キャンプの美学にはまた、一見するとストレートに見えるよう偽装することも含まれている。ただし、うまく隠して誰にもわからないようにするのではなく、隠しつつ、いわば思わせぶりにウィンクをしてみせることで、隠していることを自ら暴露することもそこに含まれる。エメラルド・シティに向かうドロシーの道連れとなる三人のうち、ブリキ男はよく見るとまつ毛が長く、口から息を漏らしながら「な、な、なんてことかしら!」(my, my, my, my goodness)と女性的な言葉を使う。「If I Only Had a Heart / 心があれば」というブリキ男が歌うナンバーの歌詞には「愛とアートのことになると私は繊細で、優美で、とても感傷的になる / I’d be tender; I’d be gentle, and awful sentimental, regarding love and art」という一節があるが、これはアート好きの同性愛者の一典型を歌ったものだ。
臆病者のライオンはハンカチがわりに自分のしっぽを目尻に当てて泣くので、女性のように見えるし、「If I Only Had The Nerve / 勇気があれば」というライオンのナンバーには「意気地なしに生まれると / when you’re born to be a sissy」という歌詞がある。sissyとは「女の子のような男の子」「弱虫」という意味から転じて「同性愛の男」を表すから、これも「わかる人向け」のメッセージになっていることがわかる。