16:57.93 ID:cWVgL01qo
>>85

「そう……あなた言葉がわからないのね……」

灰色の腕に抱擁された妖精は今にも消えてしまいそうな程衰弱しているようで
震える身の鼓動が影の胸の中へと刻まれる

言葉を理解できてはいない様子をみせる鷹竜には影は気を落とす様に
妖精の方へと目を落とす

「──?」

そしてその妖精の様子を見てみれば、ある場所に指を指を指していた
その方向へと再び目を向けてみれば────影は酷く絶望的な状態を目にする事になるのであった

「──────え…‥これは…っ! まさかっ…早過ぎる…‥!もうこの大陸に……」

その虫から感じる魔翌力は黒、自分の体に流れる魔翌力である故、痛いほど理解が出来る
フードの奥の素顔は解らぬが、きっとその表情は歯を食いしばるほどの怒りを、或いは怯えを見せていたのかもしれない

「この子を必死で守ってくれたの…? こんな酷い傷を負ってまで……貴方はこの子を……」

そして影は気付くのだ、鷹竜が守ってほしいもの、その言わんとしている事を
何度も頼み込むように頭を下げる鷹竜の意思を

「……そう…分かった……この子を救って欲しいのね……。」

何かを理解したかのように影はその妖精をそっと地面に寝かせ、妖精の腱の方へと手をかざし、
続く言葉を紡ぎだす、何処の言語であるのだろうか、何を言っているのであろうか、その言葉は流れるよう発せられ

「少し痛いけど……我慢してね…」

手をかざした場所──その腱の位置が ぼうっと光りに包まれた、緑に輝く光りはその妖精を包む
そして妖精に一瞬の痛みが走るであろう、身体の組織が疼く感触
その活動が活発になる感触、その様子はただ妖精を苦しめているようにしか見えないかもしれないが──

その魔法は傷口を癒す──勿論、その魔翌力を妖精が拒まなければの話ではあるが
87 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします[saga]:2012/10/07(日) 00:30:27.02 ID:AKtFAHWJ0
>>86

 妖精の少女が痛みに顔を引き攣らせた時、
 鷹竜は一瞬目を見開いて威嚇するような声を出すが。

 妖精が大人しく、その治療を受け入れているのを認めると、
 すぐに嘴を閉じて首を竦める。

「・・・」

 しばしの後、妖精の少女の外傷は癒された。
 ケツァルは礼を言いたげに頭を下げる。

「・・・」

 しかし、どんな魔法でも心の内の傷は癒せない。
 妖精の少女は傷が感知しても、まるで糸の切れた人形のように項垂れていた。

「ヒュロロ・・・」

 鷹竜は困ったような声を出す。
 言葉のわからぬ自分がもどかしい。

 この少女を救ってくれた礼を言うことも、
 国境近くで起きた惨状を伝えることもできないとは。

「ヒュロロロロ」

 鷹竜がフードの少女にお礼に何かできることは、と言いたげに。
 その鋭い目でジッと見つめていた。
88 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします[sage]:2012/10/07(日) 00:56:13.96 ID:cWVgL01qo
>>87

妖精を包む光はまるで星の如く激しく輝きやがて消えてゆく

「………体の傷は癒せるけど……後はこの子しだい…‥」

元の姿を取り戻した妖精を見て、その傷口が消えた妖精を見て
まるで人形の様に生気のない妖精を見て──。
溜息と共に出された言葉は自身の無力さを嘆くものなのであろうか

そして影は地に項垂れる妖精を抱き上げ、そっと鷹竜の方へと足を運び

「────────────────── (何があったのか分からないけれど、この子を守ってあげて)」
「──────────────。 (貴方の事を心配していると思うから、この子に帰る場所がないのなら)」
「────────。(貴方が彼女の家になってあげて──。)」

今まで言葉として出していたモノとは違う、音を出す
そしてその時、まるでその言葉に反応したかのように一迅の風がその場へ吹きつけた

深くかぶっていたフードは風に煽られそ隠していたものを露わにする
横に伸びる長い耳──、銀光見せる長い髪、そして黒の大陸を思わせるような灰色の肌

しかし彼女はエルフ──森と共に生きる者、森に生きる他の生命の言葉ぐらいは知っている
この言葉が通じるかどうかは解らぬが、元より通じぬのだから

試すのも悪くはないと、そう思う

そしてその風により自身の素顔を見せてしまったと気づいた彼女は慌てて後ろを振り向き
再びフードをかぶろうとするだろう
89 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします[saga]:2012/10/07(日) 01:10:57.87 ID:AKtFAHWJ0
>>88

「・・・カロ」

 この若い竜は言語はわからない。
 しかし語られた森の言葉の意味は解したようで、こくりと頷くと。
 妖精の少女を咥え、背に乗せた。

 体の生傷は未だに癒えていないが、この程度で死ぬほどドラゴンは弱くは無い。

「!!」

 そして一陣の風が彼女の肌を露わにした時、
 ケツァルは目を見開いた。

 そこに居たのは森の民、しかしはっきりとある黒の証明。
 自分の住処を侵し、この妖精の同族を皆殺しにしたあの者と同じ黒・・・。

 しばしの、沈黙の後。

「ヒュロ」

 ケツァルは穏やかに一声鳴くと、
 もう一度頭を下げ森の奥へと飛び去って行った。
90 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします[sage]:2012/10/07(日) 01:20:46.69 ID:cWVgL01qo
>>89

静寂の間を只々風の音色が通り過ぎ、影は貴方へ背を向けたまま
その瞳が見るのは空ではない、風になびく緑の草

影の中には様々な思いがあるのだろう
だがその想いは誰にも伝わらない、ただ力なく首を下に傾ける影の姿がそこにはあった

「……」

そして黙ってその場から立ち去ろうとした間際、後ろの方から聞こえたのは穏やかな鳴き声で──

「………ありがとう──。」

鷹竜が去ったその場に影の言葉が音弾む


彼女は緑の加護をうける者、森の住みし一人のエルフ
彼女は黒の魔翌力を持つエルフ────

緑の戦士の一人であり、緑を愛す一人である




「私は許さない……黒の所業を…‥私は許さない……あの大陸を────。」

彼女の物語は再び、幕を開けたのだ。
91 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします[sage]:2012/10/07(日) 03:40:03.24 ID:cWVgL01qo
>>83

「報告……撤退……」
「戦った時に負ったもの………」

吐息の余韻が残る中、俯きその傷を眺める中
理解の出来ない言葉の羅列を辿った様にエトワールの言葉を自身の言葉で追い
視線の先に写る左手の指を数回開閉する
その姿は夢でも見ていたかの様な、自分の存在を確認するような
何故こんなにも違和感を感じるのだろうかと──。


「エトワール…」

そして再びその目線はエトワールの方えと向けられる
すがた、かたちは変わっていようとも今目の前にいるのは確かに彼女
騎士として誓いを立て、感情の起伏は豊かではないけれど、
それでも心は意思は伝わってきた、そう…エトワール

(では何だこの違和感は…… お前は誰だ…… 本当に……エトワールなのか…)

「エトワール……」

(何も感じない、何が感じられない……有るべきものが感じられない……? 何があった…?)

「エトワール、もう一度聞く……何故お前がここに居るのだ…?」
「危険である事は分かっていたはず… 何故だ…?」
「何故ここへ来た…?」

暗雲に隔たれた意識の中で聞こえていたその声が頭に過る、何度も何度もイスラと呼んだ声
エトワールがイスラと呼んだ声──
それは木霊のように、ひどくその言葉だけが焼き付き脳裏からはなれずに


『…お前に…何があった…エトワール』

そして最後のイスラの言葉は、小さな小さな音
まるで行き場の無い憂鬱の如く宙に零れて分解し──
イスラの白き双眸は、目の前にいる“マルアハ”を見て逃さずに
92 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします[saga]:2012/10/07(日) 12:23:15.73 ID:lPqUSP2DO
>>91

まるで、「普通ならこうするから、そうしている」かのように。
まるで、感情を持つ生き物のマニュアルに沿って行動しているかのように。
エトワールは、機械のようにイスラの「心配」をしていた。

見た目は普段の彼女とは少し違っていたけれど、それでも「ソレ」はエトワールだった。
傀儡になっているわけでもなく、魂が抜けているわけでもない。
彼女は──イスラと今共に居る少女は、紛れもなくエトワールの意志で行動を取る、≪エトワール≫という存在だった。


「エティは答えます。──危険だから来たのです」
「イスラは以前、エティは独りではないと……仲間がいると言ってくれました」
「それは、イスラに取っても同じことだとエティは思いました」
「だからこそ、独りで黒の大陸へ赴いたイスラを追ってきたのです」
「……生きていてくれて、よかった」


──最後の言葉を紡ぐ直前。僅かに髪へ赤みが戻った。
ひどく薄い、ほとんど白の髪から、赤みがかった白へ。
そしてその赤が戻れば──紡がれた言葉には、僅かばかりの感謝の欠片とでもいえるものが、宿っていた。

だが、きっとまだ疑問は途絶えない。
エトワールは依然として淡々と言葉を紡いでいたし、なにより──。
なにより、衣服も肌も、翼さえもずたぼろの状態で、痛がる素振りさえ見せないのだ。
我慢している様子すらない。──痛みを、感じていないのか。


「エティは問います。──何が、とは?」


自身の変化を、認識していないのだろうか。
或いはその変化が当たり前すぎて、疑問に思わないのだろうか。
数日前に髪を切った女の子に、友達が「どうしたの?」と聞いても、短い髪が当たり前になった女の子が少し首を傾げるかのように
エトワールは変わらない表情を、じっとイスラへと向けた。


/返しておきます!
93 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします2012/10/07(日) 14:27:27.28 ID:Jzgc4+dIO
>>92

「危険だから……」
「独りではない……仲間……だがらこそ………」


思い描くのはエトワール、菓子屋の前で佇んでいた姿、自らの意思で誓いを言葉を、意を伝えていた姿
他にも様々なイスラの中にいたエトワールと言う存在を思い描いているのだろうか

何度も何度も、そのコトバを言いなぞる
独りではないと言うコトバも、仲間んというコトバも────掴み取れぬ虚無。
霧降ったような瞳でエトワールを見るイスラには、きっと目の前の自体を理解できてはいない
その様な心境が痛みに耐える表情に交じり浮かんでいるのだろう


「────!」

イスラは只々その言葉を聞いていた、エトワールの姿をその目で確りと見ながら
そして、最後の言葉が紡がれた時、その白に薄っすらと赤みが宿った時
何か懐かしいものを見つけたかの様にイスラの白の瞳が大きく見開かれ

「──ああ!そうだ!」

その上半身を前えと仰け反らせエトワールの方へと、その手を狭い小さな肩の方へと持って行こうとするだろう
そしてその指で肩を掴めたならば、箱の中身を確認する様に何度か大きく揺さぶり


「私は生きている──!傷口から確かな痛みを感じる──!」
「そうだ!私も独りでは無い──!皆がいるからお前が居るから、仲間が居るからここにいるのだ!」
「お前をその様な目に合わせるためにここに来たのではな────」


遠い場所で懐かしい何かを見つけた様に、自身の中にある何かをその場所に見つけたように
激しく強く言葉を噛み締めそう叫ぶ
揺さぶる中、その肩を握る手の力は強くなっていくだろう、そしてその揺れも大きくなるのだろう
冷静では無い様なイスラの行動

「クッ────」

それはイスラ自身に傷の痛みを感じさせ、その苦痛交じる表情とともに止まり
そして同じく傷を負っているエトワールにも普通であれば痛みは走るのであろうが
94 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします[saga]:2012/10/07(日) 19:24:43.13 ID:S+KqmlERo
>>93

「エティは疑問に思います。その様な、とは……?」
「傷だらけになることも、重症を負うことも、騎士として──」
「いえ、騎士になると決め、軍部に所属することを決めたその日から、覚悟していたことです」
「むしろこの負傷はエティの弱さが原因。なので、イスラが怒ることはないと考えます」


激しく揺さぶられ、強き想いをぶつけられるエトワール。
しかし返した言葉は、やはりどこか機械的なものだった。
エトワールはセレナーデの術式により身体の内側にも傷を負っている──痛くないはずがない。
それでもやはり痛みを示すことはなく、それどころか少女はイスラの左手の銃創を見て、言うのだ。


「──エティは進言します。イスラは、ひどい怪我をしている」
「それに、ここも安全とは言えない以上、白の大陸へ迅速に撤退をするべきです、と」
「飛べないのであれば、近隣の港町へ密かに赴き、青の大陸へ一時避難を」
「青の大陸からならば、白の大陸行きの飛空艇もあるはずだと判断します」


自らの心配ではなく、あくまでも相手のことを気にかけるエトワール。
先程からの態度と比べれば、確かに感情は一匙程度見え隠れするかもしれないが──
以前と比べてしまえば、まだ足りないのかもしれない。
だが彼女が告げた言葉は、状況と照らし合わせれば合理的だった。
このまま彼女の異常を追求するのは構わない。しかしいつまでもそうしていることは出来ないのだ。
此処は黒の大陸。不穏な輩が跋扈する闇の世界。この場所では、彼女たちは異物なのだから。

──すぅ。
また、少女の髪が赤みを帯びる。
それでもまだ、かつての葡萄酒色とは程遠かったけれど。
95 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします[sage]:2012/10/07(日) 20:58:23.04 ID:cWVgL01qo
>>94

軍人として戦場に赴きそれに寄り死と言った結果に成ろうとも、それは覚悟の上でとった行動
イスラがこの場所に来たように、エトワールもきっとそうなのだろう

しかし同じ軍人のエトワールに対してのイスラの行動は、それを分かっていない様にただ冷静では無い言葉を吐く
手に力が入りまるで自分をコントロール出きてはいない──そう感じても可笑しくは無いかもしれない

そしてその肩を握る力が徐々に強くなって行ったかと思えば次にはその痛みにより自ら手を離し
拉がれた様に下を俯くイスラの姿がそこにはあって

「そうだ……お前は騎士なんだ、私の身勝手な行動に付き合う必要は無い…」
「私はいい…自分の意思でここへ来て、それで死のうとも…仲間がいる…独りではないから」
「死なぬ事に越した事は無いが… 私は安心して死を受け入れる事が出来る… その死が次に繋がる……」

「私一人で外敵を少しでも減らせたなら…他の多くの者の命が助かるかもしれない…」

「お前がここへ来て仮にでも死んでしまったら部下は悲しむだろう…」
「単独で…身勝手な理由で飛び出した一人を助ける為だけに死んでしまったら……お前を慕う兵士はどうするのだ…」


力入らぬ左手をぶらりと下げ、黒の枯れた大地を見ながらそう嘆きの様な言葉を連ね
その言葉はどうも普段の調子とは違い、ただの身勝手な我儘の様であり


エトワールの次の言葉でイスラの瞳は再び “エトワール” の方へと戻され
自身の傷の痛みの感覚、そしてエトワールの傷のついた身体をゆっくりと眺め

「………お前も怪我をしているではないか……」

その言葉を静かに呟き、暫し何かを考える様に沈黙したかと思えば──

「そうだな……ここは危険だ……おかしな事を言った……すまない────忘れてくれ…」
「……ネロ……か。」
「……ああ…今はそれより………ここから離れる事を優先するべきだな……」

先ほどまでの激情もその時には消えていて
エトワールの声が聞こえないように目前の天使向かって嘆いていたイスラはいなくなっていて
何事も無かった様にしてその身体を起こそうとするだろう
先ほどの戦闘からはどれほどの時間が経過したのだろうか
何方にせよ今もきっと飛べないだろう、羽の負傷は思っていたより随分酷くて

彼女達は港街から白へと向かうことになるのだろうか

そしてその帰り道、何故かイスラの口数が少なかったのは気の所為か──。






ネグロ・アラ、ネロ率いる黒の軍勢──
この戦争を始めようと企む者

あのヴァンパイアとあのセレナーデは“組織の仲間”と言うわけでは無さそうだ
黒の者全てがその組織に加担しているわけではないらしい…地盤が固まっていない今が叩くチャンスでもあるのだが…

精鋭“征空騎士”はそのネグロ・アラの統率者‥ネロに直接消された
思っていたより…厳しい戦いになりそうだ…白だけでは…厳しいのかもしれない
96 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします[saga]:2012/10/07(日) 23:42:18.14 ID:lPqUSP2DO
>>95

「……エティは、首を傾げます。イスラ、様子がおかしい」


──それはきっと、今のエトワールには言われたくない言葉かもしれない。
だがそれを紡いだ彼女には、また少しだけ感情が戻っていた。
痛みは未だに感じていない様子ではあったが──それでも
この些細な変化はイスラにとって、少しだけでも安らぎを与えることになるだろうか?


「──イスラが死んだら、エティは悲しむ」


最後に呟かれたそれは、一体誰に向けられたものなのか。
イスラへか、或いはエトワールの独り言か。
少女の白髪は月光を弾き、淡い紅を帯びた銀色に輝く。
そこにまた──頬紅をのせるかのように、そっと赤が戻っていった。


大陸へ戻る道中も、エトワールはずっと同じ調子だった。
感情は完全に戻ることはなく、髪の色も、大陸に着く頃にようやく桃色にまで回復するくらいだった。
彼女の全てが戻るのは数日後のこと。
髪の色も、感情も、痛みも──全ては以前の≪エトワール≫となり。
その結果として、これまた数日間ほど医務室暮らしをする羽目になるのは……ある意味仕方のないことなのだろう。



──単騎で挑むには、ネグロ・アラ及び≪暴君≫はあまりに危険な存在だった。
昨日のセレナーデの様子を見る限りでは、黒の種族も一枚岩ではないらしい。
ならばこそ──≪彼ら≫に戦いを挑むならば、青や緑だけではなく
仇敵である黒き種族をも味方につけた方が良い、のかもはしれなかった。
むしろ仇敵である黒は、何を考えているかはわからぬが──実力だけは確かなのだから。
97 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします[sage]:2012/10/08(月) 10:57:51.39 ID:+48DkyaPo
>>96

今回イスラが見たエトワールの姿に関しては
以降イスラの口から疑問としてエトワールに投げかけられる事は無く
ワインレッドを染めた色あの時の彼女は何だったのかと
今では医務室で眠る彼女へ大してのその疑問だけが残るのだろう



そして場面は移りそこは白の大陸ある場所に存在する大聖堂──円卓の騎士団の巨大兵舎
一つの広間、中央に円卓が据えられた大広間────   “ 円卓の間 ”

「────様子が…おかしい……か………」
「────皮肉だな……私はあの時の………」

蝋燭の灯り揺れ、月光差し込む廊下に緋色が交じり
その中、皮肉めいた笑いと共に場に零れ、静寂の中へと消え行く女性の声
脳裏を過るのはエトワールが最後に呟いた言葉であり
それはイスラに何かを思い出させた様で


しかし──

「だが…今は……そんな事も言ってはいられぬか…」

無造作に卓上置かれた洋紙を一枚手に取り暫し眺め
深い溜息と共に険しい表情が面に浮かぶ

記述された文を完結に説明するならば

〈緑、青の共同戦線の必要性、そして場合により────赤、そして黒との協力もせざるを得ない程の相手である可能性がある事〉
〈ヴァンパイアの言っていた言葉であるが征空騎士団はネロが直々に撃墜したという事〉
〈ネグロ・アラは黒の大陸全てが加担していると言う訳ではない事〉

その様な内容が記されている


しかしこれには多くの問題があるのだろう
白の大陸、円卓の騎士団としてそれを大体的に行うのであれば
彼等の独立性の範疇外である事、此れには白の最上層への提案が必要となる事が考えられる
対立関係をとっていた赤、黒への共同戦線もその提案の中に含まれているのだ
円卓としてその提案が受理されたとしても再上層でどう判断が下されるか分からない

ましてや黒の選民思想を掲げる組織ゆえ──
黒の大陸の者にしてみれば……


「危険過ぎる……だが……」

──ネグロ・アラ──及び暴君……彼等は余りに危険過ぎる
黒の大陸のヴァンパイア、セレナーデあれほどの者達を慄然させる程に──


余談ではあるが
負傷を負い白の大陸に戻った時、他の騎士達にこっぴどく注意を受けた
──またやったのか、これで何度目だと
そんな話もあるのかもしれないが…それはまた別の話である
98 :序章[saga]:2012/10/08(月) 12:00:16.57 ID:R3XSxoXQ0

――青の大陸・アビスサンクチュアリ


 海上路、戦争に限らずあらゆる物資の輸送の最的手段。
 本来なら真っ先に戦争の戦渦に巻き込まれるはずの、この海が平和であるには。
 青が中立たることには理由があった。

 それは母なるこの海に絶対なる守護者が居たことだった。
 各大陸では高位の者しかその存在を知らない、白く偉大なレヴィアタン。名はゼルガイゼル。
 最も巨大な青の種族、レヴィアタンとしては決して大きくない身体。
 しかし五大陸の国境となる海全ての波を操れるこの白鯨は、青の大陸への攻撃を躊躇させるのに十分な抑止力があった。

 しかしその神ともいうべき存在を嘲笑うがごとく、その白鯨に対峙する5枚羽の暴君が居た。

「突然の訪問、申し訳ないね。私の名はネロ。実は交渉があって青の頂点たる君に会いに来たのだ」

「・・・我々青は常に中立、どの大陸にも仇なさぬ代わりにどの大陸にも加担しない」

「交渉というのは他でもない。五大陸に通ずる海路の管理権を全て私の組織、ネグロ・アラに譲っていただきたいのだ」

「その要求は受け付けない、立ち去れ」

「それは困った、要求が通らないのなら力ずくの強行策に出るしかないのだが・・・?」

「協定を知らぬわけではあるまい、中立である青の大陸を攻撃すれば他の四大陸全てを敵に回すぞ。なにより・・・」

 白鯨は小さな目で、黒い暴君を睨みつける。

「今すぐここで海の藻屑となるか? それに己は黒の大陸の境の海を終わらぬ嵐で覆いつくし、遠征どころか国交すら完全に断絶することも可能なのだぞ」

「くくく・・・。私だってなんの切り札も無く、こんな無茶な交渉に出ている訳ではないさ」

 暴君の紅い目が、三日月型に歪んだ。

「しかしこの切り札は使わせないでくれ。あまりにも非人道的だし、ネグロ・アラもろとも五大陸全てが心中することになってしまうからな」

 そこまで言って、暴君は少し思い直す。

「いや、五大陸全てと心中というのは少し大袈裟か。
 せいぜいネグロ・アラが黒を含む五大陸全てから、この世のあらゆる恨みを受けて総攻撃をされ、
 黒を含む五大陸には戦争とは比べ物にならない程の被害が出る程度だ。青に限っては壊滅するかもしれないがね」

「・・・」

「ハッタリや狂言かどうかは君が判断してくれ。しかし万が一に備えて各大陸のトップと相談することをお勧めしよう」

「・・・何が目的だ、何の為にこんなことをする?」

「それを知ってどうなるというのだね? 一定の期間の間に良い返事が貰えなければ、残念ながらネグロ・アラは壊滅してしまうだろう。多くの道連れを伴ってね」

「・・・」

「それではいい返事を期待しているよ」

 海底の聖域から黒の暴君は立ち去った。
 あまりにも不吉な予言を残して・・・。
99 :序章[saga]:2012/10/08(月) 14:26:25.74 ID:R3XSxoXQ0

 青の大陸の上層達にこんな手紙が届いた
 その内容はあまりに理不尽で、めちゃくちゃで・・・悪意に満ちたものだった。




新興組織・ネグロ・アラ
代表 ネロ


今後の海上航路の占有権について


拝啓 終戦にて平和になったこの頃、御大陸のますますのご盛栄のことと喜び申し上げます。
平素は戦犯者であるにも拘らず私達黒の者達にも変わらぬご厚情賜り、厚くお礼申し上げます。

 さて、突然のお願いで恐縮ですが、弊社ではこの度他の大陸との交流を深めることを目指し、
私達黒の大陸に全ての海上路のご解放をお願い申し上げます。
 無理なお願いであることは承知ですので、弊社の者達がそちらに伺い、改めて説明に参りますので、
ご多用中まことに恐縮ですが、ご都合の良い日を弊社にご連絡していただければ幸いです。

 なおご訪問の際には、古代の祠から発掘された技術を元に開発した黒の大陸の新商品を持参いたします。
手前味噌ではありますが、必ずご期待に添えるような逸品ですので、お喜びになっていただければ幸いに存じます。

 本来ならば、お伺いをしてお願いを申し上げるところではございますが、まずは書中にて失礼いたします。
 今後とも、なおいっそうのご愛顧を賜りますように、宜しくお願いします。
100 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします[saga]:2012/10/08(月) 16:39:05.29 ID:MNpZiAiDO
>>97

「──協同、戦線」


運び込まれたベッドの上で、エトワールは静かに呟いた。
ただそっと言葉を紡ぐ。それだけで、今は肺や喉が焼けるように痛かった。
色を無くした後はこうなるのだと──それを理解しながらも、少女は僅かばかりの後悔と、自責をしていた。
もっと強くなければ、と。思考の終着点はそうなってしまうのだけれども。


「……エルフェスはどう思うのか、エティは疑問に思います」


──ふと思い浮かんだ堕天使のことを考えて、また少女は言葉を紡ぎ。
再び襲ってきた激痛に、顔を思い切りしかめるのだった。





──ところ変わって、黒の大陸──


「……暇よ、エリスちゃん。なんとかしなさい」

「──あ、あの……い、今は、えと、その、……」

「何が言いたいのかしら?あの、ネロ君のこと?」

「…………暇潰しには、あ、の──ぅ、う……最も、的確、かと」

「──ふふ、そうね。どちらにつくにしても」


──どこかの領主の屋敷にて。
月光すら射し込まない薄暗い部屋で、そっとそっと、ひそひそ話が行われていたのは
まだ──内緒の話。


/お疲れ様でしたー!
101 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします2012/10/08(月) 20:29:33.02 ID:KtylHA/X0
「全てを捧げるから助けてくれ……何て、詰まらない事を言うのね」
「拒む者から奪うのが楽しいというのに――もう、聞こえてはいないでしょうけど」

未だ鮮血を溢れさせる骸に一瞥すると、微笑みを見せる女が一人
辺りの大地は赤く染まれど、女の纏うドレスには一滴の飛沫すら着いてはいなかった
巨大な骸の腹、腕、首を大地に打ち付けるのは、楔を象った岩
皮肉な事にも、緑の大陸に住む者――自らの大陸を守ろうとした者が、守るべき物に殺された結末
女が手を上に挙げると、それに応えるように先端から血液を滴らせた岩の楔は宙に浮き――


「最近はネグロ・アラの動きも活発になってきてるみたいね」
「興味無いと言えば嘘になるけれど……然程、無いのは事実かしら」
「何にせよ――暫くの間は退屈せずに済みそうね」

後ろから女の首を刈り取ろうとした獣人の頭上に重ねて落とされる
断末魔を叫ぶ暇も無く、代わりに聞こえるのは肉と骨のつぶされる音
幾ら獣人といえども、不意打ち――更には尖った其れとなればその身を以てしても対抗できる術は無かったようで
女に向かって飛んでゆく新たな赤い飛沫は、顔に掛かる寸前で見えない何かに阻まれ、そのまま大地を染める一滴へと変わる


「そのまま怯えていれば、私の僕にでも従者にでもしてあげたのに」
「そんな姿じゃ――精々靴底の泥を落とすことくらいにしか使えないわね」
「ああ……今から白にでも入って一人二人あの無垢で純白の翼を黒く染めて来ようかしら」
「きっと、そっちの方が素敵よね」

岩の一滴を指先で撫で取り、舌先へと乗せた
味わうような素振りを見せれば、美味しい。との独り言
クツクツと一人笑うと、深紅の瞳が闇の支配する空へと向けられた


緑の大陸の一角――
豊かな自然が支配する其処にそぐわぬ禍々しい気配
木々のざわめきに引き付けられてこの場に訪れた者が見るのは、同じ大陸の者の姿か、又は敵対者か
――どちらであろうと、この女は来訪者の姿に気付くと、空へ向けていた瞳をその人物へと向けて小さく嗤う事だろう

//置きレス進行となるかもしれませんが、良ければ御願いしますー
102 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします[sage saga]:2012/10/08(月) 21:48:07.05 ID:Ce/It0pyo
>>101
//まだいますかー?
103 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします2012/10/08(月) 21:57:51.84 ID:KtylHA/X0
>>102
//居ますよ!
104 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします[sage saga]:2012/10/08(月) 21:58:49.33 ID:Ce/It0pyo
>>103
//ではちょびっとお酒入っちゃってるので遅いかもですが、突撃させてもらいますー
105 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします2012/10/08(月) 22:04:21.82 ID:KtylHA/X0
>>104
//自分も遅いので大丈夫ですよー
106 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします[sage saga]:2012/10/08(月) 22:07:55.72 ID:Ce/It0pyo
>>101
「全てを捧げて貰えるのならば、それほど嬉しい事は無いと思うがねェ?」

芝居がかったバリトンが闇の奥から聞こえる。
複数の足音と羽音が運ぶのは、腐臭と黒の魔力に他ならない。

「……やあ、初めまして。同胞君、でいいのだろうか。
 君も又、愛らしく美しい、惚れそうだねェ?」

歯の浮くようなセリフを零すのは、暗褐色のローブ姿のアンデットだ。
フードの奥から覗くのは精緻に細工をされた鉄仮面であり、奥からは濃紫の危うい光が覗く。
傍らには継ぎ接ぎだらけの妖精の少年と、白の天使を侍らせていた。
二人の『恋人』は血の気のない頬を赤らめてアンデットに擦り寄り、その裾を掴んで共に歩いている。

「と。その岩の一滴、私も少々ご相伴にあずかってもいいだろうか?」

紫色の双眸が興味深げに岩に向けられ、くつくつという気さくな笑い声がそれに続く。
知っているものならばこの男の招待に思い至る事もありえるだろう。
『色狂いのヨルズフ』、数多の土地を気まぐれに襲撃し、気に入ったものを無差別にさらっていくとされる色情魔のアンデット。
生命を礼賛するアンデットなどそうそう居らず、黒に於いて他の文明に露骨な行為を見せている者など更に少ない。

ある意味では、黒の中にも多くの敵を持ち、黒の外にも強く警戒されている存在。
そんな男が気まぐれに相手の前に立っていたのだった。
107 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします2012/10/08(月) 22:39:43.19 ID:KtylHA/X0
>>106
「上っ面だけの捧げ物なんて要らないわよ」
「尤も、私の“言葉”を使えば本当に忠誠を使うことになるのでしょうけど……」
「そこまでの過程が楽しいのよね。全てを失った人に囁くのが」

相手の姿を確認すれど、構える事も無い
わざとらしい笑みを消すことも無く――警戒の色を浮かべる事も無く
来訪者に向けられた瞳は、傍らに居る二人に向けられて


「色の白さでは、貴方の側に居る二人には負けてしまうけれど」
「まるで血の通っていない人形の様――ああ、本当に通っていないのかしらね」
「ズタズタの白い翼の天使に……妖精、かしらね」

ある程度の考察を終えると、視線は夜空へと戻される
艶のある黒い髪。其れが月光を浴びて幻想的な風景を見せるが、所詮は悪魔
禍々しい気配を消せるはずも無く――黒の大陸の者が二人居るとなれば、動物や魔物は本能によって逃げてしまうだろう
木々が騒ぐ音の後、アンデッドの声
応えるようにスッ――と目を細くして


「欲しければお好きにどうぞ?」
「私が食らうのは心臓で、私が飲むのはそこから溢れる赤い赤い水だけだもの」
「――まぁ、さっき飲んでみたら散らばった血も悪くはないけれど」

手の甲で払うような動作を見せると、不格好な岩の器に血液が集う事だろう
それはゆっくりと、然れど確実にアンデットの元へと浮き進む
手を伸ばせば届く範囲に止まった頃、小さくため息をついて


「ああ、そうそう……」
「貴方はネグロ・アラの一員だったかしら?」
「私は“アレ”について詳しくは知らないから……違っていたらごめんなさいね」

その器を覗けば、鮮血のみならず肉の一片や骨の破片も浮いていることが分かる
女の口から出たのは、黒の大陸にある組織の名
同じ大陸に住んでは居るが、この女も詳細はよく分かってはいない様で
108 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします[sage saga]:2012/10/08(月) 23:00:28.52 ID:Ce/It0pyo
>>107
「私はただ私が恋した者をこの両腕で掻き抱きたいだけさ。
 ただ、彼女や彼が必要としている者の一人に慣れるのであれば、私は彼らの『恋人』であれる、という訳でねェ。
 ……はは、最近振られてしまっていてね、傷心旅行で緑の地を旅しているところなんだァ」

フードを下ろせば、鉄仮面の男の白髪がばさりと飛び出した。
鬱陶しそうに髪を払っていた所、それに気がついた天使がぱたぱたと飛び上がって男の髪を整える。
数分後には綺麗に撫で付けられた長髪がひとつ縛りで後ろに纏められている。

「ああ、私を殺しに来た白の恋人と、私と遊べなかった緑の恋人……だねェ。
 私は彼らが私と共に居ても大丈夫なようにしてやっただけさ。
 黒の者にならねば私の城では一日と立たずにグールになってしまうからねェ?
 私の力を分けて、只侍る友であり、恋人になりたいと望んでもらっただけだよ」

指先に魔力で軽く傷をつければ溢れるのは血ではなく無数の蟲、虫、蟲。
その蛆虫だらけの手で傍らの妖精の頭を愛おしげにくしゃりと撫でる。
アンデットの動作にも目線にも態度にも、有るのは只穏やかな愛情だけ。
そしてその愛を受ける二人の恋人もまた、恋をしている瞳でそのアンデットに目線を送っていた。

ラブアンドピース、あらゆる土地においてもはや冗談としか言い用のない言葉。
それを大真面目に実践しようとするならば間違い無く狂人と言われかねないであろう甘い論理。
そんなものを翳して、叫んで憚らないのがこのアンデットだ。

腐臭の混ざる魔力が周囲の木々を侵していけば、騒ぐ木々すらも色情の死気に飲まれて静寂に包まれていく。
青白い手を月夜に伸ばせど、その骨の浮いた手は何も掴むことはない。

「……そう言ってくれて良かった。何、私の相棒には食事が必要でね。
 では、ありがたくご相伴に預からせてもらうこととしよう」

器を受け取り、地面に静かに置くと同時に、二人の恋人を後ろに下がらせる。
同時に、指先から飛び出した蟷螂の鎌で己の手首を切り落すと腕の断面を器の中に押し込んだ。
こぼり、と器の中で気泡が生まれて浮かんで弾けて。
中では無数の小さな卵が産み付けられ、細長い虫達が肉を食み、血を啜り、骨を齧っていた。

「いや、残念ながら私の愛に同調してくれる黒の者は少なくてね。
 恋人達を除けば黒に私の味方は存在しない、と言えるねェ?
 彼らが他の文明を愛するのは、要するに他の者達が黒で無いから、そう思うからこそ、愛で世界を黒に染めようと言っているというのに。
 若造も老害も頭が硬くていけないね?」

僅かな嘆息の後に、血溜まりからは無数の蝿と蚊、他にも蟻が渦となって生まれていく。
また、黒の魔力に染まったワームが生まれると同時に大地に潜っていき、周囲の土地を黒の魔力で染めなおしていた。
109 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします2012/10/08(月) 23:29:54.50 ID:KtylHA/X0
>>108
「随分と熱い恋愛をしているのね。か細い腕で抱きしめたいだなんて」
「――それは穏やかな傷心旅行とは言い難いけれど、きっと私も同じ事ね」
「黒の者が動けば、周りは騒ぐ……特に、この地では」
「偶に白の声も入って五月蠅くて堪らないけど――ただ、五月蠅いだけ。実害は無いのよね」

小さな呟き――現れる、魔方陣
瘴気を撒き散らす“何か”に呟くと、再び魔方陣が耀き、其れは消える
少したった後、女の手には古い書物が有り


「恋人――にしては、楽しくお話出来そうには無いわね」
「愛玩としては楽しめそうだけれど」
「フフ、虫袋。と言った方が無難かしら」

失礼な言葉
しかし、非礼を詫びようとはしない
手で口元を隠しながらクスクスと嗤えば、手元の本へと視線を落とした
暗号にも思える其れ。悪魔という種族のみに伝わる文字か――或いは、ただの古代文字か
一度目を通すと、本を宙へと放り投げる
その先に現れた陣――中から出てきた一本の手が其れを掴み、陣の中へと引き摺り込んでいった


「あら、てっきり貴方本体だと思っていたけど、違うのね」
「数が多くて名前を覚えてるのもめんどくさい量の相棒さんね」
「名前なんて元々無いのかも知れないけど……どうなの?」

眉間に皺一つ寄せること無く、食事の風景を見ていた
元より恐怖等と言った負の感情を持っていないからか
逆に、興味津々といった様子でアンデッドの“食事”の在り方を見ていて


「そう、それは大変ね」
「――かく言う私も、貴方の愛の意義に興味はあれど別に賛成はしないわね」
「ただ楽しければそれでいいから……それは貴方の頭が硬いと言う事もあるかもしれないわよ?」

自分の信念を曲げられぬ堅さ。とでも言いたいのだろうか
この女自身は何かに対しての執着などは無く、ただ楽しめればいいという考えの元に動いている
その結果として、多くの虐殺を行っていることにはなるのだが……
110 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします[sage saga]:2012/10/08(月) 23:50:58.83 ID:Ce/It0pyo
>>109
「なァに、しばしの辛抱だ。
 次第に黒である事が普通の世界になれば彼女たちも普通に生きていくことができるだろう。
 理性のある彼らを愛でるのもまた、私が死んでなお生きる理由だからねェ?
 私の領地で生きる以上は体を蟲で弄らねばならないのは仕方のない事さ、そうでもしないと皆醜い化け物になってしまう」

――私のようにね、と仮面の奥の瞳を僅かに揺らして言葉を吐き出した。
多感なアンデッドは今の状況が正しいものでは無いと理解していたが、それでもそう振舞わざるを得なかった。
誰かを傍に侍らせていなければ、この愛欲の死霊は己の愛のはけ口をなくして狂ってしまうのだ。

調度良い切り株を見つけそこに座りこめば、二人の恋人もその両脇に座り込む。
落ち込んだ様子の死霊を見れば自然と二人は距離を縮め、死霊を優しく抱きしめる。
それを受けて死霊もまた枯れ木のような腕を血の満ちた器から引き抜き、切断した手を繋いだ。
そうして形を取り戻した腕を伸ばして二人の死体を抱き返すのだった。

狂気と正気の天秤が危ういバランスの上にある。
相手の非礼な言葉を前に激昂をしないのは、偏にその異常性を彼自身も認識しているからだ。
だからといってその異常を止めないしやめるつもりも無いのが狂気の狂気たる所以だが。

「私は愛が有れば心も体も保っていられるねェ。
 それに、彼らは名を求めない。……いや、言うなれば彼らの名もヨルズフと言うべきか。
 私の血肉で育ち私の魔力を寝床にして、私と意思をつないでいるのなら、私の一部と言っても過言ではないから、ねェ?」

未だに器の中は無数の蟲が血肉も骨も貪り続けていた。
それを慈愛の瞳で見据えながら、食事を終え戻ってくる蝿や百足や蚊に手を伸ばし体内に取り込んでいく。
また、遠くの場所から羽音が聞こえてくると同時に、木々が砕ける音がそれに続いた。
同時に夜空を遮る木の天幕は一斉に黒い影に飲み込まれて消え、その黒い影は男のローブの中に消えた。
目が良ければその黒い影は、異様に巨大ないなごの群れだったと分かっただろうか。

「……まあ、私の意思が固いのは間違い無く事実だろうねェ?
 だが、だからと言って悪意で世界を犯すのは好ましくないと思う事だけは変えられんよ。
 どうせ世界を滅ぼしたり支配するのならば好意の方が良い。
 もっと小さな話にスケールを落とし込んだとすればだ、刺殺されるならば愛故に――その方がドラマティックで美しい。
 愛も恋も――情動の美しさは素晴らしいし、それは前向きな方向であるほどに美しいのだ。
 爛れた愛欲であろうと、初心な恋心であろうと、ね?」

妖精の少年の頬に唇を落とせば、嫉妬をしたように天使がアンデッドの頬に唇を押し付ける。
微笑ましい光景だが、そのあいだには無数の蟲が動いめいていた。
111 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします2012/10/09(火) 00:27:37.85 ID:1FxufydY0
>>110
「全てが黒で染まるのも詰まらないものよ――何処かかしらで憎み妬みがあるから面白いと思うけれど」
「醜い化け物を愛でるのもまた一興……という訳にもいかないわね」
「フフフ……でも、白から堕ちた人達は白から見れば醜い其れなのかしらね」
「ねぇ……今度、貴方の場所に翼を毟った天使を置いてみて良いかしら」
「化け物にでもなったら、私が回収するわよ」

今まで幾人の天使を堕天させた事はあれど、瘴気に包ませた事は無かった
故に、包ませた後の事が気になるのは仕方の無い事か
アンデッドと二人の付き添いの姿を横目で見ながら、女は一人呟く
――あら、面白い。と


「なる程ねぇ……確かに、貴方の言うとおりだわ」
「一匹一匹も貴方自身と言われれば納得だけど……貴方曰く“恋人”はどうなのかしら」
「それも、元々は貴方の身体の一部を取り込ませたモノでは無いの?」

まるでからかう様な言葉
その者を支配しているのは、元はアンデッドの一部では無かったのだろうかと言う問い
羽音を聞くと、空を見て――月の明かりを頼りに、その正体を知る
何処かの黙示録でもイナゴの大群が出てきたわね――そんな事を呟きながら


「言いたい事は分かるけれど、生憎私は世界には興味が無いのよね」
「ただ楽しければ良いし、私に使える者が居れば良い――その延長に世界があるならば別だけど」
「何で支配しようと、無理に私に干渉しようとしてこなければどうでもいい事……誰であろうとそれは変わらないわね」

汚れた翼を持った者が迎えに来たのを確認すると、含み笑いを浮かべたまま踵を返した
特に別れの言葉を述べることも無く、やがて姿を消したことだろう
並以上の力はあれど、ただ自分の周りのことにしか興味が無い女
女が去った頃、同時に岩で作られたそれらも朽ちるだろうか

//そろそろ眠気が強くなってきたので締めさせて頂きます!
//ありがとうございました!
112 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします(関西地方)2012/10/11(木) 22:23:03.25 ID:+PYbItZeo
暗澹とした空は厚手のカーテンを降ろしたかのように真っ暗で
瞼の裏側にも似た曇天の闇色を低い音色で響かせていく
月明かりすらも届かぬ黒の大陸の荒野――――――

一つの影がポツリとその身を揺らしていた


「うーん……あっちこっちで小さな衝突は起きてるみたいだけど
まだ戦争って感じはしないわね……どっちかとゆうと諍いみたい
お互いがけん制しあってるって感じかしら……今のトコ」


彼女は枯れ果てた大木の枝に腰掛けていて
周囲を時折掠める低級のヴァンパイアに流し目を零す
その各々がときめいた表情を見せるも退屈といった様子で流すのだろう

鮮血のような淡い朱の長い髪に真紅の澄んだ瞳
抜群のプロポーションを一糸纏わぬ全裸姿であらわにして
ほんの僅か身を隠す薄手のレースの白い被衣を纏った彼女
白い太股にスズメバチの、股間には蝶のタトゥーが刻まれている
113 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします[saga]:2012/10/11(木) 22:38:46.96 ID:fvy0391P0
>>112

「まったくだ。困ったものだよ、青の大陸も我々の強さを認めてないのか返事をしかねている。
 白以外は緑も赤も我々の事を全く危険視していないようだ。もっとストレートな脅迫状を送っておけばよかったのかね?」

 さも当然のように彼女のとなりに姿を表す。
 その存在が認識された時、辺りは一気に張りつめた空気になる。

 まばらに姿を見せていたヴァンパイア達の視線がその一ヶ所にくぎ付けとなる。
 そこに居たのは5枚羽の暴君、黒を意味する名を持つ悪魔。

「やぁ、御機嫌ようミセス・クラレッタ。先日は部下が無礼をしてしまったね」

 ネグロ・アラが首領、黒竜・ネロ。

「退屈で申し訳ないね、私としても一刻も早く大きな戦争を起こしたいのだがなかなかギャラリーが集まらない」

 ネロの紅い目が細くなる。

「さて、唐突で悪いのだが。ネグロ・アラに参加してくれる話、考えてくれたかね?」
114 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします(関西地方)2012/10/11(木) 22:46:40.93 ID:+PYbItZeo
>>113

肌を焼く熱気のような感触、それでいてその肌触りはとても冷たいもので
背筋を撫でるその感覚に思わず身震いしてしまいそうなほど―――
その理由に気づくのにさほど時間はかからなかった


「っ……あっ―――ネロ……さま……っ」


ヴァンパイア達が飛び去っていく、低級な彼らは長時間その場に居合わせることすらできないから
それほどのプレッシャーを彼女は直ぐ側で浴びているのだ、言葉が詰まるのも無理は無い
華奢な喉がかすかに揺れて、声を零そうにも小さな小さなメロディでしかなくて

思わず彼女は被衣を自身の身に密着させて、自分を抱くように深く纏った
被衣以外何も身に着けていない全裸のままでは、耐えていられそうになくて
一つ一つ辿るようなたどたどしい旋律を細い喉がかき乱した


「っ……その……とても嬉しいです、私のようなものにそうお声をかけていただいて……
そして、願わくば……一つ、お願い事を申し上げても、宜しいでしょうか
お手を煩わせることでは有りません……ただ、ただ私達の種族を保護していただければ、と」


それはまるで借りてきた猫のよう、ただでさえ細い身をそっと寄せて、貴方へと言葉をかける
蜂蜜のように柔らかで甘い旋律は彼女が歌姫たる所以��セレナーデ�≠ニいう種族の特徴であろうか
真紅の瞳が貴方を見上げる、憂いを帯びた瞳はほのかな潤いを孕んでいて

彼女の言うお願いとはそのセレナーデに関することであろう
身体能力が低く、非常に数が少なく個体数を減らしている彼女らを、保護してほしいと
軽く目を伏せながら紡ぐ彼女は、どこか弱弱しい少女のようでもあった
115 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします[saga]:2012/10/11(木) 23:10:50.99 ID:fvy0391P0
>>114

「ああ、構わないだろう。黒の大陸で申し訳ないが、深海の森の一部地域を私が所有している。
 あまり整備されていないが、毒も瘴気も薄く、夜には月の見えるいい場所だ。
 そこに私の術式で結界を張り、絶対に安全と言える場所にする。そこを君の種族に提供しよう。
 ・・・君が私の下で働いてくれるならの話だがね」

 ネロはニタリとほほ笑む。
 その笑みは人型でもないにも拘らず、温く、優しく・・・そして甘い毒を含んでいた。

「私に管理されるのが不満だというならば、もう1つ選択肢を与えよう。
 なぁに、これは同じ黒の同胞としてのささやかなプレゼントだと思ってくれていい。これに見返りはいらない」

 真っ直ぐクラレッタを見つめ、見開かれた真紅の瞳。
 そこには魔力も含まれていないのに、魅了の力もあるようで・・・

「君の種族の心に闇があるならば、君の種族全てに私は君と同じかそれ以上の力を与えることができる」

 吊り上る口元。
 優しく、ゆっくりと骨を抜く。

「君の種族が闇を受け入れるなら、ね」
116 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします[saga]:2012/10/11(木) 23:15:23.38 ID:fvy0391P0
修正です!!

>>深海の森
↓
>>常夜の森
117 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします(関西地方)2012/10/11(木) 23:22:28.64 ID:+PYbItZeo
>>115

網膜に映る貴方の虚像、それはまるで自身を写す鏡のようでもあって
そこに見えるのは自分が思う最高の��ヒト�°M方になら身を任せても良いと思ってしまうほどに
―――駄目、と唇の端をほのかに噛んだ、今にも魅了され溶けそうになる自分で踏みとどまる為


「……でもどうして、一つ聞かせてくださらない?
私のようにか弱くて嫉妬深い��モノ�≠�なぜ必要とするのか、を
この身も、肌も、身体も、貴方が愛撫するには脆すぎます」


そう言って彼女は瞼を閉じる、長い形の良い睫が白い肌に解ける
素肌の雪代に染められる睫の残影が澄んだ色を柔肌に浮かべて
月光に写る白夜のような素肌の色合いを染める

ほんの少し被衣をずらして、左肩を露出させる彼女、ほのかな膨らみが貴方を誘う
牙を立てれば容易に砕けてしまいそうな桃のように柔らかな肩の肉
視線をそのまま肌越しにぬらして見れば、鎖骨が首元に向かい溶けているのだろう


「私のようなものを貴方のモノになさったところで、大した価値はありませんわ
精々壊れかけた玩具のよう、面白くも無い歌声を響かせることしか―――いえ、それすらも満足にできないでしょう
私ではなく貴方のことを思って……こう述べてるんですよ?」


そう言って彼女は手を伸ばすだろう、白くしなやかな指先はピアニストのそれを思い浮かばせて
抵抗されなければ貴方の身へとその指先を這わせようとするだろう、眼前にいる圧倒的な存在に触れようと
そして確かめるのは自分の儚き身、少し吹かれれば死んでしまうかすかな身を

恐怖の感情が彼女の奥底にある、毒にその身を委ねて、爪先まで支配されても
それでも本能のような感触が、心に触れる、目の前の貴方を信用してはいけないと
だからこそ貴方の言葉を疑うのだろう、そして肯定してほしいのだ、自分という存在を
118 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします[saga]:2012/10/11(木) 23:55:49.94 ID:fvy0391P0
>>117

「御謙遜を、白の騎士と正面からやりあって引き分けておいて、弱いなどとよく言えたものだ」

 ケラケラとネロは笑う。
 それは親しげな友人と話すようで、背の蝙蝠のような翼をパタパタさせながら言葉をつなげた。

「強い弱いは私の戦争には関係無いのだよ。
 そんなモノは私がいくらでも補完する。
 大切なのは優美さと��芯″ともいうべき個性だ、強き者が弱き者を蹂躪するだけの戦争など実につまらん。
 ありとあらゆる種族が全精力と闘志を持って、まるで一つの戯曲のように戦いあう。最高の娯楽だとは思わんかね?」

 ネロが語る本音。
 それはまるで、全世界を賭けたゲームのように愉しげで。
 全種族を役者に准えたミュージカルでも期待しているような口ぶりだった。

「私の為に唄え、クラリッサ。この戯曲の中の君の配役は歌い手だ。
 舞台と君の唄う曲は私が用意しよう。その声で百の兵を操り、私の戦争を彩りなさい」

 ネロは長い爪の生えた指でクラリッサの喉をトン、と叩く。
 そこから侵食するように、古代の術式が広がっていく。

 負の進化促進。

 ネロの持つ最悪の能力。
 この闇を受け入れてしまえば、歌姫と呼ばれる種族の美しい歌は、
 恐るべき、忌むべき方向へと進化するだろう。
119 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします(関西地方)2012/10/12(金) 00:07:12.91 ID:GefZUhFHo
>>118

蕩けそうになる、思わず瞼が落ちて貴方に溶けそうになる
それほどまでに旋律は甘くて、それでいてハッキリとしていた
だからこそ、暴君と呼ばれるに値するのだろう、と心の中で感じた


「……大した方、とても面白そうに争いを語るのね
まるで戦いが、戦争が……自分の望通りに進んで、終わるとでも言いたげで
でも、そういう方じゃないと黒の大陸を支配するだなんて考えられないのかしら」


まるで自分に言い聞かせるが如く、貴方の言葉を口内で揺らす
彼女というスピーカーで通して聞く言葉は絵空事のような旋律
それでも確かであると思えるのは貴方という存在が故か

思わず身をひきそうになる、貴方の太く力強い指
身を委ねるように、息を呑んでソレを飲み込もうとするだろう
――――――それでも、どこかに拒む心があったのだろう


「っ……ふぁ……あっ……んっ―――!!」


焼けるように痛む喉、口元を手で押さえ、身を震わせる
それはまるで焼け鏝か何かを押し付けられたかのよう、劇薬を飲んでしまったかのよう
額に浮かぶ一筋の汗、被衣ごしの素肌が汗に濡れている

本心から受け入れようとはしなかった為、内部で術式と術式が反発しあっているのだ
痛みは外へと逃れず彼女の体内で蓄積したまっていく悪循環
呼吸すらも苦しそうに震える彼女は蜘蛛の巣でもがく蝶のようであろうか
120 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします[saga]:2012/10/12(金) 00:20:05.54 ID:kD3gQ7u10
>>119

「苦しいかね? 痛いかね?」

「その状態で歌ってみなさい」

 ネロは相変わらずにこやかに、クラレッタがもがく様を見届けている。
 確信しているのだ、このセレナーデはあと一押しで��闇の歌い手″に堕ちると。

「苦痛と憎しみの中で、壮大なエレジーを歌うのだ。
 君の声は魅了するためではなく、支配する為にある」

 囁くように、トドメの一言を心に突き刺す。

「君が必要だ、クラレッタ。私の戦争には君の歌がなければならない」
121 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします(関西地方)2012/10/12(金) 00:21:23.24 ID:GefZUhFHo
>>120
/すいません……そろそろ眠気がひどいので持ち越し宜しいでしょうか?
122 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします[saga]:2012/10/12(金) 00:22:39.00 ID:kD3gQ7u10
//そうですね、もう夜も遅いですし
返信遅くててごめんなさいです!
それではおやすみなさーい
123 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします(関西地方)2012/10/12(金) 00:23:11.88 ID:GefZUhFHo
/おやすみなさいです!
124 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします(関西地方)2012/10/12(金) 20:55:38.02 ID:5aCUDN2Do
>>120

彼女の瞼が閉じようとする、強大な力に屈するが如く
泥のように溶けて、そのまま怠惰に身を任せたいと思うように
それはやがて雪のように降り積もって溶けて消えるのだろうか

                プレジデント
『おいおいそりゃぁ無いぜ��暴君�≠アんなガラクタあんたにゃ不釣合いさ
帝王は君臨するから帝って呼ばれんだ、そしてその価値を計るのは座る椅子の質だろうよ
こんな雑種、支配する意味も蹂躙する理由もありゃしないだろう?』


影が哂う、ひどく澄んだ音色で聞き取りやすい言の葉を零す
やがて影は形となりその輪郭をハッキリとした形で彩るのだろう
暗闇が一つの形を作り上げ、やがてソレは歪んだ笑みを貴方へと灯す

其処に現れる整ったセミロングの黒髪をなでつけ、紺色の高級なスーツに身を包んだ長身の青年
彼は虚空に出現すると、膝をつく状態で苦しんでいるクラレッタを蹴飛ばし、その背中に座るだろう
声にならない音が零れる、それだけでも激痛が全身に奔るのだろう、小刻みに彼女が震えた


『大体コイツ、喉に白の術式使いまくって漸く喉が使い物になる程度だし
アンタの術式に蹂躙されると唄うどころか満足に呼吸することもできなくなるぜ
だからさ、こんな出来損ないほっといて何時もどおり俺に命じてくれよ』


足を放り出す彼、長い脚が虚空に浮かんで、高級そうな革靴がゆれる


『――――――どいつもこいつもぶっ殺してこいってね』


愉快そうに彼は微笑む、端正な顔たちが鋭い笑みに歪む
貴方をプレジデントと呼び命令を待つ彼、見た目は人と大差ないドッペルゲンガー
ネグロ・アラのエージェントである��コメディアン�≠サのものであった
125 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします[saga]:2012/10/12(金) 22:11:30.68 ID:55XwNfaY0
>>124

「・・・」

 ネロはコメディアンにほほ笑む。
 直後、凄まじい勢いの付いた黒竜のテールスイングがコメディアンを吹き飛ばすだろう。

「・・・先の大戦で足りないと思ったものがある」

 ネロは恐ろしく冷たい目をコメディアンに向けて。
 ポツリと呟く。

「先の戦争で足りないモノ、それは・・・情熱思想理念頭脳気品雄大さ一体感!!
 そしてなによりも・・・熱さが足りない!!」

 オペラのように、演説のように。
 ネロの声に熱がこもる。

「どいつもこいつも! 身勝手で! 個人的で! 小規模な戦争ばかり!
 いや! 戦争とも呼びたくないような小競り合いばかりだった!
 私が見たいのはそんな下らないモノではないのだよ!! もっと壮大で、大規模で! 世界の存続がかかったような戦争なのだ!!」

 ネロは5枚羽を広げ、大きく声を張る。

「不完全燃焼だ! 不満足だ! 私はもっと素晴らしい戦争がしたい!
 大義と大義がぶつかり合い! どちらも譲れないモノの為に死ぬ気で戦うような闘争!
 時には非情に! 時には仁の心を持って! 殺し合いの中に生まれるドラマ!
 私はそんな戦争がやりたい! 貴様にそれが実現できるかコメディアン!! 3文の価値も無い喜劇で私の戦争を汚すな!!」

 言い切る暴君。
 まるで情熱無き者は死ね、とも言いたいばかりであった。

「そしてもう限界だ! 今日、��アレ″を搭載した貨物船を青の大陸へ向けて出航させる!
 コメディアン、クラレッタ! 君達にはそれに搭乗し、青の大陸まで防衛してもらうぞ!!」

 ネロが腕を振り、高らかに宣言する。

「宴の始まりだ、生と死を味わい尽くせ!!」 
126 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします(関西地方)2012/10/12(金) 22:28:07.81 ID:5aCUDN2Do
>>125

吹き飛ばされる彼の身体、夜を切って重力から離れたかのように飛んでいく
吹雪のような暴風がその速度を高らかに伝えて、彼の身を消し飛ばしていく
―――瞬間、彼は夜に溶けるようにその身を消し去るだろう


『……冗談言っちゃいけねえよ旦那、そいつはちょっとばかし無理な相談さ
あいにく俺みたいなコメディアンは王道になっちゃいけねぇんだ筋書きのかかったドラマなんか糞くらえだ
だってそうだろ、勝ちの決まってる戦いに、一体何の価値があるんだい』


貴方の目の前の空間に出現するであろう��彼��
月光を浴びた霧が靄の中に影を浮かべるように夜から彼という存在が出来上がっていく
顔に浮かべた笑みは崩れることが無く端正な色合いを強めて


『俺にできるのは陳腐な道化と二束三文にも値しないジョークぐらいで
それは精々片手で掬えるぐらいの奴等にしか届くことができない
だが俺にはそれで十分だ、俺自身が精々二束三文の価値しかねぇからな』


貴方の言葉を受けて真っ直ぐに彼は答えるだろう、まるで自殺志願者が如く
情熱の無きモノを嫌う猛々しき暴君に冷め切った言葉を向けて
――――――だがそれは反復だと言いたげに逆接をつないだ


『俺が輝くのはこんな舞台裏でもモルグでも無い
肌が焼け付く位に乾いた戦場の上で、焼夷弾のスポットライトを浴びた舞台の上だ
その辺りを分かってくれよ、俺の愛しのプレジデント』


彼はそう言い、片腕でクラレッタを抱えるだろう
彼女は依然として苦しそうに呼吸を続けながら、その腕の中で揺られる
クルリと背を向けて、表情を向けると、端正な横顔が澄んだ色合いを零す


『―――幕が上がって、劇場が整って、拍手の音が降り注ぐ
其処に俺がいるんだ、そして観客がぶっ飛ぶ位にハイなジョークを贈るんだ
ソレが俺の存在価値で、ソレが俺の存在意義で
お気に召さなけりゃそのまま真っ直ぐ首を断ち切ってくれよ、アンタの手でね』


そうして彼は右の手を上げるスラリと伸びた指先が踊る
やがて一つ指を鳴らしたかと思うとクラレッタごと姿を消すだろう
彼はそのまま貨物船へと向かうだろう、ネロの言葉を胸に抱いて

/この辺りでキリがよさそうなので……お疲れ様でしたー
127 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします[saga]:2012/10/12(金) 22:40:42.87 ID:55XwNfaY0
>>126

「言うではないか」

 クレームばかりの観客の頬が吊り上る。
 そのドッペルゲンガーの返答には満足したかのようで。
 ゆっくりと頷きほくそ笑む。

「己の芯の姿を知ることなく、己の価値を闘争の中にのみ見出すか・・・それもいい。
 巻き起こる大戦の前座にはおあつらえ向きだな」

 さて、と。
 暴君は首をもたげ、翼を広げ本拠地へと向かう。

「艦長はローランド君が良いだろうな、これで黒を含む全ての大陸が参戦してくれるだろう」

 黒の不毛の大地から、暴君は飛び去っていく。

「さぁて、序曲��穢れ神″。開演だ」
128 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします[saga]:2012/10/12(金) 23:01:32.48 ID:55XwNfaY0

――黒の大陸港町・ヴァカストル


 汽笛を上げて、黒のヴァカストルから一隻の魔導力貨物船が出航した。
 全体を装甲で覆われ、砲台まで備えてあるそれはもはや軍艦のようでもあった。

 ネグロ・アラの所有する特殊貨物船��黒船″。

 進路は青の大陸の都・アトランティスへ。
 順風満帆、風向き良好。

 世界を破滅させる切り札を搭載した黒船は意気揚々と出発した。
129 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします[saga]:2012/10/12(金) 23:09:58.87 ID:55XwNfaY0
※イベントです!

