380: ◆yyODYISLaQDh[sage saga]
2017/04/20(木) 17:52:37.71 ID:v4+DVNQXO
  
 「円堂さんからは『気絶させてでも連れて来い』と言われてるからね。頼むからおとなしく着いてきてくれ」 
  
 さすがにこの格好は寒いしね、と身を震わせる伊吹に対し、ジュウは早々に抵抗をあきらめた。 
 伊吹の強さはジュウ自身が誰よりも知っている。 
 せっかく傷が癒えたばかりなのに、また痣だらけになってたまるものか。 
 先日は伊吹の根負けだったが、理由がなければジュウだってあそこまで拳を撃ち込まれて耐えられるはずがない。 
 ……それに、このまま逃げたら伊吹が哀れ過ぎる。 
 ジュウの溜息を返事と受け取ったのか、伊吹は背を向けて歩き出した。 
  
 「……伊吹、お前靴は?」 
  
 「言わないでくれ、悲しくなる」 
  
  
 〜〜 
  
  
 「思ったより早かったわね」 
  
 光雲高校空手部の道場に案内されたジュウに対して、制服姿の円堂円は開口一番そう言った。 
 円は雪姫と同じく光雲高校に通っており、女子空手部に所属している。 
 その蹴りは凄まじく、大の大人を余裕で吹き飛ばす姿をジュウも目の当たりにしたことがある。 
 雪姫や雨の友人ということもあってオタク趣味らしいが、そのようなそぶりはあまり見たことがない。 
 そんな円が、いったいどんな用件で自分を呼び出したのか。 
 少なくとも甘酸っぱい内容でないことは、顔を合わせる前からわかっていた。 
  
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