466: ◆yyODYISLaQDh[sage saga]
2017/12/30(土) 02:09:09.37 ID:HfYWLYgWO
 「あ、アンタ、私の友達にまで手を出そうっていうんじゃないでしょうね」 
  
 「お前には俺がどんな風に見えてるのか知りたいよ」 
  
 そんなジュウの言葉を無視して、光は早々に前を歩き出した。 
467: ◆yyODYISLaQDh[sage saga]
2017/12/30(土) 02:12:19.05 ID:HfYWLYgWO
 席に着いてから、なにやらそわそわしている光はようやく口を開いたが、目はなかなか合わせてくれなかった。 
 校門で待ち伏せしていたことをよほど怒っているのだろうが、連絡先を知らない光に確実に会うためには、そうするのが一番だとジュウは判断したのだ。 
 謝罪よりも用件の方を優先してくれた光に内心感謝しつつ、ジュウは切り出した。 
  
 「光、お前の通ってる道場ってところに連れて行ってくれ」 
468: ◆yyODYISLaQDh[sage saga]
2017/12/30(土) 02:15:50.83 ID:HfYWLYgWO
  
 ジュウが光と一緒に道場に入ると、甲高い悲鳴のような声が鼓膜を突き刺した。 
 声の方を反射的に見ると、だらしない男物のジャージに、ボサボサの髪の毛を適当に一つに纏めた女性が転げまわっていた。 
 年齢はおそらく大学生以上だが、ジュウが出会ってきた大人の女性の中でこんな手合いは初めてで、思わずたじろぐ。 
 そうしている間に女性は床の上でじたばたと駄々をこねる子どものようにもがき始めた。 
469: ◆yyODYISLaQDh[sage saga]
2017/12/30(土) 02:16:23.82 ID:HfYWLYgWO
  
 〜〜 
  
  
 それからしばらくして、女性はようやく落ち着いたようだった。 
470: ◆yyODYISLaQDh[sage saga]
2017/12/30(土) 02:18:41.82 ID:HfYWLYgWO
 冷ややかな視線に対して環は、冗談冗談、と言って無理矢理ジュウの手を握ってくる。 
  
 「それで光ちゃん、この柔沢くんは何でウチの道場に? 入門希望?」 
  
 ジュウは、躊躇うことなくその場に膝を着いた。 
471: ◆yyODYISLaQDh[sage saga]
2017/12/30(土) 02:19:08.68 ID:HfYWLYgWO
  
 ――しかし、そんなに甘いはずはなかった。 
 顔に向かって鋭く飛んできた爪先を、辛うじてガードする。 
 それでも衝撃を抑えきれずに無様に床を転がり、その勢いのままジュウは跳び起きる。 
 咄嗟に反応できたのは、この道場に入ったときから、なんとなく予想していたから。 
472: ◆yyODYISLaQDh[sage saga]
2017/12/30(土) 02:19:46.31 ID:HfYWLYgWO
 環がその姿勢のまま跳び上がり、そして空中で反転。 
 反転の瞬間、ジュウは本能的に腕を離して床の上を転がった。 
 環はお構いなしにそのまま床に膝を叩き込む。 
 鉄板仕込みの床板がすさまじい音をたてて破壊される。 
 しかし、ジュウには驚愕している時間すら惜しい。 
473: ◆yyODYISLaQDh[sage saga]
2017/12/30(土) 02:20:15.93 ID:HfYWLYgWO
 そこからも一歩踏み出せる気がした。 
 ジュウの拳は止まっていた。 
 ――否、止められていた。 
 武藤環の、たった三本の指先で。 
 止められている今もなお、ジュウは力を抜いていない。それでも、1ミリも前に拳が進まない。 
474: ◆yyODYISLaQDh[sage saga]
2017/12/30(土) 02:21:47.30 ID:HfYWLYgWO
 今回の投下は以上となります。 
 長らくお待たせしてすみません。 
 今後ともよろしくお願いいたします。 
 それではみなさん、よいお年を。 
475:名無しNIPPER[sage]
2017/12/30(土) 07:49:27.81 ID:VTvypjsbO
 良いクリスマスプレゼント(遅延)だった乙 
  
 お年玉にも期待したい乙乙 
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