黒船の中にある物体を調査し、奪取、もしくは進行を阻止してください!
黒船がアトランティスまで到着すると、ネグロ・アラの要求を阻止することが非常に難しくなります!


勝利 黒船の敗走、もしくは搭載された穢れ神の奪取。
影響 以降、ネグロ・アラの勢力規模が著しく減退します。また他の大陸にあまり影響が及ぼさなくなります。

敗北 ネグロ・アラの要求が通され、海上路の支配権が譲渡される。
影響 以降、ネグロ・アラの力や影響力が著しく増加します。
    また海上路閉鎖など大陸全てを巻き込んだ強迫もしてくるようになります。
    他の大陸にも頻繁にネグロ・アラが出現するようになります。
130 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします[saga]:2012/10/14(日) 01:27:36.41 ID:2homW0oR0

――黒船・操舵室


「ぎゃあああああああああああああああ!!」

 操舵室に断末魔が響き渡る。
 グチャグチャと肉を裂く音と、ボキボキと骨が砕ける音が続いた。
 そこで行われていたのはまさに狩猟。

 褐色の巨大な竜人が、キルヴェーラだった肉塊を貪っていた。

(失敗した部下はエサですか・・・、容赦ないですね)

 金髪オールバックのヴァンパイア、エステバンが吐き気と恐怖に青ざめながらその悍ましい光景を眺めていた。
 うかうかしていられない。
 もししくじったのなら、今度は自分がこの怪物の腹の中だ。

「グルルルル・・・」

 肉塊を骨一片も残さず食い終わると、竜人は舵を握るヴァンパイアに目配らせした。

「は、はっ! 異常はありません、ローランド様!!」

「海状も平穏です! 気象も良好で、時化の様子もありません!」

「レーダーにもソナーにもそれらしき敵影はありません! 航海は極めて順調です!!」

 一通りの報告を聞き終えると、この竜人は艦長室へと戻る。
 この怪物は言葉は話せないが、知能は極めて高く・・・狡猾だ。
 なによりその容赦の無さが、黒船の中を恐怖で統率し、なおかつ頼もしくもあった。

 竜人の姿が完全に消えると、操舵室のヴァンパイア達が一斉にため息を吐いた。

「俺、青の大陸着くまでに生きてられるかな・・・?」

「・・・生きてられるようにしっかりと仕事をこなしてください」

 エステバンはそれだけ言うと、再び艦内の見回りへと戻った。
131 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします(関西地方)2012/10/14(日) 22:02:28.50 ID:Tn/vCVf2o
暗澹とした常夜の闇が空一層に広がって、飲み込むような勢いを震わせる
足元には荒野、草木の陰すら見えない死の大地が無限に広がっている
―――黒の大陸、その場には生命の香りがほんの僅かにも感じられないのだろう


「オーケー野郎共、作戦は理解してるな?
今日のお客様は糞生意気にも喧嘩ふっかけてきた��黒の大陸�≠フ皆様だ
遠慮はするなよ、サービス精神旺盛に笑顔で仕事しようぜ!」


弾けあがる一つの声、黒の大陸の端で、怒号のような旋律が響くだろう
視線が向かう先は上空、一つの騎影が激しく高鳴りのような声を上げた
その声に同調するように響いた返事が、その場から離れ散り散りに広がっていく

分厚い雲に覆われた月明かり、カーテンから零れ落ちるような僅かな灯火
輪郭があらわになる残った一人の青年の横顔は
―――とても愉快そうに歪んでいた


「さあお待たせしました��黒の大陸�≠フクソッタレの皆様!
��スケアクロウ空賊団�≠フ宅配サービスでございます!
―――御代はいらねぇからたっぷり受け取りな」


瞬間爆発音があちらこちらで響くだろう、上空から��爆弾�≠ェ落とされたのだ
正確には爆破の術式を含んだ弾丸を空から大陸に向け掃射している
大陸全土にダメージとはいかないが奇襲にしては中々のものであろう

栗色の長い髪に灰色のインナー黒のジャケットにジーンズのラフな格好
紺のナローマフラーを身に付けた長身の男性が、楽しそうに指揮をとっている
彼は数mほどの大きさのマスクを付けた飛竜に乗り、手綱を操ることで操作しているのだ
132 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします2012/10/14(日) 22:22:44.60 ID:6bJCYHZf0
>>131
「サービス精神旺盛なのは褒める事が出来る点だけど……
その結果赤字になってしまっては本末転倒よねぇ」

辺りに一層強く漂う負の気配
姿は見えずとも、その気配が――そして、その声が何者かの存在を示しているのは確かな事で
クスクスと小さな笑みを零した後に姿を現したのは黒いドレスを纏った女
背中から生える悪魔の象徴。漆黒の翼が空を地面へ叩き付けつつ、青年の隣に並んでいた


「私は何も頼んだ覚えが無いのだけれど
何て言っても、意味が無いのでしょうね
楽しそうな事が起きたかと見てみればまるで“赤”みたいな“青”のお客さん
オマケに不在の家に無理矢理押し入って配達……と言う訳ね」

態とらしいため息の後に、瞳の先を青年へと向ける
――騒がしいのは嫌いなのよね
爆音でその声は聞こえ無くとも、唇がその様に動いたことは分かるだろうか
直後、女の指が虚空に何かを描き始める
それは複雑な絵の様で有り、ハンドサインに見える者でも有り――


「……兎に角、誤送となれば返すのが筋よね?色男さん
黒がどうなろうが知った事では無いけれど、私の場所まで壊されたら困るものね」

反射の術式。
投下地点になるであろう場所に幾つか展開された其れ等
もし、弾がその上に落ちたとなるならば落とした者に向かって返ってくる事になるであろう
しかし地面との距離を保っているならば、避ける事はそう難しくも無いだろうか
133 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします(関西地方)2012/10/14(日) 22:34:27.75 ID:Tn/vCVf2o
>>132

瞬間直ぐ側に現れる艶っぽい声、視線を傾けてみればその通りの美女がいた
舌なめずりするような軽い声色で怠惰にゆれる貴女の指先を視線で辿る
それはまるで愛撫でもするかのよう、艶かしい吐息が彼に触れる


「コイツぁいいや、なんたって別嬪さんのお迎えだ
こんな時化た大陸なんてほっといて俺としっぽり空のデートと洒落込みたいトコだが
生憎と、仕事中なんでね��空賊団�≠チて言ってるぐらいだからさ
フリーパスぐらい持ってるってもんよ!」


姿勢を前へとぐいと倒す、途端彼の身が前方へと加速する
ソレは彼ではなく彼の乗っている��飛竜�≠フ加速、大きく羽ばたき空を叩くと前方へと進む
一つ二つと空を掴むように羽ばたくと風を巻き起こしながら前方への推進力を得る

��レム・ワイバーン�≠ニ呼ばれる青の大陸固有の飛竜種
翼が大きく、更には競走馬のようなマスクまでつけたその飛行能力はかなりのものである
5mほど前方へ進み攻撃を回避すると真っ直ぐに向き直るように姿勢をずらした


「あらら、見た目どおりに自由そうだね、俺の好みのタイプだ
どうだい?さっきも言ったけど��こんな場所�<Aンタにゃ似合わないぜ
その色っぽい白い肌も、艶めかしい黒のドレスも、お日さんの下で映えるってもんさ」


にぃ、と表情をほころばせる、端正な顔たちが好機の色を見せる
色男と呼ばれて悪い気はしないのだろう、軽薄そうな表情と仕草
それとは裏腹に貴女を見つめる彼の様子はただひたすらに真っ直ぐであった


「ただね、空のデートってするにはちょいとアンタの翼が不都合さ
イイ女ってのはやっぱり後ろに載せたく乗るのが男の性ってもんで
ちぃとばかし、堕ちて貰うぜ!!」


飛竜が口をあける、口内に仕込まれた射出の術式
まるで弾丸のようにバレーボール大の火弾が数初放たれるだろう
狙いは貴女の翼である
134 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします2012/10/14(日) 23:00:47.89 ID:6bJCYHZf0
>>133
「悪いわね。一人の男に縛られるほどの退屈は嫌なの。私は
空賊――海賊なんかよりもよっぽど楽しそうな事をしているのね、貴方
フリーパスの話も魅力的だけど、生憎私も其れと似たようなモノを持って居るのよね」

見たことの無い竜の種――警戒するに超したことは無いが、人が操れるモノであれば脅威とまではいかないのか
そして青年は自らの力では飛んでいない……ともなれば、竜さえどうにかしてしまえば後は事を進めるのは簡単か
鮮やかに回避をする姿を見ながら、笑みの下で女は考えていた
空を得意とする者を相手にするのは少し酷か
然れど、機動さえ削いでしまえば後はこっちのモノかと


「それは皮肉かしらね?
悪魔は光に背きし者
それに――夜の方が綺麗に見えるモノも沢山あるわよ」

飛竜から放たれた火球
翼を水平にすると隼の如く身体を急降下させて避けるが――翼の先を掠めれば、少し顔を顰めて
幾つかの陣を展開すると、其の中に手を通して、まるで幾多もの腕輪を身につけているような姿となり


「あら、私に主導権を握らせてはくれないのね
どんな時であろうと、ただ後ろに乗っているのは嫌よ?
フフ――相手が男であろうと女であろうと
殺し合いであろうとまぐわいであろうと同じ事」

陣の正体は加速の魔法
腕から放たれた水の塊
それは途中で不規則な形をした氷となり、やがて加速の陣の間を通って速度を付けながら飛竜の口を目掛けて放たれる
ただの鉛の弾との形とも異なり、更には脆い氷――
ともなれば、刺さった際にはそれ相応のダメージとなるだろうか
135 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします(関西地方)2012/10/14(日) 23:13:24.56 ID:Tn/vCVf2o
>>134

夜に燃え上がる火球の破片、僅かに貴女の横顔をくっきりと染め上げるだろう
灯火の先に映る透明な透き通るような柔肌に、彼の表情が緩みそうになる
魅力的で蠱惑的な貴女の姿に彼の姿はまるで花束のように溶ける


「そりゃそうさ俺達に枷はねぇからな
赤も黒も緑も白も、全部が全部俺達の庭さ
だからこそ、一人で散歩しててもつまらねぇってもんだ」


飛竜へと放たれる速度の速い氷の弾丸、術式を見た瞬間に彼の表情が変わった
軽薄そうな色は消えて、後に残るのはただ真剣な竜乗りの姿
ドラグナーにしては腰が軽そうな、それでいて激しそうな表情で


「そうかい?俺はそうは思わねえさ、お日さんの下で生きてるやつらのがよっぽど綺麗さ
アンタは知ってるかい、高く高く飛んで、直ぐ側にある太陽の綺麗さを
ああいうの見てたら世界が変わるっつーかなんというか、いいもんだぜ!」


アクセルを踏み込むように氷へと真っ直ぐに突っ込ませる、竜の姿が細くなる
弾丸のように翼を折りたたみ面積を小さくすることで空気抵抗を少なくし更に加速
氷の塊が触れるか触れないかのところで、彼は思い切り強く竜の背中を蹴った

空中に飛び上がる彼と、沈み込むように高度を下げる竜
氷の塊を中心に上下二つに別れるように分離すると、そのまま女の上空へと移動するだろう


「んじゃ偶にはアンタに前乗らせて運転させてやるからさ
それでいいだろ?ほんでもって夜は―――っ……!!」


空中で身を捻る、彼のマフラーが夜風に靡き震える
長い髪が夜に解けると、金色がまるで月光のようにきらきらと輝くだろう
貴女を叩き落すように頭上から一撃、蹴りを加えようとするだろう

成功すれば着地するであろう地点には彼の竜がいて
丁度背中に乗っけるように彼のけりが向かう
136 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします2012/10/14(日) 23:34:28.00 ID:6bJCYHZf0
>>135
「なら、誰にでも噛み付きそうな犬には枷がなければいけないわね
野良犬であれば尚更の事――死ぬよりはマシでしょう?
何れ死ぬ運命だとしても、枷を着けられて大人しくしている間は生きていられるわよ」

青年から緩い表情が消えたとなれば、女の笑みも浅くなる
――そして、闇が深くなった事に気付くであろうか
比喩では無く、見て分かるように辺り一帯の夜が強くなる
悪魔達が活動する時。神に背き者達が活動する時――


「なら、貴方は夜の良さを知っているのかしら
ただ唯一の光。月に縋る人達を見るのは滑稽よ
祈っても何をしても、結局は自分がどうにかしなければ生き残れない
そんな世界を見れば、きっとその考えもまた変わるわよ」

細くなった瞳はこちらへと身を躍らせた青年のみを捉えていた
混沌。感情の無い瞳はただ、在るべきモノを写していて
――自分の距離。そして青年の距離でもある“其処”に到達した途端、闇が動く
獲物を待ち構えていた蛇の如く、その鋭い牙を向けるが如く


「偶になんてお断りよ。私は少しも縛られたくないもの
――夜は私の時間。私のみが支配する時
……そう言えばどこだかの神様は光あれ、なんて言ったけど、その前には一体何があったのかしらね?」

一層深い闇が具現化したかと思えば、それは竜の頭へと姿を変えた
丁度、女を口の中に収めるかのように
仮にそのまま蹴りを続けようとするならば、鋭い牙が並んだ口を閉じて青年の脚を食らおうとするだろう
137 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします(関西地方)2012/10/14(日) 23:51:22.73 ID:Tn/vCVf2o
>>136

青年の笑みが消える、軽薄そうな色合いは影に消え表情に焦りの色が見える
足元に出現した竜、このまま攻撃してしまえば確実に脚一本は持っていかれる
―――かと言い、ここで脚を引っ込めようものなら無防備な姿を貴女の前に浮かべるだろう

つぅと彼の額を流れる一筋の冷たい汗、夜に反芻するように光るだろう
彼の金色の髪が煌々と光る、それはまるで夜闇に飲み込まれる月光のようでもあって
か細い灯りに脆弱な灯火、触れるにはあまりにも遠すぎる夜に向かいあって

それでも尚、唇の端が三日月のように揺れた


「……へぇ、中々のこと言うじゃねぇの、そういうの嫌いじゃないな
だけどな、俺もその辺りは中々に良く分かってるつもりだぜ
俺も大概気に入らない事や上手くいかない事は自分の手で切り開いてるつもりだしな!」


彼は体勢を引くどころか脚を振りぬき、正面を向く
その行為の最中にも重力に引かれどんどんと貴女との距離を縮めていくだろう
このままでは脚どころか身全てを食らわれるぐらいに

―――その刹那、彼の指先から炎が巻き上がるだろう


「言ったろ?俺達に枷はねぇ、って――――――」


彼の身が燃え上がり、炎がすぐさま溶けて消える
そしてその場には飛竜の翼を生やした彼の姿が出現するだろう
竜をその身に同化させる―――彼の種族の持つ特技なのであろう

羽ばたきは強く彼の身をイレギュラーに加速させ、真っ直ぐに突っ込んでくる
牙に食われるより早く、その中の貴女を掴もうとして―――


「俺の名はハンス��デストロイヤー�<求[デル
撃墜王の名は伊達じゃねぇぜ……!!」


成功したなら貴女の翼を握り、そのまま地面へと叩きつけようとするだろう
138 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします2012/10/15(月) 00:17:24.70 ID:chQFkXIU0
>>137
女が口の中に居た理由――つまりは、表面だけの偽りの為
食らう力はあれど、消化する能力が無い事
それ故――竜が口を閉じても、青年が砕ける事は無かったであろう
交差し上顎と下顎はそのまま互いにめり込み、やがては砂塵の如く闇へと戻る
クスリ……小さな笑みを一つ、女が零した事に青年は気付くだろうか


「今日は退屈しない、良い夜ね
天使達に林檎を食べさせる時くらい楽しい夜
綺麗な子を唆す時の様に面白い夜――だけど」

その闇が晴れた頃、女の顔に笑みは残っていなかった
凛と澄ました様な表情
誘惑の瞳ともまた違う、悪魔の本質
無感情で無感動。ただ[ピーーー]事のみに意識を持っていったもの
時折視界を遮る邪魔な髪を掻き上げ――その翼を掴ませる


「どんなに楽しくとも朝が来て終わってしまうわ
中途半端なんて詰まらないもの――そろそろ“終わり”を迎えなきゃお話は未完成なまま
そんな詰まらないのは……嫌よ?」

青年が翼を掴める距離――即ち、女が青年に触れる事の出来る距離
女の能力は闇の使役。もしも女のその手が少しでも青年に触れる事が出来たならば、闇で青年を固めてその速度を保ったまま一緒に地面へと墜とす事だろう
或いは、今よりも加速させて――か


「色男さんは墜とした事はあっても墜とされた事は無さそうね
――悪魔という存在を墜とすって言うのも、何か可笑しな響きね
私が堕とす側だというのに」

この状況に於いても、焦った様子は見せない
表情が戻れば、飄々とした様子で現状を楽しんでいる様で
139 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします(関西地方)2012/10/15(月) 00:27:28.78 ID:VRpeJZx5o
>>138

彼の表情に驚愕の色が見える、状況的には彼が圧倒的に有利である筈なのに
それはまた恐れでもあって、同時に歓喜でもあって―――
彼の表情が歪む、微笑みの色に似た嬉しそうな表情で

耳を撫でる貴女の歌声のような吐息、紡ぐ旋律はとても甘くしなやかで
その唄を透かして見える貴女の笑顔の色は、夜闇に浮かぶ暗夜よりも艶やかで
煌々とした黒色を、彼の眼前に浮かべるのだろう

加速していく彼女と彼の身体、風を切る音が深く刻まれていくだろう
落下するスピードは落ちず、衝撃波が渦を巻いて、周囲の空気を歪ませていって
それでも尚、二つの顔はどこか楽しそうであるのだろうか


「……ああ全くさ、少しでも気を抜いちゃ、ころっと堕とされちゃいそうだ
だからこそ、だよ堕とされる前に堕とせって
そうしなきゃその後の楽しみで俺が主導権握れなくなるだろ」


堕落と呼ぶより墜落と呼ぶのが相応しい二つの行軍
貴女の行動の真意は分からない―――何かの策があるのかとも疑う
でも、けれども今は―――そんな貴女が直ぐ側にいることを楽しんで


「だけどやっぱり、こんなイイ女堕とせなくて
色男なんて―――名乗れないだろう?」


何もしなければ、二つの影が地上へと墜落するだろう
140 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします2012/10/15(月) 00:48:03.56 ID:chQFkXIU0
>>139
「――私を堕としたければ可愛い子でも用意しなさい
残念だけど、もう男には飽きてしまったわ
私位長生きすれば、それも仕方ない事でしょう?――ねぇ?」

冗談とも本気とも取れる言葉
姿こそ、人間として当てはめればまだまだ若い――だが、実際の年齢はどうなのか
姿と実年齢が合わない者は多い
この女も、その内の一人なのか
まるで首肯しろと言わんばかりに、女が首を傾げて青年に語りかけ


「私に攻撃を加えたのも貴方が久しい
――直接この“身”を焼くことは出来なかったにしてもね
フフ、もしも真っ向から戦っていたら黒焦げにされちゃってたかもしれないわね
だけど、私を堕とすにはまだ青いわよ……
貴方が語りかけているのはただの黒い霧
掴もうとしても、絶対に掴めない物」

語り終えると、女は“闇で作り出した翼”を拡散させた
青年が掴む物はただの虚空のみとなってしまうだろうか
近づく大地――女は身を翻し、青年の額に一度口づけをすると自らの衝撃を和らげるべく、大きな闇の塊を作り出した
再び翼を創るほどの余裕が無かったための対処
流石にそれで全ての衝撃を吸収させる事は出来ずとも、致命傷は避けられた様
――果たして、青年はどうだろうか
女が離れた今、その身を縛る物は無くなった筈だが
141 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします(関西地方)2012/10/15(月) 00:55:06.15 ID:VRpeJZx5o
>>140

空を切る彼の掌、その手につかめるモノはあまりにも儚くて
一瞬あっけに取られた表情を見せるも、その真意を直ぐに悟って
小さく微笑む声は夜闇に消えて、溶けるような風にまぎれた

眼前に迫る地面、貴女の翼を掴んでいた手が揺れる
彼はその手を額に当てると、そこに残った貴女の感触を抱きしめた


「……そうだな、アンタから見れば俺はまだまだ青二才ってこった
今の俺にはアンタにきっと触れることすらできねぇんだろうな
でもよ、アンタの身は俺の直ぐ側にあったんだ、ほんの直ぐ側に」


―――だから


「次くらいはその色っぽい体、抱きしめてやるよ」


次の瞬間、地面へと叩きつけられる彼の身体、激しい音が大気を揺らす
再び吹き上がった粉塵が、周囲の光を遮ると彼の身体をその中に隠すであろう
ほんの数秒の静寂、そしてそれを切り裂くように竜の咆哮が響く

煙から抜け出し、飛び上がったのは、彼が連れていた飛竜
飛竜はその背中に彼を乗せ、夜空へと舞い上がっていくだろう
そして吼える、おそらくは撤退の意思をしめしているのだろうか

竜の背中の彼は気絶している様子、どうやら衝撃は直接きたようで
ちらりとその目を貴女に向ける飛竜
そして背を向けると、そのまま飛び去っていくだろう

/お疲れ様でしたー
142 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします2012/10/15(月) 01:12:11.60 ID:chQFkXIU0
>>141
「粋な事を言うわね
今ので死ななかったのならその機会があるのかもしれないけど……
さて、私に予言の力が無いから何とも言えないわね」

最早言葉を発さなくなった青年
然れど、死んでいないことは分かる
指先に集う膨大な魔翌力。一点に集中させて、飛竜事薙ごうとするが――
ふと笑みを浮かべて、指先に溜まった魔翌力を消化させた


「あくまで主導権は私――貴方の手が私に触れて良いのかを決めるのも私のみ
ただ……そうね。気が向けば抱かせなくとも触れる事位なら良いわよ
気が向けば、だけど」

飛竜の視線に気付けど、その意までは理解する事は出来ない
飛び去った事を目視すると、女も踵を返した
直ぐ側で控えている堕天した天使
小さく何かを告げると、自身の身体を闇に溶かして何処かへと消え去ってしまう
先ほどまでの名残を残すのは所々焦げた大地と、1つのクレーターのみか

/お疲れですー
143 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします[saga]:2012/10/16(火) 21:40:34.02 ID:wBpPblb40

――黒船・操舵室


「レーダーに高レベルの魔力反応! 空からです! 高速で接近してきます!」

 モニターを監視していたヴァンパイアが声を張り上げる。
 エステバンはしげしげとその様子を眺めた後、口を開く。

「迎撃砲・鳳仙花の砲門を開放しろ、正体の判別は不要です! 撃ち落しなさい!!
 そしてお前はローランド様に報告を! 念のため私も出ます!!」

 エステバンは声を張り上げ、急ぎ足で甲板へと向かう。
 報告の令を受けたヴァンパイアはおっかなびっくり艦長室へと向かった。


――黒船・甲板

 迎撃砲を覆っていた装甲がスライドし、中からアンテナのような形の魔導砲が現れる。
 狙いは空中の賊、ロックオンされ砲門から高出力の術式が展開し、球状の追尾能力を持ったプラズマ弾が連続で放たれた。
144 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします(関西地方)2012/10/16(火) 22:07:22.38 ID:sYeiO/MUo
>>143

眼下の船上にあわてる様子が見て取れ、すばやい動きで砲台が出現した
その様子を見て彼は舌なめずりをする、すっかり癒えた身体がうれしそうに揺れる
なびく金色の髪は、海風をいっぱいに浴びて、潮の香りを微かに感じさせる


「おうおう大層なお出迎えで……!!こりゃ襲い甲斐があるってもんだ
ほんじゃ一著��撃墜王�≠フ面目躍如かましてやろうか!」


栗色の長い髪に灰色のインナー黒のジャケットにジーンズのラフな格好
紺のナローマフラーを身に付けた長身の男性が叫ぶ、声高々に空を舞いながら
彼は5mほどのマスクをつけた飛竜の背に乗りその手綱を手繰ることで空を泳ぐ

プラズマ弾を視認したかと思うと急上昇、ほぼ垂直に空を翔るだろう
そうして自身を追尾するプラズマ弾を一直線上に並ぶように引き寄せ空中で急旋回
飛竜の口内に仕込まれた術式から火球を連射、プラズマ弾を一気になぎ払おうとする


『もーあんまり無茶しちゃだめだよ、私の治癒だって完璧じゃないからね
それに今日だって安静にしてなきゃいけないのに……』


飛竜が雄雄しく空を駆ける音に重ねるように華奢な少女の旋律がつむがれる
そして羽ばたく光輪、月の様に静かな明るさを保った翼が一対、空に躍り出る
小ぶりなその翼は小柄な少女ひとつを支えるので精一杯なのだろう

マリンブルーの長髪の横髪の一部を編みこんだ真紅と紺のオッドアイ
背には一対の純白の翼が彼女の小柄な身を支えるように佇んでいて
起伏に富んだ身体をわずかばかりに覆うエプロンだけを身に纏った少女
素足に履いたブーツをふらふらと揺らしながら彼の後を追いかけている


「はっ、こんな状況なのに安静にしてられっかよ
もしかすると��こいつら�≠フせいで俺たちは一生安静にさせられるかもしれねぇんだ
そんなの納得できっかよ、クソッタレが!」


再び急降下、落ちるような速度で彼は船板へと接近していくだろう
落下していく飛竜は翼をわずかに折りたたみ、空気抵抗を少なくし墜落す
それはまるで落ちていく弾丸のよう、すでにブレーキなど壊れたかのように

そして甲板すれすれで身を起こし、ちょうど滑空するように甲板を駆けるだろう
同時に軌道上に火球を掃射、甲板にダメージを与えようとする
145 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします[saga]:2012/10/16(火) 22:28:31.73 ID:wBpPblb40

 鳳仙花の放ったプラズマ弾は、ワイバーンの放つ火球に次々と撃墜され、
 ぱらぱらと灰となって、青い海へと降り注いでいく。

 そして甲板に滑空するように飛来したワイバーン。
 飛竜の火球弾に次々と甲板は穴を開けられ、鳳仙花も何門か破壊される。

 慌てふためくように鳳仙花は装甲の影に隠れてしまう。
 至近距離での射撃は自爆の可能性があると判断したのだろう。

 代わりに空中に飛来する、1人の黒い影。
 オールバックにした金髪に、左目にはモノクル、大きく広げられた紫の翼の内側には侵略者の証たる黒塗りの五芒星。
 ヴァンパイアのエステバン。

「白でも赤でもなく、青が来るとはね。しかもたった2体で襲撃とは・・・。
 しかし私とて多くの戦争で名を上げ、貴族の座にまで上り詰めた由緒正しき騎士の家系。
 相手にしたことを後悔させてやりましょう!」

 両の掌を合わせ、術式を展開。
 小さな魔方陣の中から、紅く輝く刀身の日本刀が現れる。

「妖刀・紅椿・・・!」

 次に翼を広げ、翼の内側から描き出される巨大な魔方陣から、
 続々と不気味なビスタドールが現れる。
 ビスタドールたちは糸に吊られたようにダラン、と空中に浮かび、手には拳銃やナイフなど多くの凶器を持っていた。

「そして私に加勢しなさい、私の配下たる百のネクロドール!!」

 戦闘の準備を終え、エステバンは賊軍たる2体のワイバーンを追いかける。
 それに追従するように、数多のドール達が飛んでいく。
146 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします(関西地方)2012/10/16(火) 22:39:59.93 ID:sYeiO/MUo
>>145

再び上昇する飛竜、すぐさま其れは宙を駆けていた少女の元へと行くだろう
それはまるで少女を庇う様に、エステバンと真っ直ぐに向き直るような形で
少女がむっとした顔色を表情に浮かべるだろう、何してるのと言いたげで


『むぅ……確かに空中戦はそんなに得意じゃないけど、こんな風に庇うのはやだよ
私だって自分の意思できたんだからねっ遊びで来てるわけじゃないんだから』


少女の言葉に対し青年はしばし、はいはい、と適当に相槌を打っていたが
迫りくるエステバン、そして大量のドールを見て顔色が変わる
曰く獲物を見つけた狩人のような表情で、微かに小さく笑みを浮かべて


「ようし、そこまで言うならヘヴン、そこの人形共は任せるぜ
俺ぁやっぱり大将首とる方が将にあってるんでな!」


答えは聞かず一閃、飛竜の口から炎の奔流が放たれる、エステバンとドール達との間を目掛けて
分断させようとしているのだろう、狙いは簡潔だ、成功するや否や炎を止め、飛竜は加速を始める
エステバンとの距離を一気に詰めようとする行動、大きな羽ばたきが一つ二つ、夜を揺らして

後方の少女もやや不意をつかれたようで、おきた大きな風にわわっ、と体勢を崩しつ
幼い整った顔を真剣そうな色合いに染め上げて、華奢な両手を前へと出すだろう
そして空中に出現する術式、彼女自身の白い翼が大きく羽ばたいた


「よぉ、偉そーなオッサン、随分と良い身なりしてるじゃねぇか
こちとら��スケアクロウ空賊団�≠サういう男はイイ獲物ってやつさ!
そらそら!きっちり!くっきり!食わせてもらうぜ!!」


エステバンとの距離を詰めるといきなり飛竜は食いかかるだろう
貴方の翼を狙った一撃、一瞬で勝負を決めに来る
すれ違いざまに見えるであろう彼の瞳は、鋭い色合いを深く見せていた
147 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします[saga]:2012/10/16(火) 22:58:53.28 ID:wBpPblb40
>>146

「っ!! 分断ですか!?」

 放たれた火炎は狙い通りエステバンと配下のネクロドール達を分断した。
 ネクロドール達はプログラムに従い、ヘヴンと呼ばれた少女の乗るワイバーンを狙う。

 迫りくるワイバーン。
 相手の速さに辟易する間もなく、迫りくる飛竜。
 その一瞬の迷いがエステバンの命運を分けた。

「くぅっ!?」

 食い掛かられる翼、
 しかしエステバンは今にも食い千切られそうなのにも関わらず笑みを浮かべた。

「失敗は許されないんですよ・・・!!」

 エステバンはガードしなかった。
 代わりに狙いが翼だと分かった瞬間から、掴み掛る体勢に移っていた。
 すれ違うその刹那、エステバンは飛竜の首によじ登る。
 蝙蝠のような鉤爪のある足をしっかりと飛竜の鱗に食い込ませて立っていた。

「負けて帰ったのならローランド様に処刑されてしまうのでね!!」

 海上を高速で飛行するワイバーンの上。
 片翼の千切れたヴァンパイアは、飛竜を操作する青年に日本刀で斬りかかった。



「カタカタカタカタ!」
「ギチギチギチギチ!!」

 数多のネクロドールは、縦横無尽に飛び回りながらヘヴンと呼ばれた少女の乗るワイバーンに襲い掛かる。
 ある者は拳銃から魔法弾を発射し、ある者は接近してナイフで刺殺しようとし。

 しばし戦い続けていれば、違和感に気付くだろう。
 特定のドールとドールの間には見えないピアノ線が張られ、
 飛び回るワイバーンを絡め取ろうとしていた!
148 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします(関西地方)2012/10/16(火) 23:11:25.45 ID:sYeiO/MUo
>>147

殺った――――彼の表情に歓喜の色合いが強く浮き出る
それは月光を浴びて、鋭い刃のような深みを見せつつ
膠着する次の表情を鮮やかに見せるのだろう


「っ……アンタ、馬鹿かよ!たく……これだから狂信者ってのはたちが悪い!
負けたら処刑!だからこそ命をかける!それで良いのかよ!あんな奴に命任せてよ!
命の使いどころぐらい……しっかり考えろ!!」


眼前に迫る白刃、銀の斜光が鋭い彩を見せ付けるだろう
彼は咄嗟に飛竜の背中を蹴り飛ばす、そしてその反動で後方に大きく飛んだ
飛竜は人一人乗るので精一杯の大きさだ、当然彼の身は空中に放りだされることになる

彼はすかさず飛竜につながる手綱を握ると、飛竜にぶらさがる形で空中に落ちるだろう
手綱一つで飛竜に支えられている形だ、当然其れを切られると身を放り出される
しかし、貴方に手綱を切られるより先に手綱を手繰り飛竜の前を通る形で飛竜の頭へと移動しようとする
貴方の判断の早さが問われる場面であろう


『……私はえーせーへいだよ?手ぇだしちゃ、いけないんだから
その事わかってない子にはきっつーいお仕置き、いっちゃうから!』


指でピストルの形を作ると、ばーんっと彼女の声が破裂する
ソプラノの旋律は少女らしい淡い歌声に溶けて、しなやかな旋律を生んで
その声につられるように彼女の背中の翼が散弾のように打ち出されるだろう

それはネクロドール達にダメージを与えると共にドール同士を結ぶ糸を切ろうとして
同時に彼女は大きく羽ばたく、強い推進力が生まれ、彼女の身が前方へと大きく跳んで――――
そのまま虚空を蹴ると高く上空へと向かおうとするだろう


/一応ヘヴンはワイバーンじゃなく自分の翼で飛んでる設定です
149 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします[saga]:2012/10/16(火) 23:29:23.12 ID:wBpPblb40
>>148

「黙れ! ローランド様は偉大なるネロ様直属の幹部・六芒星! その意思はネロ様の意志と同じ!!」

 後ろに跳び退いた青年に日本刀が空振る。

「飛び降り!? いったいどこに・・・!」

 手綱を掴んでいるところまでは意識が向かなかったのだろう。
 エステバンから見れば完全に自殺行為に見えた。

 しかし、飛竜が相変わらず飛行していることに気が付くと。
 ライダーはまだ健在だと想像させられる。
 手綱を目で追うと、妙に張りつめられてるのに気が付く。

「下か!!」

 エステバンは日本刀を振り抜き、手綱を断ち切る。


「ガギャァ!」
「ギグガガガガ!!」

 無数の白い散弾はドール達を撃ち抜く。
 砕かれたドール達は破片となって、海へ降り注いだ。

「ギギギギギ!」
「カタカタカタカタ!!」

 しかしドールはまだまだいる。
 半壊したドール達がヘヴンの腕や翼に纏わりつこうとし、
 赤と青のピアノ線で繋がれた並走するドールが、ギロチンのようにヘヴンの首を断ち切ろうとした。


/了解しました!
勘違いすいません!
150 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします(関西地方)[saga]:2012/10/16(火) 23:42:54.85 ID:sYeiO/MUo
>>149

空中を飛行中の飛竜の額を駆け上がる、その行為はかなりの難易度であった
踏ん張る地面が無いため殆ど腕だけの力で自身の身を持ち上げる必要があるのだ
コンマ数秒の差、彼の手が飛竜の頭を掴むと同時に手綱が断ち切られた


「……ネロだローランドだ、俺達は知ったこっちゃねぇよ、ンなコト
その二人がどれだけ偉いんだか、どれだけ強いんだかも同じさ
だがな、その為に他の大陸を攻めるだとか、他の種族を殺すだとか
――――許して良いとは思えなぇんだよな」


飛竜の頭を強く押して飛び上がる、言葉を紡ぎつつ飛竜の頭に乗るだろう
高い身長から貴方と視線を交錯させるであろう彼、鋭い視線が貴方を射抜く
そしてほぼ同時に彼は一歩大きく間合いを詰めるだろう

下方向へと振り下ろされた日本刀が再び攻撃可能になるまでの僅かな時間
その隙間を縫うように彼は接近を試み、そして――――
強く手を蹴り上げ、日本刀を叩き落そうとするだろう


『わっ……もぅ、ちかよら……ないでっ……!!』


分が悪い、と小さく彼女は感じた、エプロンから毀れる肢体に汗が浮かぶ
華奢な両腕はまるで絹糸のよう、細い細い身体が、空中できりもみのように揺れる
ドールたちに纏わりつかれ、大きく高度を落とす、あっ、と苦しそうな声が彼女から零れた

幸か不幸か高度が下がったことによりピアノ線の攻撃は回避できるだろう
しかし、それからが問題だ、このままでは確実にやられてしまう――――そう感じて


『痛いけど……っ……我慢しなきゃ……!!
いくよおっきいの!ルー君、巻き込まれないように気をつけて!』


彼女は纏わりつかれ苦しそうに表情をゆがめながら右の手を空中へと差し出す
ドール達はきっと尖った部分や欠けた部分があるだろう、そしてそれらは彼女の柔和な素肌へと食い込んでいく
もれる吐息の色は艶やかで、其れでいて苦しそうな吐息の香り

彼女の右手の前へと魔方陣が出現すると、膨大な魔力の量を感じるだろう
しかし、発動にはまた数分は必要な代物である、とエステバンには理解できるだろう
――――このまま耐えるつもりなのであろうか
151 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします[saga]:2012/10/17(水) 00:05:20.32 ID:vPoEMmh/0
>>150

「ぐぅ!!」

 蹴り上げられ、日本刀はエステバンの手から零れ落ちてしまう。
 しかしエステバンはクツクツクツと不敵に笑い、接近した青年をその手で掴む。

「フフフフ、薄汚い盗賊風情から説教されるとは思いませんでしたよ。
 黒の種族は至高の種族! だのに我々は不毛の黒の大陸で生きることを余儀なくされている!
 こんなことが認められるか! 偉大なるネロ様は我々をこの五大陸の頂点へと導くのだ!!」

 抱き寄せる様に、青年を掴み掛り、口を大きく開く。
 百の術式を操るヴァンパイア・エステバン。
 彼が最後に頼った武器は、ヴァンパイアの証たるその鋭い牙だった。


「ギチギtギtギ!」
「ギガガガガッガガガ!」

 術者の妄執を表すかのごとく、ドール達も執拗だった。
 纏わりつくドール達はさらに拘束を強め、
 赤と青のドールは再び、ギロチンワイヤーで首を跳ねようと飛来する。


/そろそろ夜も遅いので中断しますかー?
152 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします(関西地方)[sage]:2012/10/17(水) 00:06:20.32 ID:NY5lFMFKo
>>151
/把握ですーではまた明日!
/舞台裏でお呼びしますねー
153 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします[saga]:2012/10/17(水) 00:12:15.41 ID:vPoEMmh/0
/了解でーす
おやすみなさーい
154 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします(関西地方)2012/10/17(水) 20:40:26.19 ID:93IaT5dNo
>>151

エステバンが彼を掴む少し前、ヘヴンの方に動きがあっただろう
翼を羽ばたく回数が増え、それでも高度はどんどんと下に落ちていく彼女
細かい傷跡が刻まれるにつれ表情が曇るも、一対のオッドアイにかげりは無くて


『羽ばたいて――――!!��Heaven's Cry�=x


彼女の手のひらの先に出現した術式、その術式が淡い光に包まれるだろう
そうしてまるで早送りを押したかのように、急速に術式に魔翌力が充填されていく
��時の加速�¥p式に及ぶ範囲の時を加速させることにより巨大な術式を瞬時に発動するのだ

そして破裂する術式、聖なる爆発が、彼女の手のひらを中心に巻き起こる
炸裂は大きな風を生み、強大な熱でドールを溶かすほどにダメージを与えるだろうか
同時に、彼女を中心とした巨大な風の揺れは、上空のエステバンと彼にも及ぶだろう

がくんと急激に高度を落とす飛竜、当然それは二人同時に足場を崩すこととなって
掴まれた彼は咄嗟の判断、一歩前に踏み込みつつ、自身の右腕を横へと向け
噛みかかる貴方に、まるで奉げるよう、自身の二の腕をかみつかせるだろう


「……分かってんのかよ、お前らがなんでその大陸で生きることを強制されてんのか
それはお前らが強いからだよ、強いからこそ、過酷な環境で生きてけんだ
事実お前は強いよ、腕の一本……もってかれんのも覚悟しなきゃいけないほどにな」


しっかりと足を踏ん張り、腕に力を込めようとするだろう
筋肉によって膨張した二の腕は、噛み砕くにはかなりの努力が必要となる
腕を断ち切らせないために、彼は力を入れたのだ


「そんなお前らが、必死に片寄せあって生きてる奴らを蹂躙して良い訳がねーだろうが……っ!!
その偉大なるネロ様に伝えておきな!!――――顔を洗って出直しなってなぁ!!」


彼は思い切り自身の右腕を引き抜こうとするだろう、牙をそのまま引っこ抜くが如く
あまりに野蛮で乱暴な攻撃、それでもただひたすらに彼の信念が込められている
155 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします[saga]:2012/10/17(水) 21:09:09.82 ID:fsmSX5ir0
>>154

「!?」

 急に高度を落とした飛竜に、エステバンは状態をのけぞらせ、
 首を狙った狩猟の牙は、太い腕に噛みつかされることになった。

「ふの(この)・・・っ!!」

 ミシミシと牙は肉を破り、骨を軋ませる。
 いかに鍛え上げられた腕とはいえ、ヴァンパイアの咬筋力ではそれも時間の問題だった。

『弱肉強食! それがこの世のルールでしょう! 弱き者は生きる資格の無い者!
 蹂躪して何が悪い! この世の条理は全て勝者が決めたもの! ならば最も強いネロ様こそが最も正しいのだ!!』

 口は塞がっているため、念話の魔法で語りかける侵略者の思想。
 完全に黒に染まった者には何を言っても届かなかった。

『こんな腕今すぐにでも噛み砕いて・・・!?』

 唐突に投げ出される身体。
 牙を引き抜こうにも、ヴァンパイアの犬歯はそう簡単に頭蓋から抜けるはずもなく。
 結果としてエステバンは身体ごと宙に投げ出されることになった。

 とっさの事にエステバンは口を開いてしまい、そのまま飛竜から投げ出されることになった。

「こ、この・・・っ!!」

 羽ばたこうにも片翼は既に食いちぎられている。
 海へ向けて真っ逆さまに落下していくエステバン。
 そしてもっと悪いことに、

「下から熱!? ・・・これは!!」

 落下先はヘヴンの放った巨大な術式のど真ん中であった。

「馬鹿な、こんな! この私が・・・こんなところで!!」

 必死に羽ばたくもたった1つの翼では、錐揉み回転する程度。
 抵抗の術は無し。
 待ち受けるは、死。

「ネロ様ぁああああああああああああああああああああああああっ!!」

 エステバンはヘヴンの放った巨大な爆炎に飲み込まれた。


 ヘヴンの身体に纏わりついていたドール達が、術者を失ったことでボロボロと崩れ。
 海へ落下していく。

 ボチャン、ボチャンという音が連続した。
156 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします(関西地方)2012/10/17(水) 21:23:15.31 ID:93IaT5dNo
>>155

視線を下へと傾ける彼、そして視界の先に映るエステバンの姿
断末魔に似た念話は彼の脳裏にこびりついて、艶やかな色を伝えた
そうしてガクンとひざを曲げ、飛竜の背中に体勢を崩すだろう


『ルー君!大丈夫!?……ひどい、怪我……してるよ
は、早く直さなくちゃ……っ』


大きく羽ばたいて彼の元へと飛びよってくる少女、表情にはあせりの色が強くて
それもそうだろう、エステバンに噛み付かれていた彼の腕は、深い傷跡が刻まれていて
ほんの少し行動が遅れていたなら食いちぎられていた、と言っても過言ではないほどに

心配そうに近寄って、その腕に触れようとする彼女
小さく唇が動いて、呪文のようなともし火をこぼす――――治療しようとしているのだろう
それを見て、彼は腕を上げると、はき捨てるように紡いだ


「……直すんじゃねぇ、コイツは証だ、アイツという存在の――――たった一つのな
強かった、力もそうだしそれ以上に精神がかなりのモンだったな……
それほど心酔するんだ、ネロってのも、大概のモンなんだろうよ」


彼の言葉に彼女は答えない、ただ静かにうつむき加減で
クソッタレとはき捨てるように紡ぐと、飛竜の頭に軽く手を載せる
進行方向が曲がる、自身の大陸に戻るような軌道へと変化する


「アイツと戦うので精一杯だった俺に、ネロはおろかあの船を落とせるとは思えねぇ
退くぞ、そしてまた――――戦力を整えて戦いをしかける
ほんでアイツに一発言ってやるよ、てめぇの信じたネロってのはこの程度だった、ってな」


発言の真贋は不明で、それでもなお黒い海を渡る鳥のよう
羽ばたく翼の形が、やけに不恰好に見えるのだろうか


/この辺りでしょうか、お疲れ様でしたー
157 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします[saga]:2012/10/17(水) 21:25:57.69 ID:fsmSX5ir0
/お疲れ様でしたー
158 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします[saga]:2012/10/18(木) 22:19:18.00 ID:+azu9cbg0

――黒の大陸、常闇の聖域


 苔が生し、聖域とは名ばかりの崩れ、荒れ果てた神殿を前に。
 あまりにも不似合いなティーセットが広げられていた。
 白いテーブルに、2台の椅子。1つはヒトの座るような小さな物。1つはその数倍はあろう大きさの物。
 銀細工の施された陶磁器をカチャリと鳴らし、器用にお茶の準備をする漆黒のドラゴンがそこには居た。

 底知れぬ悪意と野望、そしてどこか愉しそうな表情で茶葉を蒸している。

「さてさて、送った招待状の時間はもうすぐだ。彼女は来てくれるだろうか?」

 大きな方の椅子に座り、リラックスした様子で神殿を眺める5枚羽の暴君。
 まるで考古学でも嗜んでいるように、邪神の眠るとされる神殿を眺めていた。
159 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします[sagesaga]:2012/10/18(木) 22:37:41.14 ID:GGBIldh5o
>>158
「――――――っと。
 ここでいいのかな?……うん、あってるようだね」

すとん。神殿から少し離れたところで何かが降り立つ音がする。
音の主は、白と黒の一対の翼を持った小柄な少女。
その神秘的な外見は、明らかに黒のものとは言い難く。

ドラゴンの姿を確認すると、その方へ歩みを進めていく。
とは言っても何分身体が小さいため、その歩みは遅く感じられるだろう。
然し歩みを速める事が無いのは、暴君がそれを待てるほどの器を持っていると知っているから。

「……や、招待状出してくれたのあんただよね?
 確かネロとかいったっけ。まったく、黒のドラゴンなんて珍しいもんだ」

小さな椅子に座りつつ、対面するドラゴンに声を掛ける。
本来ならば、暴君を目の前にしてすれば多くの者がそれに臆してしまうだろう。
だが、現在この彼女は確乎不動たる態度で暴君に接している。
まず普通に考えて、その身に暴君を上回る力を秘めているとは考えられないのだが……。
160 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします[saga]:2012/10/18(木) 22:54:55.21 ID:+azu9cbg0
>>159

「フッフッフッ・・・、黒の大陸の出身で私を知らない者がいようとはね。
 多少有名人になったつもりだが、私もまだまだのようだ・・・」

 ネロは愉快そうに笑うと、ティーポットから紅茶を注ぐ。
 鮮血のように鮮やかな赤い液体は、芳しい甘い香りを立ち上らせ、ティーカップへと収まる。

「どうぞ、ダーティリィの花から作られた紅茶だ。
 最近はダーティリィを麻薬だの物騒な事に使うものも多いが、この甘美な香りはクセになるぞ」

 誘うような湯気の立つ文字通り紅色のお茶。
 ネロは自分のカップにも注ぎながら話す。

「さて、君を呼んだのは他でもない。選択して欲しいのだよ」

 ネロは頬を吊り上げ、その野蛮な牙を覗かせる。

「私に服従するか、敵対するかをね」
161 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします[sagesaga]:2012/10/18(木) 23:23:03.17 ID:GGBIldh5o
>>160
「いや、一応私の生まれ白の大陸だし。
 ま、あーんなクソみたいなとこ、今更行きたくもないけどね」

足を組み、カップの取っ手を握り口元に持っていく。
くいっと一口、味わったことのない風味だったらしく、少し表情を歪める。
然し、嫌悪感を示す事は無かったようで。更に少し口に含んだ。

「ん、なかなか。
 紅茶はあんまり飲まないけど、こういう味は好み……

 ……服従?私がすると思ってんの?」

かちゃりとカップを置き、意外そうに頭を傾げる。
何故自分にそんな愚問を投げかけたのか、とでも思っているのだろうか。
自由を求めて黒の大陸にやってきたのだから、服従しないのは当然と言えば当然なのだが。

そんな彼女のその言葉だけ聞けば、『敵対する』と言っているように思えるかもしれない。
だが、その言葉に敵対心や敵意等の攻撃的な感情は含まれていないのだ。
むしろ友好的、或いは協力的と言った感情を込めて話している。

「まあでも、協力ならいいよ。
 私だって、白の手助けするなんて死んでも御免だしね」

言いつつ、置いたカップを握り再度紅茶を口に含む。
その顔は、少し愉しげで。少女らしいと言えば、少女らしいのだろう。
162 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします2012/10/18(木) 23:24:31.81 ID:jW9NQKA90
自然が豊かな緑の大陸――その中、一際木々が繁殖する森の中
日が傾き始めた頃で、木々の間を縫って地面を照らす光は何処か幻想的にも見えるだろうか
倒れた老木に腰を掛ける一人の娘
深い緑色のローブを纏い、膝の上に乗せていた本のページが捲られる音
――新たなページも読み終えたのか、一つ息を吐いて立ち上がった
ずれた眼鏡を中指で上げ直し、何かを考える様に辺りを見渡し始める


「……つまりは、この地であればゴーレムも然程難しくなく作れるという訳ですか
なる程。ならば“赤”程度ならば少なくとも侵略の妨害は出来そうですが……問題は“黒”ですね」

赤、或いは黒の侵略に対抗する一つの部隊の指揮者
それなりに名を挙げている故、知っている者は知っているだろうか
時は夕暮れ、この森を抜ける者もそう珍しくは無いだろう
しかしこの時間にその指揮者が一人で居るのは、少し違和感を覚えるか


「確かに“白”の方々も強力な力を持っているのは間違い有りませんが……
黒と赤、二つとなればやはり力も分散されてしまうのでしょうか
少なくとも黒がそこを見逃すはずが……」

風に遊ばれた金色の髪を鬱陶しそうに背に戻し、また思案をする
声に出された其れは、きっと近くを通りかかる者に聞こえてしまうだろう
尖った耳。そして白い肌を持つエルフの呟きが
163 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします[sage]:2012/10/18(木) 23:36:54.70 ID:6MbN2+VQo
>>162

──がさり、ぼこり。
女が腰掛ける倒木の側の茂みで、そんな音がした。
獣か。或いは、この森では珍しくもないような気もする、動く植物か。

──がさがさ、ぼこ、ざく。

下草をかき分けつつ、まるで農作業でもやっているかのような。
それは、そんな音に聞こえるかもしれなかった。

だがこの不可解な音も、しばらくすれば止まることとなる。
ふと気づけば──老木の近く。女から2mほど離れたところに
クリーム色の斑点がある、大きな大きな赤いキノコがあった。


「……物騒な話ね。グンジンさんなの?」


少女のような声は、他でもないその、毒々しいまでに赤い、子供なら腰掛けられそうなほどのキノコから。
よくよく見れば、キノコの下には少女の頭。緑色のショートヘアに、茶色の瞳の少女だった。
──ドリアード。身体に寄生させた菌類が最大の特徴である、森の民だ。
首から下は地面に埋もれているところを見ると、地面を掘り進んでここまで来たのだろう。
先ほどの音の正体も、納得がいくだろうか。
164 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします[saga]:2012/10/18(木) 23:41:21.46 ID:+azu9cbg0
>>161

「ククク・・・服従でも敵対でもなく、私と対等な関係を望むか。
 確かに理想的な関係だが・・・それでは困るのだよ」

 ネロは愉快そうに笑い、足を組んで膝を抱える。
 その動作はやけにヒトのようで、とてもドラゴンとは思えなかった。

「率直に言おう、私は他の四大陸だけでなく。
 私に服従しない��黒″も攻撃しようと考えている」

 ネロはニタリと赤い目を細くし、言葉を続ける。

「身勝手な殺戮、個人単位での虐殺、気まぐれな侵略・・・それらは私の思い描く素晴らしい戦争にはノイズでしかない。
 ��絶対悪″は唯一無二の存在でなければならない。私以外の悪など不要なのだ」

 クスリと笑い、ネロは言葉を続ける。

「ああ、もちろん私自身が倒して回ることは無いよ。それではまるで私が正義の味方や必要悪のようではないか。
 そこのところは正義の味方や被害者、そして私の配下の��星″・・・必要に応じて代わりに討伐に出てもらうとしよう」

 ネロは冗談交じりのように談笑し、そしてテーブルに依りかかる。

「悪い話ではないと思うがね、君だって我を通す後ろ盾は必要だろう?
 白の管理する秩序をブチ壊してやろうじゃないか。まぁ、私の下で・・・ということになるがね」
165 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします2012/10/18(木) 23:53:40.20 ID:jW9NQKA90
>>163
自らに近寄る音。それを聞けど、娘は構える事はしなかった
害意があって忍び寄るならば音は立てないだろう
直ぐさまにでも斬りかかってくるには、あまりにも遅すぎる――その様な考えを抱いたから

ひょっこりと現れたキノコ。続いて、少女
驚いた様子は無く、然れど何処か興味深そうな視線を注ぎながら、少女の発した言葉を耳に入れる
軍人なのか、と問われれば、娘は一度頷いた事だろう


「物騒と言われればそうなのかもしれませんね。しかし物騒で無ければ、今は身を守ることも出来ず、住む所も守れない時代です
……正確には軍人とは少し違うかもしれませんが、やっている事は同じですね
必要であれば命を奪い、相手を陥れる仕事です」

数歩進んで少女の元へ歩くと、しゃがみ込んで言い聞かせる様に言う事だろう
空いた手はそのキノコに触れようとしているが、やはり許可が無くては触れる事はためらわれる
そんな事で、再び膝の上へと戻され


「貴方は……ドリアードと呼ばれる種の子供でしょうか?
今まで何人かのドリアードと接したこともありますが……皆、其れは異なるのですね
生きている限り成長を続けるのでしょうか……」

ドリアードと呼ばれる種族の知識には疎い
自然の事は分かっても、種族の事となればやはり別なのだろうか
目線を合わせるようにしながらも、注意はその赤々としたキノコに向けられている事には気付くだろうか
166 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします[sagesaga]:2012/10/19(金) 00:07:42.78 ID:CQdiwx/xo
>>164
暴君の話を、少女は黙って聞いている。
表情を変えることなく、また、至極落ちついた様子で。

「……ふぅん。
 なかなかに凄い考え方だ。私でも理解できないや。
 ま……良いよ、別に。あんたの下についても」

軽く笑いつつ紅茶を飲み干し、空になったカップを机に置く。
そして机の上で手を組み顎を乗せ、暴君に妙な笑みを向けつつそう口にする。
非常にあっさりと承諾してしまったが、その笑みから察するに善からぬ事を考えていそうだ。

「それでも、横暴な命とかだったら従う気はさらさらないけどね。
 ……ところでさ、あんたは何を望んでる訳?
 世界を征服したい、とかそんな感じには到底思えないんだけど」

話を聞いてもそれが分からなかったようで。暴君に問いを投げかける。
組んでいた手を離し、椅子の背もたれによりかかる。
167 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします[sage]:2012/10/19(金) 00:13:03.83 ID:TEunJu51o
>>165

「……ふぅん」
「でも確かにそうね。せんそーも、森の食物連鎖も」
「力がある者が勝つって意味じゃ、あまり変わらないもの」


戦争とは森で通常に行われている命のやりとりを少しばかり理不尽にしたようなもの──。
それがきっと、この少女の認識なのだろう。
思い返せば、先ほどの「軍人」と発した言葉には、どこか言い慣れていないような拙さもあった。
本来ドリアードは緑の種族の例にもれず、温厚な性格だ。
少女が未だ大人と呼べぬ年齢に見えるのも相まって──きっと、戦争にあまり関わっていないのだろう。

女が自身のキノコに触ろうとしたのを雰囲気で感じたのか。
何触ろうとしてんの、と言わんばかりに少女の目がじとりと細められる。
どうも無許可で触られるのは、お気に召さないらしい。


「……雛鳥の頭のサイズは親鳥になっても同じまま?」
「カマキリの鎌は大きくなっても幼虫の時とおんなじ大きさなの?」
「30年生きたエルフと50年生きたエルフの身長では、50年生きたほうがいっぱい背が高いのかしら」

「だいたい、私が生まれた時からこんなおっきいキノコと一緒だったら、潰れっちゃうわ」
「なんの本読んでたか知らないけど、意外とそういうことは考えないのね」


口の聞き方を知らないのか。もしくは単純にそういう性格なのか。
緑の大陸の平和を守ってくれているものに対して、それはないだろうというような言葉をぽぉんと少女は投げかける。
世間を知らない子供の戯言と受け取るか、或いは少女の言葉を真剣に聞くかは自由だが──。
まぁ、笑って聞き流したほうが、無難そうではある。
168 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします[saga]:2012/10/19(金) 00:29:52.48 ID:i9yx46J70
>>166

「私が望むものは戦争そのものだよ」

 ネロは赤い目を見開いた。
 その口からは邪悪の言葉が紡がれる。

「私にはね、見えるのだ。心の動き、魂の在り方というモノが。
 そしてそれが最も輝くのは、正義、信念、希望、絶望・・・全てを賭した戦いの中だ」

「見たいのだよ、私は。この五大陸全ての種族が魂を輝かせ、全力で殺し合うその壮大な戯曲が」

 ネロの表情に再び悪意に満ちた笑みが浮かび上がり、
 へばり付くような言葉が少女に纏わりつく。

「ああ、それでいい。私もそんな意地悪はしないさ。
 ・・・だが。今後もし君にとっての��戦うべき相手″��倒すべき敵″が現れた時。
 その時は全力で戦ってもらうよ・・・。是非とも見せてくれ、君の魂の輝きをね」

 ネロはそれだけ言うと、悪辣な笑みは消え失せ。
 やがて人懐っこい笑みを浮かべる。

「無理なお願いを聞いてくれてありがとう。これから仲良くやって行こうじゃないか。
 さて、お代わりはいかがかな?」

 五枚羽の暴君はティーポットを傾ける。
 こうして狂想のお茶会は粛々として閉じ。

 また世界の一部が黒い翼に覆われた。


/お疲れ様でしたー!
169 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします2012/10/19(金) 00:33:44.70 ID:JqRuGUBl0
>>167
「そうですね。その意味では変わりはありませんが……食物連鎖は生きる為
戦争とは利益の為に行われるものです。別に無くても生きていける――筈、なんですけどね
無い者は死にたくなければ力のある者に従う。そんなのは間違っていると私は思うのですが」

その解釈に子供らしさを感じたのか、ふと口元を緩ませた
本来ならば仲間が死ぬ所を見たくも無いし、命を奪いたくも無い
だが、今はそれをしなければこの様な子供にも何時か被害が出てしまうのだろう
――そんな不吉な考えが頭を過ぎるが、直ぐに振り払って
視線に込められた意に気付くと、その手は直ぐに退けられた


「本を読んでいても、私に必要なのは大抵敵の情報と戦略だけ
――貴方達は敵では無い故、知識を身につけなかった……という言い訳では駄目ですか?」

気を悪くした様子も無く、表情を変える事も無い
何やら物騒な言い訳にも聞こえるが、それが娘の理由でもあるのだろう
……図書館で普通の物語を読んでいる事を話さないのは何故か
まるでその言い訳で納得するか訊ねるかのように、首を傾げて


「ただ……私に考えが足りないのは確かな事ですね
その為に貴方達の様な方も巻き添えにしてしまう事がある。そこは反省すべき点です」

変に真面目とでも言うのか、少女の続けた言葉にぽつりと漏らされた
仕方の無い事と言えど、やはり無関係の者を巻き込むのは気に病んでいたのだろう
小さなため息が女の口から零れた
170 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします[saga]:2012/10/19(金) 22:59:09.18 ID:Paoi4NWko
>>169

「……そうだよね」
「力がない者が、ある者に従わなきゃいけないなんて、間違ってる」

「──間違ってるん、だから」


最後にぽつりと呟かれた、少女の言葉は。
それは、純朴なはずの森の民にしては、ひどく怨詛のこもったものだった。
低く、低く紡がれた言葉は──そっと、夕方の風に紛れ込む。
……時は夕刻を過ぎている。
もう、子供なら──村に、或いは親元に、帰ってもいい頃なのに。


「……ねぇ、グンジンさん」
「なんで、鳥は高い高いところまで飛んでいけるの?」
「甘い木の実は、なんで甘いのかな」

そして次に少女が告げたのは、これまたどこか子供らしい疑問だった。
しかし、ただの疑問とは違って──脈絡は全くない。
反省すべき、という言葉にも、女の言い訳に対しても、何も言及せず。
ただただ、少女はゆるりと大きなキノコを傾けて、茶色の眼差しを相手へと向ける。
171 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします2012/10/19(金) 23:24:06.45 ID:JqRuGUBl0
>>170
「いずれにしてもこの状況を変えねばなりません」
「さもなければ、更に多くの犠牲者を出してしまう事になるでしょうから……何としてても、最小限に食い止めなければ」
「もうそろそろ黒の者達が動き出す時間です――貴方は」

途中まで言いかけて、口を噤む
最後の言葉に込められた感情
もう殆ど日が沈みかけているにも関わらず、未だこの場所に居る少女
ご両親の元に帰らなくても良いのですか。とは言う事が出来なかった
この状況で娘が至った考えが戦争孤児の他ならないから
下手をすれば、傷口を抉るような事になるかも知れない――故に、黙る
しかし勘が良いのならば、その事も直ぐに察しがつくだろうか


「鳥は私たちのように地上を走ったりは出来ません
しかし、その代償に空を自由に飛ぶ権利を得たのですよ
木の実が甘いのは木が守ってくれているからです
誰も守ってくれなければ、大きくもなれませんし、熟す事も出来ません」

そんな純粋な問いに返された答えは、本当の理由とはかけ離れているだろう
相手が子供だからその様に言っているわけでは無く、娘がそうであれば良いと思っていたから
これもまた、純粋な答えか
堅い表情も、僅かに柔らかくなる
やはり感情を素直に出さないのか、笑みでは無いが
172 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします[saga]:2012/10/20(土) 01:00:38.87 ID:wt4EWxNzo
>>171

「……守ってるだけじゃ、だめなんだと思う」
「燃えてる木をなんとかするには、火を消すだけじゃダメ」
「火種を消すか──それか、周りに広がらないよう、木を切り倒さなきゃ、ね?」


──それは、何に対する例えなのだろうか。
今が戦争中だということを考えれば、きっと答えはすぐに分かるはず。

少女は、相手が何を言おうとしていたか理解していたのだろう。
それでいて尚、穏やかではないことを女に仄めかす。
もし本当に彼女が孤児であれば。黒か赤の種族に両親を殺されているのであれば。
殺した相手を恨むのも、憎むのも、殺してやりたいと思うのは当然であった。
そして──その感情を長く持てば持つほど、仇の種族そのものを嫌悪するのは、健全なことだった。
黒の種族なんて死ねばいいのに、なんて。少女はまだ、語りはしないけれど。


「──ううん、違うよ」


子供が、子供らしくあればいい。
そんな女の希望は、きっとこの言葉で打ち砕かれる。


「鳥は歩くのは下手だけど、空は飛べる。それは、身体が軽くて、風に乗れるから」
「木の実が甘いのは、自分を食べてくれる動物を引き寄せるため」
「そうすることで、種を遠くまで運ばせるの」

「本を読まなくったって、ただ森で生きるだけで、私はいろんなことを森から教えてもらったの」
「森はね、すごいんだよ。本にないこと、教えてくれるんだから」

「グンジンさん。私は字、読めないけど。本を読むのも、いいと思うよ」
「でもね、もうちょっと、森のことも考えてみたらどうかな」
「敵のことも、戦い方も。私は全部ぜんぶ、森から教えてもらったもん」


罠を張ることも、隠れることも、逃げることも。
捕食者の弱点も、死角も、習性も。
生きることに繋がることは、全部森から学んできた。
だからこそ、少女は思うのだ。
森から教わったことはきっと、侵略者と戦うときにだって、役に立つ、と。

──少女は、見た目はまだ少しばかり幼いけれど。
それでも、その思考は……生きることに関する考えは、同い年の少年少女たちよりもあった。
両親がいなくなったその日から。少女は独り立ちを余儀なくされていたのだから。
173 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします2012/10/20(土) 04:45:09.77 ID:xI81W9BV0
>>172
「然れどその木を斬るには力も必要ですし何よりも……木にだって命は有るものです
そう簡単に斬られてはくれないのですよ
木が大きければ大きいほどに、時間は必要となってしまうのです」

その元の木を絶ち、火事が広がらないこと――即ち、黒と赤を止める事が己の仕事
そんな意味が、娘の言葉には含まれているのだろうか
しかし相手は木というには余りにも大きすぎる存在
時間、人手――その他の全てが揃っても、切り倒せるか分からない存在
ふと、顔を顰めて見せた
それでも行わなければ、森全てが失われてしまうだろうと


「……私の家系は代々とある能力を受け継いできました
謂わば、森自体を我が物とする力。と言った方が早いのかも知れませんが」

少女の語りを聞き終えて、娘は静かに言葉を返した
ざわざわと、木々がざわめき始める
風かと思うても、肌に感じる事が無ければ、枝々を揺らす其れが無い事は分かる
ならば、原因は何か
――よく見れば、娘の切れ長の瞳の奥に何かの紋章の様な浮かんでいるのが見えるだろうか


「それでも、もう一度訊ねてみても良さそうですね
何時か来るであろう黒の手がここへ伸ばされる、その前に」

娘が戦う理由――人々や自分の大陸を守りたいからというのは勿論の事
其れと同じくらい、この森も守りたいからと言う理由を挙げられるだろう
産まれた時からその能力を携え――謂わば、森は身体の一部と言っても過言では無いのだから
決意とも思える娘の語り。やがて、視線は空へと移されて


「……そろそろ帰らねば隊の皆が心配してしまいますね
困ったことが起きたときは何時でも助けますよ。遠慮無く何時でも言って下さい」

それが私の仕事でもありますから。語尾にそう付け加えて。ゆっくりと背中を向ける事だろう
一度だけ木が大きくしなると、やがては元の静かな森へと戻り行く
娘が座っていた所に置かれていた一枚の長方形の紙
其処には女の名や連絡先が記されていて――故意かは、分からないが

/とりあえず一区切りで御願いします!
/ありがとう御座いましたー!
174 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします[saga]:2012/10/21(日) 23:39:48.30 ID:plFWCBp10

――青の大陸 首都・アトランティス


「ヒハヒハヒハ! みんな慌ててる、慌ててる!」

 ネロの送った脅迫まがいの手紙は、効果覿面だったようである。
 ドームに覆われた都市、アトランティスでは慌てて店じまいをする店主やら、
 寝耳に水の避難警告に慌てて避難する住民達でごった返していた。

 そんな様子を高い塔の上から楽しそうに眺める一人の怪人。
 頭にはかぼちゃのような被り物にギスギスの身体にボロの服、
 わずかに露出した手足は植物の蔦が螺旋状に絡まって作られていた。

 スケアリィ・プラント。
 黒の大陸の汚染された土によって生まれた悪意の植物。
 その稀有な種族の被り物には侵略者の証たる黒塗りの五角形が刻まれていた。

「ヒハヒハヒハ! みんな戦争は終わったと、まさか自分達が! ここが狙われるなど!
 考えもしなかったみたいだねぇ! ヒハヒハヒハ!!」
175 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします2012/10/21(日) 23:54:26.10 ID:W01iSOsm0
>>174
「そうねぇ……仮に終結したとしても、中には其れを快く思わない者も居る」
「そんな事も考えられなかった人達の自業自得と言えばそれまでね」

愉快そうに嗤う怪人の側から、よく澄んだ声でそんな語りが聞こえる事だろう
見れば、つい先程まで居なかった者の姿が見えるだろうか
黒いドレスを纏った女――黒の気配はすれど、組織のメンバーでない事はその怪人自身が一番分かる事だろう


「中立を謳っていても私たち黒に対して警戒している人が多いのも事実
――まぁ、その気持ちも分からないでは無いのだけれど
さて、今日は仮装大会の日だったかしら?生憎、何も準備はしてないのよね」

女の口から漏れた問い
恐らくは怪人のその様について言っているのだろうか
どちらかと言えば“緑”の様な姿
しかし怪人から漂う其れは紛う事なき“黒”の気配
――何よりも、黒で塗られた五角形がその事を感じ取らせるのか
逃げ惑う人々を虚空――正しくは闇を具現化した者に座り、哀れな様子を眺めてい
176 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします[saga]:2012/10/22(月) 00:13:05.25 ID:+Pu4VSe90
>>175

「ヒハ? どなたですかあなた? 見るからに黒なのに我等が同志ではありませんね!」

 かぼちゃ頭の怪人は首を傾げ、蔦で形作られた指を指す。

「ワタシの名はハロウィン! ネグロ・アラにおける��Magician(魔術師)″のカードを持つ者!!」

 かぼちゃ頭は聞かれてもいないのに高らかに名乗りを上げる。

「あ、知ってましたか? ネグロ・アラでは実力者にはその者を象徴するカードが与えられるのです!
 つまりワタシはネグロ・アラでは少なくとも22番目に強いんですよ!!
 偉大なるネロ様は当然��Emperor(皇帝)″、今作戦を行っているローランド様は��Chariot(戦車)"、
 ワタシの同僚のエステバンというヴァンパイアは��Hanged Man(吊られた男)"!
 そんなワタシに気安く話しかけるなど! 身の程知らずもいい所ですねぇ!」

 ハロウィンは指先から、拳大の火球を生み出すと。
 女の居る場所へ投げつける。

 火球は大きさの割に激しく炸裂し、女の居る場所は焔が吹き出し。
 塔の一室は熱風が吹き抜けた。

「まぁこの程度で怪我をする相手でもないんでしょう!?」

 あいさつ代わり、と言ったところか。
 一歩間違えれば相手を殺してしまう術式であいさつとは実に黒らしい。
177 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします2012/10/22(月) 00:34:34.56 ID:IijCN9gK0
>>176
「黒に同志も何もあったものじゃ無いわよ
邪魔であれば同じ大陸の者でも[ピーーー]し――――奪う。ああ、そんな考えの下では同志といえるかねしれないわね」

指を……否、自分に向けられた蔦を眺めながら、女は応えた
誰かの下に着くのも退屈だものねぇ――そんな言葉を語尾に付け加えると、怪人の続けた言葉が耳を通り


「タロットにでも当てはめてるのかしら?
――フフ、私たち黒に正義や太陽があるというのも滑稽な話かも知れないけれど
そうねぇ……今の間だけ、貴方に対してのジョーカー。イレギュラーとでもなってあげましょうか?
それとも、貴方を焼き払う貴方だけの――――」

炸裂。辺りが煙に包まれ、其れが晴れた頃にはもう女の姿は其処には無かった
――気付けば、再び怪人の側。後ろへと位置を変えているが、その服に焦げた様子は見られない
火球が放たれた際、転移魔法でも使ったのか……それとも、女の能力か


「“運命の輪”になってあげましようか?
最期の影。貴方の生死に関係する存在――それは其れで面白いとは思わない?
カードゲームで一人だけずっと強い手札を持っていては、ゲームも詰まらなくなってしまうものね」

女の顔に常に張り付いている芝居がかった微笑
右腕を振り上げて――其れを下ろした頃には、女の腕に纏わり付くような青き焔が辺りを照らす
その言葉が本気なのか冗談めいた物なのか、表情から読み取るのは難しい事だろう
――クスと嗤うと、首を傾げた
貴方は何て応えるのか。とでも言うように
178 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします[saga]:2012/10/22(月) 00:47:48.03 ID:+Pu4VSe90
>>177

「ヒハァ!?」

 突如現れた女に驚き、慌てて距離を取る。
 その移動は宙を滑るようで、まさに魔術師のようであった。

「ひ、ヒハハハハハハ! 冗談はナシですよ!
 私はここで死ぬわけはないのです! あなた如きにワタシが殺せるわけないのです!」

 慌てながらも、どこか余裕のある様子のハロウィン。
 大方相手は直接戦闘には不向きであるとでも考えているのだろう。

「あなたもじっくり時間をかけてネグロ・アラに勧誘するべきでしょうが、
 今のワタシには仕事があるのです! あなたを相手にしている時間は無い! だから率直に聞きますよ!」

 窓へ向けてふわりと浮かび、窓を背に立つ。
 この言葉が交わされればすぐにでもそこから移動する気なのだろう。

「あなたは偉大なるネロ様の意志を支持しますか!
 ネグロ・アラに入る気はありませんか!
 ネロ様は偉大なお方だ! これから起こる大きな戦争では必ず勝者になれますよ!」
179 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします2012/10/22(月) 01:04:22.03 ID:IijCN9gK0
>>178
「訳が無い――でも断定は出来ない
そうねぇ……殺せなくとも、二度とその脚で歩けなくして、永劫腕を動かせなくする位は出来るかも知れないわね
雑草抜きとか枝きりは他の子達に任せているのだけれど……偶には私自らしても良いかもしれないわね」

立ち上がり、手を重ねれば焔を左にも移動させる
女に纏わり付く二つの焔は術者を焼くこと無く、しかしその熱を持って辺りの物を焦がしながら、上へ上へと登ろうとしていた
一度振られた腕は宙に残り火を残しているところを見れば、只の焔と異なることが分かるだろうか


「なら私も率直に断るわ――嫌よ。誰かに従うなんて
誰が勝とうが負けようが知った事じゃ無いわ。私や住み所に危害を加えるならば、それ以上の力を以て反撃するのみ
貴方がもっと私好みであれば膝の上で“囁やいてあげた”のだけれど、今でさえ私の子達が庭の手入れで苦労しているのだから無理ねぇ
――さて、苅るよりも焼いた方が手っ取り早いのかもしれないわね。これ位根を張っているならば」

焔を放つのでは無く、己の腕に纏わせた理由――それは正確に相手を焼き払う為
地面をつま先で蹴れば、宙で身を半回転捻りながら拳の裏を怪人へ当てようとするだろう
ある意味、意表を突くような攻撃
しかし、元より警戒していたならば避けるのは難しくは無いだろうか
仮に当たったとすれば――回転の勢い。そして植物を焼く其れが重なり、如何ほどの痛手を負わせることになるのか
180 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします[saga]:2012/10/22(月) 01:17:07.05 ID:+Pu4VSe90
>>179

「ヒハァ!? ワタシが雑草ですってぇ!
 失礼な! 何様のつもりなのですかあなたはっ!!」

 女の発言はこの怪人の頭に来る所があったのだろう。
 正直、どこが地雷なのかわからない。

 そのまま焔を纏った両腕を、被り物越しに眺めている。

「だから言ったでしょう、あなた如きにワタシが殺せるわけないとっ!」

 蔦のようなうでが降りぬかれたその瞬間。
 女の両腕から青い炎が��盗まれた"ように消え失せた。

「ヒハハハハハ! ネグロ・アラのカード持ちを甘く見過ぎですよ!
 ましてやワタシは炎の専門家ですからねぇ!!」

 ハロウィンはふわりと窓から飛び出し、宙に浮かぶ。

「ここで戦ってワタシの力を見せつけてやりたいところですが、
 さっきも言ったように生憎時間がない! 遊ぶのはまた今度にしてあげますよ!!」

 そのままピュンと消え失せた。
181 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします2012/10/22(月) 01:33:50.94 ID:IijCN9gK0
>>180
「ああ、雑草という名の草は無い――だったかしらね
ならば言葉を変えましょうか
何れ朽ちるなら今朽ちてもいいんじゃないかしら?」

怒った様子を見れば、悪びれた様子も無く楽しそうに嗤った
人を怒らせて楽しむとは、この女の性格を簡単にうかがい知る事が出来る
悪魔。という点を置いても性格は悪いのだろうか


「あら本当ね。なら、燃やせないのならば一本一本苅っていくしか無いのかしらねぇ……とても長い作業になりそうね
先ずはそのめんどくさい腕から――」

焔の消えた指先を舐めると、辺りの闇を其処に集わせた
やがて其れは鋭利な刃を持った一本の鎌と化すが、それが振られる事は無く――


「……そう、なら今度まで遊びの続きはお預けという訳ね
楽しみが伸ばされるのは嫌いじゃ無いわ――まるで、クリスマスを待つ子供みたいな気持ちで
――私達にはクリスマスは関係なかったかしらね」

姿を消したことを確認すると、自らも闇で作り出した翼を生やし、塔から飛び降りた
後に一人の奇妙な女が一人のマーメイドの子供の手を引いて連れて行った――なんて噂が立つだろうが、その真偽は分からない
182 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします[saga]:2012/10/25(木) 21:48:52.26 ID:kEouSZU+0

――黒船・艦長室

「グル・・・」

 竜人が鼻をひくつかせた。
 その後、目をギラ付かせる。
 これはカン。しかしカンと呼ぶにはあまりに確証に近いモノ。

 確実に居る、この船の中に。

 "黒以外"が。

「グロロロロロ・・・!」

 ならば刈り取ろう。
 自分に課せられた命はこの貨物船をアトランティスまで届け、
 これから行われる要求を確実に通す為にある。

 任務は確実に遂行する。
 邪魔する者は排除のみ。


【六芒星・特務作戦司令官 Code:Chariot ローランド・エメリッヒ】
  
183 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします[saga]:2012/10/29(月) 22:16:54.16 ID:Fr8hOgDr0

 黒船出航から数日前。


――白の大陸・某所

 円卓を囲み、静かに坐する者達が居た。
 その者達の種族の大半は天使-マルアハ-が占め、
 また例外なく皆、なんらかの武器を傍らに携えていた。

 彼らは"円卓の騎士"、白の大陸の象徴的存在であり、
 白の掲げる正義の代行者であった。

「代理として私が進行を務めさせていただく。と、言っても語るべきことはあまりないと思うがね」

 立ち上がったのは槍を携えたヒポグリフのバードマン。
 彼は"鉄翼のアキュリス"。
 装甲化された翼は、立ち上がった時に重厚な音を鳴らした。

「我々がようやく掴んだ平和を、ようやく手に入れた安らかな世界を。故意に破壊しようとする者達が居る。
 諸君らも知っているだろう、ネグロ・アラだ。我々は平和的な解決に尽力してきたが、それらはことごとく踏みにじられた」

 ガン、と机に拳を叩きつける。
 全身から憤怒を通り越した憎悪とも言うべき感情が溢れ出していた。

「そしてついに! 奴等は大胆な作戦に出た! 配布した資料に書いてある通り、奴等はよりにもよって海上路の主導権を要求してきた!
 しかも要求が通らなければ、先の戦争では最後まで中立の立場であった青の大陸を襲撃すると言い出した!!
 これは完全に五大陸全てに対する宣戦布告だ! 緑と協力を結んでる暇などない! 我々白は全勢力を以て、ネグロ・アラの本拠地を特定し、一刻も早く殲滅するべきだ!!」

 怒りに任せた言葉でアキュリスは資料を円卓に叩きつけた。
184 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします[sage]:2012/10/29(月) 22:38:35.52 ID:x+IQ3Pbdo
>>183

「──エトワールは発言します」


激情を見せる議長に対し、そっと投げられたのは少女の声だった。
議長とは正反対の、静かな静かなその声は──少女のことをよく知らないものであれば、無機質にも聞こえたかもしれない。
少女の名はエトワール・バティスト。
数ヶ月ほど前に円卓の騎士となった、まだまだ新参者の騎士ではあった。
ワインレッドの長髪と瞳を持ち、純白の衣の下には紅き咒式を纏わせている若き騎士。
術を操る戦闘スタイルが故に、大仰な武器は持ちあわせてはいないものの──
それでも、円卓を囲う騎士には違いなかった。


「ネグロ・アラを滅するのは当然のこと」
「ですが、それには我々≪騎士≫のみの力のみでは不十分と判断します」
「かの組織の首領であるネロの手によって征空騎士団が滅したのは記憶に新しいこと」
「なればこそ──他種族の協力こそが最も合理的な結論であると考えます」


少女の左耳を飾るシルバーピアスが、少女の呼吸に併せてちりりと証明を反射する。
協力を結ぶ暇などないと語る議長とはまた違った少女の主張。
それは、緑とも。場合によっては青や赤、或いは黒とも共闘体制をとることも考えるその主張。
果たして他の騎士たちは、それを受け入れるかどうか──。
185 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします2012/10/29(月) 22:56:23.40 ID:d8vtpRPI0
>>183>>184
「ボクとしてはあんまり大規模な戦いは嫌ですよー……痛いのも嫌いですし
でも、確かに折角守ってきた平和が乱されるのは嫌ですね」

円卓の下からひょっこりと顔を覗かせ、自身の席に飛び座ったのは少女――と間違えられても可笑しくない少年
身体に纏わり付いている草はつい先程まで外で遊んでいたことを明白にさせ……銀色の髪に掴まる様にして丸まっている鼠のような動物については最早真面目に会議に出席する気があるのかと問い詰めたくなるのも仕方ない
何よりも、毎回若干遅れてはこそこそと入ってくるのだから、一部の者に呆れられても仕方ないだろうか


「あ、でもでも、緑の人達との作戦も無しに攻めるのにはボクは反対ですよ
敵の戦略も作戦も分からない上に、もしかしたら只の陽動でボク等の戦力を計るだけかも知れませんし
それに、沢山居た方が楽し――コホン。心強いじゃないですか
数は力とも言いますし、数は力とも言われてましたよー……あ、まだ敵さんの正確な数も掴んでいない状態でしたっけ」

全く正反対の性格を持っている少年――オグマ=アルルと呼ばれる者は、その顔に柔和な笑みを浮かべながら答えた
視線は誰を見ているわけでも無く、頭上で今にも眠ろうとしている小動物を見ようと動いていて
然れど、思考はキチンと議題に向けられているのであろう。そう取れるような発言
器用にも、その状態のままで首を傾げて


「あれ?そういえばエトワールさんの言う他の種族は緑だけ……と言うわけでは無いんですか?
青は中立を誓っているみたいですし――今回は例外かも知れませんけど
黒と赤に至っては、ボク達白と協定を結んでいる緑を攻めようとしていますよー?」

よもや白の者がその事を知らないはずがあるまい――だからこそ浮かんだ疑問
まるで少女の発言は緑の者以外とも協定を結ぶことを進言しているよう。だからこそ、引っ掛かったのだろう
少年の金色の瞳が、一瞬だけエトワールへと向けられる
それはまるで、これ以上首を傾げることが出来ない代わりとして――即ち、疑問の体現を視線に表しているようで
186 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします2012/10/29(月) 23:08:29.38 ID:3K7781obo
>>183
>>184
>>185

アキュリスの言葉が響くその場所、増悪吐かれる声の対角に位置する席に腰掛け資料に目を通す者がいる

白銀の鎧に長く絹糸を思わせる白い長髪、血染めの赤き翼を持つマルアハ、その名は “イスラ”
激しい言葉が響く場所、資料を手に持ち、ただ黙ってそれを眺める面には表立った感情は無く
感情を露わに言葉を吐くアキュリスと比べ温度差がある様に見えるかも知れないが

彼女の真横、そのテーブルに添えられた大剣に刻まれた傷、そして彼女自身に刻まれた傷
何より彼女がその席にいる事自体、白の大陸、その円卓を囲む騎士である事を物語るものであり


「一刻も早い殲滅、それに越したことは無いだろうが、エトワールの言うように我々のみでは難しいだろう」
「征空程の者達がネロ一人に消されたという事もある、ただ無闇に出るだけでは2の舞」
「最悪無駄な犠牲を出すだけに終わり白の防衛力を著しく落とす結果になるかもしれん」

「その為我らは他大陸と明確な同盟を組み、防御にも備える必要もあると思うのだが…どうだろうか?」


イスラの意見はネグロ・アラを一刻も早く殲滅する事には反対ではない
だがここで我々のみが動いて失敗でもしてみろと、そうなれば白の大陸はどうなるのだ、と言う事であろう
それゆえ青、緑との連携は必須、攻めの手を増やす上でも、そして白を護る為にも…そういう事である


「あと……同盟の話ではあるが私は赤、黒とも連携をとれるならばそうした方が良いとは思っている」
「何を考えているかわからん連中ではあるがな…赤、黒にも平和を望む者達がいる事には変わりなかろう」

「それに寄り前の戦争が抑えられたのだ、今後の黒、赤の暴走を抑えるためにその様な者が、赤や黒の大陸にいるならば協力しない手は無い」
187 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします[saga]:2012/10/29(月) 23:10:24.52 ID:Fr8hOgDr0
>>184>>185

 あくまで冷静なエトワールの発言に、さらにヒートアップするアキュリス。

「・・・分の悪い戦いであることは百も承知だ! だが征空騎士団とてその被我戦力差を承知で果然と立ち向かったではないか!! 我々が行かずにどうする!?
 それにネグロ・アラとて黒の大陸の一枚岩の組織ではない! 前の戦争の黒の大陸全てを相手にするよりは、ずっと倒すことは容易なはずだ!!」

 あまりにも絵空事、理想論。
 しかし比較的熱血な騎士の中にはアキュリスの意見に賛同する者も居た。

「それに・・・、それに我々白以外にどの種族に戦ってくれと頼めばいいのだ!?」

 そしてひょっこりと現れたオグマの意見にアキュリスは青筋を浮かべた。

「先の大戦で最も痛みを受けた緑の民をこれ以上戦争に巻き込みたくはない!
 中立な立場を崩さない青が協力を受けるとは思えんし、そもそも青に戦う力などないだろう!
 戦争は剣を持つ者だけが弱者の前に立って行うべきだ! 被害を最小限にするのは迅速な殲滅が一番だろう!!」

 熱弁を振うアキュリス。
 緑とすら協定を結ばないという姿勢には、首を傾げる騎士たちも多かったが。

 そして緑だけではないのか、という疑問にピクリとアキュリスは反応した。

「そうだ・・・、まさか赤や黒と協定を結ぶ、などということは考えていないだろうな?」

 アキュリスの鷹のような目が、ギロリとエトワールを睨みつけた。

188 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします[sage]:2012/10/29(月) 23:21:52.28 ID:x+IQ3Pbdo
>>185-187

遅れてきたオグマに対し、エトワールはちらりとそちらを見るだけだった。
興味が無いわけではなだろう、が──今は個人的興味よりも議論を優先させたかったのだろう。

エトワールの声に答えるように紡がれたイスラの言葉に対しては、ほんの少しだけ彼女は表情を緩めた。
以前、黒の大陸へ赴いた際に抜け落ちたワインレッドは既に戻っている。
その証拠に、エトワールはイスラに対する信頼の感情を視線で表した。


「──エトワールは答えます」


普段は自らのことをエティ、と呼ぶ少女。
しかし今回は一人称がエトワールになっているのは、会議という場を考えてのことだろうか。


「確かに緑は攻められようとしています、が──それは以前ほどの比ではありません」
「そもそも赤は思想が単純。ただ、戦えればいいというものは多い」
「黒は厄介なものですが、それでもネグロ・アラの思想を嫌うものもいるはずと判断します」
「そのような者たち相手ならば、一時的な休戦も可能なのでは」
「緑は協定を結んでいます。加えて青は、自らの管轄区域が攻められようとしている」

「──対ネグロ・アラという唯一点に関して言うのであれば」
「全種族は、その利害は一致しているのでは、と考えます」


──言葉はあくまでも、冷徹に。機械的に。
淡々と述べられる言葉たちに、或いは何人かが反感を抱く可能性もあった。
それでも、合理性を是とする少女は自らの意見を変える様子はない。


「エトワールは、諫言します」
「アキュリス議長──自らのプライドか、≪円卓の騎士≫壊滅か」
「どちらかを取れと言われれば、エトワールは地に膝をつき仇敵へ助けを乞うことも辞さない」

「──それが、弱者のためならば」


真に弱者を思うのであれば、プライドを盾にするよりも共に戦える相手を探す。
騎士とは弱者を護るために存在するものであり──。
自らのプライドや以前の敵というそれだけの拘りのために、弱者をも死に至らせるようなことは間違っている。
言葉にはしなかったものの、エトワールの紅き視線はそう語っているようでもあった。
189 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします[saga]:2012/10/29(月) 23:27:18.27 ID:Fr8hOgDr0
>>186

 イスラの意見、もし組めるなら赤と黒ともという発言は。
 完全にアキュリスの正義の逆鱗に触れた。

「あ、赤と・・・黒ともだと・・・! ふざけるな、ふざけるなよ・・・!!」

 アキュリスは完全に理性を失い、対面に座るイスラに怒鳴り散らした。

「ふざけるな!! あんな奴等と手を組むなどと言うことがあってたまるか!!
 万歩譲って赤はいいとしよう・・・だが! 黒は! 黒だけは絶対にありえん!!
 奴等は一人残らず殺戮者や、冒涜者だ!! 黒に平和を望むものなど居てたまるか!!」

「見ろ!! ネグロ・アラだけじゃないんだよ!!」

 アキュリスは懐にしまってあったぶ厚い紙の束を叩きつける。

「スピリットの集落の集団拉致!! エルフの村の大虐殺!!
 これらはみんな、黒の悪人共の・・・特に理由もない、ただ快楽の為だけに行われたんだぞ!!
 そもそも先の大戦で赤を焚き付けたのは他ならぬ黒ではないか!!」

「黒など生かしておくべきではなかった! 先の大戦で黒は一人残らず処刑するべきだったんだ!!」
190 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします2012/10/29(月) 23:36:32.05 ID:d8vtpRPI0
>>186-188
「ボクもどっちかと言えばイスラさんとエトワールさん寄りの考えですね―
だって実力差を承知の上で戦って結局得たのは惨敗という結果と敵が強いなーという情報ですよ
このままボク達がまた戦えば、強いなーが凄く強いなーに変わっちゃうだけじゃ無いですか
戦いに義は大切ですが、一番大切なのは得る事が出来るものだとボクは思いますよ」

青筋を立てたことを認めると、口笛を吹きながら視線を彼方へと変えた
結局は白のみが戦うことには反対しているのだろう


「お二人の言葉から考えると、黒と赤にも今の状況に反感を持っている人が居るようにも思えるんですけど……
でも、黒の人たちに交渉に行くには余りにも危険すぎると想いますよ。誰がその組織の一員か分かりませんし……下手をすれば、作戦自体が筒抜けになってしまう可能性もあると想います
赤は赤で黒に良いように使われているように見えるからどうにか出来るかも知れませんけど……
青の人たちは確かに協力してくれそうですね。わざわざ指を咥えて見ている事はなさそうですし、何よりも人手が欲しいとは想いますよ」

あくまで五大陸間の現状を踏まえた上での発言
何処かへ遠征したりする事は無いので、少年なりの憶測ともとれようか
言い終えれば、何かを考える様にしてストローを咥え、乾いた喉を潤すために水を通らせ――


「まぁ、ボクなりの考え……ですけど
アキュリスさんは黒に良いイメージを持っていなさそうですけど……ボクも其れは同感ですね
だけれど、エトワールさんとイスラさんは協定を取れるなら取るべきだと言っていますし……
ボクから見れば、黒は只の乱暴者ですし、そんな乱暴者の人たちにしか会ったことがありませんよー
多分、アキュリスさんも同じなんじゃ無いかなと想いますけど……
お二人は、そんな黒とはまた他の黒の人と会ったことがあるんですか?」

偏見――と表すには少し異なるか
黒に良いイメージを抱かない者も多いのが事実
然れど、二人の言っている言葉を虚とも想えない
それ故に、別な思想を抱く“黒”と会ったことがあるのだろうか。という問いを投げかけた
191 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします2012/10/30(火) 01:07:55.41 ID:Iqfq/7hfo
>>188
>>189
>>190

アキュリスの視線がエトワールへ向けられた様子を視界に入れるもイスラがその行為を止める事はしなかった
一度その方向へと向けられた瞳は直ぐ様、資料えと戻り、その全てに目を通したのだろうか
徐に目の前の机へと資料を置き、喋り始めたエトワールの言葉に耳を傾け
エトワールの最後の言葉を耳に入れた一瞬、イスラの口元が微笑んだように少しばかり緩くなるが
それも刹那。

怒号の矛先が変わり自身に向けられるそれに対して、彼女はまた感情を出すことは無い騎士のものへとなっていて
どちらかと言えば普段は感情的な彼女ではあるのだが、今の対応はそれが会議であるからであろうか
イスラとしてではなく、白の騎士として白にのみ忠誠を誓ったものとして皆の意見を聞きたいからこその行動であるのだろうか


「少し落ち着いてはどうだアキュリス」
「私は今の現状を白の騎士としてそう判断したまで、現に私は会ったことがある」
「骸骨であったか、部下をを愛し、その大陸を愛していた、そんな者もいるのだ、私達と同じようにな」
「ゆえに、全てに置いてそう決めつけるのは少々強引過ぎるとは思うが?」

と、だけアキュリスに向かい告げ、その行動はさらなる逆鱗を生むかもしれない
しかし今までイスラが経験してきた事実を並べた上での騎士としての言葉であり

「だがアキュリス、お前の言っていることも分からない訳ではない」

そう言ってオグマ=アルル、その者の方へと一度顔を向け、再び戻しアキュリスへとその白い瞳を向け


「先程も言った通りだな、前回の戦争でさえ反感を持っている者がいた」
「あと、知っているかも知れないがあの布告の後だ、私は事実を確かめる為、黒の大陸えと単身でのりこんだ」
「アキュリス、お前の言う “迅速な殲滅”を目的とした上でな、今思うと愚行以外の何でも無い事だが…今はどうでもいい事…」

「さて、本題に戻るがオグマ=アルル、結論から言うと、黒の大陸内でネグロ・アラに対して全てのものが賛同していると言う事は無いだろう」
「黒の大陸での事だ、黒の者2人と会いその者達との戦闘になったセレナーデとヴァンパイア…その会話の中やつらの口論も気になってな…」
「奴等の会話を聞いていると………そうだな、我々と同じだ、様々なものがいる」

「ゆえに、黒の大陸、という一つの括りだけでその住民全てを乱暴者と捕えるのは早計で有るのではないかと思う」
「それにな…昔ある悪魔に言われたことがある、お前も同じ侵略者だと…な、只の言葉であるといえばそれで終わりだが…」
「……私達が黒に対して偏見を持っていると同じく、あちら側もそう思っているのだろうな…」
「そんな者達を引き込めれるならば…それは大きな力となる…戦力的にも十分な力をもつ者達だ…」


まず一人は、スケルトン、そしてセレナーデ、そして悪魔、イスラが今まで会ってきた者達、黒の者達は只の乱暴者では無いものたちもいたと
我々と同じ思想、大陸を守りたいと思うもの達がいるのではと、そう投げかけた


「しかし……黒、赤、元々我らが大陸に侵略行為を働いていた連中だ…」
「オグマ=アルル、そうだな、下手をすれば…、黒との交渉は危険過ぎる事も事実…‥難しいだろう…」


そうして、アルル、アキュリスに向けられていた視線を外し
右手が自身の額へと当てられ考えを詰まらせたように小さな溜息が零れた


「………兎に角、この資料にもある通り…奴等は青にも手を出そうとしている」
「アキュリス、お前の言うとおりこれは全てに対する宣戦布告ととって良いだろう……」

「そしてエトワール=バティスト、オグマ=アルルの言葉の通り」
「現状取るべき措置は緑との協定を明確にする事、そして青との協定も難しいことでは無いだろう…」
「アグラ・ネロ、あいつらの狙いが青も含まれているならば…青にとっても悪い話では無いはずだ……」
「そして布告の内容からすれば…だ…奴等は黒を主に世界を統制しようとしている、赤も使いようによっては引きこむ事も可能であるかもしれん…」

そしてその視線を面を下へと向けたまま、言葉を並べ
その言葉は先までのイスラの平坦なものとは違い苦悩に覆われた様に重く遅いものであった

/多分私の順番であると思うのでここに投下を…違っていたなら言って頂ければとおもいます
/遅れて申し訳ないです…
192 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします[sage]:2012/10/30(火) 19:24:39.69 ID:mQIoii4Go
>>189-191

「エトワールは返答します……オグマ」
「エトワールが出会った黒の種族は2──性格には1」
「イスラが出会ったセレナーデ、という種族と交戦した際の経験です」

「彼女は──あの、セレナーデは」
「敵でありながらも、エトワールに同情をしていました」
「その心の内は不明ではあります。けれど」
「けれど──ただの乱暴者が、白の種族の命を気にかけるとも思えません」

「……エティは、分からないのです」
「何故、黒の種族が、エティとの戦闘において……」
「“そんな咒式使ってたら遅かれ早かれ死んでしまう”と発言したのか。その、真意が」


最後の言葉は、消え入るように。
迷子の子供が紡ぐかのように語られた彼女の台詞は──酷く、切なげなものだった。
敵とされる者が、自身の命を心配するという行為が、嘘偽りなく、エトワールには理解できなかったのだ。
しかし、そのセレナーデとの戦闘を経たからこそ。
黒の種族全てが悪に染まってはいないのではないか、と思う結論に至ったのだ。


「そして──アキュリス議長」
「エトワールはこの経験を持ってして、全ての種族には例外とされるものがいることを主張します」
「それは黒だけではない。白も、同じことが言えます」

「……エトワールは、知っています」
「かつて、元老院に所属する1名と≪騎士≫を殺害した、当時の≪騎士≫を」
「会ったのは1度のみではあります。しかしそれは──」
「我々白き種族も、規律を守れるものばかりではないことの証明になるのでは」


──その≪騎士≫と出会ったのは、随分と前のことだった。
当然のことながら既に堕天していたが、それでも。
その堕天した≪騎士≫の口調からは、白が清廉潔白なものばかりではないという事実が語られた。
≪騎士≫の目からみれば、当時の元老院や≪円卓≫は腐敗していたものらしい。
それが真実かどうかは分からないが──そのために≪騎士≫は自らの手を赤く染め、翼を黒く染めた。
しかしエトワールは、今はそのことを語らない。
それを話してしまえば、ただでさえ冷静さを欠いているアキュリスに何が起こるのかが分からなかったから。
193 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします[saga]:2012/10/30(火) 20:22:16.11 ID:/waMf8Ob0
>>190-192

「・・・っ!」

 アキュリスはギリギリと歯噛みをしながら、円卓を見渡した。
 多勢の騎士達はアキュリスと目が合いそうになると、申し訳無さそうに視線を逸らすばかりだった。

「・・・ああ、認めよう! ネグロ・アラは強大だ! 確かに我々白が単独で挑めば返り討ちが良い所だろう!」

 アキュリスは乱暴に椅子に座り込み、資料を再び手に取る。

「だが間に合うというのか! 奴等は既に作戦の準備を整えている!
 悠長に同盟を組んでいる間にも・・・いや、こうして会議をしている間にも!
 奴等はアトランティスへ向けて出航しているかもしれないんだぞ!」

 アキュリスは深くため息をついて頭を抱える。

 できれば我々だけで解決したかった。
 これ以上、平和に暮らす緑の民を戦争に巻き込みたくは無かった。
 だが・・・そんな理想を通せるほど状況は甘くはないようだ。

「そして同盟を組むとして・・・。青はすぐにでも応じるだろう。
 緑も・・・前の大戦の事もある、応じてくれるだろう。
 だが、赤と黒の同盟は不可能だと私は考える」

 アキュリスは先ほどの激情とは打って変わり、冷静さを讃えた鋭い目でイスラを見据えた。

「ネグロ・アラはまだ赤に手を出してはいない。それどころか黒と赤は未だに友好関係にある。
 仮に交渉に漕ぎ着けたとしても、我々と同盟を結ぶことでの赤にメリットは無い。
 それに赤の居住域の問題も根本的には解決はしていない。協力を要請しても領地や植民地を要求されるのが関の山だ」

 そして、と続けて今度はエトワールを見据える。

「例外があるというがな、ほんの一部の例外の為に黒の民を信頼するのは土台無理だ。
 なにより発端である黒を味方に引き入れることで全体の士気にも影響する。
 下手を打てば同盟の中で疑心暗鬼が爆発して、ネグロ・アラよりも先に味方に殺されるぞ」

「無理なんだよ、少なくとも私には不可能だ。黒を仲間だなんて思えない」
194 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします2012/10/30(火) 23:19:00.59 ID:eGY1ETCG0
>>191-193
やはり考える事は三者三様
――いや、内の二人は殆ど同じ様な考えを持って居るか
既に眠ってしまった小動物を両手で包みながら、思案をする
果たして本当に黒や赤とも同盟を結んで良いのだろうかと

「確かに黒にも赤にも、白にだってイレギュラーは居るかも知れませんねー
……でも、数が少ないから例外と呼ばれるのかもしれませんよ
確かにボク達もあちらから見れば侵略者ですが、正確には奪われた土地を奪い返す奪還者……かなぁ?」

今一自分の言葉には自信を持つことが出来ない
例え奪われたとしても、それは既に相手の物となっている、ならばそれを又奪うのであれば、確かに侵略者であろう
続けて紡ぐ言葉を見つけようとするも、悩ましげなうなり声しか口から漏れることは無かった
カラカラと、氷を転がす音
其れを見つめながら、ふと口を開き


「イスラさんとエトワールさんが言う黒の人は、少ないかも知れません
戦いが好きじゃ無い赤が居れば、悪事が嫌いな黒だって――――確かに白を憎んで白を[ピーーー]人が居たって変な事じゃありませんもんね
外に行くお二人が言う事ならば、ボクは賛成ですよ
赤は条件を提示すれば、ある程度は引き込めるかも知れません
戦うのが好きであれば、必然的に強い人と戦いたくなるでしょうから……今の状況であれば使わない手は無いと想いますよ
問題は黒ですが……組織に入っていない人は、もしかしたら美味しい蜜を啜るために見ているだけかも知れませんよ
もしかしたら白と黒が疲弊したところで一気に畳みかけてくる別な組織もいるかもしれません」

一気に言い終えると、短く息を吐く
先程転がしていた氷の雫を円卓の上に一つ垂らして、指先で遊び始めた
じっとしていれられない性分なのか、会議という堅苦しい場所が苦手なのか
一滴の雫を二分割すると――また、一つに合わせて


「ですがアキュリスさん、このまま行けばきっと単純な力同士の戦いだけじゃ無く、情報戦だって入ってきますよ
そうなったら、どちらにせよ僅かでも疑心暗鬼が発生してしまうだけです。ならば、早い段階で取り入れて対処も出来るようにしておいた方が良いとは想いますけど……
それに、さっきはこっちの作戦が筒抜けになると言いましたが、もし本当にイスラさん達の言う黒が仲間になってくれたなら、組織の情報が逐一こっちに入ってくるようになりますよ?
正直、ボクだって黒や赤の人は怖いからあまり好きじゃ無いです。でも、だからといって全部を嫌いになるのはどうかな
何て、お二人の話を聞いていて想いました」

二人の話を聞いて考えが改まったのか、黒と赤も取り入れてみてはどうか。とアキュリスに提案した
手元は丸まっている動物の毛並みを整えている
然れど視線は真っ直ぐと向けられていて
195 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします2012/10/31(水) 00:36:31.48 ID:MGoZ3LAZo
>>192
>>193
>>194

はじめにエトワールの言った内容は同時刻、同じ場所にいたイスラにとっても初めて耳にする内容であり
言葉を聞いたイスラの額に当てた落ち着きのない手が止まり、ふと床に向けていたその顔も自然に光の方へと上げられる
イスラの視線は何処を見る事も無く、まるで何かを考えこむかの様に何処でもない一点を見つめるも刹那
アキュリス、オグマの言葉にその視線は言葉の方向へと向けられ

「いや長い大戦の中、我々白は黒へと攻めた事もある、お互い他人の事は言えないものさ……と、まぁこの話は今は置いておこう」
「エトワール・バティストの言うようにその様な言葉をかける者もいる彼等を一として見ていた今までの認識を変える必要があると私は思う」
「それにより無駄な犠牲、無駄な敵対を避ける事ができる…今回に限ったことではなく…これからもな…」

理由がどうであれ、白も黒へと攻めた事はある、それが戦争であるのだと言葉を付け加えるもそれ以上の言葉は止め
本題であると言わんばかりにその視線を再び周囲に配る


「確かに、今の状態のまま我々が黒、赤に同盟を求めるのは現実的なものではない」
「そこでだ……青を引き込む事がここで重要になってくる、元々中立であった青にネグロ・アラは攻めこむと言うのだ」
「その時点でネグロ・アラと青の大陸間に対立が生まれるのは明白、そしてその仲間であるかも知れない赤、黒との貿易を続けようとは思うまい」

「いや……続けることは出来ないと思っても良いだろう、青には全ての大陸へ繋がる移動手段がある」
「この状態で貿易、移動手段を提供し続けるならばどうなる?」
「全世界に戦争を宣言している連中のいる場所と取引している青と我々白の上層、緑が関係を続けようと思うなどは考えにくい」
「そして青もその事は分かっているはず…」

「今の状況は例外であるが…青がそうであるように本来中立であるあの大陸に対して我々が動く必要は無いのだ」



間を一望、両膝を机に置き淡々続く言葉はひとつの間も空けずその場にただ流れていく


「ゆえに現在青へとネグロ・アラが攻めているのは好都合でもある」
「確かに我々と同盟を結ぶ事に赤、黒にはメリットは無いだろう…寧ろ我々のデメリットが大きい可能性も考えられる」
「だが…青とはどうだ…?中立であり全てに対して様々な易をなす青との関係が崩れると……枯れた大地の住民はどうなるか、何を思うのか…」

「住む場所も無い、ネグロ・アラの起こした行動により、青からの物品も途絶える……その者達の取る行動は二つに一つ…」
「平和を望むもの、そうではないもの……自ずと答えが…な。」


そして今イスラの話している内容は全て青が赤、黒への交易を遮断する事を前提に話していると言うこと

そして彼女は、青が交易を止めない場合の対処は言ってはいないのだ。
それは口にするには躊躇する内容であるのだろうか、言葉を連ねる程重くその心境を物語る様に重くなり
イスラの表情、仕草に現れるのだ、青が落とされると白へ緑の侵入が用意になるそれを止めるには……
最悪の場合であるが覚悟決めるべきであるのかもしれないと、その考えは巡っている
他に良い案が有るのかもしれない、故にここでその言葉を臭わせて
196 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします[sage]:2012/10/31(水) 21:30:46.68 ID:YJbHe9kro
>>193-196

「──ならば。エトワールは、思案します」


凛、と。エトワールの纏う銀の耳飾りが光を弾く。
自分以外の意見を聞き理解した上で、彼女が合理性を基盤に次の思考を導き出す。
其処にあるのは事実を基にした結論。感情を利用した推論。
若き騎士たる緋色の天使。彼女が持つのは恐らく、若さ故の非情。


「緑と青に優先的な同盟を。そうすることで少なくとも我々の利は得られる」
「加えて不安要素の大きい黒と赤への海路の遮断を青へ要求」
「黒と赤──これらは一先ずの、放置を」

「物品の供給源か、或いは≪ネグロ・アラ(せんそう)≫か」
「二者択一を迫られれば、彼らは自ずとどちらかへ擦り寄るはず」
「アキュリス議長の言い分も理解可能。ならば、黒と赤を白に関わらせなければよい話」
「ネグロ・アラ側へつかなかった赤や黒を青へとつかせておけば──士気もさほど落ちないはず」


「……そうすれば、黒と赤の地へ赴く必要も、同盟を結ぶ理由もない」


「──青が交易を続行し、ネグロ・アラの手に落ちた場合は……エトワールはしばし思索します」
「……、…………、………………」
「いえ、違いますね」

「──そうなる前に、ネグロ・アラに青の大陸を諦めてもらうしかない」
「相手は黒。となれば海上戦に長けているとは判断しづらいと考えます」
「ならば、白・緑・青の水上や空中で戦えるものを選別し、青へ向かうネグロ・アラ部隊を殲滅する」
「全力で海上航路を取りに来るほど──ネロも愚帝ではないかと」
「そして青にはこう告げればいい──次は、協力しない、と」


そもそもの発端である、海上航路。
そこを取らせなければ、今後の展開は幾分か楽になるとエトワールは判断する。
ネロ一人に斃された征空部隊ではあるが、それでもネロは敵将。
すなわち前線に出る可能性はほとんどない、と彼女は踏んだのだ。
更には次にネグロ・アラが青を襲った時は白は静観するという脅しをかけることで、青の交易を白の望み通りにする。否、させる。
そうすることで或る程度、黒と赤のコントロールをも取れるという──危うい均衡の上に成り立つ策を、エトワールは紡いだのだ。
197 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします[saga]:2012/10/31(水) 22:34:32.56 ID:HgdnsK2p0
>>194-196

「青と緑の同盟を結ぶことに反対の者は挙手を」

 反対する者は居なかった。
 どうやら返り討ちにあった時のリスクを考えると、青や緑と組むことに反対する者はいないようだ。

 我々は・・・弱い。そして敵は強大だ。
 その事実は騎士団全体に重くのしかかっていた。

 そして、赤や黒との同盟の話になると。
 アキュリスは露骨に額にしわを寄せた。
 頭を掻き毟って、深くため息を吐く。
 イメージするのは、かつて殺し合った黒や赤と共に背を預け戦場で戦う自分の姿・・・。

 自嘲するようにアキュリスはクククと肩を揺らす。


 ありえない。


 記憶にこびり付いて離れない、無力な民を嗤いながら惨殺していく黒の民。
 住む場所も命の営みの場所も関係なく、徹底的に破壊し、焼き払った赤の民。

 とても仲間だなんて、同じ世界の住人だなんて思えなかった。

「・・・黒や赤と手を組むのに賛成の者は挙手をしてくれ」

 手を上げる騎士はまばらだった。
 イスラやエトワールのような考えを持つ者は少なかった。
 先の大戦で掘られた溝はあまりに深かった。

「そういうわけだ、とりあえず赤と黒の同盟は保留だ。私も妨害したりはしない。
 そこまでこちらに引き込みたいというなら。もしもやるとしたら・・・"貴様等だけでやれ"」

 それは白の総意だった。
 潔癖、故に清濁合わせ飲むなど器用なことなどできることもなく。

 故に、青の大陸を強迫するというエトワールの案には大きく引っかかった。

「貴様正気か・・・? 本気で言っているのかエトワール・バティスト!
 白・緑・青の連合でネグロ・アラを迎え撃つのはいい!
 だが防衛力を盾にして青を脅すなど・・・それではネグロ・アラのやってることと同じではないか!!」

 アキュリスは立ち上がり、イスラを指さす。

「それにイスラ! 貴様もよく考えろ! これ以上赤を追い詰めればネグロ・アラだけでなく赤も戦争を起こすことになるぞ!!
 いや、単独で戦争を起こすならまだいい! もし追い詰められた赤の民とネグロ・アラが結びついてみろ! 前回とは比べ物にならないほど大きな戦争になるぞ!!」

 完全に頭に血の登ったアキュリスは口汚く二人を罵倒する。

「イスラ、エトワール・バティスト! 貴様等の意見はやけに同調しすぎているな!
 任務でもずいぶん同伴行動が多いようだな・・・貴様等は同性愛者か!!」
198 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします[sage]:2012/10/31(水) 22:39:31.85 ID:YJbHe9kro
──赤の大陸・首都アグニリアスの郊外

赤の大陸の、首都。その郊外には4階建ての大きな宿屋があった。
いつ訪ねてもそこの宿屋は満員御礼。そのくせどこかしらが破壊されているというその宿屋は──
──赤の大陸に複数存在するギルドのひとつ、≪ブラッディ・クレメンス≫の本拠地だった。
赤の種族のみで構成されているこのギルドは荒くれ者が多い中規模ギルド。
リーダーが存在せず、指揮能力が高いものがリーダーの代わりを臨機応変に果たすこの一風変わったギルドは……
ある意味では、仲間と信頼関係がある、ともいえるギルドでもあった。

そんな、ギルド本拠地の宿屋──の、近くの岩場。


「──ネグロ・アラ、か……」


身の丈以上もある巨大な機械剣を抱え、胡座をかいて何かを考えこむスチームメタルの女性が居た。
肌は褐色、髪は白。水色の瞳はしかし右目だけしかなく──左顔の上半分は機械化していた。
黒のタンクトップにカーゴパンツ、軍靴といった傭兵の服装から、彼女がギルドの一員であることはなんとなく想像つくだろうか。
スチームメタルは近頃大陸を騒がせる、とある組織の名をぼそりと呟き、広がる荒野へ視線を傾けた。
199 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします2012/10/31(水) 22:50:37.11 ID:wehrv7QP0
 >>195-197
「わぁ、まるで兵糧攻めですねー……
でもですね、確かに供給を無くせば士気を落とす人も居るでしょうし、状況改善に向けて動こうとする人も居ると想います
ですが、それはプライドが高い黒――や赤全体に言える事では無いと想いますよー
下手をすれば黒と赤が今以上に団結して、青を中心としてまた大きな戦争が起きてしまうかも知れませんし、もしかしたら緑や白に略奪をしにくるかもしれません
白や青に協力するくらいなら、選民主義の組織に荷担して大陸全てを一気に黒で支配しようともするかもしれません
そうしたらボク達は黒と赤。そして組織を相手にしなければいけなくなります
――組織に青を取られれば、逆にボク達ならどうするでしょうか
きっと相手も同じ事を考えて、白や緑に供給を絶つはずです
そして青を奪還するなら、やっぱりおのずと青が主戦場になってしまうとは想いますが……」

考え得るのは最悪のケース
青を奪われ、又奪い返すとなれば無関係な人々が犠牲になる事は避けられないであろう
ましてや相手は手段を問わない可能性がある
結果的には一度収まった戦争の新たな火種に成りかねないという事
頬に人差し指の腹を当てながら視線を泳がせ、案を捻るべく頭を回転させ始める
もしも海上戦に敗れたら――その事は今は頭からはじき出し、勝利をした場合のみを考え


「とは言っても、これは完全に供給を無くした場合のボクなりに考えた結果ですけど……
完全に供給を無くしちゃうから反発する様なものですし、逆に今の数分の一という供給を与えれば目先の利益を求める人たちだけで内乱を起こす可能性もあります
――もしもそれらを全てネグロ・アラという組織が手に入れれば、幾ら実力社会でも反感を買うことは必至ですよ
もしも其れを餌に他の人を釣るような事をすれば更に効果はありそうですね
黒の誰が組織の一員か分からない以上、そうやって一気に炙り出しちゃうのもありかなー……なんて想ったのですがどうでしょう?
エトワールさんの言っていた元騎士が向こう側に着かれればボク達は少なからず不利になります
ですが……そうやって中立を保たせれば、ボク達の味方にならなくとも自ら組織を壊すために動いてくれると想うのですけど」

即ち、わざと少量の供給をすれば纏まった組織――ネグロ・アラが其れを全て奪う可能性もある
そうなればしめた物。少量の物資を全て奪えば反感を抱くのは勿論の事、気に食わず組織を破壊させようとする者も現れるはず
こちらからコンタクトを取らなくとも、後は勝手に向こうでも事が進むだろう
――中には青や白を標的にする者も居るだろうが、其れ等はいつも通りの対処
そんな発言を終えた頃に、アキュリスの言葉
空気を読まず、「はいはーい」何て言葉と共に手を挙げて


「同じ様な考えを持つのは一緒に行動していれば仕方の無いことだと想いますよー
それに、気が合う人同士で一緒に行動する方が傷を負うリスクも死んじゃう可能性だって少ないはずです
アキュリスさんだって、円卓の誰かが欠けるのは嫌でしょう?
ボクだって誰かが居なくなるのは凄く嫌ですし
ボクから見れば戦友同士――こう言ったら聞こえが悪いですがさっきは余り感情を見せないエトワールさんの表情も一瞬だけ和らいだように見えましたけど、気を許せる親友とでも言うんじゃ無いですか―?
それにですねアキュリスさん……“疑心暗鬼”を無くしたいならば、少しは感情も押さえるべきです
ほらほら、そんな事じゃあ机も椅子も壊れちゃいますよ?」

ニコニコと笑いながら言う少年
臆した様子も無く悪びれている様子も無い、ただ想ったことを述べているだけ
――器用なことにも、小指で小動物の耳を塞いで起こさないようにしているが
200 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします[saga]:2012/10/31(水) 22:53:33.32 ID:HgdnsK2p0
>>198

「はっはっはっ! 困ったね、真っちゃん! 傭兵の仕事を探したんだが全く見つからないよ!」

 とある建物から陽気に笑いながらドラゴニュートが出てくる。
 パナマハットにカーキ色の探検服と、その姿は傭兵というより冒険家だった。

 ドラゴニュートが出てきたのは傭兵の求人案内所。
 戦争の時には賑わったこの場所も、今では閑古鳥である。

 そしてドラゴニュートの後ろについてくる大きな一つ目のクラゲのようなシーブレイン。
 瑞々しさを湛えながらも、どこか栄養不足で痩せているように見えた。

 ドラゴニュートはスチームメタルの乙女を目に止めると、
 にこやかに笑いながら近寄ってきた。

「やあやあ、初めまして! スチームメタルのお嬢さん。
 私の名はマクガイバー! しがない冒険野郎さ! こっちは相棒の真っちゃんだ!」

 シーブレインはペコリとブヨブヨの頭を下げる。
 マクガイバーと名乗ったドラゴニュートは、キラリと目を輝かせた。

「盗み聞きするつもりは無かったんだけどね・・・。あなたはさっきネグロ・アラと言ったかい?」
201 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします2012/10/31(水) 23:13:20.80 ID:GF7kpQ/DO
>>200

近くの建物から聞こえた陽気な声。
それを右から左へ聞き流し、「妙に平和な日もあるものだ──」なんて思いに耽ろうとしたその時だった。


「……、おじょ、────っ?」


いきなり声をかけられ、更にはその第一声が「お嬢さん」
お嬢さんと呼ばれる程優雅な見た目も性格もしていないことを自覚している彼女は表情をひきつらせ
「貴様なんの病気だそれは果たしてうわ言かとりあえずお嬢さんたぁ誰のことだ貴様の目は節穴か」──というような視線をぶっ刺しに行った。
──とはいえ、端から見れば少々言葉を詰まらせ酷い目付きで睨み付けているようにしか見えないのだが。


「あ、あぁ──こほん。確かに、言った」
「ただの独り言ではあるが、な」


──どうやら、相手のテンションに押されぎみらしい。
頬をひきつらせながらそう答える彼女は──ペースを乱されているせいか、名すら紡ぐことが出来ずにいた。

/まさかのマグガイバーちゃんの人でかなりびびってる
/携帯からー
202 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします[saga]:2012/10/31(水) 23:20:44.04 ID:HgdnsK2p0
>>201

 相手の慌てふためく様子に、にこやかにほほ笑むと。
 隣、いいかい? と聞いて岩を背に隣へ立つ。

「実は私はネグロ・アラに所属しようかと思ってね」

 マクガイバーは軽い調子で、まるで軽い世間話のように。
 とんでもないことを口走った。
203 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします2012/10/31(水) 23:22:19.53 ID:MGoZ3LAZo
>>196
>>197
>>198

「そういう事だエトワール。バティスト──。」
「今城の大陸は緑の大陸とはパイプが繋がっているも同然、それは今まで通りに続けていけば良い」

「緑を守る、我らの大陸の為にな……そして青だ、青が落ちる事で白、緑が被害を受けることは明白」
「我々は白、そして緑を守るためにネグロ・アラの作戦を潰し」

「後は青に “お願い” すればいい……何も可笑しいことはない極々当然の行為をな…」

イスラが己の口を閉じると同時にその瞼も閉る、必要なのは言葉であり不安な表情や他の態度ではない
ゆえにイスラは耳を立て次の言葉を待つ
そしてその耳に聞こえたものは白としての非情をもった言葉、その後の罵倒もイスラはただ瞼を閉じ
己の静寂を持ち続け、次の幼い言葉にえと耳を持っていく


「青を脅す…?それは違うなアキュリス我々は今青の手により窮地を迎えているのだ」
「その白へ対する不安因子に対し当然の対処をするまでこちらにはれっきとした理由がある」

「黒、赤が自由に出入りできる青の大陸、そして白の大陸への航路がある青の大陸」
「その様なものと繋がっている中、白の民が安心してここで生活できると思うか?」
「ゆえに我々はその安全性を確保しなければならないのだ、確認しなければならないのだ、交渉であり提案である」


「それに…前は青を信じれるのか?先の戦争では中立と立場を持ちやっている事はまるで死の商人──。」
「我々は飽く迄白として青に接すれば良い、青は味方では無いのだよアキュリス」
「その中立が我々に危害を加える事を認識させねばならんのだ、もっとも──青もそれは分かっているとは思うがな。」


その瞳の中に光が戻ったその時に、視線が向けられたのはアキュリスであり


「それにどちらにせよ、奴等は赤をも飲み込もうとするだろう」
「遅かれ早かれ……そうなるのではないか? ではそうなる前にネグロ・アラの起こした行動による防衛策とするのがごく自然であり当然の事」
「それによる内部分裂を誘発する、オグマ・アルルの言ったように先に炙りだしてしまえばいいのだ、明確でない事以上にやり難い事はない」
「その結果でアグラ・ネロ側に回るものなど最初から害でしか無いのだからな…」


その視線を外すこと無く、イスラは淡々とアキュリスへと言葉を返していく
そしてイスラの溜息がその場にちいさく零れ

「だが……全ての交易を遮断するのは流石に横暴かもしらんな、オグマ・アルルの言うように一定の供給を保たせるのも良いだろう」
「助かるよ…基調な意見だ……」

「では青にその供給量においての判断は任せると、そうすれば青の面子も立つだろう」
「もう一同がこれは飽く迄…互いの利害を考えた上での提案だとしてな」

オグマ・アルルへ向けた声が消えたその後はイスラが更に言葉を重ねることは無かった
最後にアキュリスが飛ばしたその罵声にイスラが表立って反論することもなく、反応する事も無いのである
それは今の議題とは関係のないことであるがゆえ、それに答える必要がないがゆえの事
204 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします2012/10/31(水) 23:53:29.97 ID:GF7kpQ/DO
>>197>>199>>203

「エトワールは頷きます」
「確かに、オグマの案はエトワールの其れより良案──」
「経験の少ないエトワールには思い付かなかった考えです。恐れ入ります」
「きつく縛り上げるよりも、動けるが逃げられない程度の拘束の方が反発は少ない──道理です」


口を僅かに開けてこくこくと頷くエトワールではあったが──しかし。
彼女からしてみれば、新たな考えに出会い感心しているところなのに
「口を僅かに開けて」いるがために、だいぶアホっぽく見えるかもしれなかった。

しかし切り替えは早いのか。
次いで自らの意見を紡ぐときは表情をしっかりと元の機械的なものへと戻し──


「さて──エトワールは判断します」
「黒と赤との同盟は否定的な方が多いとなると、オグマの提案が現状、最良かと」
「青と緑への協力体制を整え、ネグロ・アラ海上部隊への迎撃準備をするというのが当面すべきこと、でしょうか?」
「エトワールの認識が誤っていたのであれば、どうか訂正をお願いします」

「──そして、議長」
「議長とは常に公平な態度を取る者がなる、とエトワールは認識しています」
「あなたにそれが出来ているとは到底、思えません」
「……これ以上議長を続けるのであれば、罵倒ではなく建設的な意見を求めます」


──オグマとイスラ、あるいは他の騎士たちには呼びかけるように。
けれどもアキュリスに対しては無機質な冷たさで、エトワールは言葉を放つ。
それは自らではなく、イスラを侮辱したことへの、少女なりの怒りの現れなのだろう
205 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします[saga]:2012/11/01(木) 00:47:41.67 ID:o27/I1Xs0
>>199>>203>>204

「くっ!!」

 イスラの言葉にガン、と円卓に拳を振り下ろすアキュリス。
 己の正義と守るべきものが揺らいでいることに、アキュリスは苛立ちを隠せなかった。

 我々が今まで戦ってきたのはなんだったのだろう。
 私は一体、何を守ってきたのだろう。

 なぜよりにもよってネグロ・アラは青の大陸を標的にしたのか。
 緑の大陸だったなら卑劣な輩と、今まで通り正義を燃やすことができたのに。
 白の大陸だったなら正々堂々と、正面から全力で迎え撃つことができたのに。

「黙れ、いや・・・黙ってくれオグマ・アルル」

 じわじわと絞め殺すような兵糧攻め。
 味方ではないからと、同盟は組んでいないからと。
 青の大陸を利用する案に賛同していく騎士達。

 これが正義なのか、これが白のやるべきことなのか。
 深い深いため息をついて、アキュリスは力無く発言する。

「オグマ・アルルの案に賛成の者は挙手を・・・」

 大部分の騎士達が手を挙げた。
 アキュリスはクククと、また自嘲的に笑う。

 真綿で絞め殺すようなことをしておいて、その上絞めた相手を味方に加えるなどと言う案が並立していることに、
 そしてその発案者が同じ者であるということが滑稽でならなかった。

 もし青との交渉が上手くいけば、こちらに味方する者にだけ物資を回すなどという案も出るんじゃないか、
 などと思ってまた可笑しくなった。

「では当面の方針は青、緑と同盟を組み、全力でネグロ・アラの海上戦力を迎え撃つ。
 そうした上で青と交渉し、赤と黒の大陸に物資の制限を加えるということでいいな?」

 円卓に着く騎士の全てが頷いた。
 それを見届けると、アキュリスは口を開いた。

「エトワール・バティストの言う通りだな。
 冷静になれない私にこれ以上進行を務める権利は無い。
 そこで、他にも案や策があるならばその進行はイスラに一任したい。
 反対する者や、他に適任な者が居る場合は指名をしてくれ」

 それだけ言うと、アキュリスは顔を手で覆って、椅子に項垂れた。
206 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします2012/11/01(木) 01:22:00.05 ID:VCHiYmMv0
>>203-205
「えへへ……ボクはただ想った事を言っただけですし、皆さんが言った事を元に考えただけですよ
何時かは出た答えでしょうし……でも、本当にこれで大丈夫でしょうか……
ボクはあくまでも勝ったときの事しか考えませんでしたが、もしも負けたとなれば……
――海上戦に強い青、そして緑の協力があれば負けることはまずないと想いますけど」

何処か照れくさそうに頬を掻きながら言い――又、苦笑した
苦笑の理由は言わずもがな、僅かに口を開いた少女
しかし、少年は直接の指摘はせず、自分の口を示しながら再び言葉を紡ぐ
此はあくまで勝った場合の話。負けた時の事は一切考えていないという事
言葉には、“負けた時は負けた時”なんて調子が含まれているようにも聞こえるが


「アキュリスさん。ボク達は心眼なんて持って居ませんし、全てを守るには余りにも少なすぎます
――それに、向こう側から見れば目的の邪魔をするボク等が悪なんですよ?
誰が敵か分からない今は何時裏切られても可笑しくない状況。もしかしたら助けた途端にいきなり刺されても可笑しくないんです
……アキュリスさんは沢山有る中の一つを救うためにボク等を沢山犠牲にするんですか?」

黙れ。その言葉は確かに少年の耳を通ったはず
しかし、言葉を止める事は無かった
全てを言い終えれば、完全に溶けてしまった氷――その水を飲み干して、グラスの縁を指で撫でるようにして遊び始める


「ありゃ、議長さんの変更ですか――?
とは言っても、今の様子だと余り意見は無さそう……ですね?
イスラさん。後何か決めるような事がありましたっけ?」

逐一重心を変えられ、グワングワンを音を鳴らしながら回るグラス
跡に着く水滴を眺めていたが、新たな議長――イスラへと、金色の瞳の先を移した
少年の身体がうずうずとしているのはきっと気のせいでは無い
遊びたがりでも発動したのか、そわそわとした様子で視線を送るが――まだ会議が続くとなれば、きっとそれも収まるだろう
207 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします2012/11/01(木) 19:15:01.60 ID:dVffJSKro
>>204
>>205
>>206

イスラの瞳が向く先はエトワール、冷たい言葉を投げる彼女に向けられ
その視線はエトワールが口を閉じるその時まで向けられて
呼吸を整えるかのように深く息を吸い、その瞼を閉じて

「それが現時点での最良であるとは思う、異論はない」

次に見開かれた時には
面に写るは無、その席に座るイスラの様子を喩えるならばそう言えば良いだろうか
外から見れば冷たい中身の無い人形の様に見えるのだろうか
只々、淡々と言葉を連ねていたイスラの表情は終始その無が面を塗っていた
振り下ろされたアキュリスの拳によりゆれる感情の振動にすら剥がれることはなかったが
──一見は見える事のない円卓の裏、その拳は強く握られ震える程になっていて
表には出さないイスラの感情がそこにはあるのだろう


「そうか……ではアキュリスに変わり私、イスラがこれよりの進行を務めさせて頂く」

「まず、この案はオグマ・アルルの言うように私達が勝つ事、そして青が提案を受け入れる事を前提している」
「そうだな…勝敗に関して言えば勝つ事しか許されない、とでも言っておこうか、負ければ…分かっているな?白だけでは無い、全大陸に大きな影響を及ぼす事になる」

「今、需要なのは青との交渉、最悪のパターンとしては青がその提案を受け入れない事」
「もし今回の戦いに勝利したとしてもだ、アグラ・ネロがいる赤、黒が青からの輸送船に忍びこちらに侵入してくる恐れもある」
「緑にも言えるがその時は青との関係はこちらから切る事となる可能性もあるかもしれん」

「大陸間の交渉は我々が干渉できる事は限られているゆえ慎重に行動する必要がある」

もっとも上層、最上層の許可が降りるならば、その干渉の幅を大きく変わるのであろうが

「最悪の場合……我々は青へも手を出さなければいけなくなる事を肝に銘じておく必要があるだろう……」

大陸間の交渉に置いては上層が判断する事であるのだろうが
だが秩序の大陸──その判断は時に非情。何が起こるか解らぬゆえ覚悟はしておくほうが良いのかもしれない
背負う咎、守るべき秩序のその名の下に下されるその正義とは何であるのか、それは今は解らぬ事である


「以上の点を踏まえ異論のあるものはいるか」

そして円卓の間全てに目を向けその全体へ視線を流し発した言葉、もし何か意見があるならば気付くだろうが
兎に角、今イスラの口から散会という言葉は出た、何もなければそれで終わりを告げるだろう
208 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします[saga]:2012/11/01(木) 20:00:19.71 ID:qSvwIGCF0
>>206ー207

「・・・一円卓の騎士として1つ質問したい」

 アキュリスは力なく起き上がる、
 しかれどその瞳の奥には燃えるような何かを滾らせて。

「勝ちしか許されないのは・・・まぁ良いとしよう。
 あまりたらればを言っていても仕方ないが・・・もしその案を遂行するとして」

 アキュリスは力強く握った拳を円卓に乗せる。

「もし青が・・・報復を恐れて、または自分の大陸が戦場になることを恐れて」

「赤と黒との交易を現状維持、またはそれ以上に活発にしたら・・・どうするつもりだ?」

 それはイスラが最も恐れているべき質問。
 そして戦う力無き青が最も取りそうな選択。

「青に交易制限の裁量を任せるという響きはいい、だがそれは裏を返せば赤や黒の物資の困窮による怒りの矛先を青に押し付けるということだ。
 今まで戦争などしたことのない・・・下手すると戦力は緑以下の青が、ネグロ・アラに赤に屈した場合」

「どうするつもりなのだ?」
209 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします[sage]:2012/11/01(木) 21:06:24.50 ID:I1sd6566o
>>205-208

「ならば──?」
「エトワールは疑問に思います。そうなった場合はどうすべきかを」

「──もし緑が堕ちれば。青が堕ちれば」
「ネグロ・アラの勢力が更なる拡大を見せれば」
「赤が、黒が、全ての大陸が敵陣に屈しれば……?」

「仮定は膨大にあります。それでも我々は選択をしなくてはいけない」
「全てを無傷のままに守り通すことは、子供の戯言に過ぎません」
「取捨選択によりもたらされる秩序。二者択一による正義」
「それらの結果により我々は生きている」

「アキュリス──エトワールには理解できない。あなたが、何を守りたいのかを」
「エトワールは、まず白の民を守ることを最優先とする。白こそがエトワールの居場所だから」
「アキュリス。あなたは? あなたはどうなのですか?」

「エトワールは思います──」
「全てを守ろうとすることは、全てを得ようとすること。全ての上に立つこと」
「それは即ち世界を己の庇護下に──支配下に置くことと同義」
「あなたはそれを望んでいるのですか?」
「白の大陸がすべての大陸の秩序を管理するのは──ネグロ・アラの行為とどう違いが?」


エトワールは、純粋に疑問に思った。
何故アキュリスがここまで見境なく他者を守ろうとしているのか、その理由を。
だからこそ──彼の問に明確な答えを返すことはなく、疑問で返したのだ。
或いは、取捨選択、という言葉から……
アキュリスの問に対し、少女が用意している解答が推察できるだろうか。


彼女はまず、白の大陸の利益と平穏を考えての行動を取る。
──それこそが≪騎士≫のすべき最優先事項だと、そう教育されていたがために。
しかしアキュリスの言動から、エトワールは彼が何を明確に守りたいかが分からなかったのだ。
だからこそ──再び彼を激昂させかねない言葉を、静かに言い放った。
210 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします2012/11/01(木) 21:34:36.02 ID:dVffJSKro
>>208

いつかはこの問いが来る事を分かっていた、アキュリスの問いかけに対し暫しの間
呼吸を落ち着かせ、アキュラスへとエトワールへと視線を流す

「その前に一つ、青の大陸とて戦力が無いわけでは無い、青の傭兵とはよく聞く」
「そして青が何故、中立を貫けるか…それは青が戦力を保持し十分な武力を持つ大陸であるからこそその立場にいることが出来る」
「そうでなければ当の昔に青の大陸は他大陸の手に落ちているだろう」

「青は行動するしか無い、ネグロ・アラに取り込まれネグロ・アラとして戦争をするか、それに対抗するか──何方かだ」
「武力を持つ国がそれに屈するとは考えにくい事だと私は思うがな」

今後の話を展開する上での青への認識、イスラはそう認識しているからこそ、その案を上げたのだろう


「しかし──だ、もしお前の言う様に青が自身の意思でそう決めたのであれば、青は今の味方ではない状態から敵へと変わる」
「ネグロ・アラの協力者としてな……実際の所、今一番の選択を迫られているのは青自身、何方にせよ青は戦争に巻き込まれる…」
「そんな状況であるからこそ今、我々は青へと交渉を持ちかけようとしている」

「ゆえに今、青に向かうネグロ・アラを潰し、青に確かめねばならん もう青は…ネグロ・アラがいる限り中立としている事は出来ないのだ」


敵へと変わる、その意味は単純であり明白、全大陸に宣戦布告をするネグロ・アラの利になる事をするならば
ネグロ・アラ以外全てを敵に回すと言う事になるのだろう、とイスラの考えはそう言う事である

「だが、青がネグロ・アラに取り込まれるのは正直な所避けたい、では我々はどうするべきか」

「────答えは一つ、ネグロ・アラが青を奪う前にこちらが青を奪ってしまえば良い、占領してしまえばいい」
「もっとも──占領と言っても交渉により占領という形を取るだけではあるのだがな」

「そうすれば青は白に言われ止む無く──と奴等も言い訳ができるであろうよ」
「だがその場合、青の面子はあったものでは無いだろうが、ネグロ・アラに屈しても同じ事」
「最終的にはそうするしか無い…でなければ……ネグロ・アラ自体に対抗する事が難しくなるだろうな」



「そして最悪のパターンだ……もし、その提案を断るのであれば我々は動くしか無い……白の平和を守る為に」
「青を落とす──そうしなければ我々に未来は無い」
「咎を背負い泥を被り、それでも守りたいものがあるからこそ──私は提案する」


アキュリス、エトワールの問に対するイスラの考え、それは白を思った言葉、それを守るためならば
例え泥を被ってでも守り通すのだと
211 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします2012/11/01(木) 21:35:30.31 ID:dVffJSKro
>>210
/安価が……>>208>>209へと訂正でお願いします…申し訳ない…
212 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします[saga]:2012/11/01(木) 22:16:12.60 ID:qSvwIGCF0
>>209>>210

「無数にある仮定の中で可能性の高い事だから話しているんだよ、エトワール・バティスト。
 過去ずっと戦争のなかで唯一平和だった、安全だった。
 そんな場所が緑に変わって狙われ、戦場と化そうとしているのだ。
 ・・・もしお前が白ではなく青の民だったら、何が何でも回避したいことだろう」

 アキュリスは拳を握りしめる。
 その目には確かな光を宿らせて。

「何が守りたいのかわからん、か。正直私にもわからん、だがな」

 無機質なエトワールの瞳を真っ直ぐ見つめる鷹の目。
 誇りや忠誠だけではない、もう1つの騎士の在り方。

「戦争に関係のないに死んで欲しくない。
 弱き者でも幸せに生きていて欲しい。そう思うことに理由が必要なのか?」

 アキュリスはその能力と性格上、危険人物や一級犯罪者の殺害に着くことは多かった。
 調査すればするほど露わになってくる、力で弱者を踏みにじる理不尽。
 任務の途中で何度も見た、圧倒的暴力による善良な者への悪逆。

 普通の者なら慣れてしまうだろう、任務の為だと割り切ってしまうだろう。
 だがアキュリスは割り切れなかった、許せなかった、適応できなかった。

 それが弱き者を全てを救いたいという、おとぎ話の英雄の様な歪んだ正義感を生み出した。

 それは危うい正義、ともすればネグロ・アラの思想にも負けないほど危険なモノ。
 それでもこの騎士のまぎれもない"芯"だった。

「白による五大陸の秩序の完全統制、完全支配化。
 それが緑や青にとって平和で幸福なモノなら・・・私はそれでも悪くないと思っている」

「ネグロ・アラがもっと優しかったなら、ともすると私はそちらに付いていたのかもしれないな」

 明確過ぎる反目宣言。
 この円卓の騎士たちはどう思うだろう?

 そしてイスラの言葉を目を瞑って聞き届け、ポツリと語りだす。

「結局は青がどう選択をするか・・・か。
 まぁ前の大戦で中立を貫き通したその力に期待したいね」

 そこまで言って、アキュリスは真っ直ぐにイスラを見据える。

「議長、最期に確認したい。
 我々が有利になる為には、我々が勝利するためには。
 我々とネグロ・アラ、どちらに転んでも青の大陸を戦場にする可能性のある、この案が最善なのか?」
213 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします2012/11/01(木) 23:34:01.75 ID:VCHiYmMv0
「弱い人でも死にたくなければ剣を取りますし、怪我をすればさせた人を恨みます
――青が組織に物を流すのは何故か、それはアキュリスさんの言っている、組織を恐れているからでしょうね
では逆に恐れさせなければ良いんですよ
完封勝利してしまえば青の士気を上げることも出来るでしょうし、ボク達の士気も上がることです
例えるならそうですね……貴方が弱い人だとして、喧嘩にとても弱い人ととても強い人、どちらに媚を売りますか
……よっぽど変わっていなければ、強い人に媚を売ろうと想いますけど
そして恐れる事が無ければ、わざわざ敵に塩も送らないでしょう」

立ち上がり掛けた脚をまた折りたたみ、椅子に腰を掛ける
指を立てて連ねるのは、簡単な例え
――この案は勝てばの話。ならば、圧倒的に勝てば今挙げられている不安要素の大部分を取り除く事が出来よう
言うなれば心理的効果だろうか


「そーいえば、青にはスケアクロウ空賊も居ますよ
自分たちの場所を攻められて、まさか空賊を名乗る人たちがへこへこと頭を下げるとも思えません
なら、結果は見えていることですし……何よりこの人達は空を主に活動しています
上手く協定さえ結ぶ事が出来れば、こちらは空戦でも大きな利を得る事が出来ます
……仮に結べなくても、目的は同じです。連携を取れるか取れないか、それだけの話になりそうですけど」

ひょいと小動物を頭に乗せ、新たな組織の名を口にする
スケアクロウ空賊団――不法侵入をする他の国との交戦
ならば、今がその時であろうか。小さな小さな寝息を聞きながら、そんな事を考えていたが
ふと思いついたように、新たな言葉を紡ぐべく、再び口を開き


「そしてその空賊さん達は運送屋さんでもある筈です
……もしも仲間になってくれたなら、戦力のみならず他の面でも一気に有利に進めそうですね
問題は、どの様な人達なのかが今一分からない事ですけど……」

荒くれ者か、或いはせこい考えを抱く者か
そこは接したことが無い故に分からない
しかし、恐らく急に攻撃を仕掛けてくることは無いだろう――ならば、試す価値はあるのでは無いか、と
214 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします[sage]:2012/11/07(水) 20:23:47.57 ID:TS4YTdFXo
【赤の大陸】

枯れた大地に咲く花は無く、在るのは積み上げられた機械の屑山に散乱とした無数のガラクタのみ
時々その場に吹く風は砂の埃を舞い散らせ、酷く無機質な音を運ぶだけのもの

『────ウオォォォォォ────ツッ……』


そこは彼等、スチームメタルの集落で“あった”場所、今は何もありはしない、只々荒漠とした廃村である
そしてその場所からかであろうか、叫び声に似た声、酷く野太い声が響き、その静寂を打ち破る
だがそれも束の間、激しく叫ぶその声は徐々に力無いものへと変わり
変わりに聞こえるのはその叫びにより消えていた音、何かを裂く──刃物の様な音が表に出る

『ォォォ──── ……ォォォ……… ……ォ……ッ……  ────』

そして何時しかその音は荒漠とした景色の中へとまた消えて行く。
もしその近く、否、離れていてもその声は大きいもの、声に気づきその発生源を確かめにやって来るならば
それはまた──酷く生々しい、命の絶えゆく獣の姿を見る事に、そしてその生命を絶やした者の姿を



煤か土かその白い肌には汚れが見え
流れる長髪は臙脂色、深い、深い群青色の瞳は光無く只淀み
流線纏う機械の両腕、その両足を見れば彼女が赤のある種族である事が分かるだろう


「────さない………私の場所は絶対に……」


倒れた獣には2枚の鉄の板の様なものが突き刺さり、大地を潤すのは赤い紅い雫であった────。
215 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします[saga]:2012/11/07(水) 20:31:50.93 ID:fFJJnw/lo
>>210-213

「……エトワールは危惧します」
「アキュリス。あなたは──その思想は、いつか味方を殺す」
「正しすぎる正義は、それは、悪になってしまう」
「歴史書の中で、エトワールはそれを学びました」


──それは、ただ事実を述べただけなのだろうか。
或いは、感情の薄い彼女なりの、哀れみの言葉だったのかもしれない。
正しさだけを信じ、正義だけを貫き、歪んでしまった勇敢な翼。
そんな彼を見るエトワールの表情は相変わらず無機質なままだったけれど──
もしかしたら、『将来自分もこうなる可能性がある』という畏れを、少女は押さえ込んでいるのかもしれなかった。


「エトワールは答えます」
「スケアクロウ空賊のこともありますし、やはり青には協力をしてもらうのが妥当かと」
「──エトワールは主張をし終えました」
「後は、イスラ。議長であるあなたの判断に任せます」


そういうと、一見無機質にも思える紅の少女は口を閉ざす。
静かな蝋燭の光を、少女の銀の装飾がそっと弾く。
──そろそろこの円卓の場も終わる頃合いだろうか。
少女はそう認識したのか、或いは気でも抜けたのか。
オグマの頭上で眠る可愛らしい生命を、発言が終わった直後から凝視するのであった。
……感情がないわけではないらしい。年頃の少女らしく、小動物などが気になるのかもしれない。
216 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします[sage]:2012/11/07(水) 20:38:57.18 ID:fFJJnw/lo
>>202

「──ネグロ・アラに?」


相手の言葉に、女の右目が細められる。
更にそれを告げた時の様子がまるでこれから買い物でも行くかのようなものだったこともあり、
女の左目までもが、奇妙なものを観察するかのように赤く点滅した。

隣に立たれることに対しては、特に何も言わなかった。
それは相手が赤の種族であったことにも、関係していたかもしれない。
だからこそ──女は、普段はめったにしない「お節介」を、口にした。


「しかし……あそこは黒の種族ばかりで構成されていると聞く」
「その目的も、結局はすべての大陸を黒に染めようというものではないのか?」
「見たところ貴様はドラゴニュート──赤の種族だろう?」
「横にいるのも青の種族……貴様ら正気か?」


──お節介にしては、随分と口は悪いものの。
それでも、かなり前向きに受け取ってくれれば、これは彼らを心配する言葉でもあった。
217 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします[sage]:2012/11/07(水) 20:55:39.42 ID:TS4YTdFXo
>>212
>>213
>>215
エトワール、そしてオグマ、其々の言葉を聞く中イスラは何か物思いに耽るか様に
瞼を閉じて、その2人の言葉が終わっても暫しの沈黙を見せていた
何か考える事があったのだろうか、何か思う所があったのだろうか


「そうだな……オグマ・アルル、青が組織を恐れているならば、我々が目指すのはそこだ」
「勝てば良い、圧倒的に勝てば良い」

しかし、瞼を空けその沈黙を解く言葉はその2人の想いへの回答ではなく
円卓へと、向けられたものであって

第一に白を守る為の当然の行為である今回の海上任務、白に危険が及ぶ為アグラ・ネロを殲滅するのは当然の事
だがその任務にはもう一つ意味がある
青へその戦力を見せる事、アグラ・ネロへの牽制が結果的に青への牽制にも、或いは青の士気を上げる事にも繋がるのだと
オグマの言葉を聞きその方向に向けられた顔が円卓に腰掛けた全ての騎士を眺め言う
そしてその後、アキュリスの方へと視線を向け

「いやアキュリス、青も──だ、青も戦場にする可能性がある」
「奴等の狙いが黒以外であるならば既に青も奴等にとっての戦場であり、奴等に敵対する我々にとっても戦場だ」
「……緑も…白でさえも……全て戦場になる可能性がある」


「それになアキュリス──最善では無い…‥最良だ、白を守る上でのな」
「青がネグロ・アラに屈したとし青との交易を遮断するのは白の民に被害を及ばせないようにする為」
「もしこの海上任務が失敗し青を占領するのも戦況を有利に進める為」
「青が要求をのむならば緑と協力する事で戦力が大幅に増える、遠回りであると思うかもしれんが、それがネグロ・アラを潰すには近道だ」

「青に黒、赤への交易を遮断させようとしたのは交易船を利用した騙し討ち、我らの大陸への侵入を防ぐ為」
「全ては白にとっての最良の選択を上げているつもりだ」

「現状を考えてみろ、今ネグロアラは青へと向かっているのだ、占拠されれば海上は全てネグロ・アラへ……な」
「海上のみであれば白の大陸はまだ良い、浮翌遊都市ゆえ、此方から障壁を作ればある程度は防ぐことが出来る」
「だが緑はどうだ、囲まれているも同然、そして青の技術力…それがあれば白へも何時しか攻めてくるだろう」
「緑を失うのは痛い、だが──白へも攻めてくる可能性があるゆえ動けない、──四面楚歌…分かるだろう?」

「全てを踏まえた上での白への最良を選んでいるのだ」
「私達のやろうとしている事は……そういう事だ……」


それはきっとアキュリス以外、その円卓にいる全ての騎士に向けて言った言葉であるかの様に広がる様なもので
それ以上はアキュリスに対する問答はイスラの口からは出ること無い
アキュリスに対する疑問に思った節は彼女が口から出す前に誰か他のものが言ったのかもしれないと
ゆえに今は議長として、他の意見に耳を傾ける姿勢を取る事を選ぶのだ


「────空賊か…そうだな…二人の言うように確かに試してみる価値はありそうだ、利害が一致しているのであればその者達と交戦する必要も無い」
「時間があるならば…青へ直接交渉に踏み出す前にあたってみるのも良いかもしれん……な」

エトワール、オグマ、2人の意見にゆっくりと頷く様な動作を見せ、
出る言葉は余裕があるならば周りから交渉して行くべきだといった回答であり
余計な衝突はできる限り避けたい今、上層への交渉の前に青内部の者へのアプローチをとった方が良いのかもしれないと
様々な考えがあっての事であるのだろうか
218 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします[sage]:2012/11/07(水) 20:59:13.94 ID:TS4YTdFXo
>>214
/重複になるので置きレスになりますがこちらも募集しております……
219 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします(愛知県)[sage]:2012/11/07(水) 22:19:43.16 ID:bBRJvwmIo
>>214


日の光が照らすこの荒廃した大地にまるで大きな日陰が刺したかのような気配が漂った
──── 一人の男が現れたのだ。その姿。一目見ればこの大陸の者ではないと分かる


薄紫色をした病的な肌と白い髪。鋭く尖った耳と瞳。そした額に入った裂け目。
右目を大きな星型の痣が覆い、二股のジェスターハットを被る道化の様な男。
濁った色の貴族の様な服装をしているが、ボロボロな黒いマントを羽織っている。


身を喜びに震わす断末魔に呼び寄せられたか──。
この場に漂う芳しき“死の香り”につられて来たか──。

現れたのは“魔族”。黒の大陸に住まう夜の住人。


「話が違ったな」


彼にはこの大陸の環境は少し堪えるのか、全ての光を吸収してしまいそうな黒の傘を差していた。
それを必死にくわえて持ち上げているのはお供らしく一匹の一つ目コウモリなのだが──……。
ならば、その両手には何が収まるのかと言えば、一冊の禍々しい本が右手に携えられてた。

ペラペラとページが捲れられていたソレをパタンと閉じ。


「生きている奴が居るじゃあねぇか」


睨むような横目に再び男が口を開くと、
纏うマントが蠢き、コウモリがキィキィと弁明の様な鳴き声を漏らした。

220 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします[saga]:2012/11/07(水) 22:55:22.69 ID:Cbl9rZc30
>>216

 驚き、心配する様子の"お嬢さん"にマクガイバーははっはっはっと、快活に笑うと、
 大げさな身振りで語りだした。

「いやー、だって凄いじゃないか! 世界が平和に団結した中で、堂々と寡兵で喧嘩を売る潔さ!
 私としてはネグロ・アラにはチャレンジャー精神を感じずにはいられないよ!」

 それはあまりにも単純かつあっけらかんな理由。
 チャレンジャーだから、冒険野郎だから。
 有利も不利も組織の方針も中身も関係ない、心配するのも馬鹿馬鹿しくなる冒険脳である。

「それにね」

 アメリカンジョークのようなノリで笑うマクガイバーは帽子を取ると、一転して神妙な表情になった。

「たとえ戦争が終わっても・・・赤の問題は解決したわけではないだろう・・・?
 食糧問題も、居住可能領域の問題も・・・根本的には何一つ解決していない。
 実際平和になって一番困っているのはここじゃないか」

 マクガイバーはカナンの方を向くと、苦々しく笑った。

「このまま放っておいてもおそらく内乱や紛争が赤の大陸には巻き起こる。
 ・・・味方同士で戦うぐらいなら、いっそ利用されるだけ利用されてやろうじゃないか」
221 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします[sage]:2012/11/07(水) 22:56:34.74 ID:TS4YTdFXo
>>219

「………」

流れ出るのは赤、紅、乾いた大地はまるで餓えを凌ぐかの様に、その潤いを食らう、喰らう
やがてその潤いすら無くなって、獣の体も朽ち果てる、そして在るのはまた同じ──乾いた大地が只々広がって
その変わりゆく獣の姿、変わらぬ大地を除く女の瞳は只々暗く曇っていた。


そしてその中、女の耳に聞こえた足音は、甲高く耳にまとわりつく様な鳴き声は
何も見えてはいない様な女にとって、邪魔者が来たと、そう言った認識しか出来ない様で

「出て行け……今直ぐにだ……ここから──────」

枯れた獣に刺さった2枚内一つの鉄の板に異変が起きる────
鉄板の造形を見れば1mにも満たない薄い黒ずんだ鉄板の様ではあるが
突然にその表面に電子回路の様な青く光る線が描かれた、その時女の機械の腕を視界に入れたならば
その腕にも鉄板に走る線と同じ様な光を確認する事が出来る筈だ
そしてその獣に突き刺さる自身を浮かせ、宙にその身を浮かせ、獣に食い込んでいた部分
三角形のまるで広刃の両刃剣の様な先端部を露わにし

「──────出て行けぇぇぇぇぇぇ────────ッ!!!!!!」

その言葉と同時に声のする方向えと右手を振りぬく──
そして同時に動くのは青線刻まれる鉄の板、それが貴方の方へと向かい飛翔する─
それは速きもの、徐々に加速し貴方の頭部目掛けて加速する────

言葉はまるで我を忘れた様な叫びを上げて、声だけに反応し邪魔者を消す
貴方の方へはその顔すら向けること無くただ叫ぶ

軌道は一直線、その正直過ぎる攻撃に貴方は何を想い、どう対処するか──。
222 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします[sage]:2012/11/07(水) 23:18:53.51 ID:fFJJnw/lo
>>220

よく言えば豪胆とも聞こえるマクガイバーの言葉に、最初は渋い表情をしていた女。
しかし、続く彼女の言葉は先程とはまるで違う、真剣なもの。

──女も、ただ戦いがしたくてギルドに所属しているのではない。
元はといえば、女にも女なりの≪夢≫が、あったのだ。

(……かといって、ネグロ・アラに所属するというのは──)
(──ん?)

脳内で思い描く、自らの≪夢≫──それを想起し、
女は現状ではそれが実現しないことを改めて認識する。
だがその思考の中、女はふと、あることを思いついたのだ。

「────おい、貴様」

投げかけられるのは、名すら呼ばないぶっきらぼうな低音。
だがそこには──先程までのような困惑はない。
ひゅうと、遥か彼方から旅をしてきた風が彼女たちの横を走り去り。
悪いイタズラでも思いついたかのように、女の口元が不器用に歪んだ。

「なら、こっちも利用してみるというのはどうだ?」
「ネグロ・アラの戦力を軽視するわけではない」
「だが──こうも真正面から世界を敵に回せば、少なからず疲弊はするだろう」
「……ネグロ・アラも。世界も、な」

「────だとすれば、だ」

「今のうちからネグロ・アラに所属しておいて、連中も世界も疲れきったところで」
「──我ら赤の種族が緑を筆頭とした他の大陸に攻め入れば」
「食糧問題も、居住区の問題も……解決するんじゃないだろうか」
「今私が言ったことが、すべてうまく行けば、という前提に限るがな」


──それは、ふと浮かんだ、対して考えもなしに出てきた言葉だった。
ネグロ・アラを。現在世界を相手取っている最大級の組織。
それを利用して、上手くいけば──赤の問題が解決する可能性が生まれるのではないか。
女の言葉は酷く短絡的なものだったが、語る彼女の表情は、半分ほど本気が含まれていた。
223 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします[saga]:2012/11/07(水) 23:30:44.57 ID:Cbl9rZc30
>>213>>215>>217

「そうか・・・」

 イスラの冷酷なる判断と、オグマの楽観的すぎる意見を聞き届けると。
 アキュリスはただ深く俯き、何度目かしれないため息を吐いた。

 また戦争が始まるのか。

 また死に逝く者達が出るのか。

 その事実にアキュリスはただただ辟易とするばかりであった。

「空賊・・・賊を名乗る者に頭を下げようとは・・・いや。実力は確かなのだろう、文句は言うまい」

 有利に進められるならそれに越したことはない。
 案外気の良い奴等かもしれない、などと考えて小さく笑った。

 そして、とエトワールに向き直るアキュリス。
 その瞳の奥には、鈍く光る金属のような光をぎらつかせて。

「その心配は無用だ、エトワール・バティスト。
 私ならきっと味方を殺すより先に、私自身が勝手に死んでいるさ」

 ククク、と自嘲的に笑うアキュリス。
 修羅とも言える歪んだ英雄像。味方も自分も顧みない戦いの道。
 おそらく長生きはできないだろう、だが生きる意味を捨ててまで生き延びる気は毛頭ない。

「了解した、イスラ。確かに緑が完全包囲されるのは絶対に避けたい。
 ・・・戦力の面でも、犠牲の面でも、な。
 円卓の騎士としてもうこの作戦に異存はない。後は書記が詳細を記した資料を配ってくれるだろう」

 終了の合図も待たず、アキュリスは円卓を立つ。

「満了一致だ、大筋も決まったようだし私は私の任務に戻らせてもらうよ。
 ・・・一人でも多く、危険な者達を処刑する」

 アキュリスは先ほど円卓に叩きつけた資料を懐に戻した。
 エルフの村の大殺戮、スピリットの集落の集団拉致、事件の詳細、唯一の生存者。
 目を覆いたくなるような凄惨な事ばかり書かれたその資料を握りしめ、アキュリスは円卓に背を向けた。
224 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします[sage]:2012/11/07(水) 23:40:27.52 ID:bBRJvwmIo
>>221

赤き大陸の日差しは荒廃した大地にクッキリとした影を創りだした。
迫る三角形の影。男の影は動かない。真っ直ぐと迫るソレは男の影を貫いた。

しかし。男は倒れなかった。三角形の刃は男の頬を掠めただけだった。
狙いがずれていた訳ではない。刃は真っ直ぐに男の頭を貫くはずだった。

「──良い子だ」

ゾワゾワと蠢くマントが破れていた。刃が男に襲いかかる瞬間、
マントは手のような形に姿を変え刃を受け止めて軌道を逸らしたのだ、──このマント、生きている。

男は光った女性の腕を眺めると、

「あの“お嬢様”みたいに馬鹿力だけという訳では無いんだな。てめぇらは」

「この大陸には“残党掘”をしに来たというのに。活きが良過ぎる。しかし、出て行けとはなぁ」
「ついこの前まで、ほんの2年前まで、共闘をしていたというのに、無知にも程があるんじゃある」

男は持っていろ、と手に持っていた魔本を一つ目コウモリに放り投げると、
頬から垂れ流れる異質な色をした血液を中指ですくうと、差し出すように手を伸ばしながら、一歩踏み出した。


「“俺たち”にそういう事を言っちゃあいけねぇんだよ」


\そう、彼は“黒”。この世界でもっとも捻くれた連中!/
────言ってはいけないのだ、彼らに“来るな”とは。
邪悪な笑みを浮かべながら、一歩、また一歩と近づいていく。ゆるやかに、優雅に確実に。


「 お と な し く し て や る 」


外気にさらされた彼の血液は漆黒の瘴気を帯びていき。ポタリと地面に堕ちてく。
つい先程の様に、大地は血を飲み込んでいく────。ヒドイ、毒の血液を。
225 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします[saga]:2012/11/07(水) 23:41:49.02 ID:Cbl9rZc30
>>222

 女の言葉にマクガイバーは目を丸くし、
 やがてはっはっはっと、さっきよりも一段と高く笑い声を上げた。

「素晴らしいね! 君も中々のチャレンジャーだ!」

 マクガイバーは小さな翼をはためかせ、
 まるで婚約でもするかのように女の両手を取って語りかける。
 隣のシーブレインもプルプルと歓喜したように震えだす。

「黒に染まりかけていた私の心を赤に戻してくれてありがとう!
 とても面白いよ! その大冒険、私にも乗らせてくれ!!」
226 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします[sage]:2012/11/08(木) 00:01:46.99 ID:JRw67EIz0
>>215>>217>>223
アキュリスがこの場を後にした頃とほぼ同じくして、少年は大きなため息を吐いた
会議という場。緊張感からきた疲れ。それを一気に吐き出すようにして
もう終わった事を悟ったのだろう。大きく椅子を動かして立ち上がれば、大きな背伸びを一つ

「ぷはぁー……疲れたぁー……
イスラさんイスラさん。もう終わりですよね?!
後は自由行動ですよね?!」

視線こそは議長――イスラへと向けられているが、最早頭の中は遊ぶことで満たされている様
忙しなく動く翼と、時折扉へと向けられる視線
一度終わったかと思って期待した事もあり、その忙しなさは先程よりも上回っている
そんな場所を寝床にしていた小動物も起きてしまい、丸い目を二度三度パチクリとして頭の上で絶妙にバランスを保ちながら前足で器用に毛繕いを始めた
そんな小動物を片手で支えつつ、少年は言葉を紡いで


「じゃあボクは遊びに……じゃなかった
ちょっと偵察に行ってきますね!
きちんと周りの平和は守ります!おー!」

本音を後で訂正しようが、今更遅い
少年の無駄な気合いに同調する様に頭上の其れも片方の前脚をちょっと上に上げて
中にはやはりため息を吐く者も居たが笑って誤魔化し、扉へとその脚の先を向けた
少年は気付かなかったが――小さな生き物は気付いたのだろう
エトワールの向ける視線を見れば、後ろ脚二本で立ってまるでさよならと小さな小さな手を振るような動作を見せた
知能はそれなりにあるのだろう
耳が良ければ、円卓の者にも“キュルッ”といった小さな鳴き声が聞こえるか

――案の定、何処かの湖の近くで動物たちと遊んでいる姿を目撃されたのはちょっと後の話
227 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします[sage]:2012/11/08(木) 00:21:31.98 ID:arbRnDfUo
>>225

女の左手の指3本は、彼女の種族を示すかのように鉄色の光を弾く。
握られた両手は、指以外はほんのりと暖かく──血が通っていることが実感できるか。
マクガイバーの笑い声につられたのか。
彼女の表情も、生身の半分がふっと和らいだ。

「たった今思いついたことだから、それこそいろいろと考える必要があるが、な」
「しかし──人数が多ければ多いほどうまくいく可能性が上がる」
「勿論、仲間に加わることは構わん。何ならギルドの連中も巻き込むか」

「今日から貴様は戦友だ。気をつけろよ、私の所属するギルドのやつらは愉快だが荒くれ者だ」
「む、自己紹介が遅れたな……」
「私の名はカナン。カナン・ブルーム。ギルド≪ブラッディ・クレメンス≫の傭兵だ」

≪ブラッディ・クレメンス≫──赤の大陸の中規模ギルド。
カナンの口ぶりから察するに、きっとカナンが声をかければ多くの所属者はその意見に賛同してくれるのだろう。
戦いを望むもの。平穏を望むもの。食い扶持や居場所を望むもの。
そのいづれかの意見を持ち合わせる赤の住民にとって──これほどまでに≪面白い≫作戦はない。
──なんてことはない邂逅から生まれた≪冒険≫は、まずはギルドを巻き込もうとしていた。

マクガイバーを歓迎するかのように、カナンもまた相手の手を握り返す。
戦うものにふさわしい──それは、ひどくごつごつとした手だった。
ひゅうとまた風が吹き、カナンの白髪を揺らす。

この後何もなければ、きっと彼女はマクガイバーをとりあえずギルドの拠点へ案内することだろう。
地上4階、地下1階の大きな宿屋が、ギルド≪ブラッディ・クレメンス≫の拠点だった。
カナンが言った通り、気のいい者達も確かに多いギルドではあったが──
──それでも、1日1回は壁が壊れるなど、荒くれ者の多いギルドでもあった。
或いは、中規模な盗賊団の根城とでも言ったほうがすんなり理解できるかもしれない。

マクガイバーとシーブレインに適当な部屋をあてがった後
きっとカナンはギルドのメンバーにこれまでの事情を説明するのだろう。
──そうして、恐らく。彼らは、彼女たちは接触するのだろう。
今世の中を騒がせている、ネグロ・アラの構成員たちと。
それはまた、別のお話────…………。

/なんかキリ良かったんで〆ますねっ
/赤が出張る方向に話が進んできてどうなるかどきどきです
/短い絡みでしたが、ありがとうございました、お疲れ様でしたー!
228 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします[saga]:2012/11/08(木) 00:24:57.36 ID:AWV5aWaC0
//乙でしたー&ありがとうございましたー!
黒歴史キャラがまさかのギルド所属でこっちもドギマギですwww
229 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします[sage]:2012/11/08(木) 00:40:49.85 ID:arbRnDfUo
>>217>>223

オグマの頭上へ向けられる──正確には、小動物へ向けられる紅の視線。
だがアキュリスに再び声をかけられることでその視線は一時遮られることとなる。

エトワールは薄い感情を纏った表情をぐるんとアキュリスへ向けた。
ちりん──銀の装飾が、僅かな音階を奏でる。

「──あなたに騎士は、向いていない」
「あなたは、正しすぎる──、エトワールは、思います」

「お疲れ様でした、アキュリス。無事の帰還を祈ります」

──最後に彼へとかけられたのは、やはり憐憫を思わせる言葉たち。
感情が無いわけでは、ない。ただ薄いだけで、ただ出しどころが分かっていないだけ。
そう思えるかもしれないエトワールの行動は、彼の目にはどう映ったかどうか。
去りゆく彼へ、最後の最後に労いと激励の言葉を紡ぎ──再び彼女の視線は、小動物へ。


「……ばい、ばい」

しかし肝心の、お目当ての小動物はオグマと一緒に扉の方へ。
それでも愛しい生き物が手を振る動作は、しっかりと見ることが出来たのだろう。
滅多に浮かべることはない小さな笑みをエトワールは浮かべ。
隣のものに聞こえるか聞こえないかのような細い声で、彼女はオグマの背中へも声をかけた。
──声をかけたのは、きっと小動物へむけて、であろうが。

そして最後に声をかけるのは──イスラ。
議会が終わりを見せたからか、エトワールの表情は確かに緩んでいた。

「……エティは労います」
「お疲れ様でした、イスラ。議会の円滑な進行を行なう手際は感動しました」
「スケアクロウ空賊および青の大陸への直接交渉はまた明日にでも」
「今日は疲労があります。休息を取ったほうが懸命であると判断します」

そっとそっとかけられた声は、イスラへ休息をすすめるもの。
イスラが戦う様子ばかりを見てきたエトワールにとって、イスラが議長をすることへの負担は
決して少なくないことが予想できたのだろう。
様々なことを思考するイスラを諌めるかのように、少女は彼女へ近寄りそう告げた。
結論は確かに急いだほうがいいかもしれないが──疲れた頭で思索を行なうのは非効率的である。
きっとエトワールはそのような判断を下したのだろう。
イスラが休憩を断っても、恐らくぐいぐいと細腕でイスラの手を引っ張り、部屋へ連れて行くのだろうか。
──その様子は、まるで親子のようにも、みえたかもしれない。
230 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします[sage]:2012/11/08(木) 01:19:37.50 ID:iyxW0f8go
>>224

聞こえてきたのは言葉、言葉、言葉──。
叫び声では無いそれを聞き、女はまるで死人の様に、ゆっくりとその声の向こうへと瞳を、体を向ける
その白い肌、いつからそこに入るのだろうか、土埃で色はくすんでいて
どれ程、戦って来たのだろうか女の纏う濃紺色の衣服であろうそのものは
原型が分からないほど酷く擦り切れていて

「残党────共闘────無知………」

「うるさい……うるさい……うるさい……何を言っているか分からない……何を言っているか理解したくもない……」
「ここは私達の居場所だ……私の場所だ………誰にも渡さない……誰にも……そう…誰にも……」


そしてその正面を見せた女の右腕、鉄の板と同調するかの様に光る腕
見ればその左腕も同じく指先から光を走らせていて、誰に向けたかまるで言い聞かせる様に呟く様に言葉を零したその直後────

────機械の両足は強く大地を蹴り上げた。


機械の足のその加速は早く──、そしてそれと同時に、女の左の指先に
先程獣から抜かれたもう一枚の鉄の板が指先より数cm程空け尾を引きその場に漂う

そして真っ直ぐに、その差し出された手に向かい、左腕を体の奥からその正面へと横一線──
その腕を振り切ろうとするだろう、何も負荷の無い只腕を振るうだけ、振るえば武器は付いてくる
まるでそれは体の一部の如く、自然に軽く振るわれる

しかしそれを回避するのは容易い筈だ、幾ら負荷が無かろうと奥から振り切られようとする腕を見れば
危害を加えようとしている事は分かるはず、少しでも後ろへ下がれば、それは見事に空を切るだけの
空振りとなるだろう、そして少なくとも今の彼女には──冷静な判断等、出来はしない

ゆえに攻撃も単調でまるで子供のように、只々、目の前の邪魔者という存在を見えなくする為だけに放たれて
きっとその瞳には、淀んだ瞳には貴方は写っていない、きっと貴方の言葉は今の女には雑音でしか無い

壊れたガラクタの様に、それは只々獲物を狩るだけの獣の様に、その差し出された手に向かう
何かを壊そうと、今女は大地を蹴り上げ


 “自分に危害を加える者に、この場所を奪おうとして者へ”


“そんな誰かに”向かいそれは振りぬかれようとしているのだ──。
231 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします[sage]:2012/11/08(木) 01:54:39.01 ID:iyxW0f8go
>>223
>>226
>>229


「ああ……了解した……」

アキュリスが円卓より背を向け、重い重い、その扉の開く音がする
そして緊張の糸が解かれたかの様なオグマの言葉が耳に入る、それには

「ああ、分かった──」と

答えたのみで、その言葉は耳に入っていたのだろうか
ぼうっと、扉へ消える、2人の姿を只々、視界に入れて、それを見つめるだけであり

エトワールの声が向けられなければ、きっとその場で一人で
何かを考えながら只々座っていたのだろう、だがその言葉は向けられて
そんな状態の中の言葉でもあったゆえ

「いいや……私は私の思いを言っただけさ……」

まるで宙に投げかけられた様に、まるで耳に入っていないかの様に
只々、中身の無い様なそんな言葉がでるのみで


イスラはそのままその身を任せ彼女の思うがままに自身の部屋へと連れて行かれるのであろう




誰かが言った、誰かが言った────
今イスラが何を考えて、どの言葉が脳裏を過るかはイスラ自身にしか分からない
だがそれは、きっとあの言葉、あの言葉、あの言葉




そしてエトワールがイスラのその腕、小さな手が掴むそれ
彼女はそれに気付くだろうか──
その手は腕は、何かに耐えるかの様に強く力が入れられていた事にきっとそれは無意識のものであり
部屋に付くまでそれはその状態で

そして部屋に戻り、エトワールに別れを告げたその後────
自身の部屋で、何かを見つめるイスラの姿がそこにはあっ


「わかっている……わかっているさ………」
「自分が決めた事なんだ……」

だけど────



「いや………それも私だ、私自身なんだ────。」
232 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします[sage]:2012/11/08(木) 15:42:44.10 ID:PDYxeuIIO
>>230
/すいません...描写が抜けていた予感がします.5行目に後に

[女の肌より流れる赤色は衣服に滲み、その色をかすかに染めていた]

を追加でお願いします...
233 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします[sage]:2012/11/08(木) 22:50:06.90 ID:nom1UEQao
>>230

ポタリ、ポタリとその指先からは死の色をした血液が地面にしたたり落ちていく。
言葉は聞こえている。だが、届いていない。彼女はただただ、復唱するだけで。
互いに言葉を投げつけるだけのドッヂボールが続いていく。つまらなそうな声色で見下ろすような視線が睨みつける。


「ふん、まるで亡者だ。だが、ソレはお前らの領分じゃあ無いんだぜ」


迫り来る女に対し臆する事なく魔族は進む。
女が腕を振るった次の瞬間。男は女の目の前から消えていた。

薙ぎ払う様に放たれた幾多の刃に対し、男は飛び上がる事で回避を行った。
太陽をバックに宙に舞う男の手を足は本来向かうべき方向とは逆を向いている。
────バック転。回避が容易な攻撃に対して大げさに格好を付けた訳ではない。

対空時間が長く隙だらけなこの回避動作にも良い所が一つあった。


「なるほど、お前の両腕はその“ガラクタ”を操るのか」


────男の指先が地に触れる。そう、足より先に手が付くのだ。
額の裂け目が見開き現れるのは煮えたぎる太陽の如く真紅の三白眼。


「こんな《何もない場所》を守る。"老朽化した守護者(ポンコツ)"には相応しいチカラだな!!」


この瞬間、大地に男の能力が振りかかる。女の背後左右の三方からうめき声が聞こえてくる。
大地から這い上がるのは「3体の亡者」だった。背丈は子供程度で茶色いその体は砂で出来ていた。


「“血砂の餓鬼”ィ……ッ!ひッッ捕まえろォ!!」


その内の左方の一匹が女に向かって特攻を仕掛ける!叫び声を上げながら抱きつくように飛びかかった。
砂で出来た体はもろく、砕けやすい。しかし、死を恐れずなりふりかまわず襲い掛かる不死の時に兵隊は生者にとって酷く恐ろしく、面倒で、厄介な存在だ。
尤も、それはまともな精神を持ったものに発揮する効果ではあるのだが……。
234 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします[sage]:2012/11/09(金) 00:34:54.95 ID:gCehtuCZo
>>233

機械の足が大地を蹴り上げ魔族を射程内へと捉えるまでは、端から見ている者がいるならばそれは一瞬の出来事であったのだろうか
宙へと浮いた身体を捻り、加速の勢い任せに振るわれた左腕の暴力は──空を裂いた風の悲鳴となってやがて虚無へと帰って行き

淀む群青が見ていた魔族の手先は消えていた、視界が暗くなったと思えば黒い影が宙えと浮いていて
その太陽を阻む影の隙間から、白い空の閃光が群青色の瞳に注ぎ思わず目を逸らしてしまう。

「────!!」

そして行き場を無くした暴力の行き先は──女自身のその身体
宙へと舞ったその状態で右へと薙ぎ払われたその力は女の姿勢を崩す事となり女自信を大地へ叩きつけようとするであろう
そのまま倒れてしまえば大きな隙を作ってしまう、そう思ったのか落下するその最中
右碗を左下へと大きく振り、無理矢理その大勢を立てなおそうと身体を捻り

真っ先に大地へ下ろされたのは右の腕、その大地へと下りた時には両足を前後に開いた、かがんだ様な姿勢であり
今直ぐにでも前へと向かう様な姿でその大地へと着地しており

女の視界に写るのは、大地の割れ目、臙脂の長髪は重力の赴くままに砂を摩る
そして下へと向けられている面を上げると共に舞い散る砂と靡く臙脂の髪

「何もない…何もない……何もない…………何も…」


そして、この後の女の行動は一つ──今までのその行動を見ていれば大体の予想は付くだろう
そう、大地に着いたその両足を蹴り上げ全身あるのみ────、その行動を起こそうと面を上げるが────。


「──────い………あ………い……や………」

その表情はその亡者を見るなり変貌した──恐怖に染まる色
見れば直ぐにでも分かる様な、あからさまなもの

「いやだ………いやだ……くるなっ…………こないでくれ………こないでくれッーーーッ!!!」

前のめりになった姿勢はその前に、脆くも腰を引かせる事となる
何に怯えているのか、目の前の亡者という存在に怯えているのか
その身を震わせ、腰を抜かした様に、その大地に腰を下げ後退る
ゆっくりと後ろへと、亡者から距離をとろうとする

「くるな……こないでくれ………やめてくれ‥…やめてくれ……ゆるしてくれ………」

魔族がその大地へと力を使う姿は女の視界には入っていなかった、いや入っていたとしても──
それは同じ様な姿を見せていたのかもしれない

何もないその場所を守る、老朽化した守護者────
その殻はそんな些細な事で砕ける弱く脆く……
235 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします[sage]:2012/11/09(金) 20:44:48.58 ID:iWoFWL6bo
>>234



「──────!」


目の前にあるのは異常なまでの恐怖。貧弱な砂の亡者に恐れおののく女の姿。
それが彼の三つの瞳に映しだされた瞬間。男の口元は釣り上がっていくのだった。


 「そうか──〜〜。そんなに恐ろしいのか。この“俺”が」※違います。

\すっげぇいい笑顔ですね!/

すると、喜びを表現したのではないが、男の第三の瞳が光り輝く。


 「おい」


乱暴な口調で女を呼ぶと同時に注目させるかのように真っ直ぐに手を伸ばしてから、
まるでタクトを振るうかの如く、男はすうっと右手を振るう。
亡者たちはうーうー唸りながら、女を多い囲むようなトライアングルフォーメーションを築きあげていく。

命令をするのに手を降る必要は無いのだが。この亡者たちは俺の意のままに動く、という事を強調させている。
人差し指を女に向け、実に嬉しそうな声色で言葉をはっきりと、大きな声で投げかける。


 「こいつらの動きを止める方法がたった“一つだけ”存在する」
 「今までの様に、俺の言葉を右から左へ前から後ろへ。下から上へ受け流すかもしれない、もしかするとそれしか出来ないのかもなぁ……」


男は両手の人差し指と親指で長方形の枠を作り、額の第三の瞳から見える光景に居る女の姿をその中に収める。


 「だが──それでは何も変わらない。だから、俺はこれから“お前の恐怖”に問いかける」


正常な者なら誰しもが恐怖が襲い掛かる時、そこから脱したいという想いが、本能が生まれる。それは思考ではなく反射の様なもの。
女がこの恐怖から脱する方法は“たった一つだけ”存在する。だが、それはこれから彼の放つ言葉を、

──“聞かなければならない”のだ。


 「腕を後ろで組み、正座をして降伏しろ──話はそれからだ」


悪魔の導き出した一つの答え。男の言葉は女に届くか────。

236 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします[sage]:2012/11/09(金) 22:56:13.80 ID:gCehtuCZo
>>235

「あ………あ………ああ……」
「み……みるな……みるな………みないでくれ……わたしを……わたしをみないで……」

後ろへと這いずる様に下がる女の声はその身は震え、淀む群青色の瞳から零れた雫が頬を伝る。
亡者の唸りは幾重にも重なり女の脳裡を支配する、それは前から左右から、そして有りもしない者すら見えているのだろうか
その首を振り視線をあらゆる方向へと散らす姿は、まるで小動物の様な存在にすら見え、紛れも無い──恐怖が女を染めていた。


「やめて……やめて……」

両手を両足を何度も何度も大地へ擦り合わせるも、重く小さく、砂の擦れる音だけが虚しくこぼれ
その音すら、亡者の唸り声、その大地を踏み擦る音により上書きされていく

そして──その中、女の様子が徐々に変わっている事に気付くだろう

口調は徐々に弱々しく、その人形の様なものから感情の見えるものへと変化する
青線光る両腕は弱々しく徐々に光を失い、その今までの色とは違う色へと変わって行く
青から赤へ、そしてその赤すら薄れ────紅紫色、マゼンタの光を弱々しく点滅させ。

そしてその紅紫の光が強く発光を始めた時、淀んだその群青さえも深く光を灯すのだ

「やめて………下さい………私の……私の負けです……」

まるで会話が言葉が聞き取れていなかった様であったこの女
しかしその言葉を聞いていたかの様な答えを返す女
群青色は深く深く光はすれど────その表情は何処か悲しく、虚しさが現れていて


「私の負けです……」

その場で背を丸く垂れ、項垂れるように両手の掌を前へと突き両足を折りたたんだ後
ゆっくりその手を後ろへ組むのだろう、そして目の前の悪魔に頭を下げ大地に広がる臙脂の髪

その姿は戦争の敗者、そのものであった──。
237 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします[sage]:2012/11/09(金) 23:52:56.08 ID:iWoFWL6bo
>>236

亡者達は動きを止める。しかし、引くことは無い。
彼女を繋ぐ拘束具の如く、その場に留まり続けるだろう。
わざわざ見下すような下目遣いでこの絶景を眺めるその姿は実に満足気であった。

「フ、よろしい。ようやく文化的に対話できる様になったな」

彼の使い魔である一つ目コウモリ。最初は一匹だったが、
気づけば3匹ほど、後から追いついてきたのか現れていた。
それが3匹くっつくと、赤い髪に黒い斑の付いた毒々しい髪を持つ、
膝ほどの高さの可愛らしいドールの様な少女に姿を変えて男の肩に飛び乗った。

コウモリ『オヤ、殺さないとは珍しくお優しい?』

首を傾げる少女を虫けらでも払い落とすかの様に乱暴に振り落とすと、
ピキー!とか鳴きながら3匹のコウモリに戻ってしまう。

「ポンコツを殺してもゾンビは生まれねぇ。ジャンクがスクラップになるだけだ、
 だが、ジャンク品を漁ればお宝が混ざっている時と場合があると聞くぜ」

男の言葉にコウモリが何か言おうとするが、キーキーと鳴く事しかできない。
すると、彼の羽織るマントがゾワゾワと蠢き、口のような物が出現する。

黒マント『しかしながら、タバス様。ここには何も無いと仰られたのは貴方様ですぞ?何かある場所には思え──Ouch!』

タバスと呼ばれた男は、意見するなと言わんばかりにマントの端と端をつかみ、ビリィ!と引き裂いて見せた。
引き裂かれた部位はじわりじわりと再生しつつあるが、その間はモノ言わぬ唯のみすぼらしいマントに戻った。

「ああ、言った。何もない。だが、それはコイツの目線でモノを話した場合の話だ」
「俺はこの場所で“狂った女”を見つけたぜ。今となっては唯の切れた歯車だがな」

「つまり成りうるとするなら、ここで拾ったコイツがお宝って訳だ、宝の地図かもしれねぇな。
さて、拾ったジャンクがくず鉄か金か、検証してみるとするか──」

亡者たちが威嚇するかのようにうーうー唸り始める。男は再び彼女を恐怖で縛り、“命令”する気だ。
その右手を彼女に向けて伸ばし、垂れた頭を無理やり上げさせようとしながら、

「質問する、答えろ。ここは何だ、何がある場所だ?なぜ、守っていた?お前は何者だ────?
ゆっくりでいいから、濁って抽象的になっちまってる脳ミソをクリアにさせて具体的に答えろ」

額の瞳は見開くと、飛び出したのは三つの質問である。

「なに、恐れる事はない。ゆっくりだ。こいつらも俺もお前を絶対に襲わない。──お前は俺に協力的な素振りを見せる限りな……」

238 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします[sage]:2012/11/10(土) 08:23:09.95 ID:0UVdDvVXo
>>237

恐怖──或いは別の何かであるのか、ひれ伏す様に頭を下げる女は魔族を前に、ただただ細い体を縮こませ
頭上で交わる会話にさえ、身を震わす程の恐怖を見せていた亡者の唸りにさえも、その様子は変わる事は無く

「やめて下さい……やめて下さい……」

只々、零れすぐさま消える──そんな言葉を大地に向かい呟くだけ
そして3つの声の会話が途切れ──女に対する命令が下るとその独り言も一度止まり
暫しの間を空け女はまた口を開いた

「──────この場所は………貴方の望むような場所ではありません……
 何も無い……誰もいない……只の廃墟………スチームメタルが暮らしていた場所……」

辺を見渡せばそこが村であった事が分かるかもしれない
その数カ所に点々と観られる屑山は家であったで有ろう瓦礫の山、大地に散らばるのは日用品であったであろうもの
そして一つの場所に大量の石が並べられているその場所は──そこに住んでいた者達の墓地と言ったものである


「何もない……ここには何も……だけど…… “彼女” にとっては守りたい場所だった……
 全てを失った “彼女” の唯一の形に残る場所だった……それだけの理由であると推測できます…」

“彼女” とは──? まるで他人の事を言うかの様な口ぶりで女は言う。
それは魔族の言葉の通りゆっくりとした口調で淡々と、怯え、震え、そんなものは今は何処にも見当たらなく
その腕の紅紫の光は更にその色を煌めかせ、その輝きが増すにつれ口調ははっきりとしたのもへと変わって行き


「────最後に…私は………… “彼女” フランシスカが切り離した感情の狭間に出来た存在…
 それ以上の誰でも…何でもありせん………先程貴方を襲ったのは彼女…フランシスカが切り離した感情の一つ…」

その問いに対する回答に魔族は何を思う、ここには何も無く可笑しな事を言う女がそこに跪くだけ
しかしその者が言う言葉は全てが真実であって、反抗もせずにそこに入るのは
彼女、自身であるフランシスカを守る為にと言ったものであろうか

それは分からないが魔族の問いに関してはその姿勢を崩さずに協力的であろうとしているのだろうか
239 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします[sage]:2012/11/10(土) 21:56:50.21 ID:oScqXgUJo
>>238
「はッ、なんて事はねぇ多重人格かよ。俺の知る限り、そいつは弱い奴が自分を守るために発症するもんらしいぜ」
「滑稽な話だぜ……弱いやつが何を守っているのかと思えばそれは既に“終ッちまってる”場所だってのはな──」

先ほどまで随分と楽しそうに話していたのにも関わらず、今の彼は酷く苛立っている様子だった。
彼は彼女の恐怖に言葉を聞いたつもりだった、確かに言葉は通じた。しかし、彼と対話していたのは"彼女"の狭間。
そこから聞こえてくるのは、まるで別の何処から見ていたかの様な“客観的”な言葉ばかり、本当の彼女ではない。
いや、タバスが初めて“彼女”を認識した、“あの女”ですらも正確には“彼女”では無かった訳で────。

「くだらねぇんだよ────。少なくとも“生きてるヤツ”のする事じゃあねぇ」

多くの闇の住人がそうであるかのように、彼はひどく歪んでいた。捻くれていると言ってもいいだろう。
宝は手に入らなかったが、目の前に居るのは彼に屈服している女の姿で。彼が望んでそうしているのにも関わらず。
そこで満足していれば良いものを、彼はそれができない生き物なのである─────。

「──お前じゃ、話にならんな……。いや、もう良い」

軽く手を振ると、亡者が一歩下がっていく。

だが、内にこもった“彼女”をどう引きずり出す?引きずり出して何がしたい?話をして何になる?
魔族の表情には嫌悪が刻まれていた──。だからといって彼女に危害を加えようとはしなかったが。
自分の中のもやもやとした感情が整理出来ずに居た──。イライラすると言い換えてもいいだろう。
かなり簡単な言葉で説明するなら。どうにも、“合わない”相手なのであろう──。

「ちッ……冷めてきたな……。本当にここには何もないみたいだしな────」

彼の放った最初の発言"話が違った"。そう、つまり彼は何かをするためにココに来ていたのだ。
噂を聞いたか、たまたま見つけたのか。彼はここを知っていた。何もない、廃墟があるのだと。
亡者を操る魔族が何も無いと分かりきっていた廃墟に用があったのだとすれば答えは一つ。

“死体だ”強力な死体を引きずり出し下僕にするためにここに来たのだが……。
弱々しい今の彼女を見て、この場所にそんな大層なものが埋まっているとは思えなくなっていた。
240 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします[sage]:2012/11/10(土) 23:07:29.25 ID:0UVdDvVXo
>>239

魔族が言葉を連ねる中、女はその姿勢を一切崩さずその場にいた
口を挟む訳でもなく、何か反応をする訳でも無く、ただただその話を受け身に聞くだけであり
次に口を開くのは魔族が全てを言い終えた後であろう

「確かに私は彼女では無いです……彼女がこんな状態になったのも彼女が弱かったからなのかもしれません」
「貴方が初めて認識した“彼女”がここを守っていたのも元は彼女の弱い彼女の意思だった事は認めます」
「だけど────“彼女達”は生きている…分離され…その個人として生きている…」

「その感情しか持たないけど……元は彼女の意志だろうけど…“彼女”は“彼女”個人としここを守っていた……自分の全てを捨てて“彼女達”に押し付けた彼女の事は私も嫌いだ」
「彼女を貶すのはいいです…私の事をどう貶そうとも構わない……でも……“彼女達”の事を貶すのは許せません……」

女の言葉──、それは小さなものから徐々に大きく、噛み締めるような強ものえと変わって行く
いくつの人格を持っているのかは分からない、しかし──その人格達は生きているのだと
今、魔族と言葉を交わしているのはその彼女達の間に生まれたもの
彼女達を外から見る傍観者、ゆえに──その彼女達が其々の意思を持ちそれに動いてた事を知っている

その言葉は、正常なものからしては急に怒りだしたと、訳の分からない事を言っている
とそう思うかもしれない。

「もし貴方が“彼女達”に向けて言った言葉であるのならば訂正してください………」
「ここを守っていた“彼女は”弱くなんて無い、ずっと逃げずにここで戦ってきた…」
「押し付けられたのは全ての恐怖、悲観…それから逃げずにここにいた……」

──弱い奴が何を守っているか、魔族にとってそれは彼女、フランシスカへと向けた言葉であるのかもしれない
だが理解出来なくとも当然なのかも知れない、今この狭間の言葉の中、中心にいるのはそのフランシスカでは無く
“彼女達”、個別の人格としてそこを守っていた“彼女達”の中の一人の事を言っているのだ

魔族にとってはそれも“弱い彼女”なのだろうが──この狭間にとっては、それは“弱い彼女”とは別の人格として認識していて
全くの別人と認識しているのだ話が噛み合わない可能性があるとするとその点があげられるか──

「彼女は逃げました…その弱さから“彼女達”に押し付け逃げました……」
「彼女はここを守ろうと…“彼女達”にそれを押し付けたのです……訂正して下さい…」
241 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします[sage]:2012/11/11(日) 04:14:00.17 ID:2giPAcYio
>>240

「意外だな自己防衛するだけだと思えば意見をする事もできるのか"お前"は──」

先ほど破ったマントを脱ぎ、地に向けて投げ捨てると形が歪み、黒いマントは椅子に姿を変える。
魔族の男はその椅子に乱暴に座り、偉そうに足と腕を組む。彼女の反論、話を聞く気はあるのだろう。

彼もまた、ひと通りの彼女の話を聞き終えてから再び口を開く。

「お前の認識する括りとしては私、彼女、彼女達──ややこしい!!
 別物として扱うつもりなら別名くらい付けて話たら良いんじゃないか。頭が痛くなる……。まあ良い……」

黒の大陸には生物的にも精神的におかしな連中はたくさんいる。
その世界に生きているだけあって話が分からない訳では無かったが、
スチームメタルが元からそういう生き物ではないという事もあって、ややこしい話ではあった。
だが、まずは一つ。"彼女"の中に居る一人。彼女がいつ生まれ、どれほど彼女や彼女たちを見続けてきたかは知らないが、
男より長いことは確実であり、まず、話を円滑に進めるための前提を作るという理由も兼ねて彼もひとつの譲歩をする事にした。

「では、まず。お前が"彼女の弱さ"を認めた様に俺も譲歩しようじゃあないか」
「"私"と"彼女"と"彼女達"それそれぞれ別物であり、弱さ故"彼女"は自分から切り離しだ人格達に役目を押し付けただけであり
 切り離した人格──"彼女"の弱さは"彼女たち"とは関係がない。ここまでは良いとしよう────」

ここを否定すれば、それだけで論争になって話が止まりかねない。
話だけでは完全に納得した訳ではないが彼女の中にある意識本人の言う事を尊重する事にする。

「だが、俺はお前の言葉を借りるところの"切り離した感情"を生きているものとは認めない。
 ──地方(大陸)によって生と死の概念はそれぞれだと思うが、"黒"にそれを言われるのは相当だと思うぜ」

彼の住まう大陸は肉体を持たぬ霊体がはびこり、死体が闊歩し生活すらしている。
アンデッドをゾンビをスケルトンを霊体(スピリット)を生き物として認める。しかし、"彼女達"は認めない。
彼にソレを言わせる理由として、彼が最初に接触した"彼女たち"の印象が非常に大きかった。

「少なくとも、近づく相手にいきなり襲い掛かってきた"アイツ"に──俺は生を感じなかったがな。
 言葉も通じず、盲目的に近づく相手を撃退する。そして、お前のその格好────」

指先を女に突きつける。そして、衣服、そして覗かせる腕──肌を指していく。
ボロボロの衣服に薄汚れた肌。彼女がかなりの期間戦い続けていると想像に至るのは当然の事で。

「いつからだ?そして、いつまで続けるつもりなんだ?お前は言った、ここには何もないと、誰も居ないとな」
「こんな場所でいつまで踊っているつもりだ?終わった物を守り続ける事になんの意味がある?」

「"逃げずに戦った"……?違うんじゃあないか……?違うだろ?"それしかできない"だけじゃないか。
 俺は“彼女達”を"老朽化した守護者(ポンコツ)"と呼び亡者とも呼んだ
 壊れた機械みたいにカタカタ唸りながら壊れるまで命令を実行するだけ
 ククク……それは強くも弱くもない唯の"お人形さん"だろうが」

──少なくとも、“彼女達”は魔族の瞳にはそう映っている。
そしてその考えは“私”の言葉を聞いても揺るがなかった。
“現在の情報”と“彼の生死観”から構築された導き出した結論だ。
242 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします[sage]:2012/11/11(日) 19:56:17.28 ID:BqsjM+Mzo
>>241

「────や………めろ………その汚い口を今すぐ閉じろ……」

魔族へと向けられた言葉は確実に先程までの “狭間” の印象とは全く違うものだった。
まるで何かを抑える様に体を、声を震わせ、頭痛に耐えるかの様に両腕は自身の頭を掻きむしる
そしてその両腕に刻み込まれた回路に走る光はまるで暴れ狂ったかのように様々な色を発光させ

「こいつの言葉に耳を傾ける……な……...お前達は生きている……んだ……
 騙さ……れるな……私の……話を……私の話を………」

青、赤、緑とその機械の腕を通過する、その光度は、その速度はショート寸前の機械の様に激しさを増していき

『私は』  『人形?』  『命令を実行しているだけ?』


                    『それしか出来ない────』  『ただの』  『私たちは』        『誰』

                         『私達は』

「違う…………違う……違う……」

そして────────空間を裂く様な狭間の叫び声がその場へ響き、光が消えた────
壊れる様に唐突にその光は消えた。

今、魔族の目の前にいるのは、誰なのか、臙脂の髪を掴んでいた両手も力なく大地に放り出されるだけ
彼の目の前にいる正座をする女の姿は人形そのもの──その様に写るかもしれないが



「…………………じゃあ……………強い…は何 弱いは…何
 私達が……私が…………やって来た事は何………?」

その女は口を開いた、また別の人格が現れたのか、或いは──それ以外の者

感情を切り離し、その中に蹲る様に隠れていた者
確かに切り離した感情にはそれぞれの人格が与えられていた、だが結局は一つの個人が持っていたもの
その切り離した彼女達の矛盾──何故その感情を持っているのか分からない
それ以外の事は理解もできず、ただ与えられた感情に流されそれを実行するだけ
暴れ狂う光の中聞こえた言葉はそんな彼女達の言葉であったのかもしれない

そしてその狭間の存在は、その彼女達に矛盾を気づかせない為に存在していた者なのかもしれない
いなくなれば良いフランシスカと言う主人格を消し去るために彼女自身が己の矛盾から逃げる為の手段だったのかもしれない

矛盾に気付いた人格達が出した答え──それが今魔族の目前にいる “彼女自身”なのかもしれない

「生きるために戦って……戦争が終わった………
 それも同じ大陸に住んでいた者達によって……私たちのやっていた事は何……?
 答えて……答えてよ………」


中立と掲げた者達によって戦争は終わった、何も改善されない状態で戦争は終わった
何故か、何故戦ってきたのか、その女の質問はそういう事だろう、黒としてはそれをどう思うのか
それとも──その逃げていた女の言葉等──質問等、答えるにも値しないものであるのだろうか。
243 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします[sage]:2012/11/11(日) 23:47:20.84 ID:2giPAcYio
>>242

「俺たちが、やっていた事、ねぇ────……」

魔族の男は、言葉に詰まってしまった。

戦争は終わった。その過程で何かを得た者も居れば失った者も居る。
この戦争で自身は何を得て、何を失ったのだろう。
配下を失い。多くの命を奪い。生み出しもしてきた。
だが、戦場の中で男は輝き、満たされようとしていた。

しかし、甘美なる勝利に酔いしれる事もなく、屈辱的な敗北でもなく──。
あったのは煮え切らないか"終わり"であった。

満たされる事無く訪れた打ち立てられた終止符は、
魔族の中にあった何かを空虚なものにしてしまっていた。

女の言葉に答えられるはずが無かった。
そう、無かった。戦争が終わった時、男の中には──何もなかった。

「忘れちまったよ」

背中を椅子にあずけ、だらんと腕を垂らし空を眺めると、
照りつける赤の日差しが男の体を蝕んでいき、煙が吹き出した。

「俺は、多分、“認めさせたかった”だけ、だからな……」

ポツリと履いてしまった弱音。ソレに気づいた男は飛び起きるように立ち上がった。
彼女の吐き出した泣き言は、まるで感染するかのように男を蝕み出していた。
いや、違う。男の中にもまた、戦争の傷跡が残っていたのである────。
目眩がする。忌々しい表情で頭を抑え、表情を女に見せようとしない。

椅子となった黒マントと一つ目コウモリが達が心配そうな目で男を見ていた。

彼女に彼女達に苛立ちを覚えた理由が分かってしまったのだ。
戦争が終わり、尚も踊り続けていた彼女に、自分の姿を見てしまっていたのだ。

「いいぜ、答えてやるよ……」

額の瞳は閉じ。虚ろな表情で女を見て入るが。女自身は目に入ってはいなかった。
それこそ、あの“彼女達”の様に。男が女に見ているのは自分自身。
鏡に吐き出す様に男は言った────。

「今のお前のっ、その様がッ────あの戦争の全てだッッ!!」

男の場合。それは無だった。戦争は、男に何も残さなかった。いや、合ったものさえ失ってしまった気がする。
女の場合。どうだろう。心を引き裂き。今も尚ボロボロに成りながら戦い続けている。終わった戦を続けている。
男の言葉に女は、かつてのフランシスカは何を思うか───────。
244 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします[sage]:2012/11/12(月) 20:10:00.19 ID:dHCrx1gMo
>>243

大地に俯き、嘆く様に紡いだ言葉、魔族の第一声にも女は首を落としその面を上げる事は無かったが
魔族が言葉を詰まらせると女はゆっくりとその視線を上へと運んで。

その群青色の瞳には空より光が振り注ぐ。
最後にこの太陽の光を見たのはいつだろうか、それすら遠い昔の過去の様に感じる。
物思いに耽るかの様に暫くその群青色は白い光を反射していて──
その瞳に魔族を写したのは、間を空けその場へ零れた言葉の後だった。

光を背にする男の様子は分からない、逆光がその姿を霞め

「認め……させた………かった……? 」

煙と共にその場に投げ出された言葉を辿るかの様に零れた言葉。
それは空へと登る煙と共に宙へと消えて行き

「今の………私………」


魔族が吐き出すように女へと向けた言葉、それにもただ、反芻するかの様な言葉を紡ぐだけであり
面は魔族から、再び下へと運ばれて、視界に入るのは枯れ果てた大地、何もないはずの大地。
変わり果てた自分の姿、傷つく汚れボロボロになった自分の体
何かを考えるかのように彼女は動かなくなり暫しの沈黙が彼女を支配して
それは彼女の口から出た、笑い声と共に破られて

「フ…フフッ────」

戦争は彼女に様々なものを与え、残し、更なる連鎖を生み出した。

恐れ、悲しみ、悲嘆 怒り 屈辱 喜び いつの間にか戦場に歓喜すら感じていたのかもしれない
戦争の先に彼女の思い描く希望があったから、苦しい事があっても辛くはなかった
だがそれは叶うことはなく、戦争が終わり残ったのはどうしようもない感情。抑えられないもので──
彼女の人格を引き裂いた理由は分からないが、何かがあった
そして人格が引きされたその単体の純粋な人格達が思うのは、彼女の真実であり

「結局…私は戦争を忘れることなんて出来なかった……いいえ──忘れたくなかったから…それにしがみついていたのかも…
 あんな事があった中でも戦争が終わった何て信じたくなかった自分が怖くなったけど……結局……それが私……

 私には……戦争しか無い……本当に今……今は戦争しか無くなってしまった……
 終わった戦争しか……私には無い……だから……私はそこで」

踊り続ける事しか出来ない、それが出来なければ……死んだようにその人生を生きるしか無い
だから、その過去の戦争の続きを今、踊るのだ、それが彼女の胸の中の答えであった

そして──その時、その腕、に光が走る事となる
色などは関係ない、様々な色の光の光度が重なりあい、その明るさ、が彼女が表に出る時
それは一番の光を煌めかせ、白光の線がその腕に再び、舞い戻る。

それは今を生きているといえるのか、だがその過去の戦争を終わらせずには
彼女はきっと今を生きれないから、彼女の選択はそれしかないのだ。
245 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします[sage]:2012/11/12(月) 21:29:47.29 ID:osGA7HvSo
>>244

「…………そうかい」

魔族は彼女に苛立ちを覚える理由がもう分かった。
ならば、これ以上女に噛み付くことはあるまい。
──自らの傷口に塩を塗りこむような真似は。

「ならば俺は“ここ”を出ていくとしよう。邪魔をしたな」

椅子になっていた黒マントを掴み上げると再び柔らかなマントの形を取り戻し、それを身に羽織る。

「俺は……」

空っぽの男は赤き大陸の辺境で、もう一人の自分を見つけた。そこに自分の中の“正義”と“悪”を見た。
もはや、この場所に居る理由はあるまい。弱さの抜けきれぬ自分が引き戻されそうになってしまう。

歩いてきた方向から集落を突き抜ける様に、女とすれ違うように魔族は歩き出す。
何かを振り切るように背中を向けながら最後に一言発するだろう────。

「────俺の戦争を探しに行くとするぜ」

がらりと崩れゆく餓鬼達。まるでそれは何かの終わりを暗示しているかの様で。
魔族の男は“この場所”を振り返る事無く、歩いて行く事だろう────。

246 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします[sage]:2012/11/12(月) 22:02:49.94 ID:dHCrx1gMo
>>245

魔族がその場を訪れなかったら、彼女はただ過去に束縛されていただけだったであろう
その場所の呪縛に縛られていただけであっただろう

その群青色は一言呟き遠くへ消える男の背中が消えるまで、そこから視線を外すことは無かっただろう
そしていつかは砂塵に霞んでその影は消えていく

「………さようなら、ありがとう……」

女の戦争はこの場所から始まった、女の一つの人格はこの場所に固執していた
だからこそ、その人格が戻ったいま恐怖と、悲しみを引き連れて


何もなかった場所から、この場所に恐怖と悲しみを持っていた人格を連れて、様々な感情を持つ彼女は外へと出て行く


「いこう……私達……いや…私………私の…戦争を終わらせる為────。」
247 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします[sage saga]:2012/11/15(木) 20:25:32.56 ID:YWwuITYd0
黒の大陸――比較的瘴気の薄い地の一角
元は他の陸の生命だろか。長い間にゆっくりと瘴気に蝕まれて、思考する力を失い、本能のままに歩むアンデッドの姿が所々に在った
其れ等は新たな獲物を見つけては、唸り声を上げて一人また一人。やがては集団で襲いかかり――


「あら、残念ねぇ……
もう少し長く生きてられるかと思ったのだけれど、そう甘くは無いのが現実かしら」

その様子を虚空――正しくは闇を固めた物に腰を掛けて眺めていた女性が一人
亜人の悲鳴が聞こえれば、手助けすることも無く、肉体を貪られてゆく様子を見ているだけ
最初こそ暴れさせていた手足もやがてはゆっくりと大地に着いて
その頃には既に飽きていたのだろう。女はため息を一つ吐いて、晴れることの無い空を見上げた


「戦争も生き延びて、やっと平和になり始めたかと思えば腐った人達に身体を食べられてはい終わり
悲しいわね。家族友人誰に見届けられる事も無く死ぬなんて
――でも、次に身体を起こした時には何も考えないで済むという事を考えれば幸せなのかしら?
私はごめんだけれど」

女は髪を掻き上げ、視線を再び落とす
丁度、亜人であった者がグールへと変わる瞬間で有り……所々欠けた身体を起き上がらせて、産声代わりの唸りを上げる時であった
最後まで女の存在に気付くことは無く、他の者達と同じように目的も無く脚を動かし始め――その背を見届けた女は、椅子代わりにしていた闇を散らして立ち上がった


「さてさて、暇潰しの観察も終わった事だし、何か他に楽しい事でも転がってないかしらね」

近くを通りかかる者と言えば、黒の瘴気を出来るだけ避けて通りたい者
又は辺りに響き渡った悲鳴に興味を抱いた者だろうか
――それでも無ければ、グールのみが徘徊するその場に不釣り合いな黒の魔力を感じた者か
何にせよ、誰であろうと女性は嬉々として話し掛けるのだろう
面白い暇潰しを見つけたと言わんばかりに
248 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします[sage]:2012/11/15(木) 21:13:25.18 ID:YKz+TH1To
>>247

鳴くのは無念か虚無か、消える事無く纏わり付くかの様に静寂の中に音として、流れるだけの唸り声
その亡者の嘆きが留まる場所とは不釣り合いな言葉が走った。

「きゃぁッ────!!」

高い音色を奏でる声は先程までその場に存在していた音とは違うもの
それは直ぐ様にグールの唸りの中へと消えて行くのだが────その刹那
響くのは大地の軋み、まるで叫び声を上げるか如く、音は突如としてその場の全てを砕く。

女の視線がグールの消えた方向にまだ向けられていたならば
その音と共に出現した “枯れた樹木” を瞳に映す事になるだろう。
墨の様な樹肌の木が、何もないその場から突如、天へと向かい急激に伸び行く姿を視界に入れる事になるだろう


そして同時にその場に流れる魔翌力の残り香。
黒の魔翌力、そして僅かに零れた──緑の魔翌力に気付く事が出来るであろうか

「………ふぅ…………」

零れる吐息は先の声の主のもの、安堵感が宙へと吐かれその場に立つのは、茶色のフードマントを羽織った者
もし魔翌力を感じる事が出来ていたならば、その魔翌力はその者より出ている事に気付くだろう。
そして女がその方向へ目を向けていたなら、周囲を見渡すフードの者へと目が会うかもしれない

もっともフードの影により表情は見えないが、もし目線が向けられているならば、確実にその一瞬
目があったであろう瞬間、その者は固まったかのようにぎこちない動きで、女に背を向け逆方向えと歩いていこうとするだろう

その場はただ静寂が流れる場所────今ではそのグールの唸り声すらしない、そんな場所。
249 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします[sage saga]:2012/11/15(木) 21:37:03.68 ID:YWwuITYd0
>>248
「あら――まだ生きている子が居たのね
もうてっきり皆グールになってしまったのかと思ったのだけれど」

新たな声。其れが耳を通れば、自然と顔は発生源へと向けられて
――丁度その時だろうか。悲鳴とは全く異なった、大地を割るような音
視界に映るのは朽ちた樹
樹木が枯れるこの地であれば、珍しい光景では無いだろう
しかし其れが急に大地を割って生えてきたと成れば――――


「そこに居る緑のお客さんにはお疲れ様とでもいうべきかしらね?
……それとも、こんな場所に訪れてしまってご愁傷様かしら」

女の瞳と、緑の者の瞳が交じり合えば、相手は背を向ける
其れを追うのは、態とらしい微笑を浮かべた女
――言葉の節から、相手が何処の者かは分かっているのだろう
然れど、その正体までは分からない
故に正体を確かめるべく歩き出して、数歩分先回りして進路を妨げようとするだろうか


「何も逃げる事はないじゃない
別に貴方をグール達に食べさせようという訳じゃ無いのよ?今は、だけど」

闇に溶け込むような黒いドレス。同じく黒い髪
“今は”攻撃を仕掛ける素振りは見せることが無い
黒の者の殲滅が目的ならば、きっと先の一瞬で警戒を見せる事だろう
しかし、相手は其れを選択せず、背を向けてさっさと別な場所へ向かおうとしていた
――ぎこちのない動きで
それが興味をそそったのだろう
もし回り込めたのならば、小首を傾げるようにして女は問う
「こんな場所に何の用かしら」――と
250 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします[sage]:2012/11/15(木) 22:25:31.04 ID:YKz+TH1To
>>249

女から見ればその後のフードの動きは滑稽なもの、とも写ったのかもしれない
或いは、また違う思いが過ったのかも、それはその見た本人にしか分かる事は無いが
誰がどう見ても、まるで緊張を隠せないその固くぎこちない動きであろうと憶測できるであろう行動であった。

そして、まるで棒にでもなったかの様な足はその身を反転し、女とは真逆に足を進めようとするのだが

「────ひゃッ。」

その逆方向へと身体を返してみても、あるのは女の姿であり
おもわず、と言わんばかりに宙へと零れたその声は、何処までも情けない様な雰囲気を漂わせるが
近づく事により見える、その場で起こった出来事。大地より突き出た墨肌の木──
その刺々しくもある枝に貫通した絶えたグールの姿を見れば攻撃手段を持っていない訳では無い、と言うことが分かるだろう。

そして今、女に言葉を向けられたフードの方はと言うと
ただ沈黙を重ねるばかりであったのだが。

「あ……いや………私は……そうじゃない…って言うか……
 ただ……襲われそうになったから……正当防衛……と言うか………」

その様子は焦り、動揺、又は恐怖、様々なものが見え隠れする様に、かたく
暫しの沈黙の後に出た言葉も相変わらずのものであって、まるで女の言葉への返答が出きてはいないものであり。

女からの更なる追い打ちの様な、言葉、『今はグールに食べさせる事は無い』との言葉にもまた
忙しく、両手を胸の位置えと上げ、左右に手を振る、落ち着きのないものであった────が


「………………嘘……を付いても……どうせ騙す事なんて出来ないでしょうから……」

徐々にその手を振る動きも、遅くなり、その両手が持っていかれるのはフードの首元
意を決したかのように、その手は力強く、己の襟元を強く掴んで、先程から気付いているならば、そのフードの手色は
霞むような灰の色──緑の者には珍しい、闇に染まる様な色であり

「貴方達の目的は……なん何ですか……戦争が終わったのに……なんでこんな事を……!」

フードは強く、言葉を出した、一言一言噛み締めるかの様な口調であり
緑だと気づかれていると──、女の言葉を聞いた上での言葉はやはり───緑の者の言葉であった
251 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします[sage saga]:2012/11/15(木) 23:00:57.05 ID:YWwuITYd0
>>250
事情を知らない者が見れば、悪趣味だとしか思わないであろうその樹も女には別な物として映っていて
例え元より痛んでいたとしても容易く絶えさせる事の出来るその力は侮れないと考えたのだろう
女の周りの闇が一層濃くなった――が、その表情は変わることが無い


「情けない声。本当に貴方がこの樹を生やしたとは思えないけれど――
それでも、ここに其れがあって、貫かれている物があるという事は貴方が行った他ならない事ね」

枝の先から滴り落ちる一滴の鮮血
其れを指先で止めて口に運べば、渋い表情を浮かべた
腐った血。毒では無いにしても、それは美味しくは無い様で
樹の幹に指先を擦りつけて落とせば、フードの者の返答に対してクスリと笑った
その力が在っても性格がそれ相応になっていない事が可笑しかったのか
それとも、殺め慣れていない様な言葉が面白かったのか

「私から見れば過剰防衛にも見えるけれど
可愛そうに……こんなに痛そうな枝で貫かれてしまって
きっとまだこの中に生きているのだって居るでしょうね……
ああ、そう言えばさっきは貴方の所と同じ場所に住む人も居たけれど、もしかしたらこの樹の装飾になっているんじゃないかしら」

からかう様な言葉。相手の反応を見れば、敢えてその事を口にする
――貴方と同じ大陸の者がつい先程までそこに居たと
グールと告げないのは相手を陥れようとしている為か
その真意は分からないが、良からぬ事を考えているのは確かであって


「そうねぇ……貴方の嘘であれば、直ぐに見抜けるかも知れないわね
――何でこんな事?」

その言葉に、女は今一度嗤う事だろう
さも楽しそうに笑った後、再びフードの下に隠された瞳と視線を交える

「食事の邪魔をされたら誰でも嫌でしょう?
貴方がもしも今から屠殺されようとしてる食用の牛を情だけで助けようとしたら、身体が幾つあっても間に合わないと思うのだけれど
――まぁ、私の場合はただの暇潰しとしての観察だけれど」

全てを同じ物として語り、更には結局自分は暇潰しだったとも語る
助けられた命を助けることも無く、其れを見て楽しんでいて
――視線を落とせば、灰色の手
何かを考える様に目を細くしたが、それも一瞬のこと


「私達黒が全て同じ目的で動いていると思っていたならば大間違いよ
戦争も私には暇潰し――――今も、ただ暇潰しの延長よ
そんな肌の色を持つ貴方にとってはどんな戦争だったのかしら」

ローブの者が納得しないであろう言葉が返された
先の戦争。死人が沢山出た其れですらも女には暇潰しとしか映る事が無く
やがて、女は再び言葉を紡ぐ。相手への問い。そして肌の色の指摘
252 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします[sage]:2012/11/16(金) 00:13:23.60 ID:NzhEbjKEo
>>250

「わ……私は……っ」

生きている者もいた、同じ場所に住む者もいたとも、女の言葉にフードは口を詰まらせる。
威勢よく言葉を返そうと、その声を張り上げ様とするも脳裡に過るのは女の言葉
フードにとっては正当防衛のつもりであった、襲われて、見の危険を感じて
ゆえに、自分に迫る牙を圧し折った。 ────だけど

フードが揺れる、その貫かれた亡者の方へと、自身が出したその樹の方へと。

「そん……な……」

──闇が疼く、その心に覆いかぶさる、女から見ればその様子は…
純粋な、戦が何であるのかも知らないまるで子供の様に写るかもしれない

続く女の言葉を背に、その足はふらつき、弱々しく。
樹の方へと仲間であったかも知れないその遺体の方へと近づいて行き、手が触れるのは墨樹の肌で
その手は細かく震えていた、その体は何かを耐えるかの様に震えていた。
流れる女の言葉の中、そのフードはただ──震えていて


「…………ごめん……恨むなら…私を恨んで…………」

紡がれた言葉、それは女にはどう写るのか、その生命を尊む訳でも無く、
殺した事を否定する訳でも無く、震える声が止まり、振り切る様にフードの中のその瞳が女の方へと向けられる。
そしてフードは揺れ、煽られて、その影の中の素顔が露わになるだろう。

──マキナスエルフ、黒と緑の混血──
灰色の肌に、尖った耳、銀の長髪を靡かせて、女に向けられるのは透き通る様な菫色の瞳。


「……今まで私は多くの命を奪ってきた…大陸を守るために…私が生きるために……死んでほしくない人の為に…
 綺麗事なんて言うつもりは無いです……前の戦争で貴方達が操った “仲間” もこの手で殺してきました…
 他人の願いを潰してまで…私は大陸を守ってきた……私がやった事は甘んじて受け入れます……私が罪人になろうとも…
 それで大陸が守れるるのであれば……っ……」

噛み締めるように向けられた言葉は酷く自分勝手なもの────。
それは言い聞かせるような言葉であった。裏切り者と呼ばれようが、同族殺しだと言われようが
守りたい大陸があると。少女が抜け切らない面に宿す瞳にはその意思があったのだ
前の大戦が、その少女をここまで変えたとでも言うのだろうか、何方にせよ、女が知るのは今目の前にいるエルフであり
それを見てどう思うかは分からないが。

「だから……貴方の暇つぶしに私がこんな事を言うのはおかしな話なのかもしれません…
 でも……貴方達の暇つぶしに私の大切な人の命が奪われるのは許せない──ッ!!
 私を貶す人もいる、同じ場所に住む人達に殺された仲間もいる、でも私達にとっては大切な故郷なんです!
 それを誰かの暇つぶしだけで壊すなんて…おかしいです!」

結局そのエルフが思うのは緑の大陸に住む仲間達の事を思っての事なのだろう
エルフの自己中心的な言葉は、黒のその女の暇つぶしと言う言葉と大して変わりは無いのかもしれない
方向は違えど、結局やることは殺し、と言う事であるゆえに
そしてそれを言うエルフの菫の瞳は浅はかに涙が見えていた。
253 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします[sage saga]:2012/11/16(金) 00:46:45.28 ID:A3iNp1kG0
>>252
「仲間が来たと思ったら、その仲間に殺されてしまうなんて何て嫌なお話の終わり方
グールに襲われて、死にそうな所を助けて貰える筈が――まさか自分を襲っていたグールと同一に見られたまま死んでしまうなんてね
――ああ、貴方達も自分に被害が及ばなければ見捨てるような種だったかしら
災難ねぇ。もし白が劣勢に成れば、きっと捨てて私達黒に媚びていたのかしら?」

いとも簡単に揺らぐ心。調子の良かった声も最初の方だけ
――女の浮かべた笑みを、ローブの者は見る余裕があっただろうか
結局、女は最後まで明かすことが無いのだろう
相手がその樹を生やす前に、緑の者は息絶えていたという事を
揺らぎ、震える様子が面白く、更にその心を崩すが為に言葉を紡ぎ続ける


既に事切れた身体――或いは樹に話し掛ける様子を、ただ黙って見ていた
わざと声を掛けないで心の傷を癒やす時間を与えるほど優しくは無い
――寧ろ、緩急をつけているとでも言うべきか
言葉による心の破壊、束の間の休息
そんな中、姿を露わにした者の言葉は、決意の様な物でもあって


「――確かに、私は暇潰し。だけれど他の“黒”はどうかしら
何も無くてせめている訳では無い。貴方達の土地を奪えなければ、生まれて間も無い子供も直ぐに死ぬことになるのよ
――私達が貴方達の憎しみを背負っているだけでなく、貴方も貴方が殺した者の家族や友人の恨みを背負っているの
貴方がもし家族を殺されている、或いは殺されたとしたら……どう思うかしら?
今、貴方にはその感情と同じくらいの物が沢山在るわ
……きっと、貴方に殺された想い人が帰って来ないまま死んでしまった人も居るでしょう
妥協すれば、黒の人達も少しは治まったかも知れない
力の無い人達が反抗すれば――沢山死ぬのは当然よね」

相手は心優しい性格か――ならば、その優しさにつけ込むのみ
例えとして今までローブの者が殺した者を出して、更には戦争の背景を重ねてみせる
ゆっくりと蝕むように、純粋な心を汚していくかの様に
きっと、今まで貴方が殺した人の中には家族持ちの人も居ることでしょう――その部分に使われる“言霊”
意思の強い者であれば何ら変哲の無い言葉
しかし意思が弱い者であれば、心を揺らがせるには十分な代物
――言葉に含まれる魔力こそ、多くは無いが


「――貴方は既に罪人よ?大罪人
襲ってくる人を殺すのは仕方の無いこと
だけれど貴方達が反抗すれば被害が拡大して、貴方と同じ所の人が沢山死ぬわ
皆、貴方の様に力を持って居るわけじゃないもの
正義の味方のつもりが、知らず知らずの内に他の人を死に追い込んでいると私は思うのだけれど
……たとえば、さっき貴方が殺した亜人みたいに」

そこで引き出されたのは、まだ相手には新しすぎる――仲間を殺したという事
浮かんだ涙を拭うように女の白い人差し指の背が優しく目の辺りを撫でる事だろう
――まるで、悪魔が唆すかの如く
節々に含まれる“言霊”の力
果たして、ローブの者にそれに対抗する意思はあるのだろうか――――
254 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします[sage]:2012/11/16(金) 01:47:55.51 ID:NzhEbjKEo
>>253

菫に霜振り雫が垂れる──頬にそって大地へ落る。
罪に問いかける女の言葉、今まで自分がやってきた事に対し、まるで懺悔を促すかの様に優しく触れて

その言葉が途切れた時──エルフの心は何を思い、何に染まるのか
ゆっくりと流れる時間の中、暫しの静寂を経てエルフの口が開かれる

「………私は──自分が正義の味方だなんて思った事はないです………攻めれば…誰だって戦います……
 大切な人を失いたくないから……自分の住んでいる土地を失いたくないから……
 私が殺した人の中にはきっと子供が居て…生活があって……愛する人がいた……
 そんな事わかっています……だって……私達がやってた事は戦争だったから………」

エルフとて少女とて、その戦乱の中に生きていれば、何かを守る為に戦っていれば────何かを奪ってもいる。
それはこの少女に限らず、他の者、様々な者がそうであるように。
前の大戦に限った事では無く、過去の様々な因縁もあるだろう。

「……確かに私達が妥協していれば……犠牲は少なかったかも知れない……
 でも……そんな戦争で奪った土地なんて……また怨みを怨みで返されるんじゃないでしょうか……
 罪人ですよ……みんな罪人です……私だけじゃない……貴方も!私も…!他のみんなも!みんな罪人です……わかっています……
 正義の味方のつもりなんて無い……だって私たちは武器を持って力をもって殺しをしているんです……」

今──エルフの胸を苦しめるのは女の言霊か──或いはまた別のものなのか
その想いはどんどん膨らみ、その雫を零す。

「私は殺した……確かに私は今、さっき!亜人の人を殺してしまった!自分の仲間を守ろうとして……関係のない…人を殺した
 知らないところで…人が死んでいるのかもしれない……殺しているのかもしれない……じゃあっ!!!!
 じゃあ…!…どうすればいいのよ………じゃあ……なんで……貴方達は攻めてくるの…」

言葉は強く乱暴に、駄々をこねる子供の様に想いを吐き出すていく。
感情が高ぶり過ぎている────我儘な純粋がそうさせる、それは言葉を続ければ続ける程
エルフ自身の自我が出てくる、女はどう思う、言霊によって堕ち行くエルフと写るか

「私だって……戦いたくない……でも…戦わなきゃ……前にでなきゃ…何にも…始まらないよ……
 今だって……貴方達だって…子供を守りたいと思うなら……そっちからちゃんと歩み寄ってこれば良いじゃない…!
 今だって……話せているじゃない……なんで奪うことしか考えないの……なんで戦争しか考えないの……

 怨みが多すぎて多すぎて……そんな事が出来ないのかもしれない…でも……それで戦争ばかり続けてちゃ…一生終わらないよ…
 なんで自分たちばっかり……そんなの卑怯だよ……戦争って選択なんてしてるのに……そんな事言うのは卑怯だよ……
 本当に守りたいものがあるなら進めば良いじゃない……話せば分かってくれる人もいるはずだよ…」

それとも────意思が曲がらない同しようもない我が儘な少女と写るかは分からないが
エルフが黒の大陸に来た理由──それは少女が最初に女から逃げようとした行動に繋がるのかもしれなくて
面に彩なす出すぎた感情──、しまいにそれはその場にへたり込み、流れる涙は大粒の──
泣きじゃくる少女の姿を見せる事へとなるのだろう。
255 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします[sage saga]:2012/11/16(金) 02:34:23.81 ID:A3iNp1kG0
>>254
「――私達がやってきた事は戦争。力が無ければ生き残れないし、欺かなければ食べる物も無くなるでしょう
貴方は今こうして生きている。でも、生きる為に一体何人の人達を殺したのでしょうね
貴方と私の指を全部合わせても足りないはずよ
“だって戦争だから”――その言葉だけで貴方は免罪符としてしまうの?」

都合の良い言葉ばかりを並べ、表面ばかりの言葉
心の内では様々な事を考えているのだろう
このまま瘴気に晒してアンデッドとするか、或いは生きたまま食らわせてみるか
――それとも、このまま嬲り殺そうか
様々な思考が巡るが、結論は出ない
それ故、相手の言葉へと耳を傾けて


「自分の場所を守りたくて戦ったのなら、正義以外の何物でも無いわよ?
自己満足で迷惑な、我が儘で勝手な子供の正義
生きるなら何かを犠牲にしなきゃならないけれど、何かを失うことが怖い子が喚くだけの正義
そんな子は何を残せるのかしら
仲間の死骸と敵の骸。手に入るのは自己満足――――少しだけの、それも見せかけの罪悪感
貴方は本当に悔いているの?
ただ、“罪人”から早く逃れたくて、何処か心の片隅ではそう考えているのではないかしらね
私も罪人――だけれど、罪の滅ぼし方を知っている」

少女が抱く其れはきっと純粋なる罪悪感なのかもしれない
しかし、女は見せ掛けとして言い放った
きっと、本心から悔いている事は分かっているのだろう
――ならば、己自身すらも疑わせてしまおう。そんな考えでの言葉
考える余地すら与えず、自らに問いを重ねさせる様な言葉
悪魔――善意など、元より無い種族
罪を罪と認識しないからこそ、平然と最後の言葉を続けた


「私には守りたい物なんて無い
だから、暇潰し――――ただ、そうねぇ
さっきも言ったように、私達は皆が同じ考えでは無いわよ
だから、きっと黒の中にも貴方と同じ考えの人が居るんじゃ無いかしら?」

泣きじゃくり始めた少女
感情をさらけ出す少女に向かって浮かべるのは、やはり何時もの態とらしい笑み
或いは、堕とすような誘いの表情か
まるで言い聞かせる様にして屈み込み、右の手で顎を引いて瞳を見つめさせることだろう
――空いた手の指先に溜まる魔力
人一人程度なら簡単に貫きそうな其れではあるが――今はまだ、少女に向けられることは無く


「貴方は緑の人。そして其れは緑の人の言葉
――黒の事も知らずにただ一方的に言って、考えを固めてしまっては私達はただの争い好きの分からず屋になってしまいそうね
戦争を終わらせたければ、もう誰も犠牲者を増やしたくなければ暫く黒にも居てみなさい
どっちが正しいのか、貴方の考えは本当に其れで良かったのか――何時かきっと答えが出ることでしょう
貴方が自分から願うならば、この大陸でも生きていられるようにしてあげるわよ?」

このまま殺すのも詰まらない。ならばその純粋に漬け込んで利用するのも手か
子供に言い聞かせる親の様な優しげな微笑み――しかしその下には、そんな優しい情は無く
林檎を手に取らせた蛇の如く甘い囁き
言霊による、揺さぶり
もし目線を交えていたならば、きっと少女の前髪を優しく掻いて後ろへと持って行くことだろう
その誘惑の言葉に頷けば、きっと自力で戻るのは難しいかもしれない
256 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします[sage]:2012/11/16(金) 21:19:03.61 ID:NzhEbjKEo
>>225

それは不満か、不安か。止められない感情と共にその瞳からも想いが、零れ、溢れ
敵地に乗り込み子供の様にただ泣きじゃくる、それは酷く滑稽なものに写るのだろうか

流れる女の声が聞こえてくる、それに何か言おうとするも言葉が出ないのか
何度も口を開こうとするも、それは荒い息の中へと消えて行く

「……違う……私達がやっている事は間違っている事……でも間違いをおかさなきゃ……大切な人は守れない…
 罪人にならなきゃ……守りたいものは守れない……それを正義って言葉で誤魔化して……逃げて…自分は正しいんだって思うほうが…よっぽど子供だよ…!
 生きたいから戦うし……守りたいから[ピーーー]んだ……生きているから逃げたいと思う事もある…
 でも…っ!罪は無くなるものなんかじゃない…滅せるものなんかでもない……」

言葉は甘く優しいもの、聞いていると──自分が許されると思ってしまう。
その差し出された免罪符に手を伸ばそうとして受け入れる────否。

噛み締めるように、エルフの細腕が黒の大地に付き放たれ、出す言葉はエルフの言葉、自分の言葉
罪悪感が無い事は無い、だからこそ自分を責めるのは当然の事なのだろうか。
免罪符を求めてなんていない、そう言えば嘘になる、罪人から逃げたく無いと言えば嘘になる
しかし────罪は罪として認識しているから、それは決して無くなるものでは無いと思うから。


「今は無くても……いつかは出来るかもしれないじゃない……そうなったら……あなたはどうするのよ…
 それに…私がここに来たのは黒の大陸の人を知るためにここに来た…他の考え方を持つ人がいるんじゃないかって…
 そう思ったから私はここにきた…緑のエルフとしてここに来た……でも……中立なはずの青にまで手を出そうとしている人達までいる……
 意味がわからないよ……自分で敵を作っているだけじゃない……また怨みを作るだけじゃない……
 それを止めようとしている人がいるかもしれないって思ったりもした……でも会えなかった...もしかするといるかもしれない......
 けど…….あんな人達がいたら……ただ憎しみが増えていくだけじゃない……」

それは彼女が黒の大陸に来て──、出会ったネグロ・アラの構成員達の話で彼女が解釈した言葉なのかもしれない
黒の大陸に来て、そんな者達の占める割合があまりにも多すぎたから、そんな儚い夢も彼方へと消えるものなのだろうかと
ゆえに──彼女は黒の大陸が怖くなっていた、誰もそんな人はいない、戦争を作り出す人たちばかりだと
だから──エルフが女とあった時、警戒し逃げようとしたのかもしれない。
その想いを、自分を隠せる自身がなかったから、エルフ自身が黒の者として話す事など出来なくなると思ったからなのかも知れない


エルフが紡ぐ言葉は先程までとは違い、僅かであるが感情が抑えられていた。冷静になろうとしていたのだ
大地に目を向け言葉を投げかけるばかりで、ゆえに──今の女の表情を見るまでは、女の方へと瞳が向けられる事は無く。

そしてその瞳が上えと向けられエルフが見た女の表情は優しい笑み──

「────ッ」

ここで黒の大陸に残り、黒の内部で違った意見を持つ誰かに会えれば、別の道に進む一歩を踏み出せるかもしれない
言葉の中エルフの脳裡を過るのはその想いだったのだろうか、まるで抵抗なくその女の手は灰色の肌へと触れることが出来るであろう
しかし──

「だめ……確かに違った考えを持つ人は’いるかもしれない……でもここに来て分かった事があります……
 戦争を終わらせるためには……その前に一つやらなきゃいけない事がある……犠牲者を減らすためにやらなきゃならない事がある
 未来の為に私がすべきことが今はあるから……」

違和感──その言葉に感じたもの、これに頷けばそれは今まで自分のしてきた事を全て否定する事になる
自分の考えでやってきた事を否定することになる。私達のやっていることは正しいものではなく、間違った事なのだから


その言葉を振り払うかの様に……身体が勝手に反応でもしたかの様に一度身体を震わせ
後方へと転がり込もうとする、それを振り払えたならば、女が見るエルフの姿は腰を低く下ろし両手をその大地へ付ける彼女の姿であろう
そしてその場に流れる緑──黒の混じったその魔翌力、それを感じ取る事が出来るだろう

その魔翌力は傷つけるための牙であるか──或いは別の何かか──それは今はわからないが
その周囲に魔翌力が広がる
257 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします[sage saga]:2012/11/16(金) 22:52:35.88 ID:A3iNp1kG0
>>256
「罪は赦されれば無くなる物よ
――そう、赦されることが出来ればだけれど
罪を犯してまで守り抜くべき事なのかしら?
自分を汚してまで、本当に守る価値があるのかしら?
――きっと貴方の殺した亜人も守るために戦ったのでしょうね
だけれど、貴方に刃を向けられ、結局は虚しく死んでしまった
どんなに頑張って守っても、何れ貴方も守っていた物に殺されてしまうわよ」

エルフの言葉を全て否定するかのように返し――先と状況を重ねさせた
亜人は何を想っていたのかそれは誰にも分からない
分からないからこそ、都合良く勝手に付け加え、それを真実としようとする
――滴っていた血も、全て地面に染みこんだ頃であろう
柔らかくなった大地をつま先で撫でれば、簡単に溝が出来、押された隙間からは血が溢れて溝を満たす


「私に大切な物が出来たなら――?
壊すわよ。きっと楽しいでしょうね……大切な物が壊れていく瞬間は
――さぁ、私には青を攻める考える事が分からないけど
楽しければそれで良い。だけれど、面倒事は増やしたくないもの
それとも、こう考えてみたらどうかしら?
青に殺された者が居る。その復讐として青を攻めている
――ならば止める理由は誰も持たないでしょう。だけれど、本当に攻めたのなら恨みの連鎖は止められない
貴方が命を賭して止めてみる?
そうすれば矛先は貴方、やがて緑へと向けられて……今よりももっと激しいことになりそうね」

この女の言葉で唯一事実なのは、ネグロ・アラに荷担してはしないという事
それ故、青を攻めるという事に関しては実に不思議そうに語ってみせた
退屈は嫌いだが、面倒事も嫌い
そんな我が儘な性格である為、再び大きな戦争の火種を作ろうとは想っていないのだろう
――一つの提案。恨みの連鎖を断ち切る事
しかし、それは余りにも非現実な事


「そう、残念ねぇ……
ならば、貴方のやりたいことの為に罪を重ねて生きなさい
もっと大きな恨みを背負い続けて歩き続けなさい
――本当に貴方の考えている“其れ”で犠牲者が減ると想うならば」

振り払うことを止める事はしなかった
か弱そうに見えても屈しなかったことに興味を抱いたのだろう、エルフの決意を見てみたくて
既に言葉には“言霊”が含まれては居ない
大地に両手を着ける様子を見れば、足下に薄く闇を広げた
地面からの攻撃であれば、ワンクッション挟み避ける余裕を作ることが出来る
――向けられた人差し指。純粋な魔力が溜まった指先
例えるならば其れは銃口を向けて引き金に指を掛けている状態で有り――
きっと、攻撃してくれば肩を射貫こうとするだろうか
それ以外の物であれば、きっと指先の魔力も宙に散って消えるのだろう
258 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします[sage]:2012/11/17(土) 22:11:23.36 ID:SwMuZhojo
>>257

「それは誰かが逃げるためにいう言葉……罪を罪だと思っていない人の言葉……
 罪が自分のものだと思わない人の言葉……

 想いに、願いに価値なんてものは無いです……
 だけど私は想いがあるから願いがあるから生きたい…
 だから……身に振りかかるものは例え…同じ大陸の人だったとしても払います……
 自分の居場所が無くなっても……私はやらなきゃいけないから
 分かっていた事です……もう……後戻りは出来ない……でもこれからの未来はどれだけでも変える事は出来るはず…」

無風の大地、魔翌力は流れ、空より銀光纏った髪は靡き煌いて
瞳に写すのは向けられた銃口の如し女の指、霞む景色広がる闇。

練られる魔翌力は今も渦巻き、それは大地へ注がれている事が分かるだろう
そして大地に触れる両手、そのエルフの周囲の植物を視界に入れているならば
それ等が成長している事に気付くだろう。長時間をかけてなる姿、その植物たちは今──
成長と言う過程の中を急激に加速させているのである。
得るべきものが得れない土壌、その植物、それらは今、確かに生きて、確かに成長しているのだ。

「……………………確かに何も知らない私が個人の恨みにとやかく言える立場じゃない……
 でも……青にいくなら私は止めなきゃいけない……恨みを向けられても...いかなきゃもっと…
 大変なことになるから…….……それだけは止めなきゃいけない…緑の大陸が危ない…」

その言葉が途切れた頃であろうか、その場の空気が変わる
魔翌力を感じていたならば、それに気付くのは容易いだろう。
魔翌力が消えたのだ。先程までその場に広がっていた魔翌力が消え、エルフの真下、その大地が割れる──

「……大切なものを知らないのに………大切なものが壊せると思うの……?
 まだ………どんなものか分からない……のに……」


出てくるのは巨大な蔦──、それはエルフの身体に巻き付きなお成長を続け天へと伸び
鞭な様に撓りエルフを遠くへとと投げ飛ばし、その勢いと共に植物自らの身をも天へと飛ばす
大地から怒涛の如く天へと飛ぶ、その蔦、根、それをつかめば後を追うことも可能であろうが

空を見れば蔦が毬の様に球状を作っているのが確認できるかもしれない、ゆえに、その残された蔦、根も、操られる様に
それは何時しか球体の一部と化すだろう
何処に飛ばしたのか、それは何処に落るのか

攻撃ともとれる前兆──その女の行動は解らぬが──、射ぬけば、それはエルフの身体を刺す事は出来るかもしれない
しかしその蔦がエルフの身体に巻き付く速度は早くあって、その進行を止めるには簡単な術だけでは止まらないとは予想ができるであろう

そして最後に女に投げかけた質問は、蔦の唸る声、それらによって阻まれるものであるのかも
もし彼女が宙えと飛ばされたのであれば、その言葉は途中で消えいくのだろうか。
それはエルフの疑問であり……女の言葉を女の言葉として認めたくなかった我が儘な質問であったのかもしれない──

エルフが去るとその魔翌力をもって成長した植物達も次第に元の姿に戻るだろう
女の目の前の光景は何時もと変わらぬ、そんな光景であろうか。
259 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします[sage saga]:2012/11/18(日) 02:31:17.90 ID:fcxSLha50
>>258
「ええ、未来は変える事が出来るわ
だけれど、変えられる所は余りにも狭すぎるの――力の無い人にとっては
未来を変えると言う事は我が儘を通すこと、そして我が儘を通すにはそれ相応の力が無ければいけないの
……罪を認めてしまう貴方にそれだけの意思と力があるのかしらね」

未だ指先は向けられたまま
未来を変えることは即ち先の事に納得がいかず己の我を通すこと――女はその様に考えているのだろう
罪を認めて小さな身体に背負い続ける相手に問うた
潰されずに我を通し続けることが出来るのかと


「……ならば行ってみなさい
自分の力でどの位未来を変えることが出来るのかを試してみなさい
悪くなろうと良くなろうと、それは少なからず貴方が干渉した結果
――本当に其れを受け入れることが出来るのならばやってみなさい
何十の仲間を捧げて満足のいく結果を得られるならば」

相手の身体に巻き付いた事を確認すれば、魔力はすっと消えてしまう
――この程度の攻撃では止める事が難しい事を悟った事もあるだろう
しかしそれ以上に、エルフの述べた未来という物に興味を抱いて
追うことは無い。放っておけば、何れ退屈が紛れる何かが起きる可能性に掛けて
見送るとは言わずとも、結果的にはそのような形になってしまって
エルフの姿――植物の塊が完全に視界から消えてしまえば、思い出した様に口を開くことになる


「――本当は私にも昔むかしその昔、大切な物が一つだけあったわよ?
自分で壊したから、もうどうでも良い事
フフ――楽しかったわねぇ……壊れる瞬間は」

エルフの言葉に対しての言葉なのかは分からない
――しかし、最後の投げかけは聞こえなかった筈
ならば、それはこの女のただの呟きか
答えは分からないが、小さな笑いを漏らすことだろう
この先の事に対しての期待か、“壊した事”を思い出しての笑みか

――――やがて、踵が一度だけ地面を撫でる
そうすれば女の身体は霧のように溶けていき、やがては完全に溶けていくことだろう
残されたのは、骸の飾られた一本の樹のみで――――
260 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします[sage]:2012/11/21(水) 00:00:51.49 ID:lHbseDUno
赤の大陸──

地表を抉る傷跡は戦争の記憶を今も尚忘れられないものとする
その場に吹く風の匂いは鉄の錆を纏わせ、他の大陸のものからすればやけに鼻に付く不快な匂いと言えるのだろうか

赤の大陸、辺境の岩場地帯────木は枯れ赤雲が淀む空、錆びた風、それはその大陸の者の感情の鱗片を見ている様で


そして──その風にそれとは異なる匂いを交じわせる場所。
風下にいるならば、その匂いに興味をいだき、その場所へと足を運ぶのだろうか
風上にいるならば──、ふと風向きが変わった時、また別の異なる匂いの方へと足を運ばせるのだろうか

その匂いは大陸に吹く退屈で虚空な風とは違い、鮮血の匂いを含む──そして酒の独特の匂いを含むものであり
その場に近づくにつれ、匂いでは無くその瞳に写る光景すら変わって行く

鬼──赤肌を持つ赤の種族、まるで先ほどまで生きていたかの様に、身体から流れるのは新しい血の色
そこからもし、瞳を上げ遠くを覗いたならば一際目立つ大岩の上に一つの影を確認する事ができるであろう

そしてその影が、まるで手を振っているかの様に揺れ動き、その大岩が立つ周辺には同じ赤肌の鬼達の亡骸が多く転がって
いる──そんな光景を見ることが出来るであろう

風が運ぶ匂いは、今は意味もない、何故ならその匂いを漂わせるのはその場所であるから
血の匂い、そして酒の匂い、近づけば分かるであろう、大岩に座る女の姿を見ることが出来るであろう

赤肌に覗く瞳は茜彩り、長い髪には漆黒帯び。
後頭に結われた朱布より尾を垂らす後ろ髪
前髪は眉上に整い、その左右は下がり端の様に首筋にて揺らぎを見せ
それをかき分け額から突き出すのは朱色の角

金糸で縫われた虎柄の長羽織を纏う女、それは鬼族──赤の者

杯を傾け大岩に胡座を掻く、その機嫌の良いような鬼の姿を──。

−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−



青の大陸──

ネグロ・アラの布告よりそれは数日、その船が就航されまだ青の大陸へと到達していない頃であろうか
街に広がる声は不安か、平安か──民にその情報は行き渡っているのだろうか、それは解らぬが
その大陸、首都アトランティスの空より白の翼が舞い降った。

その光景は中立を抱く青の大陸にとってはなんら不思議なものではなく、よく見る光景であるのだろう
しかし──それは何時もと違う点があった。その天使達の数が多いのだ、今までそれ程の数の天使が青の空を飛ぶ事など無かっただろう
だが、今その空より、舞い降りる天使の影は何か異変でも起こったかのように多く、それに違和感を感じるならば興味をそそる物なのだろうか

白き羽と共に振る、赤く染まる羽──
その天使達はやがて、青の大地を踏み、ある広場へと降りる事であろう。

白き翼の中、一際目立つ赤羽の天使が舞い降りる、その様子を暫し眺めていると、何かを探しているようにも見えるのだが

「お前たちは……港で待機、お前はここで待っていろ……異変があればすぐに知らせるんだ、分かったか…?」

綺麗な整列を整え、並ぶ天使達、その光景は青のものからすればおかしな物に見えるのだろうか
兎に角、かれらがまた羽ばたき、白へ向かう港へ戻っていく。

そして赤染の翼の天使は一人、街の方、ギルドがあるその場へと足を運ばせるのである。
261 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします[sage saga]:2012/11/21(水) 00:26:27.75 ID:4XLol80O0
>>260
「やけに物騒ですわね
戦争でもまた戦争でも始める気ですの?
でしたら、私の方に言って下されば少しは安く売ってあげますわよ」

一体どれほどまで歩を進めた頃か、天使にそんな声が掛けられることだろう
起伏に富んだ身体、それを覆うのは簡素なドレス
各ギルドについて予め調べていたのならば、その女についても分かっているだろうか
商人ギルドの一人、エリクセン
それなりの規模の市場を持って居て、何より歴史が長い
――それでも、最近では余り名を聞かなくなったが
手にしていた林檎を咀嚼すると、椅子代わりの樽から降りてその天使へと近づいた


「さき程空を飛んでいたのは貴方達白の方々で間違いはありませんわよね?
穏やかじゃなく、中立を謳う私達からすれば揉め事は飛ばしてきて欲しく無いですわ
――と、建前上は述べさせて頂きますわよ」

その言葉を言い終えれば、天使をマジマジと見つめることだろう
武器、その仕草。白の者が攻撃を仕掛けてこないのは理解している
だが、もしも万が一の事があれば、大きな損害を被る事になる可能性は十分にあるのだ
念には念を入れるようにして疑いの眼差しを向けた後、少しの距離を保つだろう
建前上――その言葉が示すとおり、この女のその言葉は取り敢えず付け加えられた物
戦争や争いがあればこそ儲かるから、そんな考えなのだろう


「あんな人数で来ると言う事は、そんなに良いニュースでは無さそうですわね
ですが……無いとは想いますが、貴方達が事を起こすために来たのならば、どうなるかは理解していますわね?
中立を保っている私達に攻撃すれば、貴方達もきっとただでは済みませんわよ」

やけに攻撃的な口調
しかし、それも商売上仕方の無いことか
疑う事が商人の仕事の一つでもあるのだから
攻撃をすれば、白は各場所からの攻撃を受けることになる
何より、青は物流もしている――それが止まってしまえば
まるでそんなニュアンスも含まれているような言い様で
262 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします[sage saga]:2012/11/21(水) 00:35:30.98 ID:4XLol80O0
>>260
「やけに物騒ですわね
戦争でもまた戦争でも始める気ですの?
でしたら、私の方に言って下されば少しは安く売ってあげますわよ」

一体どれほどまで歩を進めた頃か、天使にそんな声が掛けられることだろう
起伏に富んだ身体、それを覆うのは簡素なドレス
各ギルドについて予め調べていたのならば、その女についても分かっているだろうか
商人ギルドの一人、エリクセン
それなりの規模の市場を持って居て、何より歴史が長い
――それでも、最近では余り名を聞かなくなったが
手にしていた林檎を咀嚼すると、椅子代わりの樽から降りてその天使へと近づいた


「さき程空を飛んでいたのは貴方達白の方々で間違いはありませんわよね?
穏やかじゃなく、中立を謳う私達からすれば揉め事は飛ばしてきて欲しく無いですわ
――と、建前上は述べさせて頂きますわよ」

その言葉を言い終えれば、天使をマジマジと見つめることだろう
武器、その仕草。白の者が攻撃を仕掛けてこないのは理解している
だが、もしも万が一の事があれば、大きな損害を被る事になる可能性は十分にあるのだ
念には念を入れるようにして疑いの眼差しを向けた後、少しの距離を保つだろう
建前上――その言葉が示すとおり、この女のその言葉は取り敢えず付け加えられた物
戦争や争いがあればこそ儲かるから、そんな考えなのだろう


「あんな人数で来ると言う事は、そんなに良いニュースでは無さそうですわね
ですが……無いとは想いますが、貴方達が事を起こすために来たのならば、どうなるかは理解していますわね?
中立を保っている私達に攻撃すれば、貴方達もきっとただでは済みませんわよ」

やけに攻撃的な口調
しかし、それも商売上仕方の無いことか
疑う事が商人の仕事の一つでもあるのだから
攻撃をすれば、白は各場所からの攻撃を受けることになる
何より、青は物流もしている――それが止まってしまえば
まるでそんなニュアンスも含まれているような言い様で
263 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします[sage]:2012/11/21(水) 01:32:23.99 ID:lHbseDUno
>>261

青の大陸、彼等の持つ技術力、探究心は目を瞠るモノがある、多くのギルドが連なり一つの都市を形成する
アトランティス──唯でさえ広い都市はそれらの者が集まる場所であるがゆえ、入り組んだ迷宮の様にも見えて
連なる商店、建造を一つ一つ確認擦るかの様に足を前へ前へと運び、その足をすすめる度、纏う鎧が金属の擦れる音を鳴らす
天使の白く絹糸の様な長髪が宙へと棚引く。

そして暫く、進んだ先に。一声、正面からであろうか、天使の耳へと声が入り
その方向へと面を向けみれば視界に入るのは──

「…...お前は……そうか──商人ギルドの……」

彼女──商人ギルドに名を入れる商人であり、彼女の最初の言葉を聞くなり天使の口から出るのはその言葉
ギルドに加入し、それなりの規模を持つその家系の事は調べれば分かるものであったか
それとも長い大戦の中、商人としてその地位を確立する者の名前を知っていても不思議な事では無いのかも知れない


「建前上──か、そうだな、不安を煽って締まったならば詫びよ…….申し訳ない
 しかし……商人と名を馳せるエリクセンともなる者になると、今起きている事を分かっていない訳でも無いだろう」

そして商人ともなると今の世界情勢を理解し、この天使と同等、いや、それ以上の情報を得ている事はなんら不思議では無い
ゆえに、天使の対応は一般の青の民に対する態度とは全く違い、その “事” について、まるで話がしたいと言わんばかりで。
天使侘び、それも彼女と同じく、相対する上での建前上の言葉なのであろう。

「言うように良いニュースでは無い…… “お互い” にな…」

彼女は知っているであろうか、そのネグロ・アラの海上戦が青に向けられている事、そして青に向け宣戦布告をした事を
それとも、その宣戦布告は青の大陸全土の者が知っている事であろうか
そして──それにより現在取引相手の白へ被害が出る事を認識はしているのだろうか
今、おきている “事” は “お互い” にとって良いニュースでは無いのだろう。
天使としては商人の考えなどは解らぬ事ではあるのだが

「……事を起こすなら既に始めているさ……奴等はは海の向こう側に対しての処置……
 その様なつもりは無い……………」

事は起こすつもりは無い、この場所ではそう言った、それはこの場所であるから──
何処で誰が聞いているか分からない、それを踏まえた上で天使はそう言ったのだ。

「……少し────場所を変えないか。」

そして続きだされる言葉は、天使が彼女から目を話周囲に視界を散らした後で
人の少ない場所で話をしようと受け取る事も出来るであろう、現に周りに人が居ない訳ではないのだから
264 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします[sage saga]:2012/11/21(水) 02:13:13.66 ID:4XLol80O0
>>263
「白の方でも私の名前を知っているなんて、意外でしたわ
特に貴方の様な上に立つ方が知っているなんて――光栄、と取っても良いのでして?」

怪訝そうに眉を上げて、天使が自分の名を性格に当てたことに対して驚いた様子を見せた
今まで青の大陸に――それもギルドの連中に目を向ける者など、そう多くはないと想っていたから
その表情も元のものへと戻すと、天使が続ける言葉を待って


「黒のとある連中が此処を目指して攻めてくる――という話で間違いはなさそうですわね。その様子をみれば
丁度良い機会だと想っていましたわ
また様々な物が飛ぶように売れる戦争が起きるのですわね」

天使の言葉を聞いて、更にはそれを途中で遮るように答えた
この地を目指して侵攻し、それが果たされたとなれば甚大な被害を受けることは明白
しかし、同時にそれはまた武具が売れる事でもあり――商人ともなれば、この機会を逃すはずもない
白が青を重要と考えているからこそ出た算段
或いはシナリオ通りとでも思ったか――口元に笑みを浮かべて


「そして少なくとも、それは私にとって良いニュースにも悪いニュースにもなり得ましてよ?
争いには品が必要で、この先様々な物資の需要が高まる事でしょう
勿論、私達もただで提供する気はありませんわ
――あなた方“白”もその一人ですわよ」

こちらが被害を受ければ、必然的に白もダメージを負う形となるだろう
ならば、否が応でも青を守ることに徹するはず
――そこに漬け込む形で、利益を上げれば良い
白の民も生きていれば物は必要となる


「この直ぐ近くでならば部屋を一つ用意できますわよ?
だけれど、そんなに辺りの目を気にしなければいけない話ですの?
きっと、殆どの人達が知っている事だと私は想いますわ」

この近くに自分がよく使う宿がある事を告げて、更には疑問の言葉が続けられる
しかし、否定する気は無いのだろう
天使がもう一度促せば、反発することなく其処へと案内するように歩き始める筈で
265 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします[sage]:2012/11/21(水) 03:56:59.10 ID:lHbseDUno
>>264

「流石商人とでも言った所か……その話で間違えは無いが────……」

この場では言わない事が天使の建前では無い言葉であり本音の部分であるのだろう
逆を言えば、今この場で言っていることは建前上の言葉ばかり、彼女の口元に浮き出るその意味すら
天使にとっては深く考える必要も無いと言わんばかりに反応を示す事は無く

「商売の話では無い、実際の所だ──確かに青からの品は我が大陸にも普及している、だがそれとはまた別の問題なのでな」

青からの交易は白に於いてのメリットと今回起こされるであろう戦争によるデメリットを天秤にかけると
それは大きくデメリットが上回ると判断できる、少なくとも彼女の目の前にいる天使はそう考えたのであろう

空の大陸、彼等の文明はどれ程のもので、門外不出の部分が多いゆえにそれは明確に認識できるものでは無いのだろうか
交易が止まったとし、今まで青から補っていたものを白で得るにはどれ程の労力が必要となるのか、それも分からないものである
白が青と交易を続ける理由────それは品の為か或いは、無駄な敵を増やす事は無いと思考した上での事なのか


「しかし──そうだな、貴殿がそう考えるのであれば、今はそれ以上言うは無いかも知れぬ」

彼女の返答に天使は己の脳裡に浮かぶ回答に沿い、ただ言葉を続ける
あるのは青は中立であり、本来は守る必要は無いと言う事、しかし今回はネグロ・アラの奇襲
断交を行い、青との道を塞ぐ準備期間も長く取れないのだろう
しかし次からはどうなるかは分からないものでもあり、これ以上深く白の意思を話すのは得策では無いと判断したのか


言葉を聞けば、その者が言うのは戦争は利益を上げるもの、それならば、これ以上話を続けてもそれは平行線のまま
もしくはそれ以下のものへとなる可能性も考えられる、少なくとも彼女には会話で解決できる事では無いと判断したのだろうか


「失礼したな──」

出る言葉は、別れを告げるものであって──何も無ければ、そのままその場から去り、他の者を探しに行くのであろうか
少なくともこれまで天使が得た情報は、一人の商人の考え、白の者とは相違したもの
明確なそれを得れた事だけでも重要な事であったのかもしれないが。
266 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします[sage saga]:2012/11/21(水) 16:27:55.32 ID:4XLol80O0
>>265
「別問題ですの?
でも確かにあなた方から見れば利益とは別問題ですわね
規律を保つことが使命であれば」

規律を保つことが使命であれば――その言葉の通り、女は白を規律を保つ役割を持つと考えているのだろう
然れど、その言葉には自分等の又異なった役割を伝えるような響きが含まれていて
理解は出来る。しかし簡単には妥協できない
言葉を述べ終えた後、きっぱりとそう言い放つ事だろう

色の違いによる、考えの異なりとでも言うべきか
それとも、商人故の考えと表すべきか


「理解して頂けたのなら何よりですわ
脚を止めさせてしまってご迷惑をお掛けしましたわね
ただ――――」

其処で、不自然に言葉が途切れた
自らの顎に手を添えて、まるで何かを思案しているような仕草
それは、天使が別れを告げるまでの僅かな間のみ
しかし、その時間で何かを決めた様で、その背中にもう一度声を掛ける事だろう


「消費者の言葉に応えるのも私達の役割の一つ
ですから、あなた方白が青に何かを言葉を贈っていた――という事を今度の会合で伝えても宜しくてよ
あくまで一つの意見。其れが通るかは保証できない事を留意して頂けることを条件に――ですわ」

果たして、その言葉は去ろうとしている天使に届いたのだろうか
消費者の言葉に応えるのも仕事の一つ
故に、白の言葉も届けようかという提案
――興味を引くかどうかは否として
会合とやらが女の持つ市場の者達と行われるのか、それとも他のギルドと行われるのかは不明だが
きっと、更に多くの者達へその“声”を届けることが出来るであろう
267 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします[sage]:2012/11/22(木) 00:28:51.39 ID:8Yj/Ky6Wo
>>266

女に背を向け、どれ程足を進めた頃か
背より投げかけられた言葉によって天使は歩みを止める。
それは女にも見え、その言葉が聞こえていたと解釈しても間違えでは無いであろう

そして天使がその翼を返し、女の方えと振り向けば──


「我らは白の大陸の為────ある組織に正面を切って対抗する、誰の為でもなくどこの大陸の為でも無く
 ただ、我々の大陸を守る為に戦かいを挑む、必ず阻止してみせる、いや──阻止せねばならん。

 “何があっても、何をしてもだ” “青は青の為に何をする? ” 伝えるなば……そう伝えてくれ
 もっとも──貴殿等、商人には “利益の為に何をするか”と言ったほうが分かりやすいかも知れないな──


 ……これより我らはここへと向かう組織の連中を叩きに向かう、白の大陸の為にな
 貴殿等が利益で動く商人ならば、我らは大陸の秩序を守る盾であり剣───その規律の為に動く騎士だ。

 青の大陸の動きによっては我々はその盾を使うことになるかもしれん
 中立である青が無いとは思うが──剣を交え合う事にもなるかもしれん。

 それだけ……だ。」


既に天使の中では答えは出ている様なものなのだ、青がどう動こうと、天使の答えは既に出ている
盾、それは害を寄せ付けない為にはる断交という手段だろうか
剣、ネグロ・アラに屈し白へ攻めるならばそれは青とて容赦はしないと言うことだろうか
脅迫──そう聞こえるかもしれないが、白、天使にとっても今の青は危険な不安要素、脅迫されていると等しいものなのかもしれない

今まで白が本格的にその大戦に参戦した事は無かっただろう、緑に援軍を求められた程度もの
その彼等が本格的に参戦したならば、今まで以上にその戦争の激化は進むのだろうか。

それだけ言い残し、赤の翼を大きく広げ、空へと、その身を羽ばたかせるだろう。

舞い散る翼は血染めの茜、黒く、暗く、彼女に染まった色、白へと染まり、白であるもの──
天使が去ったその場に、ただその羽が振るのみであり。
268 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします[sage]:2012/11/26(月) 21:05:59.80 ID:n1VYC2x60
白の大陸――――
然程人の通りが少ないわけでもなく、寧ろ他の大陸の者達が通ることが多い港。その片隅での事
噴水の近くで何やら小動物や鳥に囲まれ、楽しそうに話す者が一人
一目見れば少女と間違えるような容姿ではあるが、よく見れば男だと分かるだろう
背から生えた白き翼を見れば、この者も白の大陸に住む天使の一人と理解するのは容易な事だろうか
現状が現状故に気の緩みが赦されない今
それでも、少年はご満悦の表情で動物たちと戯れていて
円卓の関係者と見られる人物は呆れ顔で、他の大陸から来た者は物珍しそうな表情をしつつ、前を通り過ぎてゆく


「あ、ちょっと!それはボクのお昼ご飯……!
食べちゃ駄目だってば!こらっ!」

お昼時――少年が手にしている袋に入っているのはパン
集まっているのは鳥等――どちらかと言えば、餌をたかられていたとでも言うべきなのだろうか
目の前で無残に啄まれていくパン達
あわあわとした様子でせめて少しだけでもと袋の中のパンを確保しようとするが――
やっと手にした其れも、少年の頭上で丸まって寝ていた一匹の小動物に食べられてしまい
残ったのは、パン屑
所々穴の空いた袋に、肩を落とした少年


「ううう……折角人気のパン屋さんのを買えたと思ったのになぁ……
いや、直ぐに食べなかったボクも悪いけどさぁ……」

腹を満たした鳥たちも居なくなり、親友と呼ぶ動物も頭上で再び寝ている故に虚しい独り言
腹の虫が鳴れば通り行く人々が思い思いの物を食べている事に気付き、指を咥えながらその様子を見つめる
白の者が見ればきっと少年のいつも通りの半職務放棄状態に叱るか
他の大陸の者が見れば、乞食か何かと勘違いさせて興味を抱かせる事か――――
269 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします[sage]:2012/11/26(月) 21:30:45.64 ID:xo0mw38No
>>268

────ちりん。
喧騒の中で微かに響くのは、銀と銀が擦れ合う音。
きっと人々の話し声や足音で、小さな小さな音は消えてしまうのだろう。
それでも確かにその時、銀色の音は己を奏でていた。


「──エティは認識します。オグマ=アルル」


音を追いかけてきた声は、知るものが聞けばすぐに誰のものかが分かるほどに特徴的なもの。
──いや、特徴的なのは声ではなく、その話し方だろうか。
少年の名を呼んだのは、一人の少女だった。
彼と同じ、≪円卓≫に集う≪騎士≫──紅い髪に紅い瞳を持つ、感情の起伏が薄い少女。
彼女が何故ここにいるのか。
その理由は不明だが、纏う法衣にすっぽりと覆い隠された腕にはしっかりと紙袋が抱かれていた。
時間帯と場所のことを考えると、紙袋の中は昼食、だろうか。

少女──エトワール・バティストは左耳の装飾具をちりちりと揺らしながら彼へと歩み寄る。
そうして、少女は

「エティは語りかけます。どうぞ」

がさりと紙袋の中からサンドイッチを取り出し、そっとオグマへと差し出した。

「施しもまた重要なものと学びました」

──余計な一言は、確かにあったけれど。
270 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします[sage saga]:2012/11/26(月) 22:11:00.67 ID:n1VYC2x60
>>269
「ああもう、耳だけ綺麗に残して……
……て言うか、食べるなら綺麗に食べていってよね」

服――纏う布に付いたパン屑。其れ等を全て集めて、掌に乗せたところで聞こえてきた声
首をその方向へと動かせば、知った顔
きっと、少年はその表情を緩やかな笑みへと変えながら言葉を返すことだろう
頭上の親友を起こしてパン屑を食わせつつ


「こんにちはー。この前はお疲れ様です
――いいなぁ、エトワールさんも今からお昼ご飯で――あれ?」

少年が少女の持つ紙袋に送る視線は何処か羨ましそうにも見えるだろうか
……否、どちらかと言えば嫉妬の方が多いか
口元は笑みを浮かべていてもジトーと送られる視線が実にアンバランスで
――それが又、少年の感情の豊かさも表しているようで
言葉を言い終える前にエトワールから差し出された一つのサンドイッチ
目を輝かせて其れを受け取ると、食べようとして――礼を言っていないことに気付いたのか、その口を止める


「ありがとうございます。でも……むぅ、嫌味ですか?
ボクだって自分の食べ物を全部あげるくらい情け深くは……あれ、これがエトワールさんの施しならボクってそんな可愛そうな人に見られてましたか?!」

どうも素直に礼を述べられない複雑な心境
それでも貰ったサンドイッチはしっかりと手にしていて――その匂いに気付いたのだろう
パン屑を食わされていたその小さな動物が自分はこっちの方が良いと言わんばかりに少年が手にしている物にかぶりつこうとする
――が、虚しく制止されて目的は少年の口の中へ
まるで抗議でもするかの如く小さな脚で二度三度地団駄を踏むと、パン屑を蹴散らして頭の上へと戻り


「ふぉうひえば……んぐっ
そーいえば、エトワールさんがこの辺りに居るのは珍しいですね
それとも何時も居るけど気付かなかっただけかな……」

その様子に苦笑を見せた
そして少女に語ることだろう
普段少年が様々な場所で職場放棄している故に分からなかったのか
それとも少女が本当にこの場所へ訪れるのが珍しい事なのか、それは不明だが
271 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします[sage]:2012/11/26(月) 22:56:59.89 ID:xo0mw38No
>>270

嫉妬の視線も羨望の言葉も全て彼女は受け流した。少なくとも、受け流しているように見えた。
オグマにサンドイッチを渡した後、エトワールはしばし考えこむ。
そして彼の言葉を聞きながら、紙袋からもう一つパンを取り出した。
袋の感触や見た目からして、もう袋の中には何も入っていないのだろう。
彼女はぱくりとパンを軽く咥えてから、空になった袋を小さく畳んで服の中にしまいこんだ。

「エティは、むぐ」
「エティは答えます。見られていました」

良く言えば素直で率直、悪く言えば愚直な答えをエトワールは返す。
正直に全てを言うことが必ずしも良いことではないという典型的な例になるだろうか。
むぐむぐとパンを─クリームパンのようだ─頬張りつつ、彼女は言葉を続ける。

「エティは、……、ん、エティは続けます」
「普段昼食で使用している店舗が改装中だったため、気分転換も兼ねてここへ」
「……ひどく混んでいます。よほど暇なときでなければ──」
「…………、……………………」

「………………オグマ、またサボりですか?」

パンを食みながらのためか時折言葉は途切れてはいるものの
彼女の返答からは、エトワールが滅多にこのあたりに来ないことを窺わせるものだった。
──ちなみに彼女が普段昼食で使用している店は、味の微妙さのせいで客の少ない店。
栄養と運動に必要なカロリーが取れればいいという合理的思考、なのだろうが……
そのせいで彼女の味覚が貧相なのではと言われているのを、彼女はまだ知らない。

会話の途中途中に、彼女はあまり訪れることのない場所への感想を述べていく。
それなりの人ごみ。絶えることのない人通りに他大陸からの来訪者。
それらを見て、彼女は気づいてしまったのだ。
──ここは気軽に、職務と職務の合間に昼食をとりにこれるような場所ではない、と。
そこから彼女が結論に辿り着くのは早かった。
目の前の少年がまた職場を抜け出しているのを悟ると、少女はじっと目を細め
まるで責めるかのように彼に紅の視線を向けるのであった。
最も、彼にとっては受け慣れている視線ではあろうが。
272 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします[sage saga]:2012/11/26(月) 23:31:25.30 ID:n1VYC2x60
>>271
少女が最後のパンを取り出したとき、少年の目はさぞ輝いていた事だろう
既に一つ貰っている。それでも尚新たに求めるとは何たる厚かましさだろうか
――それも叶うことなく、今度は打って変わって絶望の表情となったが
無くなって行くパン。僅かにはみ出したクリームがまるで少年を嘲笑するかのよう

「…………エトワールさんのケチ」

想像では自分が味わっていた甘み
エトワールの言葉に対して、唇を尖らせ、むつけた様に言う事だろう
その後も文句を垂れていたが人の物は人の物
何を言おうと、少年の言葉に説得力は皆無で
本人もその事は自覚していたのだろう。一つのため息の後、エトワールの言葉に耳を傾けて


「ほへー……エトワールさんの行くって噂のあのお店でもそんなお金が……あ、何でも無いです」

本人に会った事は無くとも、噂を耳に入れたことがある
そして、その店に行ったことも
それ故につい言葉が漏れたのだろうが、その言葉を慌てて途切れさせる――も、殆ど言い終えたに等しい
笑いながら誤魔化している所に鋭い指摘
その表情のまま固まり、まるで石像の様になったかと思う頃、ようやく言い訳を初めて


「いやだなぁ、サボってなんかいないですよ
えーっと……ここの辺りもいろいろな大陸の人が出入りしていて……そ、その、危ないですから見回りです!
ももももも、もしかしたらネグロ・アラの人達も紛れ込ん、でくる可能性があるじゃないですか!
ほら、エトワールさんも笑って笑って。そんな顔をしてたら怖がられちゃいますよ!」

言葉だけを聞けば道理に適う――が、あまりにも分かりやすすぎる反応
必至に嘘を通そうとするが、乾いた笑いが良い味を出している
自分の顔を引っ張ったりして何とかやり過ごそうとするも――嘘を通すのは無理だと悟ったのだろう
その後自らこの件には触れず、首を傾げて


「エトワールさんは……見回りとかですか?
相変わらず熱心ですねー……遊びたくなったりはしないんですか?」

少なくとも、オグマの中ではエトワールは生真面目な性格
そしてまだ少女と言う事もあり――その生真面目さが不思議なのだろう
自分は逆にまだまだ遊びたい気持ちが強い
それでも少女は常に円卓の事を考えて行動している様に思える
自分とは対照的にも思えるそれに、純粋な疑問を抱いたのだろうか
――ここまで堂々とさぼれるのも不思議だが
273 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします[sage]:2012/11/27(火) 00:05:45.43 ID:5ixLdWdfo
>>272

「……エトワールは答えます」
「自分の食べ物を全部あげるくらい情け深くはありません」

それはきっと、少女なりのユーモアだったのだろう。
先ほど少年が言いかけた言葉をそのまましれっと口にし、もそもそとクリームパンを摂取していった。
最も、この状況では彼女の言葉はそれこそ嫌味に聞こえてしまうかもしれなかったけれど。


そして普段の食事場所についての返答は──
きっと、彼が何を言おうとしているのかが察せなかったのだろう。
それに加えて、同僚のサボりという見過ごせない自体に出くわしていることもあったためか。
僅かに首をかしげたまま、「例の店」についての話題は流れていき──。

「エティは頷きます」
「なるほど、失礼しました。オグマも仕事をしっかりしていたのですね」
「あなたに対する認識を改めなくてはなりません」
「では、後ほど見回りに関する報告書を出してください」
「この広場に関してはあまり知らないので、後々警護の際に参考にさせていただくかもしれません」

──天然か、はたまた確信犯か。
どこからどうみたってサボりであるにも関わらず、エトワールはオグマの言うことを素直に受け止めた。
受け止めて──更に生真面目すぎる解答を返してしまった。
笑うどころか少女の真白な表情は真剣さをますます深めることとなる。
「嘘ですね──」 その一言のほうが、どんなによかったことだろうか。

そして続くオグマの問いかけには、ただ一言──否、二言で終わらせた。

「エティは、解答します」
「騎士とは、そのようなものではないのですか?」

──遊びをすることも、甘いお菓子を食べ過ぎることもなく
勉学に勤しみ努力を惜しまず、真面目に生きて白の大陸のために尽くす──
彼女はまるで、大人が考えた「理想の子供像」を、或いは「理想の騎士像」を
そのままこねあげて形にしたかのようなものだった。
エトワールはその在り方を疑問には思わず、ただ行動に移しているだけなのだ。
視野が狭いといえばそれまで、なのだろうが──それでも、少女の世界はきっと酷く狭かった。
274 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします[sage saga]:2012/11/27(火) 00:36:30.19 ID:Q9tYZ/NF0
>>273
「あう……うううう…………意地悪……」

返されたのは自分の言葉
何も言い返せなくただ唸るだけで、最後は振り絞ったような声で一言
口が達者であれば何か返せたのかも知れないが、少年には為す術など無く
ただ、消えゆくクリームパンを指を咥えて眺めている事しか出来なかった


「うぇっ?!ほ、報告書ですか?!
えーっと……暫く予定がたくさん入ってて報告書は書けそうにないです
ほら、友達にご飯あげたりお風呂入ったり……あ、後本も読んだりしなきゃ!
忙しいなぁ……だから報告書は見逃してくれませんか?」

まともな報告書なんて物は書いたことがなく、逆に始末書の書き方ならば熟知している
用事。全て私事でありながら其れ等を忙しいと述べ、少女の表情を伺ってみればその通りで
視線を彼方へと送りながら、見逃してくれと語尾に付け加えた
もしも絶対書けと言われたらどうやって誤魔化そうか
それとももう適当な物でも作り上げるか、新たな始末書でも増やすか
忙しく頭を働かせている時、耳を通ったのは自分の問いに関する少女の答え


「“騎士”であるならそうかもしれませんけど、“エトワール”さん自身はどうですか?
美味しい物を食べたり友達と遊んだり……好きな事をしてみたり
白の大陸が白の為にあるなら、エトワールさんも何か自分の為にしてみたり……とかは無いんですか?
騎士は皆を守るものですが、イスラさんだってアキュリスさんだって騎士で――でも機械じゃ在りません
其れ自体がエトワールさんだとしたら、ボクは何も言えませんけど」

その答えを聞いて、疑問に思ったのだろう
少女が真面目なのは知っている。それに、それは先程の言葉で確信できたような物
然れど、幾ら真面目であっても、騎士であっても自己が存在しているべきではないのか――と
少女の答えはまるで騎士としての理想を自分としている様に聞こえて
悪い事では無い。寧ろ、其れは良いことなのだろう
だが――まだ子供であるオグマには、その事が納得できなくて
故に、更に疑問の言葉を連ねる
275 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします[sage]:2012/11/29(木) 21:16:20.82 ID:5ZuQlA9So
>>274

最後の一口を咀嚼し終わると、無慈悲にも、しかし礼儀正しく「ごちそうさまでした」と言う少女。
意地悪との言葉には何も返すことはなかった。
食事を終えたからだろうか、彼女の口元には薄っすらとした笑みが浮かんでいたが──
今の彼には、嘲笑われているようにも見えたかもしれない。

「…………、」

その後マシンガンのように放たれる言い訳という名の弾丸たちをまともに喰らい
さてどう返答をするべきかと思考をし始めたところで──聞こえたのは、彼の疑問だった。
彼女は報告書のことよりも、彼の問いかけに答えを為すことの方が優先だと判断したのか。
ちりんと左耳のピアスを微かに揺らし、数度目を瞬かせて言葉を紡ぎだす。

「……エティは、答えます」
「確かにエティは機械ではありません」
「ですが……、……、分かりません」

「エティは≪騎士≫になるために育てられてきました」
「家族も周りも、エティが≪騎士≫であることを望んでいました」
「そしてエティもまた、エティ自身が≪騎士≫であろうとしてきました」
「ならば──ならば、エティは、エティは、……?」

──垣間見えたのは、彼女の弱さ。
彼女はきっと、彼女自身のことをまだ知らない。
好きな食べ物も、好きな遊びも、好きな人だって。
そういった嗜好を、娯楽を、彼女はずっとずっと己の中で排除し続けてきたのだろう。
だからこそ、まだ彼女は“子供”ですらなかった。

周囲の期待を詰め込むだけの、器──。

彼女は自分の知らない内に、自分自身でそう在るように選択をし続けてきたのだろう。
理想の騎士としての姿を貫く少女。その本質はきっと、誰よりも、脆い。
276 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします[sage]:2012/11/29(木) 22:48:48.37 ID:p/lSy/4Y0
>>275
無くなってしまった其れ
無慈悲に告げられるのは咀嚼を終えたことを意味する言葉で
悲しみとも不満げとも言えない、様々な感情の入り交じった表情を向けるも――――
既に終えてしまったこと。幾ら悲しもうと妬もうと戻ってくることはない
其れを理解した上で一層表情に深みが増してため息を吐いた
――――が、其れも少女の答えが紡がれる時まで


「ボクは、エトワールさんじゃないし、エトワールさんと長く居た訳でも無いから良く分かりません
エトワールさんの“騎士”だって正しいのか間違っているのかも分かりません
だけど……それでも、ボクは“騎士”じゃなくて、エトワールさん自身と話してみたい」

ただ器としての少女ではなく、本来の少女と話してみたいと言う言葉
少女自身には理解しがたい言葉、或いは酷な言葉なのかも知れない
然れど金色の双眸は真剣味を帯びていて、子供には不釣り合いでいて
続ける言葉を思案しているような僅かな間――
言葉よりも先に少年の表情がころっと変わり、何時もと同じ緩い表情が其処にはある事だろう


「何て事を言ったら、また『真面目に仕事している人にちょっかい出すな!』皆に叱られちゃいますね
でも、ボクは思うんです。エトワールさんが騎士の考えだけで、自分の事を考えられないならちょっと寂しいなって
自分で考えて悩んで――本当にそれが白の人達の為なのかを考えた上で行動するのが……上の人達から言われた事をただこなすのだけが騎士じゃないんだって、思いたいです
……えへへ、久しぶりに真面目な事を喋ったら何だか甘い物を食べたくなっちゃいました
あっちに美味しいアイス屋さんがあるんですが、お仕事をする前にどうですか?」

言い終えた後にカラカラと調子よく笑い、指さす方向
人混みの中、その合間から確かにアイスクリーム屋特有の看板が見えて
……こんな時に、アイスというのもどうかとは思うが
少女が腹を満たした事に対して、軽い物でもという考慮か、或いは本当に自分が食べたいだけなのか
――――恐らく、後者だろうが
反応を待つよりも早く、少女の手を取って目指す先へ向かおうとするだろう
軽く掴む手。解こうと思えば、容易な事
277 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします[sage]:2012/12/02(日) 17:25:22.88 ID:EyUO7CdSo
___緑の大陸

戦の傷跡が残る大地、しかしその生命が凛と生きるその大地
吹き抜ける風は命を運び、枯れゆく大地に再び新たな生命を落としていく。
今は大地の褐色が剥き出しになるその場所、そこに再び緑の草を鮮やかな花の色を彩でたものへと変わるその時を夢見て──風の精は大地に吹く。

しかし今は戦争、その当然の行為でさえ、儚く壊され、砕かれる。

『オオオッ──────────ッ!!!!』

大地に歪んだ断末魔──、その雄叫びに気付けば、いや、気づかぬとも、場所を特定する事など容易な事であろう
草の大地は焼け、隔たりもないまっ平らの草原には煙が上がり、風がその異変を遠くの者達にも伝え、吹く。
異変に気付きその場へたどり着いたならば、目に入るのは獣の亡骸。
緑のものではない、巨大な角に赤く強靭な褐色を帯びた身体、ミノタウロス、赤の種族で在る事が分かるだろう

そしてその他にも手斧を担ぎ、息を荒げるミノタウロスが二匹、そして彼等の視線が覗く先──

「残り──2匹────まだ……やるか? 今はお前たちの相手をしている暇は無いのだがな── 」

マルアハ(天使)白の種族。
伸びた白髪は頬より白い肌をさすり白銀の鎧を纏う、輪郭に寄り添うように垂れ、風が吹く度その長髪は宙に幾つもの弧を描き
右手に持つ大剣、十字架を模したかのような巨大な刃には鮮血が滴り大地へ雫を零す

『我ラノ将は朽チ果テタ──我ラハソノ意思を継グ、ソレヲ阻ムノナラバ──例エ敵ワヌ相手デ有ロウト己ノ力を振ルウノミッ!!!!』

「そうか──しかしお前達の将とやらは……多数で一人を囲む様な事はしなかった……がな……」
(………どうする……奴等二人を相手取る事は難しくはない……しかし直ぐに倒れる相手では無さそうだ……このままでは火の手を止められぬ………)


状況を見れば、一対二、その天使が不利、そして今も草木を喰らい続けその身を巨大化させる火炎。
その大陸の脅威に駆けつける者はいるのだろうか、或いは、その戦場の匂いにつられ、またやって来るのは敵であるのか

先の事ゆえ何が起こるか分からないが、今その場に刃と刃の交わる音が今響く──。
278 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします[sage]:2012/12/02(日) 18:09:30.54 ID:B17QYt9z0
侵略者へと向けられ放たれたのは二振りの短剣
辺りを隠すように――又は、逆に異質を際立たせるように立ち上る煙の中から姿を見せたのは一人の娘
もしも世界が平和だったのならば、きっとその靴音は枯れ草を踏む音だったであろう
然れど、今はただ乾いた土を踏む音。乾いた生命の上を歩き、異変の元へ向かう音


「敵である事を理解した上で貴方達に言いましょう
――命を無駄に散らすのは得策でも何でも無く、ただの愚行だと言う事を」

普段は目映いばかりの光を放っているのであろう金色の髪も煤けてその耀きを失い、緑色のローブも所々焦げ、その下にある身体のを微かに覗かせている
ずれた眼鏡を上げ直せば、チラリと天使を見やって状態を確かめることだろう
――見た所、大きな外傷は見当たらない、ともなればこの戦の結末はほぼ明白だろうか
しかし、同じくして問題は敵ではなく辺りを焼き尽くし始めているこの炎と感じたのだろう
白の者一人に任せて、自分はこの火の始末に掛かるか――否、既に一人でどうにか出来る段階を超してしまっている
ならば一刻も早く赤の者二人を葬り、消火に当たった方が良いか
――――最悪、能力を発動しつつ戦うという方法も考えなければ


「駆けつけるのが遅れてしまって申し訳ありません。仲間から情報を聞きつけたのですが……先に、この付近の住民を逃がすことに専念させて頂きました
大きな傷を負っていない様で、何よりです」

次に言葉を向ける先は、天使
続けて他の仲間には準備が出来次第消火活動を始めるように指示しているが、まだ全ての住民を逃がしきっていないのでそれも困難だという旨を伝えた
大方、又別な“何か”とも交戦をしているのだろうか
侵略者達から目を離すことなく、懐から取り出された新たな獲物
ローブの内からジャラリと響く音。まだ幾本の獲物を所持している事を伺わせる


「……さて、私としては消火に回るよりも貴方と共にあの方達を討った方が効率よく事が回ると思ったのですが如何でしょう?
他に何かありましたら、そちらに従いますが」

自分の考えを述べれば、天使の言葉を待つことだろう
尤も、答えの前に侵略者が攻撃をこちらへと向ければ、聞くことなくそれに対応する事となるが
279 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします[sage]:2012/12/02(日) 18:53:20.97 ID:EyUO7CdSo
>>278

十字の長刃と弧を描く巨体な刃の衝突──、その響く音、その様を見れば目前にいる侵略者の力をある程度計ること事は出来るであろう
ミノタウロス、強靭な身体とその誇り高い精神を持つ種族、その名に恥じない力を持つ2匹の侵略者。

天使はその衝撃を大剣の側面で受けきり、2対の朱羽を大きく羽ばたかせ後方へと身体を引き正面からの力を横へと払えば
ミノタウロスの斧はその有り余る力を暴発させるかの様に草の大地へと裂線を描いた。

そして天使の羽が再び宙に唸れば、そのまま不安定な体制を前傾えと向けた突進、横よりのなぎ払いを繰り出すことだろう

────だが相手は単独ではなく2人、その天使の攻撃はもう一人の獣により防がれ、再び金属音を鳴り響かせる
何方が弱く、何方が強いと言うわけではない、何方もある程度の力を持つ者で在る事も分かるであろう
そしてその金属音の後程か、天使へと向けられた言葉。

「任せる──ッ!だが、気をつけろ、鈍いが…馬鹿力は侮れん──ッ!」

それに娘の方へと一度視線を送り、その大剣を大きく正面へと振り切ると
今刃を交えていたミノタウロスを貴方の方へと向かい押し付けるように押し飛ばすであろう。
ミノタウロスの背中達の背中、身体を見れば、いくつかの新しい切り傷の後、深く呼吸を上げる度にその傷口からは血が流れ

飛ばされたミノタウロスのとった行動、それは後方から聞こえた声の方向へ、その飛ばされた勢いを利用した頭上からの攻撃
腕を大きく伸ばし、その軌道は弧を描いて、頭上の頂上よりミノタウロスの視界に娘が入った瞬間に振り下ろされるであろう。

単純な攻撃ではあるが、その勢いを利用したゆえに速く威力も幾分か増している事を理解できるであろう。
正面より受けては危険か、だが、その場より少しでも動けるならば、その斧は大地へ突き刺さり、ミノタウロスに大きな隙を与える事が出来るであろう


そして天使はと言うと、その振りぬいた大剣は盾ともなる、丁度大地より斧を抜き振りかぶろうとしているミノタウロスの脇腹えと
刀身の側面、がねじ込むも────。

『ガァァ──────ッ!!!効カヌッ!効カヌゾッ──!! マルアハッ!! アトソコノ ムスメッ!!
 我等ノ行為ヲ貶スナラバ、コノマルアハト共ニ死ニ行クガヨイッ!!!!!!』

それを物ともせずに天使に向かい斧を振るい────
また鳴り響くのは金属の叫び、もし娘が天使の方へと目を向けて居なくとも、天使の無事は確認できるはず。

今一番の厄介なもの、それは回る火の手の処理、しかしそれを止めるには目の前の侵略者をどうにかしなければ
止めることは難しい、娘の考察通りのものであるのだろう。
280 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします[sage]:2012/12/02(日) 19:26:33.30 ID:B17QYt9z0
>>275
こちらへと飛ばされ来る巨体。言葉を返す事は無い――故に、それは了解の意と取れるだろうか
冷静に相手を見る冷めた瞳。今避けるか?――否、逆に斬撃を浴びる可能性が増えるだけ
ならば力を集中させたその瞬間。狙いを定め、其れを振るう瞬間に避ける
己の身体を絶とうとする切っ先を見つめ、次に自分の相手となった巨体を視野に入れ――――
その斧が振り下ろされた瞬間を見計らって、後ろへと下がる事だろう
左右であれば斧の腹でたたきつぶされる可能性もある。だが、可動範囲が定められている前後となれば――?


「貴方達には貴方達の大義があるのでしょう……しかし、其れは私達の其れとは全く異なるどころか――正反対な物です
だから私は貴方達の行為を貶し、そして――反する者を始末します」

鼻先を掠めて振り下ろされた斧。大地を揺らす程の力。風圧で揺れる前髪
しかし、ミノタウロスの願いが叶うこともなく、娘はその前に立っていて
獲物を押さえる事は考えない――力の違いは、歴然としているのだから
逆手に持った自らの獲物。投げる程度の威力で葬れる事の出来る相手ではない故に自らの筋力も使う
斧を抜こうが抜かれまいが、相手の背――筋肉ではなく、脊柱を目指して降られる小さな刃
もしも僅かにでもその肉体に傷を付けることが出来たならば、炎が辺りを照らす中、鮮血の飛沫が大地を汚すことだろう


「すみませんが、私には貴方を一二回で葬るほどの力が在りません
――ですから、痛みを感じながら身体の力が抜けていくその瞬間まで生きていてもらう事になりますが
……後悔しようとしまいと、その先にあるのは死後の世界ですから最早関係在りませんね」

もしも刺さったのならば辺りを抉るように手首を回し、薄皮だけでも切りつけるだけで終えたのならば大地を蹴って距離を置こうとするだろう
エルフという存在――力はなくとも、素早さがある
更には実戦経験を積んだ者となればその動きも相応で


「緑の地を焼け野原にする訳にはいきません
そんな場所は黒の大陸や貴方達赤の大陸だけで十分です
――私を殺したければ、もっと早く振ってみたらどうです?」

言葉による挑発
更に早く振られれば、自分が二つにされる可能性が大きくなるが――同時に、相手の隙も大きくなるだろうか
それを計った上での言葉
果たして――――
281 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします[sage]:2012/12/02(日) 19:56:53.28 ID:EyUO7CdSo
>>280

空に上る日に照らされ、その刃を光が走る使い古された樹の柄は数々の戦場を生き抜いてきた証
零れた刃に滲み取れぬ血の色は多くの敵を葬ってきた自身の誇り、しかしその刃が新たな血色を染める事は無く。
刃が抉ったのはエルフでは無く乾いたその大地、小石は跳ね上がり土埃が舞い上がる

『────グッ!小癪ナ、ムスメガッ──』

攻撃は通らず、しかし直ぐ様連撃に入ろうと斧をその大地より引き抜こうと全身に力を込め、ミノタウロスの身体から血潮が吹く。
通常であればその斧は簡単に抜けたかもしれない、しかしそれは彼が思っていた以上に深く、重く突き刺さっている様で。
確実に大きな隙を作ってしまった、武器から手を離し後退すれば、次のエルフの攻撃も避けれる可能性もあったのだが

『グォォ────────────────ォォッッ!!!』

その動きは早かった、動きの鈍いミノタウロスが対応できるものでは無かったのだ。
いとも簡単に、背後を取られその肉体へと刃が突き刺さる、しかし肉体は強靭なもの、小さな傷ぐらいではその動きを止める事などは不可能
しかし────場所が悪かった、脊髄を抉り、ねじり込まれる刃に巨体からは血が吹き上げ、ひどく大く低い叫びを上げ
身の危険を感じた獣の行動、それは理性すらも飛ばす程の痛みであったか、自らの誇り、その武器からすら手を離し

とてもではない大きな振りを見せてからの素手での攻撃、身体を捻り、背後の挑発えと向けて単純な反応、それは怒りを示すのだ
手駒に取られているも同然、その動きすらエルフにとっては予想するに容易い事であろう。

『許サヌ……揺サヌゾ ムスメッ────ッ!!我ヲ下に見ルトハ大シタ度胸ダッ──!粉々ニ……粉砕シテクレルッ!!!!』

大ぶりのその動きは隙だらけ、冷静に慣れていないその獣の声にだけ反応した単純な攻撃
それを交わし、その息を止める攻撃を成すには絶好の機会とも言えるだろうか。

炎が舞い上がり、その風に身を揺らして、響く剣撃の音の中に怒り狂った腕は振り切られる
拳は身体を左に捻り、右頭上から大地、そのエルフの方へと向けられるであろう
だが、その動きは遅かった、先の攻撃がその体を思うように動かせない状況に落としているのであろう。

『我ラニハ誇モスデニナイヨウナモノッ!!デアレバッ!ソノヨウナ者トシテオマエヲ殺スマデッ!!!』
282 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします[sage]:2012/12/02(日) 20:40:01.32 ID:B17QYt9z0
>>281
振られるのは自分の胴程の太さがある腕だろうか
刃を立てて相手の力をそのまま通して自滅させるか――しかしそれは余りにもリスクが大きい行動
一度、二度の軽やかなステップ。つま先が地面に着いた瞬間、身体を反らして丁度目の前で拳が止まる位置へ
まるでその程度の攻撃では届くことが無い――そんな意味でも含まれたかのような一瞥
余りにも冷めた双眸は感情がないようにも見え、或いは“[ピーーー]”事に順化した者の果てとも思えるだろうか
振りの際に顔に掛かった相手の血。拭うこともなく、次の攻撃を待つのみ


「誇りが無いならば話になりません
その手が私に届くならば砕き、その足が私に触れる事が出来るならば好きなように折って下さい
何時でもその覚悟は出来ているのですから――――」

挑発に乗った相手の攻撃。複雑な攻撃で無い事が救いか
幾ら手負いであろうとその一撃で形勢逆転の可能性が大きいことは否めない
娘は白い指で小さな柄をしっかりと握り――その時を待つ
相手がまた攻撃を仕掛け、体重を乗せるその瞬間を


「何時かは散る命。だけれど私には散るまで次に繋ぐという使命があります
その使命を持っていることに誇ってもいます
大切な物を無くした貴方達に負ける気など、砕かれる気など、殺される可能性など端から存在していません」

そして、その機会が今訪れた
振りかぶった瞬間を見計らって屈んで避ける娘
意識が拳に集中している今、他の筋肉は多少弛緩しているだろうか
狙うは顎の下。筋肉が薄く、脳幹、或いは脳へと直結させることの出来る位置
立ち上がる力――更には背筋を用いて、その一撃を相手に食らわせようとするだろうか
成功したならば下顎を通って上顎に刃が通り――致命傷を狙えるような場所
283 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします[sage]:2012/12/02(日) 21:16:55.16 ID:EyUO7CdSo
282

連ねられるエルフの言葉が耳へと伝われば、その怒りは徐々に積み重なり、怒号の如く放たれる
巨碗に血管が渦巻くように走り、古傷からは飛沫が上がる、全てをかけ、全体重を腕に乗せた攻撃。

前傾になる姿勢、にも関わらず力が込められるのはその拳のみ、捉えれば一発の逆転も可能なものであっただろう
しかしその腕が何かを捉える事はなく、その空を裂く様な音すら周りの炎の轟音によりかき消され
行き場を失った力は自身の体に跳ね返る、足を蹌踉めかせ、大きな隙を作ってしまい
そこに放たれるのは下顎からの突撃、無理に姿勢を正そうとした事もあり、その正面は隙間が開きすぎていた。

『グ………』

鋭い刃は見事にその皮膚を突破する、細い小さいゆえに一点にかかる力は十分過ぎる程であり
血飛沫がその大地へエルフへ向かい飛び散った。

その後ミノタウロスは後方えとよろめき、ゆっくりと、その大地の上えと倒れて行くであろう。
そして大きな音と共に土粉を巻き上げ、エルフの目前にいた巨体は今や地に寝そべる敗者となっていた。


『我トテ……ウシナイタクナカッタノダ……シカシ…将をウシナッタ我ラハ……コウスルシカイキルスベヲ見イ出セナカッタ
 黒ノ大陸ニシタガウシカ……』

刃はその頭蓋骨を砕き、その脳までに到達する。飛沫は止まらず、その大地に宙へと舞い踊り
薄れ行く中、虚空に吐いた最後の言葉、それにすら、誇りを失った者としての最後の言葉としか映らないのかもしれない
しかし、その侮辱、屈辱な言葉を敵に吐いてまで、誇りを無くした彼が守りたい誇りがあったのだろう。
戦場ではそれも──関係のないものであるのだが。


『────ソレ以上言ウナ弟ヨ………我ラハソノ言葉スラ言エル資格ハナイ……マルアハ……エルフ…ッヨ…
 コレカラ先ニハ地獄シカナイダロウヨ……セイゼイクルシメ……グ……フ……』

その言葉を零し暫く後、エルフの背後よりもう片割れの言葉が続き、叫び声を上げる間も無く
胴一閃、獣の身体が力なく焦げた大地へ落ち、2つの獣の血は帰る場所にも行けずに緑の大地の中へと消えて行き。


「────どうする、これ程火の手が回っては厄介だぞ」

その奥よりエルフに投げられる言葉は天使のもの
小さかった火の手も今ではその2人を包む程のものえとかわり、焼け付く音が風の流れすら感じさせない光景
火の手を止めるには──2人では骨が折れるものであるのだろうか
周囲の草花を取り除くしか無いか、或いは何か別の方法があるか──
それはその土地の事を知る、緑の者へと向けられて。
284 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします[sage]:2012/12/02(日) 21:41:54.88 ID:B17QYt9z0
>>283
肉を裂いていく触感。手を伝って地へ落ちる、紅い命の源
それに嫌悪感を抱かなくなったのは何時の日からだっただろうか――
そんな考えがふと浮かぶが、巨体の倒れ伏す音に意識は今へと戻されて
赤く染め行くおびただしい量の血液
幾ら相手が強靱な赤の大陸の者であろうと、ここまで血を失えば立つことすらままならないだろう
一度振って血肉を払うと、残された少ない命を費やして喋る者へと視線を落として


「主と同じ志であったならば自然と受け継がれていくものです
貴方達は頼りすぎた。屈強であったとしても、精神が無ければ最早その時点で死んでいたも同義だったのですよ。きっと」

冷たく突き放すような言葉。僅かな同情すら見せる事は無い
その時から死人に等しかった
その言葉を放てば、聞こえてくるのはもう片方の言葉
――既に地獄しか無い。ならば後は這い上がっていくだけだ
そんな旨の言葉を返した事だろう
底にいるならば、もう怖いことは無い。だから後は状況を良くすることだけを考えれば良い
敵に同情を見せず、言葉に揺れることも無い


「――――そうですね。このままではこちらの被害が甚大な事になってしまいそうです
本当は、したくはなかったのですが……」

振り向けば、若干苦笑めいた表情を天使に見せた事だろう
娘が目を瞑り、足下に力を集中すれば――広がっていく大地の鼓動
此より焼かれる事になる筈だった草花は水分を失い枯れ始め、やがては炭となって崩れ、又緑の大地の砂へと戻る
それは娘を中心に輪を描くように広がっていって……やがては今燃えている草花が尽きれば、新たな火種は無くなっていることだろうか
285 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします[sage]:2012/12/02(日) 22:08:06.43 ID:EyUO7CdSo
>>284

誇りを捨ててまで得たものはこの獣にはあったのか、それはきっと捨てなければ分からない
そしてその誇りと言うものは捨てる事すら出来ないものなのかも知れない。
ゆえに彼の者達の言葉はその誇りと言う言葉を最後の縋りとして、今天へと登る
誇りが大きすぎたゆえ、それを見失った彼等の最終的な答えは黒に利用される事よりも、自ら戦士として死に行くほうが良いとの考えであったのかもしれない
他の誰が浅はかだと言おうが、愚行だと罵ろうが、この二人の者にとってはそれが最善で、最良の判断であったのだと。


そうして、天使が言葉を投げた後、辺の炎を一望するように周囲へと視界を散らし
その中エルフの出した解決策、苦笑いめいた表情を後に、目前の出来事を静止し見据えていた。

「────……」

本当はしたくは無かった、その言葉は今目にする光景、その行為の事を言ったのだろうか
天使は たた黙り、枯れゆく草花を覗いていた、緑の者には草花とて生命が宿ると認識するものもいるという
ましてや森に住むと言われるエルフであるがゆえに、その行為はしたく無い事と言わせるものであったのか
或いはまた別の理由か、知らぬ者が余計な口出しはしまいと──

広がる炎がやがて移るモノを無くし、消え行くまでただ、天使は沈黙を貫く。そして火種が消えその場へ再び風の音が響き始めた頃に

「いつかはまた花を咲かせるか──。
 しかし……残党はまだ残っているようだな……我らとて同盟を組んだ関係であるが……今緑の大陸に全てを注ぐ事は出来ないゆえ
 それはわかって欲しい……軍部に話があり来たのだが……先の戦闘を見ると……軍人か?」

天使がここえと来た理由、それはある程度は理解の出来る事であるのかもしれない。
今まで協力姿勢として本格的に戦争に介入している訳では無かった白、その使いとしての言葉。
ソレも態々緑に出向いての事であるゆえ、何か大きな動きを見せようとしていると、感じさせる事もあるかもしれない。
286 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします[sage]:2012/12/02(日) 22:29:38.38 ID:B17QYt9z0
>>285
「きっと、今までと変わりない程の花を咲かせますよ
沢山の人達が綺麗だと思えるような花を」

暫くの間、天使の言葉に応えることは無かった
焦げた色の大地がむき出しとなった辺り一面
戦場となる前の景色を脳裏に浮かべて、この場に重ねていたのだろう
――長い長い間の後、やっとその言葉に応えるように顔を向けて


「それは理解していますし、白の方達にはとても感謝しています
――少しでも緑の大地に荷担して下さっているだけでも、多くの命が救われているのですから」

汚れた手を気にする訳でも無く、その言葉に応えた
その言葉偽りは無い事は確かであり――緑の大地によく訪れる白の者であれば、実感もしているだろうか
一応終戦したという形でもあるが故に以前ほどの侵攻は無くなっていて
しかし、それでもまだ緑の地が脅かされているのは間違いないだろう


「――ええ、確かに私は軍の一人ではあります……が、どの様なお話しでしょう
私で宜しければ、上層部へお伝えしますが」

天使の言葉に対しての首肯
何となく、続く言葉は分かるような気がする――しかし、自らその先を紡ぐことは無い
もしもその間違えていれば天使の思考を乱しかねない――それに、白に新たな負担を掛けさせる可能性もある
今でさえ貴重な勢力を書けている形故に、そのような事はしたくは無いと言う考えに至り
287 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします[sage]:2012/12/02(日) 22:45:33.95 ID:B17QYt9z0
>>285
「きっと、今までと変わりない程の花を咲かせますよ
沢山の人達が綺麗だと思えるような花を」

暫くの間、天使の言葉に応えることは無かった
焦げた色の大地がむき出しとなった辺り一面
戦場となる前の景色を脳裏に浮かべて、この場に重ねていたのだろう
――長い長い間の後、やっとその言葉に応えるように顔を向けて


「それは理解していますし、白の方達にはとても感謝しています
――少しでも緑の大地に荷担して下さっているだけでも、多くの命が救われているのですから」

汚れた手を気にする訳でも無く、その言葉に応えた
その言葉偽りは無い事は確かであり――緑の大地によく訪れる白の者であれば、実感もしているだろうか
一応終戦したという形でもあるが故に以前ほどの侵攻は無くなっていて
しかし、それでもまだ緑の地が脅かされているのは間違いないだろう


「――ええ、確かに私は軍の一人ではあります……が、どの様なお話しでしょう
私で宜しければ、上層部へお伝えしますが」

天使の言葉に対しての首肯
何となく、続く言葉は分かるような気がする――しかし、自らその先を紡ぐことは無い
もしもその間違えていれば天使の思考を乱しかねない――それに、白に新たな負担を掛けさせる可能性もある
今でさえ貴重な勢力を書けている形故に、そのような事はしたくは無いと言う考えに至り
288 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします[sage]:2012/12/02(日) 23:08:12.01 ID:EyUO7CdSo
>>286

この戦でかつては美しかった景色を幾つも失った、緑にも、それは白にも言える事
焦げた大地を見やり、浸る様に黙るエルフを横目に天使とて様々な思いが脳裏へと巡るのだろうか

そうして向き合わされた顔と言葉は未来への希望であったのだろう。
それに対しこれと言った言葉は返さなかったもの、向けられた視線に一つ、微動に頷いた。

「そこまで改まらなくて良いさ、ただ我らは大陸の意思に従っているだけだよ──。」

感謝の言葉に返される言葉は乾いたもの、個人で加担しているわけでは無い、
見えているのは緑の平和ではなく、白の平和か、その白の平和の為に、緑に手を差し伸べた
そう言うものもいるかもしれない。しかし白から緑へ派遣された者達の中には少なくとも感情を持っているものもいた
軍部に関わって、白の者とも交流があるならば、その言葉は白であるゆえの、『白らしい』言葉であると感じるかもしれない。

「知っていると思うがネグロ・アラ……その者達はが青の大陸へと攻めようとしている
 青には我らの大陸へ続く定期船も常駐している………そこが落ちればその被害は計り知れない……

 ゆえに今回、白はその組織に正面切って対抗する事を決めた
 それでだ………我らがその組織と対立するならば、矛先が再び緑の大陸へも向く可能性もある
 しかし他の大陸の気を使える程我らも余裕が無い、そういう可能性がある事を伝えに来た
 また戦争が始まる可能性をな………、それで今後の事について青への対応も含め話し合いたいと…思ってな。」

白が組織と対立するならば、きっと緑にも矛先が向く可能性が考えられる、今まで以上に大陸を戦場の渦へと引きこむ可能性がある
同盟を結んでいる以上、白とてその同盟国に断りなく動くのは難しいとの答えか
しかし何方にせよ、白の対応は決まっている以上、緑としてはどうするのかを、それを踏まえ伝えたいと言葉を並べる

緑の負担に気を使っての言葉であろうか、それは分からないが今後そうなるであろうと、天使はまずエルフに言葉をかける。
289 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします[sage]:2012/12/02(日) 23:38:25.99 ID:B17QYt9z0
>>288
「左様ですか……では、その大陸の意思に感謝するとしましょう」

予想外の答えとでも言うべきだろうか、幾度か瞬きをした後の言葉
何処か機械的な様な、しかし所々に感情を持つ生物故の反応のようなものを見せる
感謝の矛先を変えるかのような言葉を終えた後――続く言葉は、想像していたものと同じで
自分だけで答えを出すわけにはいかない、しかし自分なりの考えを伝えるべきかと思い


「やはりネグロ・アラの件ですか……
あの組織が活発化してしまったら、きっと今度は弱まっている緑の大陸は一溜まりも無いと思います
ならば、白の方達が早期に潰してくれるのはありがたいのですが……」

新たな矛先がこちらへと向く可能性
重々承知していること――だが、それは更に犠牲者を増やすことになる
だからといってそれを嫌がっていては、後々取り返しのつかない所まで組織が成長する可能性もあるだろう
それに、白には幾度と助けられている――ならば


「白の被害を抑えるために動くのは道理です。そして出来る限り私達緑も自分達の被害は抑えたい所です
上層部の考えは分かりませんが――出来れば、私達も兵力を分散して組織を叩きたい所ですが……
戦争が始まる可能性、それを少しでも減らすために」

少しでも減らすため。それは娘の切なる願い
先の戦争では多くの仲間を失い――また其れが繰り返されるとなれば、きっと更に悲惨な結果が待っているだろう
それに其れは自分たちの問題でもある――ならば、自分たちもその場に居合わせ、その組織を滅ぼすべきでは無いかという考え
その思いを述べた後、一つ呼吸を置いて


「それが言いたい事でしたら、今から上層部に伝えてきますよ
大切な事ですし、白の方達にも早く結果を伝えた方が良いでしょうから――」

そんな言葉を残して、踵を返すことだろう
特に止めて言う事も無ければ、娘はそのまま去って行くだろうか―ー
290 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします[sage]:2012/12/03(月) 00:18:33.95 ID:+D1TMKVno
>>289

「ああ、そういう事にしておいてくれ……」

緑の娘の対応に少々のむず痒さを覚えたもの、その言葉に天使はそれ以上何も言わなかった
感謝されるのは悪くはない、しかしその天使個人として、そのエルフの行動に、ある感情を覚えたもの事実
人は機械にはなりえない、生きているのだから様々な事を思う、そしてそれを一番簡単に伝える方法が言葉。

小さな溜息の奥底に抱く感情は言葉として出る事はく、振り切るように次の言葉へ向け返答する。

「そうだな……そう言ってもらえるなら助かるよ、結果がどうであれ……わかってもらえるなら有難い。
 ネグロ・アラを率いるネロ、その力は強大だ、だからこそ、言うように戦争の可能性を減らすために戦わねばならん

 その時協力し合えたならば心強い味方だよ、しかし海に面している以上…的になりやすい事もあるだろう
 状況を見て出来るならば協力しあえれば助かるが……無理は言えまい。」


被害を減らしたい、それは天使とて考えることは同じ、だがいざ戦争になればそんな事も言ってられなくなる
非情な部分も見せなければならない面もあるだろう、だからこそ、それは天使としての前準備
白の民の為を思って緑へは、そのうまを伝える事が必要だと認識した上での上陸。

「我らとて戦争を好き好んでやっている訳ではない、しかしせざるを得ない時もある。
 どんな手を使ってでも、止めなければならない事がある、それを分かってもらえると有難い。」

そしてエルフが去る前に、投げた言葉は、天使の本音に近い部分、生きている、ただの軍人では無い故考える事
白の規律はその意思は、きっと緑の者には理解し難いものもあるだろう、だが根本は感情を持った個人であるのだから
伝えておきたいものであったのかもしれない。
慣れない言葉はその意思をそのまま言葉にするには難しすぎて、少しばかり曖昧なものへとなったのかもしれない。

「よろしく頼んだ──」

言いたい事は言った、後はその戦いに集中するのみ、この先どう転ぼうが、何か行動を起こさなければいけない事は分かりきったものなのだから
エルフが去ったその後、天使もまたその翼を広げ空へと戻って行くだろう。




「今までと変わりない程の花……
沢山の人達が綺麗だと思えるような花か────」



空で零した言葉は誰かが言ったその言葉。
誰にも聞こえることはなく、天使に残ったものであり

それは一つ、天使としても重なる部分があったのだろう。
291 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします2012/12/06(木) 14:45:50.23 ID:omZSZnIDO
>>276

「──エティ、自身」

ぽつりと紡がれたか細い言葉。それはもしかしたら、少女が初めて疑問を抱いた事柄だったかもしれない。
彼女自身とは、一体何なのか。彼女自身とは、一体誰なのか。
────自分自身の、定義。
それはいつしか誰もが一度が考えることなのだろうけれど。
少女にとって、その時期が今であったのは──幸運なことなのだろうか。

──ひゅう。鳥が、空を駆け。
首輪を付けた猫の人形が、どこかの窓からじっと此方を見つめていた。


「…………わ」

そして、少年の問いに答える間もなくとられる、少女の手。
──振り払いは、しなかった。
職務が始まる時間に間に合わせるためには、そろそろ戻らなくてはいけない時間だったけれど。
それでも、少女は少年についていくことを決めた。
気まぐれなのか。それとも──。
もしかしたら、自由奔放な少女の何かが、少女の何かを少しだけ、変えたのかもしれない。

/orz
/1週間もあいてしまい申し訳ない……
/これ以上お待たせしてしまうのもあれですし、ここで切っていただいても構いません
/ほんとにごめんなさい……
292 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします[sage]:2012/12/06(木) 21:01:23.00 ID:3ur03GR60
>>291
手を解くこと無く引いて着いた先――人気なのか、時間帯故なのか
若干の列を成している事を確認すれば、その最後尾で脚を止める事だろう
掴んでいる少女の手をそっと放せば、“ちょっとだけ待ってて下さい”なんて言葉を残して列の先端を目指すようにして走り去る
その小さな背中が見えなくなるのは直ぐの事

――数分か、或いは其れよりも少し経った頃か。少なくとも、十分という時間は掛からなかったであろう
少女の顔の横からにゅっと伸ばされた手は冷たく、その甲で驚かせるように頬に触れようとするだろうか
尤も、冷たいと言えど所詮悪戯程度に冷やした物で、本格的に驚かせるにはまだほど遠い
そのまま手は下り、少女にアイスが二つ乗ったコーンを渡そうとして


「お待たせしましたー。いやぁ、常連さんになってると混んでるときでも先に貰えて便利ですね―
そして、えっと……ですね。エトワールさんの好きな物を聞くのを忘れちゃって……取り敢えず、適当に選んでみたんですけど……」

はにかむようにして笑いながら、乗せられたアイスの味を伝えることだろう
上がチョコミント。下がいちご――それぞれがバラバラというか、少年らしいチョイスで
一応それぞれが店のイチオシの品だと言う事も伝えれば、自分のアイスに口を付ける
――冷たく、甘さが口いっぱいに広がる心地よさ。
誘っておきながら適当に選んだ其れが不安なのか、少女の反応を伺うようにしてみていたが――
ふと時計台を眺め、二つの針が示す時間。勤務時間再開まであと少しと言った所

少年は日々サボり時間なんて在ってないようなモノ
然れど少女は異なるだろう――先程話していた様に騎士を一番と考えるならばその時間帯にも五月蠅いのかも知れない
ましてや、少女の答えを聞く間も無くこの場所まで連れてきてしまって――
ゴクリ。アイスでは無く、生唾を飲み込む小さな音


「あはははー……そう言えばエトワールさん。そろそろ“時間”ですね……
その、無理矢理連れてきちゃったりして実は怒ってます?」

アイスを食べているのにもかかわらず、頬を伝う一筋の汗。所謂冷や汗
振り払われる事は無かったが、少々強引に連れてきすぎただろうか
今戻れば、まだ僅かな差で間に合う時間
頭の中では少女にどのように言い訳して次の時間をサボろう。なんて考えや
アイスを気に入ってくれているのだろうか。いや、それ以前にひっぱたかれたりして
何て考えが巡っては消えて、緩い笑みが若干引き攣った笑みへと変わっていることがその証左だろう
――――果たして?
293 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします2012/12/17(月) 13:53:06.42 ID:hQo3F4vDO
>>292

──言葉と共に残された少女は、どこか心許ないような様子だった。
背筋こそまっすぐ伸ばしてはいるものの、その視線は何かとせわしない。
どう行動すればよいのか、分からないのだろう。
今の少女は──間違いなく≪騎士≫ではなく、年頃の少女だった。

ぱたぱたと、子供の駆ける音。
くすくすと、恋人同士の戯れの声。
犬の吠え声に、鳥の囀ずり。
──街は、明るい喧騒に満ちていた。
少女は今までも、似た音は聞いてきたけれど。
何故か今日に限っては、いつもと聞こえ方が違うような──そんな、気がした。


「ひゃっ……!?」

周囲のざわめきに身を委ねていた、その時。少女の頬に何かが触れた。
ぴくんとはねる肩。それにあわせて揺れる銀のイヤリング。
──騎士だなんだと言ってはいるが、反応は普通の子供となんら変わりない。
何をする、と言わんばかりに、少女はじとりと少年を見遣るも──。
少年に渡されたアイスと、続く彼の言葉に僅かな驚きと、嬉しさを表情に滲ませた。
ありがとうございます、と紡がれた言葉に含まれた感情は、普通の人なら当たり前に込める程度のものしか感じられなかったけれど。
それでも──普段の彼女の言動を考えれば、少女がひどく喜んでいることが自ずと分かるだろうか。

そして、更なる彼の言葉に対して──アイスを一口ぺろりと舐めて、少女はこう言ったのだ。


「──いいんです。」

「それよりも──エトワールは要求します」
「……始末書の書き方、教えてくれませんか?」


少しだけ、憑き物の取れたような。きっとそれは、そんな笑み。
甘酸っぱい楽しさと、ほんのり苦い困惑が混じりあったその表情は──まだ、少しだけぎこちなかった。

──この日少女は、初めて職務を無断欠勤した。
後日こっぴどく怒られる羽目となった少女だが──
それからというものの、たまに街でアイスを食べる様子が目撃されたとか。

──窓際にいた、猫の人形。
それは、いつのまにかいなくなっていた。

/再度超超超超お待たせして申し訳ないです……。
/長期間お付き合いいただき本当にありがとうございました!
294 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします[SAGA]:2012/12/23(日) 23:04:09.46 ID:sBrcB/XDO
緑の大陸──フォレストヴィレッジ近隣の森


かつて、この大陸の端にあった村は赤と黒の大陸の者たちの手によって落とされた。
その影響は一時の平和が戻り再び戦乱の世になろうとしている今でも残っているらしく──村の周囲に、緑の民が近づくことはめったになかった。

未だに赤や黒の種族が散見される、フォレストヴィレッジ近辺。
その森の中で、ひとりのスチームメタルが歩みを進めていた。
褐色の肌に水色の右目。白髪を赤い髪紐で縛った──傭兵のようなスタイルの女だ。
顔の左上半分は機械に侵されており、その左目は無機質な赤が灯る。

身の丈よりわずかに余る巨大な機械剣を携えた女は──斥候なのだろうか。
周囲を慎重に確認しつつ、フォレストヴィレッジから最も近い村へ向かっているようだった
295 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします[sage]:2012/12/23(日) 23:22:45.14 ID:Ul7fHGWG0
>>294
その歩みを止めていなければ視界に映るであろう、緑色のローブ
其れは緑の民を示す特徴とも取れて
――尖った耳。エルフの象徴たるモノ
やっと芽生えてきた草木に向けていた視線は――赤の民へと向けられていた

緑の者であればこの地に起きた事を知らない訳があるまい
ならば何らかの思い入れがあるからこそ、訪れたのだろうか
――ローブを纏う女性の口からは、考える材料を一言も漏らさず

「……珍しいですね。貴方の様な方がここに来るのは
――――いえ、赤の民だからこそ、ここに来るのは可笑しくないのでしょうか」

皮肉めいた言葉。――私が異端でしょうか?そんな言葉が続けられて
構える事は無い。“一応”終結したのだから
然れどこの地に残された爪痕――そして心に残された傷はそう簡単に癒えるものでも無く
――視線に警戒が含まれているのは、容易に察する事が出来るだろう
296 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします[SAGA]:2012/12/23(日) 23:35:06.04 ID:sBrcB/XDO
>>295

きゅいン──。左目の赤が、相手の姿を認識し唸りをあげる。
敵か、味方か。女に浮かんだ思考は、およそ迷うことなく、緑の彼女を敵と判断した。
それでもすぐに斬りかかることなかったのは──女自身が、赤の種族にしては比較的理性的な個体だったからだろう。


「貴様こそ──。貴様らにとってこの近隣は忌み恐れるに足る地だったと考えていたが……違ったか?」


低く紡がれる、女の声。
意識はすでに、手元の機械剣(あいぼう)へ。
距離は近すぎず、遠すぎず──何があっても、動けるように。

皮肉には、女なりの皮肉で返した。
女にとっては、戦争は終わっていない。否──始まったばかり。
零れ出る闘気。抜き身の剣──侵略者の言葉が、今の彼女には相応しいか。
297 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします[sage]:2012/12/23(日) 23:47:15.69 ID:Ul7fHGWG0
>>296
「元々は私達の住んでいた場所ですからね――何故、其れを恐れなければならないのでしょうか
自らの住まう地を恐れるなど、可笑しな話です」

武器へと手を掛けられれば、ピクリと眉が動く
風も無くざわつくのは、辺りの自然
まるで異端者を責め立てる様な音
――闘気に対しての静寂。其れは驚くほどのもの
感情を全て内に仕舞ったかのような、そんな姿
得物こそまだ手にする事は無い。――今一度、口を開いて

「貴方は何の為にこの地を訪れたのでしょう
言葉によっては、それなりの対処をしなければいけなくなるのですが」

ただ、事務的に訊ねる
まだ互いの距離では無い――或いは、攻撃を仕掛ける時でも無い
然れど、それは相手の答えによっては急変するかもしれない事
――自然が、静まる。まるで答えを待っているかのように
298 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします[SAGA]:2012/12/24(月) 00:01:55.40 ID:iNH53gvDO
>>297

「ふん──羨ましい考えだな」

返答は言葉少な──そこにあったのは確かな羨望。
飢餓と戦い渇きと争う赤の民。──地を憎みこそすれ、慈しんだことなどなかった。


「我ら傭兵ギルド≪ブラッディ・クレメンス≫はネグロ・アラに与したばかりでな──!」

相手の返答は待たなかった。待つまでもなかった。
──緊張と共に溢れ出したのは、歓喜。わずかな空気の変化から、争いの気配をかぎとった。
理性はただの隠れ蓑。女もまた、戦いに悦びを覚える類いの生き物だった。

ネグロ・アラ──黒の種族から構成される侵略組織。
そんな組織に、何故赤の種族がという疑問が湧くかもはしれなかった、が──

──地を蹴り草を跳ねあげる音。
刃渡り101�p、柄の長さ79�p──全長180�pもの機械剣を両手で構えた女は、緑の彼女へ向け駆けはじめていた。



299 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします[sage]:2012/12/24(月) 00:16:43.73 ID:F/eSIlLZ0
>>298
「――ならば滅するまで。再び戦火に巻き込まないよう、私達が居るのですから」

身を屈め、迎撃の態勢で迎え撃つ
屈める理由――自らの面積を小さくするのは勿論の事、何よりもその大剣を振り下ろさせる事を目的とした故
女の力の程は分からない。だが、地面に叩き付けられたその剣を持ち上げるのはそれなりに筋力を使うのだろうか
狙うのは、その一瞬の隙
横に薙がれれば、その隙も出来ないであろう。ならば、その時はその時の計画を練る
先ずは先手を相手に打たせるべくの行動

「ネグロ・アラ――嫌な名です
利用されるだけ利用され、後は捨てられるというのに」

縦に振られれば、その太刀筋を避けて顎先に向けて蹴りを放つことだろう
しかし、薙がれれば――避けるのが精一杯といった所か
避けようとも、それはこの女性の好きに繋がり
300 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします[SAGA]:2012/12/24(月) 00:40:45.64 ID:iNH53gvDO
>>299

「何とでも言え──少なくとも、今はな……!」

──女の口元に、自然と笑みが浮かぶ。
戦いが始まったからか、あるいは会話の中に思うところでもあったのか。
また一歩、強く地面を蹴る。ぱっと、草が宙に舞う。


タンクトップにも似た、胸部のみ隠された上着。
大きく露出した上腕や腹部には、戦場で負ったであろう多くの傷痕と、鍛練により身に付いた筋肉が見てとれた。
──少なくとも、新兵などではない。

剣が届く範囲まで駆ければ、女は迷うことなく鈍器とも呼べるであろうそれを縦に降りおろす。
──武器そのものの重量と、それを軽く持ち振るう女の腕力。
叩きつけられようとした剣の速度は、見た目に反して速かった。


────ギャ……んッ!


地を噛む剣。繰り出される緑の蹴撃。
初撃が外れたと見るやいなや、すぐに剣からわずか手を離し女は後ろに肢体を反らす。
チッ──。顎先を相手の脚が掠め、脳が鈍く揺さぶられた感触がした。
──まともに喰らっていれば。
そう思えば、女の笑みは更に深みを増した。
301 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします[sage]:2012/12/24(月) 00:53:56.89 ID:F/eSIlLZ0
>>300
「何を考えていようとも、結果を変えさせません
――ネグロ・アラ。そしてそれに荷担する者を全ての大陸から消すという事を」

振られる剣の速度は速く――危うく、四肢の一部が切断される所であった
脚に当たる感触はしても、同時に芯を抜けなかったことも伝えていて
――この振りの速さだ。次からは警戒されるだろう
そんな考えを抱き、数歩下がって刃の範囲から身を遠ざける
赤の大陸の者。そして鍛錬された者の数発を耐えきる自信は無い
ましてや、斬撃となれば尚更の事

「――大人しく帰れれば、一番のお互いの利益となるのですが」

懐から取り出したのは小振りの刃
其れが数本、手に収まっている
投げられるのはその内の一振り――重ねられる、もう一振り
見事重なった其れは、一種の不意打ち
警戒していれば、避けるのは容易だろう
赤の者となれば――強引に全てを弾くことも可能か
302 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします[SAGA]:2012/12/24(月) 22:49:41.20 ID:iNH53gvDO
>>301

「──ふ」

歪む、笑み。
それは余裕のなさの現れか、或いは──相手の言葉に対するものか。
仰け反っているが故、口元はまるで嘲りの三日月に見えた。


「は──っ、そうは思えぬが、な」

エルフが懐中から刃を出すわずかな間。それを幸いと、身体を元に戻し左手一本で剣を掴み──そこまで。
凍てつく空気を斬り咲く銀色。気付き思考するより速く身体が動く。
──ざくり。剣を地から抜ききること叶わず、女は右腕で刃を止める。
銀光の刺さったその場所に、続いた第二撃。しかし二の刃は皮膚を裂くことなく、初撃の刃が深く肉を抉る要因となった後に墜ちた。

声の変わりに漏らされたのは、白を伴う吐息。
刃が刺さったままの右腕からは未だ鮮血は零れず、銀に付随する柄が腕から生えた奇妙なシルエットを作り出していた。


──だが、この数瞬のやり取りで退くほど、女は賢くなかった。
右腕にある異物は抜かぬまま──左のみで武骨な大剣を持ち上げる。
揺さぶられた脳と右腕からは、警告のように違和感が発せられていたが、女は眼前の敵をどうにかすることを優先した。

──今度は、すぐには間合いを詰めなかった。
三つめ、四つめの刃を恐れたか、警戒したか。
左で女は剣を構え、碧と赤の視線を緑の民へと向けた。
静寂が、落ちる。
303 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします[sage]:2012/12/26(水) 00:15:48.88 ID:qd3Qr+LC0
>>302
確かに腕を抉った己の刃。それでも退かない所を見れば流石は赤の者とでも言うべきか
まだ得物はある。だが、長期戦となればこちらの方が圧倒的不利になるのは明白で
――[ピーーー]事は難しいだろう。ならば、自らの意思で退かせるまで
必要以上の痛み。理性を超える程の防衛本能を引き出させる事


「こちらも忙しい身でして……赤の貴方一人に裂く時間はあまり無いのです
――かといって、一人で直ぐさま葬れる程の力量も無い」

女性のつま先が地面を撫でる――その数秒後の事
赤の民へと向かう進路が次々と泥と化していく
能力の施行。大地への命令――必要以上の水分を、地下から吸い上げてくる事
泥の進行はそれほど早くは無い。そして距離を空けている事が幸いか――注意していれば、避ける事は簡単な事だろう

「――ですが、貴方を一時的に戦闘不能まで持って行くことは可能です」

泥の中に投げ込まれた小さき刃
もしも脚を取られれば――刃が傷口を作り、そこに泥が練り込まれていくという計算なのだろう
砂と水――流れるそれが更に傷口を広げていくのは、相当な痛みを伴って
304 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします[sage]:2012/12/26(水) 11:51:33.11 ID:cMs2u9mDO
>>303

(異能者──或いは術師か……)
(いずれにしても得意ではない──が……)

「なら、手早く済ませるか?」


女はくつくつと笑う。
──そこにあるのは、憎しみでも殺意でもない。
戦うことに対する刹那の喜びと、大地への羨望。
涸れた地の民の、生を満たすものへの渇望だった。


貴重であるはずの水が、この地には湧き出すほどにあった。
涼やかな風が、柔らかな緑が、暖かな陽光が──自分たちにないもの、すべてが此処にあった。

「──倒れはしない。この地を手に入れるまでは……!」


≪────────ッッ!≫


──突然の轟音。
まるで何かが爆発したような……否。それはこの地にはないモノが生み出す現象。
鉄と灼熱から生まれたソレは、女の背中──服に隠された、背面ブースターからひり出される。

産声は爆音。形は現象。
特有の体内器官から発生させられた膨大なエネルギーは、推進力として生を受け、女を前へと推し進める。
──その姿はまるで。光の翼を負っているように見えた。


迫りくる人喰い沼。それを見て尚、女は退かず前進を選択する。
赤の民の一部は、身体に鋼を宿し生まれてくるという。おそらく女もその中の1人なのだろう。
衣服で隠された背中の鋼鉄。それはブースターとしての役割を果たす。

──静寂からの急加速。それはわずかな浮翌力をも生み、発生した砂泥をすれすれで渡る。
少しでも泥が波打てば、靴に守られた爪先が触れる。そんな、距離。

──エルフに近付くことが出来れば、女は右手を振り上げ
その腕に深々と刺さった刃の柄で、相手の頭部を思い切り殴りつけようとする。
そんなことをすれば、自らの腕もまた大きな痛手を受けるのを分かっての行動だった。
左に持つ剣で斬らないのは、それを身体の前に構え盾のようにしているのもあるだろうが──。
加速の中、うかつに刃を振るえばマズいことになるのを持ち主自身が理解しているのだろう。

女の動きを──高速での移動を止めることが叶わなければ
彼女は、殴打の結果がどうであれエルフより先。緑の大陸の奥へ行こうとする。
──阻止、出来るか。
305 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします[sage]:2012/12/29(土) 00:46:09.33 ID:3s57092l0
>>304
迫り来る赤の民。力での対抗は不可能
――ともなれば、残されるのは知恵と技術のみ
相手は敢えて剣では無く、己の肉体を駆使して攻撃を仕掛ける事を選んだ
ならば、其れを活かすのみ


「渡しませんよ――緑の地は、貴方の様な破壊者の為に在る訳では無いのですから」
「生かし、次へ繋げる為の物。其れが分からない限りは――――」

神経を研ぎ澄ませば、出る答えはただ一つ
何に変えようと、侵略者の野望を阻止すること
力で止める事が出来ないならば――重心を、バランスを崩してしまえば良い
そして、バランスを崩させる為には――


「貴方達がこの地を踏むことさえ、草木の上を歩く事さえ、叶わぬ夢としてみせます」
「何年かかろうと、何十年掛かろうと――絶対に、貴方達の夢は叶えさせません」

自らの腕を犠牲にして、相手の振るった腕に絡むこと
殴る事に加える重心――その上、自らの力も一瞬ばかり加える事を目的とした行動
この程度で葬ることが出来るなどとは、到底思わない
然れど、その侵攻を足止めする事は可能だろうか――

もしその目論見が成功したならば、きっと嫌な音が響くことだろう
――その音の元は、緑の民の腕。見れば明らかに可笑しな方向へ曲がっている筈で
しかし、その口元には僅かな笑み
この地を守れるなら余りにも安い。そんな意味を含めた様な笑み
306 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします[saga]:2013/01/02(水) 13:56:28.02 ID:bCgRhTfDO
>>305

「笑わせるなよ、土着の民め──」
「この私が、カナン・ブルームが、破壊のみで生きていると思うなよ」
「────この地をとらねば、我らは、赤は死ぬ」

「民草のために戦うのが、生きるために戦うのはそんなに罪か!」
「生きたいのは、貴様らとて変わらぬだろう──!!」


それは、夢を、願いを否定されたことへの恨み節。
普段は仏頂面で声を荒げることもしない不器用な女の、喉を裂くほどの叫びだった。


──ず。短き刃が、さらに深々と女を抉る。しばらくは、右手は使い物にならない傷だった。

ごきりと響く鈍い音。均衡が失われていく自らの身体。
それだけで、何をされたのか悟ったのか。女は苦々しく表情を歪めた。

──そして、光の翼は失われる。

燃料でもなくなったのか、ブースターから排出されるエネルギーは急激に弱まっていき
それと同時に、女を前へ進める力も衰退していく。

沼が未だに存在しているのであれば、女は抵抗する術なく、バランスを崩しながら沼へ落ちていく。
そうでなくとも、最後の一撃と言わんばかりに──盾代わりに身体の前に構えていたその大剣を、左腕のみで思い切り振り抜くはずだ。
腹側を向けて振るわれた剣。斬れはしないが、まともに喰らえば痛いだけではすまないだろう。
307 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします(長屋)[saga]:2013/01/09(水) 13:41:07.30 ID:PupF0MZb0
>>306 「確かに、生きたい故に私達は抵抗します。幾度 と争いも繰り返すことでしょう」 「――そうでもしなければ、貴方達は無抵抗で あってもその手を更に赤く染めていきますから ね」 「黒と組んで、協議の場も持とうとしなかった貴 方達の叫びは、私の耳には我が儘としてしか通り ません」 「――――終わらせましょうか。そんな夢も、子 供の駄々も」

ただ冷静に、赤の民の全てを否定するかのような 静かな紡ぎは、隠されることの無い本心で 痛みから吹き出る汗で髪がべったりと顔に付くの も気にせず、ただ言葉を返すだけ ――伝えることは無駄では無い。そして何より も、先の一言で決定的に二つの大陸は異なってい ると分かったから 刃の行き交う沼へと落ち行くその身体を見て、終 わったと安堵の吐息を吐くが――――

あれ程の信念を抱く相手だ。簡単に終わるはずが 無かった 油断が生んだ隙は、もはや完全な回避を不可能な までその刃の接近を赦してしまっていて ダメ元の跳躍。――脚が砕けた感覚と、着地でき ずに地に叩き付けられた痛み 思わず悲鳴にも似た呻きが漏れるが、負った怪我 の大小を確かめる暇があるはずも無くて

「例え……何度攻め込ん、でこようと……結果を変 える事なんて出来はしません」 「他の命を奪ってでも……生かしたい命、がある とも……思えません」

途切れ途切れの言葉は、痛みによる軽度の呼吸困 難か 立つことも叶わなければ、これ以上闘うことは出 来ない ――それなのに、その瞳は未だ鋭く赤の民を睨ん でいて
308 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします[saga]:2013/01/12(土) 20:07:57.35 ID:PB752LAvo
>>307

言葉は、返ってくることはなかった。
或いはその紡ぎが彼女に聞こえていたかどうかすら、最早怪しい。

女は既に、沼の中。
右腕は機能せず、細やかな動きをする刃の魚相手に手元の大牙はその役割を果たし切れない。
背中から落ちたのは、不幸中の幸いか。
鋼の冷たさに守られた背面そのものが、女の心臓を刃から守る盾そのものとなっていた。

右腕を斬られ左腕を裂かれ腹を破られ右脚を割られ左脚を壊され
血は泥で冒涜され息は刃に組敷かれ眼は自血で穢され思考は痛みに嬲られ
言葉は闇に、想いは深淵に、光は閉ざされただただ身体の灼かれるような感覚だけが残り──


──それでも。身体を切り刻まれる痛みに、悲鳴のひとつもあげなかったのは。
それはきっと、赤の種族としての誇りと矜持故、なのかもしれなかった。


女はその場を、動くことはもうなかった。
よしんば動けたとしても、今すぐにということは不可能だろう。
泥の沼は乾いた経血の如き陰惨とした色を滲ませていた。
それは、女の怪我の程度を計る指針ともなろう。

だが、緑の彼女もきっと長くはそうしていられないだろう。
この赤の民がたった独りで単身この地に来たのであればよいが──
仲間が近くにいることは、決して否定できることではないのだから。
309 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします[sage]:2013/01/21(月) 02:00:52.33 ID:OjRNRxmRo
青の大陸_____ アトランティス


「ヨォヨォ──戦闘狂に金の亡者、腕っ節だけが取り柄の馬鹿野郎共ォ────ッ!!
 オレも含めてお前等ァ屑野郎共に朗報とはコノ事ァ、 黒の大陸のお客様連中がオレ等の大陸へ挑発をかまして来やがッタ!!
 なんだァ、聞いた話じゃいけ好かネェ、トルトゥーガの空賊連中が一戦おっ始めたそうじゃネェカ
 そうと聞いちゃ、オレ等も黙ってられねェとは思わねェか糞野郎共ッ!!」

青の大陸、首都、大勢の住民が賑わう大都市の中、一際大きな怒鳴り声が響き渡った
嗄声とも言うべきだろう、一人高台の上へと攀じ登り、大声を張り上げる者────それは傭兵ギルド “ ロードス ” のギルド員

仮面の様な顔に開かれた口は鋭利な牙が並び、後方に蠢く触手の長髪。
やや細い身体ではるが、青肌の各部に銀の魚鱗を纏った身体は戦場の誇りの傷跡か、その鍛えた身体に刻まれており
火の粉をぶち撒ける様に吐かれる言葉は戦争への本格介入を意図する言葉であろう、路地の人だかりの中央に居るその男
そして周りを囲むのは同じくロードスの連中に、一般の大陸の民も紛れて居る事だろう。

ある者は、呆れた様な表情を、そしてある者はその言葉に野次をを飛ばし、ある者は煽り文句で場を騒がせる
唯でさえ人の多い首都と言った場所な故、彼は行動は住民の混乱さえ招きかるものだろうか

そしてその場所である故、そんな彼がいると言う情報は既にアトランティス中に広まっている事であろう。


「いいか屑共ッ────俺たちゃ喧嘩を売られたんダァ、正面から喧嘩を売られりゃ買うってってもんが相場ってもんだろうヨォ
 ここで大人しくはいソーですか、だぁ言ってられっか、分かるだろう──?分かってんなら始めようじゃネェカ──オイッ!

 戦争をヨォ!黒の連中に俺等青の力をヨォ──ッ見せつけてやろうじゃねぇかッ!!」


未だその騒ぎは収拾の目処が立たず、だがいつかは止められるものなのかも知れない、いや止めなければならないものなのかも
なぜなら首都──様々な大陸の者が住むアトランティス、そこには今も無害な者であったとしても黒の住民もいる
そして様々な思想の者がいるのだから。混乱しか招かないもの
彼の言葉はそう言ったものなのかも知れなくて


/置きレス進行になりそうですが、数日に渡り置いておきます。
310 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします[saga]:2013/01/30(水) 11:01:38.48 ID:FoL7CRgUo
>>309

混乱は更に、混乱を呼ぶ。
喧騒が満ちた広場にふいた、一陣の風。
その中に腐臭が紛れていたのを、気付く誰かはいるだろうか。


  ──ずるり、ずるり。ず……かち、かち、かち。

演説に紛れる、耳障りな音。
それは巨大なムカデの如き脚部が奏でるもの。
地面を引きずる箇所だけで、2,3メートルはあろうか。
赤黒い殻から生えている無数の脚も、その太さは大人の親指ほどあった。


  ──しゅ、う

熱気に紛れる、微かな腐臭。
それはナメクジの如き粘液に覆われた、灰色の胴体が醸し出すもの。
胴体から生えているのは、肥えた頭部と二本の腕、そして短い数本の触手。
粘液の下には無数の傷跡があったが──それはなんの意味を持つのだろうか。


  ──あ、あ…………

歓声に紛れる、僅かな慟哭。
それは頭部から呻き漏らされるもの。
不揃いの鈍い歯が乱雑に並んでいる口から漏らされる声を聞く者は、今は居るまい。
更に、頭部に存在する二つの目は固く閉ざされており、役割を果たしているかは怪しかった。


傭兵の言葉を遮るかのように──この生物はふらりとずるりと、現れた。
ムカデの下半身に、ナメクジとヒトを混ぜあわせたかのような上半身。
それは、出来の悪い子供の玩具のようにちぐはぐな生き物だった。

なんの目的で、どのような理由で。
それを問いても、この生き物は答えないだろう。そも、言葉を紡げるかどうかも疑問だった。

だがこの広場に集う青の民なら、或いはこの生物の出自が分かるかもしれない。
こんな「モノ」が創りだされたとするならば──黒の民か、もしくは。
────バビロンの、科学者連中しか、いない、と。

コレが意図的に放たれたのであれば──創造主はきっと、近くにいる。
311 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします[sage]:2013/01/30(水) 14:18:33.60 ID:tjDT1xjIO
>>310

「騎士様が何だか知らネぇがクソッタレの白の連中に頭を下げるかぁ!?臭っせぇ、くっせぇ緑の獣共に助けを求めるかぁ?
んな──── 必要ねぇだろッ!」

慟哭が這い、唸る歓喜の中、罵声の中───戯言の中。
賑やかしさに染まる広場にソレが溶け合う事は無い
掻き消され行く悲愴に気付く者等、居はしない

「俺らは俺らの──── ……あん……?」

だが──ソレが喧騒へ対して終止符を打つに足りる存在であった事は言う迄も無く
ざわめきと共に訪れた沈黙に人波が輪を作るかの様に流れ行く光景は、その高台から広場を眺める彼の視界へと入るのも当然の事であった。

「ヨォヨォヨォ──── 何だってんだ、あぁん?
おい、────道を開かなきゃ俺がススメねぇだろ!
どきやがれっ……」

彼はその方向へと視線を移すと、一つ面倒そうに舌打ちし、高台から飛び降り人波を掻き分ける様にソレの位置へと進み
そしてその人波の輪の中ドーナツ状に広がる中の空洞へと辿り着きソレを視界に入れれば

「って……──────── なんだぁ……こりゃ……」


零す言葉とその表情は唖然と言うべきモノと写るだろうか
最も──── ソレがその感情を理解出来るかは分からない事ではあるのだが──── ……


「黒………いやちげぇ……こりゃあ……──────── 」

そして後に彼の口から零れた────バビロン──との言葉に
反応を示す者はいるのか

最も───彼の視線の目前のソレが何か行動をするならば
それに対処する事へとなるだろう。

不安が滲み出る広がるざわめき
その中に何が起きるのかは今の時点では分からないもので
312 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします[saga]:2013/01/30(水) 21:14:41.43 ID:Vf0K5I4ao
>>311

  ────ぅ、……あ、……ぉ、あ゜……

ソレの口から、粘ついた唾液がぼとりと落ちる。
広場を飾る石畳の上に垂れた汚物は、じゅうという音をたてて地を僅かに溶かした。

多くの生命の存在を感じ取ったのだろうか。
ソレの胴体にある短い触手がひくりひくりと、まるで匂いをかぐかのように蠢きあい、そして。


  ………………────グ、ぉおぉ、……


唐突にソレの腕が伸びた。

ぬるりとした粘膜に包まれた、決して愉快ではない感触ではないその手は
演説を聞きに来たギャラリーの方へずるりと伸ばされ────。
集まっていた民衆の中の、手頃な者をがしりと掴もうとした。

もしも誰か──哀れな犠牲者が腕に掴まれたのであれば。
きっと向かうのはソレの口元。
酸の唾液が溢れる咥内に鈍い歯列。
喰まれてしまえば、皮と肉は千切りきられぬままにすり潰され、ゆるりゆるりと痛みに犯されるだろう。

しかし幸いにも、ソレの口は一般的とされる大きさよりも僅かに大きい程度。
掴んだ獲物のサイズにもよるが、一口で、とはいかぬはず。
傭兵の彼の今後の行動にも依るが──襲われた誰かは、命を取られるほどまでの傷は負うまい。
──ただしそれは、ソレが二口め、三口めまで食事を進めなければ、の話。

最も、ソレの意識は空腹を癒すことに向けられているらしい。
妨害をするのであれば、いつどのタイミングでも可能なはずだ。

……創造主の姿は、未だに見えない。
313 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします[sage]:2013/01/30(水) 22:17:31.40 ID:ItvCp+hIo
>>312

何時から居たのか、何処から来たのか
想定外の客人────その姿を視界に入れた彼の視線はソレからこぼれ落ちる唾液を追っていた
そして酷く鼻に付く腐臭に地を溶かす汚物、その異様な光景を見たなら──ば
血相を変え周囲に後ろへと振り向いて、その手を振り回し民達を広場の中央から外へ外へと散らそうとするだろう


「っ…………オイッ──野郎共ッ!!!!   こいつぁヤベェ 此処から直ぐに──────」


それと同時にその人の輪は荒波を立て、静寂を打ち破る────
悲鳴、戦慄き──あらゆる感情が海嘯の如く弾け広がりその場を混沌へと一変させるのだ
辺を見れば子供は泣き崩れ、女は我が子を探すもその面は恐怖一色。
その辺に散らばる傭兵連中は乱暴でもあったが群衆の波を大きく外へと追いやって行く

だが──被害は最小に、それが果たされ様とした時──彼がソレへと身体を左後方へと返す直前に背後から響いたのは叫び声だった
悶絶とも表現できるその叫びは辺へと一瞬にして広まりその場を再び凍りつかせる事になるもので

その光景に彼の表情は歪んだ刹那──辺に肌身すら凍りつかせるかの様な冷気が走る
そしてそれと同時に彼の右手を中心に現れるのは長槍であろうか────?

何もない空間にその大気を凍りつかせる悲鳴と共に徐々に形成される槍の姿、大気を貫く様に一瞬にして左右にその身を伸ばして
その氷槍を両手で掴んだ瞬間か────


「オラァ────ッ!! 早く逃げろと言ったのが聞こえなかったかッ──このっ────糞野郎ガッッッ────!!!!」


怒号と共にその槍を振り回し、その回転により下方からの “斬り上げ” 其の刃の行先はその犠牲者を掴んだ腕の中程か
その攻撃が通ったならば──その腕へと刃が喰い行ったならば──── 斬撃に加え、細胞、肉体の氷結
切断面から僅かな範囲ではあるが、その肉体へと氷の侵食がその身を襲うであろう。

その犠牲者は助け出せるかは解らない──多少ではあったものその反応に遅れた故に
もしかすると────その助けは遅すぎるのかも──しれない
314 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします[saga]:2013/01/31(木) 00:14:40.06 ID:6j4WVg9so
>>313

荒くれ者とされる、陸の守護者ロードスの者達。
まず讃えるべきは彼らの行動力と勇気だろう。

生み出された混沌が惨劇へと。
その瞬間を、彼らは見事に英雄の活躍へと変えてみせた。


    ビチビチビチビチ────!


斬り捨てられて地に落ちた灰色の腕が、石畳の上で跳ねた。
粘膜はどろりと溶け、地にわずかなシミを作り出す。

ギャッ、という悲鳴はソレから漏らされたもの。
犠牲者を見れば、ソレの粘液や体液が付いている程度で傷はない。
最も、彼が腕の拘束から解かれ地に落ちた時に、擦り傷程度は負っているかもはしれないが。

この生物にも痛みはあるのだろう。
槍の斬撃に屈した片腕の断面は、灰色の生物に似付かわしくない氷のヴェールで覆われていき、
苦痛からか、ソレはムカデの下半身をのたうち回らせて呻き声をあげていた。


────そんな、血なまぐさい争いのさなか。
逃げ惑う人の波に逆らうかのように、悠然と歩く者がいた。
怒号、悲鳴、叫喚……。そのような騒動の中であっても、「彼女」は笑っていた。


「やぁやぁやぁやぁ健全なる被験者諸君ご機嫌麗しゅう!」
「随分と楽しそうだけど何かイイことでもあったのかい?」

「──あぁ、そうそう。ボクのペットは気に入ってくれたかな?」


彼女は、青い髪の女だった。
真円の目に尖った耳。水死体のように仄暗い青の肌。
女は、原色の青と黄色で塗り描かれた幾何学模様の白衣を纏っていた。
白衣の裾からは、蛇のように長い長い、背びれのついた水棲動物のような尾が覗く。
首にまかれたマフラーは、或いは彼女なりのファッションセンスの現れだろうか。

魚のように丸い丸い目をきゅるりと動かし、彼女は笑っていた。
──間違いない。彼女こそが、惨劇の引き金となった生き物の創造主だ。
315 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします[sage]:2013/01/31(木) 01:10:55.46 ID:QQ73XhO4o
>>314

「──────おっと………下手に動かネェ方がお前の為になるゼェ────
 堅ェモノは案外脆く出来てやがんダァ………柔らケェモノよりそりゃモウ、ずうっとなぁ………」

下方より突き上げられた槍の穂先、その刃が肉を引き裂いた。
凍り付く断片に尚も、それを引き剥がさんと押し上げられる遠心力、
そしてその槍の穂先が天を仰げば、ピタリと泊まり──交えた腕の隙間より覗くのは引き上げられた鮮魚の如く跳ね上がるソレの腕

地に落ちた衝撃からか僅かに悶えるも意識はあり──特出した傷も見えない犠牲者であった民の姿
彼は陽気に口笛を鳴らし──ゆっくりとその槍を頭上で回転させ、その石突を石畳の絨毯へと叩きつけ──……ソレに向かい、そう告げた。
言葉の意味は理解が出来るか解らぬが、凍ったそれは非常に脆くも儚く崩れ去るモノ──
2の衝撃が加われば、その氷のヴェールは己の身体ごと砕けるもの────であるのだと


そんな中──彼の元へと近付く足音と──向けられた声に気づいた事は言う迄も無く──
一度、女の方へと視線を送り、その場で零した「オィ──おめぇは、はよ逃げろや」との言葉は誰に向けられた言葉で有るかも理解出来るであろう
現に──その言葉を掛けられたであろう犠牲者は震える身体を振るい、一度女を見やると酷く情けない声を上げその場から去ろうとするのである


「チッ────」


染めるものは怒号に悲鳴──叫喚に────憤懣。
その混沌の中に出された舌打ちは、きっと聞こえるものではない
だが、その込められた怒りは表情の感じぬ面の様な顔からでも伝わるものであろうか


「あん────健全だぁ……? 被験者諸君だぁ……?
 今度舐めた口聞いたらその面ぶっ飛ばすぜぇ………  バビロン……いんや────根暗連中様ヨォ──ッ!!!」


そして彼女がこのまま彼の元へと近付くならば──そのままそのマフラーの巻く襟元をその片腕が掴もうと
締め上げ様とするだろう
近づかなければその言葉を吐きつけ、女を睨む男と、なるのだろうが。

 “ ロードス ” のギルド員、馬鹿騒ぎを好み──他ギルドへと喧嘩を吹っかけるのは当たり前
彼の名は…… ローディ・リヴァリア 一人のマーフォクである。

彼女がその名を知っているかは解らない──バビロン……そのギルド員がこうやって表に姿を表わすのすら珍しい事であるのかも知れないのだから
316 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします[saga]:2013/02/01(金) 21:02:27.89 ID:i5I16l9ro
>>315

  …………あ、……あ、……ぎ、ぃいいい────

如何に知性のない生き物であっても、身の危険であるということは理解できたのか。
ソレの本体は徐々に徐々に動きを緩め、唾液と呻き声を地に流し落とすばかりの木偶となる。
危険性は低くなったものの、それでも異音と異臭は止まらぬまま。
ただソレは、ぼとぼとと唾液で石畳を溶かしているだけだった。


一方、女は相手が傭兵だからか、不用意に近付くような真似はしなかった。
己の力量をわきまえているのか、或いはそれが単なる気まぐれなのかは、今は分からない。


「舐めた口ー?ボクは至ってマジメなトークをしてるんだ」
「相手の顔もよく見ないまま殴りこみに行く傭兵連中より余程クレバーなやり方じゃあないか」
「どうせキミだって、適当なコト言って善良なる一般市民を戦争に駆り出そうとしてたんだろう?」

「────ボクのやり方も、キミのやり方も、どちらも死人が出る」


           「そこに、一体、なんの差が、あるんだい?」


「それともキミは、万人に共通する死という概念に理由を求めるタイプなのかな?」

「そんなもの、食べ物と一緒さ。消化されてしまえばみーんな一緒だぜ」


きゃらきゃらきゃらと彼女は嗤い、べえと舌を出してみせる。
蛇のように、先の割れた仄青い冷たい感覚器。そこには、骨と化した人魚の刺青が描かれていた。

口ぶりから察するに、彼女は彼の日頃の行いを知っているようだった。
もしかすると、傭兵ギルドに所属する者たち全てが「そのような」行動をとるのだと思っているのかもはしれない。
最も、彼女の、彼らに対する印象の正誤など今は些細なこと。
耳障りな嗤い声を立てる彼女は、己の「ペット」の怪我すら、心配する様子を見せていなかった。


────ぴ、きん。

地面をのたうち回っていた灰色の腕が、砕けた音がした。
317 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします[sage]:2013/02/03(日) 00:34:49.21 ID:kwkUt/d/o
>>316

「あん……?なんの差だぁ……?」

視界へ映るのは誂う様に出された人魚の刺青、加え耳へと纏わり付く様な嗤い声もあり、
その瞳に写した彼女の像には何とも言い難い不気味さ──と言うものを感じたのかも知れない
自らの額へと手を運び頭部を掴み、それを振るう様子は何らかの疑念を振り払うかの様にも写るかも知れない


「ハッ────、ちゃんちゃら可笑しい事を言ってくれるお譲ちゃんダゼ──!!!
 差なんてもんじゃねぇ、お前のやってる事と俺のやってる事にゃ天と地で方向すら違ってるってもんだ
 まぁ最近じゃあよぉ……平和ボケの軟骨イカ野郎が増えすぎた事もあってなぁ……少々暴れさせて貰ったンだが……

 俺ァ、過程を選択を与えてやってんだ。可能性を見てみてぇんだよ、結果だけを考えちゃあ見えねぇモンだ
 確かに死人がでることにゃあ変わりはねぇかもしんねぇ……さっきの情けねぇ声の糞野郎も使いようにゃ使えるかもしんねぇし、
 とんでもねェ可能性を秘めてるかもしんねぇ

 それをな、可能性に目を向けずに結果だけに目ぇ向けて、全部一緒った、それ程つまんねー事ぁネェ」

そして深く息を吐いた後に告げた言葉は酷く身勝手であるとも言えるだろうか
根本として死人を出す事は変わらない、そしてその想いがただ自身一人の願望だけでしか無いものだと
そう感じ取れる事も出来るであろう言葉であって



「だからよぉ……オメェのやってる事ぁ俺にゃ全くもって理解出来ねぇんだわ、つまんねぇんだよ
 俺等は同じ調理で同じ味を出す食いもんでもネェし、ペットか何だかしんねぇがコイツみてぇに都合の良い研究材料でもネェんだ

 わけも分からねぇまま、死ぬよかは随分とましじゃねぇか……? クッソ舐められてこのまま引き下がるなんて事ァ
 大陸を築いた先人にも顔向けできねぇ、だからこそヨォ、ここでもう一度青の意地を取り戻さなきゃ行けねぇんだ

 結果が同じであれヨォ、生まれるもんは別ってこった
 まぁ……頭の堅ぇバビロン様にゃあ解らねぇかも知れねぇがよ──」



死に理由が無ければならない、その想いが無いと言えば嘘になる
だがソレより何より彼が求めるのは──青の大陸、その民としての矜持を思い出せと
中立に甘えきったその根性を捨て去れと、これもまた我儘な想いではあるのだが

その想い故に、同じ大陸の民を被験者だと例えた彼女の言葉に憤りを覚え
結果は同じであろうが────その結果に至るまで過程は多くの「答え」を生み出すものと考えるこの傭兵にとっては
彼女の言った、消化されれば全て同じと言う言葉にも反感を抱き、彼女の行動に反感を抱くのだ

そして、氷の音が響けば、その視線は先に便利な研究材料と例えたソレの方へと移り

「まぁよぉ──何も意見もねぇ野郎共に比べりゃぁ……こんなモンでも作ってる奴の方がマシなのかもしんねぇな
 胸糞ワリィゼ──こんなモンで混乱する奴らが多いとなりゃあよ……」

零した言葉はきっと、その辺に逃げ惑う青の民に向けたもので、幾らかの失望が染まるまのであった。
318 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします[saga]:2013/02/05(火) 00:39:07.17 ID:dwPtn2jDO
>>317

「過程、過程、ねぇ──?」

「ボクの方こそ、キミたちのことはよく分からないんだよね」
「理解はするけど納得はしない。分かりやすくいえば、分かりたくない」

「矜持で飯が食えるのかい?願いの強さだけでパンは焼ける?」


ぐるり。女の目玉が、眼孔で廻った。


「可能性を見てみたい?ひどく抽象的な目的だね」
「結果を軽視しているように聞こえるのもいただけない」
「なんたってボクらのお仕事は結果が大事だからね」
「過程も重要だよ、確かに。でも──」

「可能性は、奇跡の別名じゃないんだぜ?」


にんまりと小さな笑みを、女は浮かべる。
そして、砕け散った灰色の片腕の方までそっと歩み寄ると、その欠片をひとつ、手に取った。


「例えば──こいつの腕が砕ければ、毒の霧が発生する可能性があったとしよう。そうなる確率は5%だ」
「もしこの広場で、可能性が実現してしまったら──?」
「或いは、実現して欲しい時に実現されなかったら──?」

「──キミの言う可能性は、言わば命をベットするギャンブルさ」
「同じ死ぬなら、ボクはしっかり本人の平均的な実力を利用してから死なせたいね」


──研究者と、傭兵。
クエスト等で契約関係になることは多々あるとはいえ、思想の違いがあるのは仕方のないことかもはしれなかった。
「実験動物が暴れるかもしれない」「製品が使用中に壊れるかもしれない」
「爆発がおこるかもしれない」「死ぬかもしれない」
──彼らはそれらの可能性を排除し、より安定した結果を出すことが望まれる者たちなのだ。
不確定要素を避けてしまうのは、ある意味職業病とも言えるかもしれない。


「──ところで」


ぐるり。女は首を回し、三日月を口元に浮かべ、傭兵を見た。
ひゅうと、風が吹く。女の青髪が、ぬらりと揺れた。


「≪ネグロ・アラ≫の首領って、黒い龍らしいじゃん?」


きゃらきゃらきゃらと、女は嗤う。
月が雲に隠れ、薄い星明かりと街灯が、2人の影を長く伸ばしていた。


「ボクさ────」


舌に彫られた、骸骨人魚。
その目元に開いた真っ暗な穴が、傭兵を見ていた。


「────欲しいんだよね、あの、頸」


──きゃら、きゃら、きゃら。
女は、嗤う。
319 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします[sage]:2013/02/05(火) 01:41:23.49 ID:9GAzvfrPo
>>318

矜持で飯が食えるのかい?願いの強さだけでパンは焼けるか── それは出来ない、出来るはずがない
言い返そうにも、何も出ない喉の詰まりだけ、いや、腹の中で煮えるだけの言葉にならない思いだけが虚しく音を立て
軽く舌を打ち、視線を女の方から外した姿は言い負かされた、とも見えるか解らぬが


「んなっ、んなこたぁ分かってんヨッ!!  だがよぉ…… 」

可能性と言う名の希望は戦場において、そして研究者において不安因子でしか無いものなのは事実
しかし、だけどよぉ……と、次第に消え行く声は女の言った理解はするが納得しない
分かりたくないとの言葉が男にも当てはまるものであるのかも知れなくて

「そん……」

その中続けられる女の言葉も、また同じ────理解したくないモノ
噤まれた先に、言いたい事はあったのか、それが続いたとしてもそれも抽象的な言葉であったのか
もし出たとしても、可能性、希望、願い──その様な結果を軽視した言葉でしか無かったのかも知れない
何方にせよ、その言葉が阻まれた今はこの男の中だけに留まり消えていくものであり。
「ハァ!!」と大げさな反応を示したのも、煮え切らない鬱憤もあっての事だったのだろう。


そして己に向けられた弧月にを視界に入れれば告げられた言葉は以外なもの────
であり男の反応もまた、よく理解できないものであるのかもしれない

「あん………ってことはだ……おめぇもあいつが気に食わねぇって事で良いんだよな……? 」


彼がどう受け取ったのかは解らない、だがその黒き龍の髭が欲しいと向けられた言葉に
仮面のツラが大きく釣り上がり、その鋭利な牙を光らせて

「ハッ────!! こりゃおったまげたゼッ、クッソ研究にしか目がねぇ軟骨野郎共かと思っていたがヨォ!
 中々目のある事を言うじゃなぇか!! オィ!! 奴らにビビって怖気づいてる糞野郎共よりゃあ何倍もいんや──何百倍もマシダゼ!お嬢ちゃン!!」


髑髏の先の暗穴にすら目を向けず只──歓喜を上げる男の姿その先に見えているのは奈落の闇か其れ共
上空から降り注ぐような光の閃光なのかは解らないが
女の言葉の後に先程までの不機嫌な表情すら何処変え消えたようであり、更にはその先程まで敵対していた
ペットにすら上機嫌に一声かけ


「んじゃヨォ!!そうと決まりゃ早速、話し合いとでも行こうや!!
 近くにギルドがあっからよォ! ハッハ────こんな場所でくっちゃべってる暇はねぇぜお譲ちゃんヨォ!
 あん、何なら他の場所でも良いゼェ」

ギャハハ──女のそれと交えるようにそれは零れ、その中へと響き渡るものであって
320 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします[sage]:2013/02/05(火) 22:34:27.91 ID:/ns9waESo

緑の大陸 『フォレストヴィレッジ』の周辺地域
通称、『汚染地域』或いは『戦争の傷跡』


この大陸には似つかわしくない、毒々しい薄い紫色の霧が充満している。
赤黒勢に支配されていた『フォレストヴィレッジ』の周辺にあるとある
地域は黒の大陸やソコに住まう者の多くが有す、《瘴気》に蝕まれていた。
ここにはもう黒の者は居ないはずだが、どういう訳かどこからともなく溢れ出る瘴気が止まらない。

木々は枯れ果て、そこに住まう多くの小動物は居場所を奪われるか、死に絶え。
緑の大陸のバイタリティによって皮肉にも環境適合してしまい、
緑ならざる《魔獣》に姿を変えてしまっている者もいた。

まるで戦争がもたらす一つの終着点を見て居る様で背筋が凍ると誰かが言った。
戦争は終わった。しかし、もしも続いていたら。もしも勝者が決していたら。
この美しき大陸の全土がこの様な光景になっていたかもしれないのだ。


「〜〜♪──♪」


一人の男が悠然と歩いていた。
住まう事が困難だとしても存在が許されない程瘴気が濃い訳ではなく、
誰かが居たとしても不思議ではない。だが、鼻歌交じりで気分よく、
より瘴気の濃い中心部を目指す者など“黒の者”でしか有り得ないだろう。


・薄紫色をした病的な肌と白い髪。鋭く尖った耳と瞳。そした額に入った裂け目。
・右目を大きな星型の痣が覆い、二股のジェスターハットを被る道化の様な男。
・濁った色の貴族の様な服装をしているが、ボロボロな黒いマントを羽織っている。


彼は右手に持った漆黒の炎を燃やすカンテラで不気味に辺りを照らし進んでいく。

ここには除染作業に当たっている白・緑・青の者達が警備しているはずだ。
黒の者。それも、戦争に深く関わっていた者など、本来近づけるはずも無い。
彼らが辿った末路は。彼のマントにこべりついた複数の色の血液が物語っていた。

321 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします[saga]:2013/02/07(木) 00:49:07.28 ID:iDwVEuzDO
>>319

返ってきた傭兵の言葉に、女は丸い目をまたぐるりと回し
そのついでに、首を傾げ、傾げ、傾げ、傾げ……ついにはフクロウのように、180度回転する首。
にたりと笑った口元はそのままに、ばさりと青髪は乱れて垂れ下がる。


「気に食わないってかね、もったいないじゃないか」
「破壊のためにあんな貴重な身体を遊ばせておくくらいなら、たーくさん弄くり回して研究してあげたいんだから」
「そもそも黒の大陸に竜がいる段階で、生物学的にはだいだいだいだい、だーい発見なのに、サ」


──頸が、その命がほしいという発言は、主に彼女自身の研究のために発せられたもの。
しかし、受けとりようによっては、組織の首領が気に食わないというようにも聞こえるかもしれなかった。


一方、「ペット」の方はといえば。
ぎぃぎぃと呻き声をあげ、涎をたらしながらではあるものの、ひくひくと触手を動かして男の言葉に答えた。
そして、氷に包まれ砕けてしまった自らの片腕を、残った腕を器用に使いぺたぺたと集めてまわる。
「どうだい? 可愛いところもあるだろう?」──女はそう言って、今度は楽しげに笑うのであった。


ぐるり。首をまた回す。
ゆるりゆるりと、回れるはずのない角度で動くそれは、しばらくするとすっかり元通り。
元の、目が上にあり口が下にある、普通の角度に収まったのであった。


「ボクの研究室は部外者お断りさ。おっと、素材になりたきゃ話は別だけどね」

「というわけで、キミたちのギルドまで行ってみようじゃないか」
「お茶はアイスにしておくれよ?ホットは苦手でね」


──なんて、ずいぶんと図々しいことを言って、女はペットの名前を呼んだ。
聞き慣れない、長ったらしい名前を呼ばれれば、ペットはムカデの下半身をずるずると引き摺って彼らの元へと来るだろう。

その後、女は行き先を彼へと一任するはずだ。
お喋りの場が己の研究室でない限り、きっとどこで何を喋ろうが気にしないのかもしれない。
322 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします[sage]:2013/02/08(金) 02:08:45.16 ID:GY93G64So
>>321

「生物学だぁ研究だあ難しいこたあ解んねぇが、もったいねぇも気に食わねぇもこの際一緒だ!一緒ッ!!
 あれだよ、あれだ、ほらヨ、こんな時にいう言葉があるじゃねぇか!! なんつった………け………?」

歓喜の声を上げるかの様にその広場へと響いた笑い声は女の言葉と共に止み
彼が口から出した言葉といえば呆れる程いい加減な解釈と言って良い程のものだった
きっと、この傭兵からしてみれば “黒の大陸の挑発に一発ブチかませればソレで良い ” その考えしか頭に無く

「…………あ──………って……しゃらクセェ!! 俺はそいつをブッコロシテェ――オメェは髭が頸が命が欲しいっ!!
 そんなんで良いだろ面倒クセェ」

結局は目的は同じであるのだから──細かい事は言いだろうと、ぶっきら棒に言葉を吐き捨て
そのペットとなるモノを視界へと移せば、「おう、一応言葉は理解することが出来んだナ、次は喋れる様にしてもらえや」──
等と冗談めいた言葉を吐いて、女の言葉の後、その笑い声に彼もまた、同じ音を交え


「ハッ──言ってくれるじゃねぇか、糞野郎様がヨォ!此方としても素材なんて真っ平ごめんだゼッ────
 ………つって急いでんだったわ………  そろそろ小腹も空いたしヨォ  オゥ────付いてきなお譲ちゃん。」


大きな笑い声も鳴り止んだ頃に、言葉は平常────会話に一区切りを付け、歩きだし
辿り着くのはロードスギルド拠点の1つであり、その場所、門構えを見ればひと目で分かると言っても良いだろうか
そして中へと足を踏み入れれば、様々な傭兵の面々で────その中で声を掛けてきたのは一人の受付嬢らしき女性であった

その会話を聞いていれば、『また暴れていたんですか?もういい加減にして下さい』──等々
男に対しては言いたい放題であったのだが、後ろの貴方を視界に入れれば、一礼し

「おう──ホットは嫌いらしいわ、冷てぇ冷てぇのを何個か持ってきてくれや」


その言葉にふてぶてしい表情さえ見せはしたもの、今、通されるであろう、奥の一室へと其れ等を運んでくるのだろう
扉を空け、部屋を一望すれば狭くは無い場所──適当な椅子へと腰かかければ、話をしだすだろう



「────んでよ、ネグロ・アラの龍だか知んねぇが、命(たま)とるとなりゃあ、あの大陸に殴りこむことになるんだがぁ………
 そうなりゃ黒とは全面戦争になるんだろうなぁ、奴等の考えてるこたぁ知ったこっちゃねぇが────
 兎に角よ、人が足りねぇ、俺等ロードスの中でも意見は割れてんだ、だからあの場所で呼びかけてたって事でもあるんだがぁ……オメェに邪魔されて成果無しってこった

 んまぁ────あれで逃げまとう奴等にゃ戦争に狩りだしても戦力とは見れぇ、さっきオメェが言った通りってワケヨ

 大体がヨォ今、こっちに不審船が向かってん知ってんだろ? 先手を打たれちゃ、こっちも下手に動けねぇ
 だからヨぉ、直ぐ様、頸をとってこいっちゃ無理がある話っつワケだ、ここを落とされりゃ元も子もねぇしな………

 色々と考えてみたんだがあ……俺の頭にゃ何にも浮かんでこねぇ、唯一浮かんだのが、青の中立をひっくり返すって話だったんだがヨォ……
 それも現状では見込めねぇだろ? おめぇらバビロンに何かいい案でもネェか? ────要はヨォ、金はいらねェから協力しろってこった」


内約とすれば、不審船が有る事により下手に動くことも出来ない──そして黒の大陸に乗り込むとなれば彼等も安々とネロの元へと案内もしないだろうと
傭兵ギルド、その勇士を集めた特攻も一つの手段ではあるのだが────この馬鹿でもそれは無謀である事だと理解は出来ている

人が集まれば、彼とてそのまま黒えと向かう選択肢は在っただろうが、現時点では望めない
そこでバビロンの科学力、或いは知恵でも無いものかと、そんな単純なものではあるのだが

そもそも、バビロンの思惑が解らぬ今、その言葉は適切であるのかは分からなく
彼にしてみれば、バビロンは研究さえ満足に出来れば、誰の元であっても良いのだろうと、その固定概念が無いわけではない

頸さえ取れれば、どうでも良いと言われればソレまで、かと言って彼らへの抵抗を止める事も無い
故に、最後の言葉が出たのであろうが
323 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします[saga]:2013/02/16(土) 22:13:48.13 ID:XiCu3JWmo
>>322

街中を行く、女と、男と、そしてペット。
傍から見ればそれはさぞかし避けたくなるような光景だったに違いない。
暴れ者のロードス。マッドサイエンティストのバビロンに、得体のしれない生物。
これらに自ら望んで近づこうと思うなんて──自殺志願者以外の誰がいるだろう。

受付嬢に対しては、「やぁ、いい躰だね」なんてシャレにならない軽口を叩く始末。
それでも目立った悪戯をしないのは、一時的な同盟者の手前、といったところか。

通された部屋──応接室か、或いは彼の個室かは知らぬが、その適当は場所へ座り込めば
女もまた、少しばかり真面目な顔をして口を開いたのだった。


「──ボクとしてはまず、中立よりも過激派に声をかけてほしいところだね」
「ここ(ロードス)でいうキミやバビロンのボクのように、安穏とした生活を苦手とする連中さ」
「何もギルドはボクたちのところだけじゃないだろう?」
「荒くれどもの海賊や空賊なんかは頼まなくったって何かしでかしてくれそうだ」

「……さすがに、金の亡者や海の管理人連中は今回も無干渉を貫くだろーけど」
「それでも、少なくとも前者は武器の融通くれーはしてくれるんじゃない?」


中立派よりも、穏健派よりも。何より、一番動きやすそうなところから声をかけろと彼女は言う。
今はとにかく、時間が惜しいのだ。
こうしてゆるりと談合をしている時にも、ネグロ・アラの船は青の大陸へ向かっているのだから。
だからこその──時間稼ぎがほしいのだろう。
運が良ければ、すぐさま動ける者達のみの戦力で船を沈めることだってできる。

それに、と。彼女は深呼吸をした後言葉を続けた。


「バビロンの連中だって、ただ穴蔵にこもってるだけじゃあない」
「武器の融通も、素材があればやってのける」

「きゃきゃ──船団そのものを素材にすることだって、可能なんだぜ?」
「肉も骨も内蔵も髪も歯列も爪も血液も──その細胞ひとつ余すこと無く有効活用してやるよ」


きゃらきゃらきゃらと、女は嗤った。
まずは船の鹵獲。そういうこと、なのだろうか。


「ああ、何なら知り合いのセイレーンに声でもかけておこうか」
「連中は船乗りを不幸のどん底に落として海に引きずり込むのが生きがいと見えるし」
「それになにより、いないよりマシだろう?」

「相手さんが海にいるんなら、ボクらの独壇場。違うかい?」


最後を〆るのは、海に生きる者たちの誇りを再起させる言葉だった。
水の中に生まれ、水と共に生き、水を見て死ぬ。
それがこの大陸に生きる者達の有り様。

この女の考えがどのようなものであれ──
少なくとも今は、黒を潰すために動いていることが分かる言葉でも、あるのだろうか。
324 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします[sage]:2013/02/17(日) 01:30:30.42 ID:YONBc51lo
>>323

流石バビロンと言った所か、冗談めいた言葉に面を上げた受付嬢の表情は幾分の硬直に囚われたかの様に不自然な笑顔であって
『あ、ありがとうございます……』その言葉を詰まらせ、たじろぐ姿を見せたならば
そそくさと、その場を離れ、やがて彼女の視界の中から姿を暗ますだろう。

──そして古めかしい扉が強引に閉じられれば、まるで悲鳴を上げるかの様な音を立て、その場は密室
互いの応対が交わる場所、彼女の表情を視界に入れると男も同じくしてその言葉をジッ──と、その言葉を受けるのだった
そして最後の言葉まで聞き終えれば……その口は


「ヨォ……動くとばっか思ってたから空賊、海賊にゃ何も言ってなかったわ、言われてみりゃ御尤もな話じゃねぇカ!
 求めたくねぇが連中が動くなら強ェ味方だ、時間もネェ今、戦力にならねぇ連中に声をかけるより、即戦力になる連中に行くべきだナ
 まぁヨォ、面倒くせぇが連中にも一声掛けるとすンわ、オゥ、任せとけってんだ

 っと、その事なら心配いらねェ、糞ったレ商人共が協力しねぇなら武器を奪うまでよ、奴等の話は聞いてて難しいことばかり言いやがるからヨォ……
 実力行使が一番効くって訳よ──ギャハハッ──!!」


空賊、海賊、協力者としては解らぬが、今、彼等以外であれば最も今回の騒動に対して動くであろうと予想される者達、
勿論彼もそうは考えていたのであろうが、その考えがあった為、声は掛けていなかったのだ、と
そして商人への対処方、これも単純な彼の考えが導き出した答えであるのだろう。
──この男にまかせておいても良いのかと、目の前の彼女にはどう見えているのかは分からないが、不安にもなる様な言葉であったのかもしれなくて

「────っと、まぁそれはそんな感じなんだがヨォ」

彼女の話は全て聞き終えていた、故に彼が言葉を話し始めた頃から、彼女の最後の言葉が彼の心を躍動させていたのだろう
それが聞きたかった言葉、求めていた言葉、きっと彼女も気付いていたのかもしれない、先程からの彼の言葉は妙に音が弾むものだったから

「…………なんつーか、オメェ等の事を疑ってた自分が情けねぇ、スマぇねぇな、研究、研究、そんだけできりゃ何でも良い連中だとばっか思ってたゼ
 さっきからヨォ、だがそんな事も無かったナ……オゥ、ネグロ・アラか何だか知んねぇが……奴等はこの大海の本当の恐ろしさを知んねぇ……

 海は俺等の場所、俺等の誇りダ、あの性悪女共も加わるとなりゃ今から楽しくてしょうがねぇなぁ、ひっさしぶりの大海嘯って訳だ
 初めの目標は、のんきに波に揺られてる船乗り連中って事だな? 根こそぎ掻っ攫ってきてやんゼ、今から相棒よ、任せとけ────慌ただしくなンゼ」


伝わった──と取れるのだろうか、女の本心は解らぬも、その言葉に奮起して
先は、船団の鹵獲、ゆっくりと頷く男の姿がここに。


そして、今ほどのの会話が聞こえていたのか、或いはその場の空気を読み取ったのか
扉が開き受付嬢──彼女が持ってきたのは緑の大陸の一つの名産、ペシュベリーの風味を香らせるアイスティ―であり。
卓上に置かれれば、グラスの中──その紅色の面は揺れ動きて積まれた氷が罅を鳴らして
325 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします[saga]:2013/02/24(日) 01:33:15.29 ID:4AFPVZ4Lo
>>324

「──交渉、いや、同盟は成立だね」
「これを機に、ボクたちのマイナスイメージをみんなから消してくれることを願うよ?」

きゃきゃ、とまたしても女は嗤う。
咥内には相も変わらず骨の人魚。その真っ黒な眼孔は、何も語らなかった。

受付嬢が入室すれば、彼女の姿に興味を持ってなのだろうか。
('A`)な表情をした「ペット」が、そろそろと片腕を嬢へと伸ばす。
捕食、というわけではなく、純粋に──良い香りでもしたのかもしれない。
だが、女がその背から繋がる自らの尾でばしりと床を叩けば、ペットは腕を引っ込めるはずだ。
主には従順な生き物なのか、或いはそうプログラムされてでもいるのかもしれない。


「さて、さてさてさて。まだ自己紹介をしていなかったね」
「ボクの名前はアニタ・アバリシア」
「性別は♀で種族不明年齢不明血液型不明学歴不明能力不明etcetc......」
「要はいろいろ不明なところが多いけど、仲良くしていこうじゃないか」

                ベンキョウカイ
     「────さぁ、乱痴気騒ぎの始まりだぜ」


頬まで裂けた、女の嗤い。
その三日月の裏側に潜むのは、ただの兎か、それとも──。

からり。空気に触れて溶け始めた氷が、水面に波紋を描き
ぴちゃん。グラスの表面に湧いた結露が、静かに卓へと零れ落ちた。

────ひゅうひゅうと、どこの大陸も同じように時を刻んでいく。
生命を育む土地。灼熱を運ぶ土地。規律を守る土地。
そして──中庸に佇む土地と、死者を孕む土地。
それぞれの思惑は、風のように世界を巡っていく。
今宵の邂逅が何を生み、何を殺すのかは──まだ、誰にも分からない。

また、少しだけ。海の上をはしる黒船が、青の大陸へと近づいていった。

/またまた遅くなってしまって申し訳ない……!
/コレ以上拘束してしまうのもあれですし、ここで〆れるようにレスをお返しいたします
326 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします(山梨県)2013/02/25(月) 22:48:34.59 ID:Hp22bqWJo
――黒の大陸港町・ヴァカストル 路地裏


既に日は落ち、灯篭の光もさほどととがない路地裏。月光は路地裏で、朱色の何かを照らして居た。


「なるほど…

……プランツ・ビーストが草でできている事は知ってましたが…やっぱり爆発には弱いんですわねぇ……ふふっ」

焼けた香ばしい匂いのする路地裏には、プランツ・ビーストであった筈の、焦げ付いた骸を見ながら、楽しそうな女が居た。
まるで焼けたお菓子を味見するように、ほの死体の断片を口の中に運び、恍惚の表情を浮かべる女は、所詮はキマイラの女であった。

キノボリトタテグモを思わせる形状の巨大な脚。その上には、白い肌に赤い瞳。血塗れのゴスロリを着たヒトガタの生き物だった。大方ケンタウロスとでも言うべきか。

「殺りたてのお肉は美味しいですわね……次は何で実験しましょうかねぇ…

検体としてモツものだったら面白いのですが……仲間が居てもいいですわね」

ススまみれの分厚い本に万年筆で何かを書き込みながら、前脚で器用に死肉を漁り食す。その狂気的な笑い声に誘われて、何者かが来るかもしれない。
327 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします(山梨県)2013/02/25(月) 23:42:00.85 ID:Hp22bqWJo
>>326
/ちなみに、まだ居たり
328 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします2013/03/07(木) 22:32:42.27 ID:7o3HZNLDO
>>326

「えー?なんかこの辺超焦げ臭くないですかー?」


──暗く、紅く。空気ですらその場へ赴くことを躊躇うような、そんな場所に。
ふいと聞こえるのは、場違いとも言えるような女の声。
週明けの朝に、友達と連れ添って繁華街を横切るかのような──そんなテンションの響きだった。


「まーこの街が超こげこげなのは今に限った話じゃないですしー」
「むしろこげ臭が超デフォ、みたいな?」
「きっとまたどっかの誰かが爆発なり超放火なり、って……」


ひょこひょこと近付いてくる声。そのわりに足音はひたりともせず。
少しばかり高い声は、黒の住民とはあまり思えぬ台詞を延々と紡ぎ続け、そして──


「……うわ超グロー!?」

──曲がり角から姿を現したのは、1人、いや1匹のサキュバスだった。
ただし、かなり小さい。超スモールサイズ。
小悪魔と呼ぶのにふさわしいであろう、子供サイズのソレは、蝙蝠形態の羽をパタつかせて浮翌遊していた。

頭からはひょっこりと、悪魔っぽい触覚2本。
テンプレートとも言える、紅い眼に浅黒い肌。
服は黒の大陸の常識の範囲内──それと、これまた悪魔っぽい尻尾。

雰囲気に釣られてきたものは──そんな、雑魚臭すらするものだった。
……見た目的に、黒の大陸の生き物であることは、間違いなさそう、なのだが。
329 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします(山梨県)2013/03/07(木) 23:05:40.36 ID:zk4Tdi85o
>>328

「足音もないお客さまが……あら?」

ずいぶんと現代っ子の雰囲気が出ている悪魔の正体は、小悪魔というべきサイズのサキュバスなのであった。
彼女の進行方向に居た蜘蛛は、羊皮に筆を走らせるのに忙しく、目線が下を向いて居た為か、彼女のその大きさに驚きを交えた笑みを浮かべた。


というのも、この蜘蛛は悪魔というのを文献上でしか見た事がなく、しかもそれらは月並みに大きいサイズで揃えられていると思っていたからだ。

そんな蜘蛛の仮説を否定するように現れた彼女の存在は、蜘蛛の好奇心に火をつけたらしい。

ぱたん。と、書き込んでいた本を閉じつつ、その足腰の不気味さとはかけ離れた微笑を浮かべつつ。

「ふふっ…こんばんわですわ

私(ワタクシ)の想像ですと
こんな光景は貴女のような、恐らくは悪魔とかの方の方が見慣れているとは思いますけども?」

うふふと笑いながら話す蜘蛛は、さながら子供に話しかける少女の様である。その足元の光景を除けば。

/発見に遅れてしまいました。すみません。
330 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします2013/03/07(木) 23:26:09.45 ID:7o3HZNLDO
>>329

「うわー、超グロいしキモいし蜘蛛だし脚だし……」

──話しかけられるまでは、そんな。現代っ子ここに際まれりというかのような態度で、空中にふよふよとしているだろう。
小悪魔らいくな彼女が、相手を憚らず言いまくっている単語は所謂貶し言葉。
相手にとっては、その性格次第で誉め言葉になりうるのだろうけれども──?


だが、そんな悪口博覧会も、話しかけられればそれにて店仕舞い。
蜘蛛女と犠牲者を含めた「風景」を見ていた紅瞳は、相手の顔へと焦点を合わせられた。


「え、そりゃ見慣れてますよ聞き慣れてますよ嗅ぎ慣れてますよ超、超、超ね!」
「でも個人的超好き嫌いを聞かれれば超苦手な超類いですね」
「ほら、やっぱり生き物ですし、超好き嫌いありますよ。あなたなんかは超野菜嫌いそうですね」


──どうも、悪魔の近親者の中でも変わり者なのだろう。
少なくとも、惨劇や虐殺を嫌う悪魔などあまりお目にはかかれない。
それを証明するかのように、彼女の視線は会話の間中ずっと、消して地面へ向くことはなかった。

それでも、お喋り自体は嫌いではないのだろう。
距離はある程度置いてはいるものの、言葉そのものはあっさりと引き出されている。
331 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします(山梨県)[sage]:2013/03/07(木) 23:43:27.32 ID:zk4Tdi85o
>>330

「ふふっ……蜘蛛の脚も見慣れると可愛いものですわよ? 貴女様はそういった類はお嫌いですの?」

右手を口元に当てながら、ヒトガタ特有の微笑を浮かべる。足元の残骸を見る限り、蜘蛛の性格がマゾヒズムという訳ではなさそうではある。恐らく、彼女を完全に「敵になり得る者」として見ていないのであろう。

「残虐性がお嫌い……ふふっ、お優しい方なんですわね

私の悪魔のイメージは、次々と生き物を誑かして喰らうという物でしたが……この仮説は不適切だったようですわね…


いえいえ、私は野菜の類は好きですわよ……この光景を見て、野菜を食べないとお思いになったのですか? 」

先ほどから一切微笑みを崩さず、何やら心なし嬉しそうに少女の目を見据える。
顎下で組まれたその両手からは気品さえも感じられるかもしれない。

どえもこの蜘蛛は少女とのお喋りを楽しんでいるようで、蜘蛛の脚たちは、足元の残骸を綺麗にかき集め出していた。

蜘蛛なりの配慮、とでも言えるだろうか。
332 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします2013/03/08(金) 00:06:06.78 ID:BO4hnkfDO
>>331

「えー、だって、超もじゃもじゃで、ほら、超いっぱいありますしー」
「あと、目とか!超ちっちゃいのが、いっぱいで、うわぁ」

蜘蛛の脚が、というよりは、蜘蛛そのものが苦手らしい。
話題に出たため、蜘蛛の姿でも思い出したのか。
ぷるっとわずかばかり身体を震わせ、尻尾を数度振るってみせた。


「あー、超違います超違います。多分超性格?」
「優しかったら、ほら、超別の大陸に超とっとと超移住してるか、天使よろしく超あなたを倒そうとするもんじゃあないですか?」
「現実的に超考えて、移住は超お金ないし闘いなんて超勝てそうにないから超しないだけですし」
「そんな超打算的思考が超優しさに結び付くんなら、まぁ別にそれで超いいですけど、」
「個人的には打算的=超小市民、的な?」


残虐性を忌むと言っておきながら、路地裏を彷徨いていた彼女。
そのことから察するに、本当に打算的思考で行動しているのだろう。
動物は嫌いだけど、毛皮は好きだとか、屠殺は嫌いだけど食肉はするという主張と似たような気配だ。

それにしても、話が長い。
よほどのお喋り好きのようだ。


「そうそう、悪魔っぽくないとは超よく言われますし、実はそれ超気にしてるんですよねー」
「なんでなんですかね、こんな超性格に生んでくれやがった超両親を超健全に超怨んではいるんですけど」
「怨んでこの方、なにかがあったとかはないんですよねー」
「超両親の頭に雷超落ちたとか、超穴に落ちたとか、超タライが落ちたとか」
「最も、超両親の顔とか超知らないから超現実的に超考えて超風の便りも超頼りないって感じですか?モャハー!」


──最後の単語は、笑い声かなにか、だろうか。


「っていうかー、超野菜超好きなんですか?超蜘蛛なのに?」
「超意外!超超超超超意外!悪魔が優しいくらい超意外!」
「これは超私も超蜘蛛さんに対する超認識を改めなければ超なりませんね」
「今度どっかで超野良蜘蛛さんにあって、私が超偶然野菜や草の欠片でも持ってたら超あげてみますね!」


…………。
333 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします(山梨県)2013/03/08(金) 00:29:31.86 ID:v5x2A6v4o
>>332

「つまり本質的には嫌っているわけでは無いのですわねぇ?」

白い頬にぷくっと右人差し指を刺しておどける。宝石の様な赤い目は、闇夜でも光り輝き不気味でもあるが。

「 ふふっ…貴女は鍛練を積めば、その美貌でなんとかなりそうな気がしますが…

実は私も小市民なのですわよ? 自分が死なない程度に他の生物をいたぶったりするのが好きなだけでして」

イジメを好む子供しかり、この蜘蛛はそう言ったことが好きらしい。
彼女に好意を抱いている訳は、この子供の様な性格があるかもしれない。


「ふふっ、貴女様は残虐性を帯びた悪魔になりたいのかしら?

私には充分残虐性があると思いますけども……それらを実際に行動に移したくなりませんの?」

なんと言うか。実に蜘蛛も楽しそうである。

「ふふっ…あくまで私が食べるというわけですわよ? これでも女の子ですからね、健康には気を使うわけですの


その辺の野良蜘蛛にお野菜をあげても……貴女様の期待を大きく外す事は保証いたしますわ」

少し申し訳なさそうに、彼女に返しつつ、ふと何かに気づいた様に。

「貴女様は名前とか持っていらっしゃるの?

私には名前が無いんですが、もし持っていたら教えていただけないですの?

貴女様じゃ、貴女の性分にあわなさそうですからぁ?」
334 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします2013/03/08(金) 00:56:52.54 ID:BO4hnkfDO
>>333

悪魔と、蜘蛛。4つもの紅き瞳が爛々とするこの場所は、黒の民以外は近付き難いものになっている。
尤も──部外者が少しでも足を止め、会話に耳を傾けたのならば。
それはそれで、違った意味で近寄りたくない気配が醸されているのかもはしれないけれど。

「うーん、超そういうことに超なりますかね?」
「ほら、私超サキュバスとか悪魔とか超言われますしー?」
「嫌っちゃだめなんだよなー、でも超苦手だなーって超葛藤してるわけです」
「超、その辺のネズミとは超遊んだりしますしー」
「といっても、つんつんしたり、尻尾引っ張ったりレベルですけど」
「さすがに、蜘蛛とか虫の脚全部抜くとかは、ねぇ……?超、なんかしたくないです」

「ところで、サキュバスな鍛練ってすなわちアレですよね」
「超やだなぁ超恥ずかしいなぁ超出来ますかねどうなんですかね?」

「と、超ここまでくるとあれですね。私には超2つの超試練が与えられてますね」
「超残虐性or超淫乱的or超小市民?」
「あれやっだー超3つじゃないですかー!」

「ま、悪魔のお仲間としては超残虐かつ超淫乱なのが超理想的ですよねー」
「あくまでも超一般論としての超目標?」
「でもなんだか、私がそんな風になれるのがいまいち超想像つかないんですよねー」
「ほら、これなんていうんですっけ?超、自覚がない?」


──ここまで半一方的に話されると、ある程度目の前の悪魔の性格とやらも割れてくるもの。
お喋り好きで、悪魔の自覚がなく、きっと、頭の出来はよろしくない。
それでも黒の大陸で生きていくことが出来ているのは──打算的な性格故か。


「野良蜘蛛はやっぱり超お野菜は超食べませんかー、それは超残念です」
「でもでも、ほんと、超意外ですねー。健康にも気をつかうなんて」
「見た目で他人を超判断するのも超時と場合によりけり!ですね」
「あ、超耳寄り情報!セイレーンの体液って、超黒の種族と超相性いいらしいですよ!」
「超アブない種族と超聞きますし、超馴染みやすいんですかねー?」


耳寄り情報。セイレーンの化粧水!
──先ほどまで、血生臭いことを好まないといっていたのは、どの口なのだろうか。
尤も、きっとこのことはその辺で立ち聞きして得た知識なのだろう。
死んだら泡になり消えるセイレーン。その生き血を、商品化が可能なレベルまで搾り取るのは、なかなかに難しい。


「あっ!確かに!アナタサマって、超呼ばれなれないんですよなんたって超小市民!」
「私は私は、ラピっていいます!ラピ=モャー!」

ラピ──?

「ラピ=モャー!」

──名字部分が、ひどく聞きづらかった。
それはきっと、彼女の悪魔的要素、なのだろう。

「ところで、名前ないんですか?」
「なら超私が超つけてあげます!んーと──」
「──スパ子さん!」

スパイダー+女の子=スパ子
それは、ひどく、安易かつ醜悪な、ネーミングだった。
335 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします2013/03/08(金) 00:58:09.07 ID:BO4hnkfDO
>>333
/ぎぎぎ、申しわけないです、そろそろ眠気が……
/明日以降に引き継いでもよろしいでしょうか?
/ちなみに明日は夜10時以降にはこれるかと
336 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします(山梨県)[sage]:2013/03/08(金) 01:03:36.17 ID:v5x2A6v4o
>>335
/了解です。明日は自分が来れるかわかりませんが…
/とりあえず、ここまで乙でした!
337 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします(長屋)2013/03/09(土) 07:26:37.14 ID:XhLcGv70o
>>334

キマイラの中でも蜘蛛というゲテ物と、サキュバスとの会話である。女子力も何もなさそうであるが、高めのトーンで話しているあたり、彼女たちも少女なのだろう。

「ネズミですか……私はよくゴキブリと一緒にいただく事が多いですわね……けっこう美味ですわよ?丸々太ったネズミなど……涎が出て来そうですわ

蜘蛛の脚を抜くのは頂けませんわね……祟られますわ」

「あらあら、貴女様はサキュバス……ふふっ
ずいぶんとえっちいな鍛練になりますねぇ……なんなら、私で試して見ますか?貴女様なら、たぶんなんとかなると……ふふっ」

「残虐と淫乱は似た物同士……つまり、完全に黒に染まるかって事ですわね?

小市民的な残虐さと淫乱を重ね物というのはどうかしら?何も完璧を目指さなくてもいいだけの事…」

悪魔に比べてやや落ち着きがあるが、喋りづきなのも蜘蛛である。反面、言っている割には残虐な面がありそうだが。


「人魚の体液ですの…?あの輩はたしか、死ぬと泡になるとか……難しそうな事はこの上ないですが…

面白そうな研究材料ですわね? 私が生産に成功した暁には、真っ先に貴女様に……ふふっ、お美しくなるといいですわ」


「ラピ様ですわね?……ふふっ、覚えましたわ。
これでも顔と名前を一致させるスピードは速いんですわよ?」


スパ子……その名を聞いて、やや申し訳なさそうに

「ラピ様……?名前をつけてくださるのは有難いのですが、折角ラピ様につけていただくのです。 もう少し、'' 悪魔らしい"ものにしていただけませんの?」


丁重に"変えて"という事らしい。

/昨日は来れずすみません。とりあえず返しと来ますので、都合がついた時にお願いします。
338 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします2013/03/09(土) 23:34:09.38 ID:ny/4aFdDO
>>337

「え、祟られるのは超やーですね」
「今度から蜘蛛には超気を付けます。祟られて十円ハゲは超ゴメンですから」
「それと……うーん、蟲は超個人的にはNGですね。ほら、超動きとかが」
「もう、緑の大陸なんかは超キモいです。だって、超虫祭りなんですよね?」


どうやら虫はお嫌いらしい。
それにも関わらず目の前の女と会話が成り立っているのは、ヒトガタの部分にのみ目を向けているからだろうか。
少なくとも、虫だから、嫌いだからといってすぐ排除にかからない分、黒の民の中でもだいぶ彼女は「ユルい」ようだった。


「モャー、さすがに、ほら。超まだまだハードル超高いですよ!」
「もうちょっとこう、試すとしたら、超、ちっちゃいのあたりから!」
「……え、超ビビってるわけじゃないですよ?超、自分の身の丈を見極めているだけであってー」

「でもでも、超小市民的悪魔!なんかそのアイディア超イイですね!超いただいちゃいます!」
「いやー、人の話は超聞くものですね!私ひとりだとそれはなかった超発想!です!」


モャー、は、ため息か、もしくは笑い声なのだろう。
まさか名字はこの笑い方からきたのだろうか。はたまた、その逆か。
どちらにせよ、あまりつっこまないほうがいいかもしれなかった。

先ほどから元気いっぱい!という様子だったラピだが、小市民的〜の件を聞けば更に目に輝きが宿る。
案外、思っている以上に自分の在り方というものを疑問に感じていたのかもしれない。
しかし、キマイラのおかげで彼女の行動指針は決まった。
曰く、「小市民的悪魔」──字面は、あまり悪魔的ではなかった、けれど。


「はい、超ラピです!超覚えてってくださいね!」
「それとそれと、超人魚化粧水、超期待して待っときます!」
「超ほら、やっぱりお肌のよーすは超気になりますし!」


くるりん。相手の発明予定品のことを聞けば、楽しげな笑みを浮かべ、その場で一回転。
ひょこりひょこりと、彼女の動きにあわせて悪魔の触覚が、揺れ、て。

──そして、強い強い、風が吹く。


「────グラナダ」


ぽつり。紡がれた言葉は、音は。低く、暗く。
しかし紛れもなく、少女が、ラピが織った、この世で最も短い呪い。
──名とは、それだけで、たった数音のみで、モノのカタチを縛る、呪いになる。
まだ悪魔の自覚がない少女。誰かに名を与えるということがどういうしがらみを生むのか──その理解は、きっと、ない。


グラナダ。それは遠き地の言葉。
遥か刻の向こう、神話の時代──ソレを口にしたが故に、死の国から還れなくなった女の物語も、あったと聞く。

ある部族は、死を連想させることを嫌い
ある種族は、首を斬った断面と似ていることから忌んだ果実。
グラナダ────ザクロという言葉を、名前を、呪いを
幼い悪魔の眷族は、彼女に与えようとしていた。


/遅くなって申し訳ない!
339 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします(山梨県)[sage]:2013/03/10(日) 20:40:18.33 ID:4pnCJ3hro
>>338

「確かに緑の輩は気色悪いですわねぇ…他の大陸の蟲は可愛いのですが…

蜘蛛のキマイラの私が申すのもなんですが、あの大陸が原産の蟲は駆逐した方がいいと思いますの…」

流石キマイラと言ったところか。
自分が蜘蛛だと言うのにも関わらず、敵対する大陸にはあからさまな険悪な感情を示していた。


「確かに蜘蛛に淫欲は働きづらいですわねぇ…ラピ様がよろしければ、幾らでも身体は提供いたしますのに……クスクス


ふふっ……ラピ様のお役に立ててなによりですわ…ラピ様の様な高貴な方は、私に感謝などしなくても良いのに…」

その元気な妹を見守る姉の様に、微笑みを浮かべながら言葉を紡ぐ。
ヒトガタと言動だけみれば、それっぽく見えるが足腰が如何せんゲテ物である。

蜘蛛はラピら悪魔よりも自分が下位だと思っているようである。ゲテ物である事を考えれば、わからないでもないが。

「私からすればラピ様は化粧水に頼らなくともお綺麗ですがね……

ラピ様の為にも、一層研究に力が入りますわね」


「私の名ーーーーー」

ヒトガタの長い髪の毛がふわり。揺れた。
後ろに束ねていた肉片から、微量、血液が飛び散った。

蜘蛛は相変わらず……否、一層昂然とした笑みを浮かべた。
ラピに合わせるように、低めのトーンで紡がれた言葉は。

「ラピ様……図々しいのは承知ですが…

……ラピ様から性も頂きたいのですわ…私を、完全にしてもらいたいのですの…」
340 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします2013/03/10(日) 22:46:48.12 ID:MultQU4DO
>>339

「じゃー、ほらほら、今度超駆逐しにいきましょーよー」
「なんですっけ、今世の中超戦争騒ぎですし」
「殺戮(ピクニック)に行っても超大丈夫じゃーないですか?」


──ゲームを、攻略するかのような言い方だった。
残酷も残虐も弑謔も惨劇も凄惨も、嫌うと言っていたのに。
それはきっと、まだ長すぎない生だからこそ、言えること。
命を潰すという事実を、自らのその手で実行することを考えていないからこそ、紡げる言葉だった。


淫らな話題は、そろそろ耐性が限界を迎えたのか。
ぶんぶんと首を振り、「超、いいです。いーですってば!」などと恥ずかしがった。
追撃がなければ──大人の会話は、終わりを迎えるだろうか。

また、蜘蛛の思考も、化粧水の話題も、笑みをもってお開きになる。
前者はラピの未熟さ故に、後者は、頷くことくらいしかすることがなくなったために。


──ひゅう。また、風が吹く。
冷たい、冷たい、風だった。

今宵の月は、ひどく赤かった。
それは悪魔と蜘蛛の瞳よりも、黒く、赤く。
覗きこめば、魅入られ、取り憑かれ、深く、深く、堕ちてしまいそうなほどの赤。


「ジャダウ────」


斬り裂かれそうなほどの冷気。
呑み込まれそうなほどの月影。
混じりあいそうなほどの夜闇。
こんな日には──断頭台(ジャダウ)が、よく似合う。


「──グラナダ・ジャダウ」


宣告は、成された。
運命という名の刃(ギヨティナ)は、ぷつりと落ちる。
ヒトガタの望み通りに。ヒトガタの願いのままに。
悪魔は奏でた。思うがままに、本能の通りに──名前を、呪いを。

それは、黒き地で行われた、秘かなる密約。
にゃあ。路地裏の向こうで、黒猫が駆けた。
341 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします(山梨県)[sage]:2013/03/11(月) 04:03:18.82 ID:t6dg6+PBo
>>340

「殺戮(ピクニック)ですか……ふふっ

ラピ様と一緒ならば、きっと緑の糞共(ゴハン)も美味しそうですわねぇ…

悲鳴を聞きながら食べるのは、また格別……ふふっ」

命を潰す事。それをピクニックに例えたのは、己がした事がないからだろうか。
少なくともこの蜘蛛は、自らの手で命を潰し、そして食した事があるのだ。
この二人が始めてあった、先ほどのように。



「──────グラナダ・ジャダウ

─────私はグラナダ・ジャダウ─」


名前にかけられた呪いは、この世の不吉と連動する。黒猫が駆け出した先にあったのは、腹を空かせた肉食獣が。蜘蛛から名前が発せられたのと同時、猫は赤い血になった。

首の断面を意味する名と、処刑台を意味する性。これらは確かな呪いとなって、蜘蛛の身体を包み込んだ。

呪いは手始めに、赤い月から赤い鋼鉄の刃を具現化させた。その刃はヒトガタの首筋目掛けて一直線に降下し、ヒトガタの肌に食い込んだ。

──────まさしく、断頭台(ジャダウ)

刃はヒトガタの後ろの壁突き刺さり、消えた。刃が通った後のヒトガタは、首筋に赤い線が入っていた。
刹那、その線を起点として、ヒトガタの首は、ヒトガタの両手の中へと降下した

──────首が千切れたのだ。

首があったところは、ザクロ(グラナダ)よろしく断面を見せていた。ちがふきでないの
342 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします(山梨県)[sage]:2013/03/11(月) 04:21:34.26 ID:t6dg6+PBo
>>340

「殺戮(ピクニック)ですか……ふふっ

ラピ様と一緒ならば、きっと緑の糞共(ゴハン)も美味しそうですわねぇ…

悲鳴を聞きながら食べるのは、また格別……ふふっ」

命を潰す事。それをピクニックに例えたのは、己がした事がないからだろうか。
少なくともこの蜘蛛は、自らの手で命を潰し、そして食した事があるのだ。
この二人が始めてあった、先ほどのように。



「──────グラナダ・ジャダウ

─────私はグラナダ・ジャダウ─」


名前にかけられた呪いは、この世の不吉と連動する。黒猫が駆け出した先にあったのは、腹を空かせた肉食獣が。蜘蛛から名前が発せられたのと同時、猫は赤い血になった。

首の断面を意味する名と、処刑台を意味する性。これらは確かな呪いとなって、蜘蛛の身体を包み込んだ。

呪いは手始めに、赤い月から赤い鋼鉄の刃を具現化させた。その刃はヒトガタの首筋目掛けて一直線に降下し、ヒトガタの肌に食い込んだ。

──────まさしく、断頭台(ジャダウ)

刃はヒトガタの後ろの壁突き刺さり、消えた。刃が通った後のヒトガタは、首筋に赤い線が入っていた。
刹那、その線を起点として、ヒトガタの首は、ヒトガタの両手の中へと降下した

──────首が千切れたのだ。

首があったところは、ザクロ(グラナダ)よろしく断面を見せていた。血が吹きで無いのは、これが呪いによってもたらされたからか。

落ちた首は哀しいのか、右目から黒い涙を一筋流した。涙が落ちた経路には、呪いの締結を示す鎖の絵のタトゥーが刻まれていた。


ぎょろり。ヒトガタの落ちた首は、そな瞳を開いたのだった。先ほどと変わらぬ笑みがそこにはあった。ヒトガタは言葉を紡ぐ。媚びたような、それでいて、心底気持ち良さそうな声で。


「ラピ様ぁ……こんな醜い私目に、素晴らしき名前と呪い(シュクフク)をありがとうございます……はぁん

ラピ様に掛けられた呪いが体に染み渡って……とっても嬉しいですの…」

悪魔に呪いを掛けられた事が、よほど嬉しいのか。名前が出来たのが感動したのか。
蜘蛛の恍惚の表情からは、なにやらそういった感情を匂わせていた。

「ラピ様に私からお礼をしないと……どうしますか? 私がお使えしましょうか?」

/返せなくてごめんなさい。後、前のはごそうしん
343 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします2013/03/13(水) 00:23:39.86 ID:S3TLJ/YDO
>>342

「はいはーい、ラピちゃんは超王様(キング)やりたいでーす!」

──殺戮遊戯。
それはもしかすると、黒の民ならだれしもが通る道なのかもしれない。
遊び(ゲーム)感覚で生き物を殺め、死者を弄ぶ。
それが路地裏のネズミか否かの違いはあれど──きっと、だれしもが。
だからこそ。この少女にも──残虐を嫌う少女にも、間違いなく、黒の血は、流れていた。

そんな──楽しい楽しいお遊びの計画も、呪いの前では露消える。
ぐるりと目を見開いて、にんまりと三日月のように口を歪ませた悪魔。
お喋りの時間より楽しそうに。ご飯の時間より嬉しそうに。それは、そんな笑み。
──無自覚で未覚醒の、悪魔。
今宵は、その目覚めのきっかけ、なのかもしれなかった。


「たくさん、たくさん、殺してきて?」
「目は窓に超くっつけちゃえ。耳は壁に超くっつけちゃえ。」
「口は小道に、鼻は暗がりに。」
「内臓はいらない。血は海に流せば超トリックアートになりそうですね」
「骨は野原に突き刺して埋め立てて積み重ねて──骨の森を超造ってみたい」
「残ったお肉もいらないから、グラナダにあげる。たくさん、たくさん、遊びたいです」


──未熟な、悪魔。
だがソレは、目を背けたくなるような光景にも身動ぎはせず。むしろ笑っていた。
名を与えられたことで蜘蛛が変わったのなら──
悪魔自身も、名を与えたことで何かが変わってしまったのだろう。
少女らしさを失わぬまま、しかし悪魔らしさは、急激に増していた。

蜘蛛に求めたのは、生け贄だった。
何の儀式に使うでもなく、自らの糧にするでもなく──
それは、蟲の羽をもぐような。蛙の腹を裂くような。そんな、子供のような遊びだった。
無意味で無価値で無関係な死──
とびきり楽しくとくべつユニークでとにかく凄惨な──そんなものを、彼女は求めたのだ。

/こちらこそ、昨晩は返せず申し訳ないです
344 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします(長屋)2013/03/13(水) 01:49:57.53 ID:7o4RGMgmo
>>343

「はぁん……ラピ様が王様で、私が奴隷になれるのですわねぇ……ぁん…」

大好きな君主に──。
否、大好きだという呪いを受けた少女に、醜悪な己の身体を見られ、笑われ、クモは身体をききとして
345 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします(長屋)[sage]:2013/03/13(水) 02:18:33.35 ID:7o4RGMgmo
>>343

「はぁん……ラピ様が王様で、私が奴隷になれるのですわねぇ……ぁん…」

大好きな君主に──。
否、大好きだという呪いを受けた少女に、醜悪な己の身体を見られ、笑われ、クモは身体を嬉々として震わせた。

君主に依頼されたのはただ一つ。
生贄を用意して、狂気の城を、森を、海を建設する。
少女らしく言えば、ごっこ遊びなのだろう。
ごっこ遊びにしては、余りにも血生臭く、狂気にまみれた違いがあるが、本質には変わらない。
この蜘蛛、もともと実験などと称して生物を爆破し、その肉片を口内に運んでいたほどである。
殺戮遊戯の享楽にふけて、その快楽が癖となり、今に至る。
そんな蜘蛛からしてみれば、悪魔の依頼は、限りなく「楽しい」ものなのだろう。

「殺された糞が、恨むようにして見つめてくる窓…その窓の横には、殺した数を示す耳が…

小言も言えない曲がった口を踏みしめて、冷や汗と共にだした油にまみれた鼻は光りそうですわねぇ…ぁん

血と骨まで使っていただけるなんて……殺めた糞共には勿体無いですわねぇ…

生きててもしょうもない糞カスのくせして、殺されてからこんなにも輝きを見せるなんて…
…ラピ様直々に殺されるなら、変わって欲しいですわねぇ……ぁん

お肉はお料理にして………失礼しましたぁん……ラピ様の身体に糞を入れるなんて……考えただけでも死刑ものですわぁ」

生贄を求められた蜘蛛は、つられる様に笑い出す。
悪魔に対する歪んだ忠誠心は、蜘蛛が凄惨な姿になった事を喜んでいるからだろう。
時折こぼす息は、その凄惨な姿になっている事が気持ちが良いのだろうか。


無意味な死は、蜘蛛からすれば、無意味な生を生きる輩にしては勿体無いという。
おもちゃを買い与える大人の様に、蜘蛛は悪魔に生け贄を与える(呪い)を承りまわったのだった。

変わった悪魔を賞賛する様な甘い声は、本心か。少なくともわかるまい。生首が声を出す。この奇怪な世界では──.


/途中送信失礼しました…。遅くなりましたが、返しと来ました!
346 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします2013/03/13(水) 22:36:32.60 ID:S3TLJ/YDO
>>345

──これにて、契約は完成させられた。
女は名前を貰い、呪われた。
少女は名前を与え、呪わせた。
咒術とは、互いに影響を与え会うものであり、単独では存在しえないものである。
これより以後──この2人には、決して消せぬ繋がりが、できたのであった。


「あ、それとですねー」
「──ひとりじゃ、超寂しくないですか?」
「寂しくないなら構いませんけど、仲間とか、超増やしてもいいですからね?」
「ナイトもルークもビジョップもポーンだって、たくさんいた方がきっと超楽しそうですし!」
「でもでも、クイーンは超いらない。超いちばん偉いのは、私(キング)だけで超いいですから!」


自分をすらチェスの駒に例え、少女は無邪気に笑ってみせた。
グラナダはもしかしたら嫌がるかもしれないが──少なくともラピは、多くの者を巻き込むことをご所望らしい。

その望みを断ることも、もちろん出来る。
断れば処罰も叱責も何もなく──ただ、拗ねた表情を向けられるだけ。
もしかすると、少しばかりの駄々くらいは、捏ねるかもしれない。
──なんてったって、彼女にとっては何もかもが、「遊び」でしか、ないのだから。


「──きゃはっ」
「とりあえず、どこかへ超行きましょうよ!」
「たくさんの死骸(オモチャ)を、私にください?」


そうして最後に、少女は女を遊びへと誘う。
きっと少女は女の返事も聞かぬままに、ぱたりと翼を羽ばたかせて夜闇へ紛れこもうとするのだろう。

獲物を見つけるまでは、かくれんぼ。
獲物を見つけたあとは、おにごっこ。
獲物が死んだらおままごとで、それすら終われば今度は積み木の時間。

──終わることのない遊戯が、始まった。


/このあたりで〆でよろしいでしょうかっ!
/数日間に渡る絡み、お疲れさまでした、ありがとうございましたー!
/きゃっきゃうふふな絡みができて楽しかったです!
347 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします(長屋)[sage]:2013/03/15(金) 20:46:35.40 ID:uIz499Lro
>>346
/ちょっと風邪をこじらしたので、文で返すのがだいぶ後になりそうです。すみせん
/とりあえず、数日間お疲れ様でしたー!
348 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします(山梨県)2013/03/21(木) 20:16:33.26 ID:g++wOwk0o
>>346

蜘蛛の存在がこの世界から消えたとしても、その名を刻んだ何かがあれば、決して消える事の無い名。その名を依り代として結んだ呪いは、強く、混沌としていた。
グラナダの右目から垂れる鎖の印は、この切れる事の無い、繋がりを具現化したものかもしれない。


「ラピ様の仰る事なら御意にござりますわ。

……ですが、ラピ様…呪い(ツナガリ)は、私だけにして貰えると嬉しいのですが…」

グラナダは既にラピの下部とかしていた
349 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします(山梨県)[sage]:2013/03/21(木) 20:24:16.39 ID:g++wOwk0o
>>346


蜘蛛の存在がこの世界から消えたとしても、その名を刻んだ何かがあれば、決して消える事の無い名。その名を依り代として結んだ呪いは、強く、混沌としていた。
グラナダの右目から垂れる鎖の印は、この切れる事の無い、繋がりを具現化したものかもしれない。


「ラピ様の仰る事なら御意にござりますわ。

……ですが、ラピ様…呪い(ツナガリ)は、私だけにして貰えると嬉しいのですが…」

グラナダは既にラピの下部と化していた。
ラピにとってはグラナダも、彼女の遊び道具の一つにすぎないのかもしれない。

飽きるまではよく遊び、何かのきっかけで見捨てられ、気づけば壊れて捨てられる──所詮、消耗品の類である。

蜘蛛はそれを考えてか、それでも彼女の下部になる事を選んだ。それは呪いなどではなく、呪いがもたらした、別の『何か』なのだろう。


「…はぁい! ラピ様がお気に召しそうな躯を……ふふっ、ゾクゾクしますわぁ…」


蜘蛛は糸を道に張り巡らせて悪魔の後をつたって行く。
その糸の先にあるのは、無数の玩具で遊ぶ二人か、それとも────。

なにがあるかは、お楽しみに。
お遊戯の時間は始まったばかりなのだから────

/お疲れ様でした!
350 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします(長屋)[sage]:2013/03/27(水) 20:19:03.14 ID:QP310+roo
――黒の大陸港町・ヴァカストル 路地裏


既に日は落ち、灯篭の光もさほどととがない路地裏。月光は路地裏で、朱色の何かを照らして居た。


「生け捕りにしたいんですからっ!!
抵抗しないでいただけませんの‼‼」

ディープアーティストと思わしき人型を、二本の黒色の棍棒で殴りつける音が響く。スライム状の身体に叩きつける衝撃は、音と共に
人型に吸収され、すでにスライムの息は絶え絶えである。スライムにこのようないたぶりを決めるのは一体のキマイラ。性別は、雌と思われた。


空の黒さを移した様な、黒光りする巨大な脚は、さしずめキノボリトタテグモを思わせる形状だった。
その上には、大蜘蛛と混合したマキナスエルフの上体が鎮座していた。首筋の白さは、まさしくマキナスエルフだが、この蜘蛛の奇怪さは首から上にあった。
首から上。本来なら頭部がある筈の部位には顔はなく、そこには石榴のような首が刎ねられた痕があるのみだった。

「ようやく静かになっていただけましたか……

貴方は貢物になる運命……壊れてはいけませんの」

げほっ。その様な低い声をあげてスライムは気を失った。そのスライムを紅い目で、嘲る様に見つめる顔。その頭は体から刎ねられた頭──。


柘榴の実のような切断面を下に持ち、血一つ流さない生首。
その生首は自由自在に、この空間を動き回っていたのだ。右目から下に呪いの締結を示す鎖の絵のタトゥーが刻まれているそれは、あきらかに普通ではない。

スライムを殴りつけるのをやめたキマイラと、キマイラにいたぶられたスライム。そして、空を浮く生首。

このイカレた空間に、何者かが誘われてくるかもしれない──
351 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします(長屋)[sage]:2013/03/27(水) 23:10:29.29 ID:aAybxETNo
>>350
/まだいます
352 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします(長屋)[sage]:2013/03/28(木) 22:05:01.16 ID:62zun2kao
>>351
/同じく



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