192:名無しNIPPER[saga]
2016/04/17(日) 22:56:07.72 ID:GO5crQa4o
  
  やはり同姓同名の他人ではなかったのだ。僕は胸を痛めた。彼女にとっては僕なんて過 
 去の思い出に過ぎないのだろう。だから、同じ学校に入学してもそのことを僕に知らせる 
 気にすらならなかったのだ。それは僕にとっては厳しい発見だった。ある意味、優が黙っ 
 て転校したことより厳しかった。 
193:名無しNIPPER[saga]
2016/04/17(日) 22:57:37.82 ID:GO5crQa4o
  
  そのうち、ひそかに危惧していたとおり、僕が遠山さんに告白して、彼女がそれを断っ 
 たという噂が生徒会内に流れ始めた。それは噂ではなく事実だったのだけど、僕は本気で 
 遠山さんが好きになったわけではない。でもその噂はその部分は抜きで、本気で僕が彼女 
 を好きになり告白して、そして振られたということになっていた。僕は噂をやはり副会長 
194:名無しNIPPER[saga]
2016/04/17(日) 22:58:49.00 ID:GO5crQa4o
  
 「はい。いろいろネットのこととか勉強したくて」 
  
  その一年生の女の子はきれいな顔を上げて僕の方を見て言った。意外としっかりとした 
 口調だった。 
195:名無しNIPPER[saga]
2016/04/17(日) 22:59:19.98 ID:GO5crQa4o
  
  彼女の言葉は僕の胸に突き刺さった。確かに僕は遠山さんのことを本気で好きなったわ 
 けではなかった。それでも、彼女に告って彼女に振られたことは事実だったし、そのこと 
 が生徒会で噂になり哀れむよう視線で僕がみんなに見られていたこともまた事実だった。 
 そして、真実 はどうあれ、そういう状況に僕のプライドは耐えられなくなっていたのだ。 
196:名無しNIPPER[saga]
2016/04/17(日) 23:00:26.70 ID:GO5crQa4o
  
 「いえ。特に何もしていません。よくわからなくて」 
  
  池山さんは言った。 
  
197:名無しNIPPER[saga]
2016/04/17(日) 23:01:56.39 ID:GO5crQa4o
  
 「ああ、ごめん」 
  
  僕はなるべく明るい声で彼女に言った。 
  
198:名無しNIPPER[saga]
2016/04/17(日) 23:02:49.83 ID:GO5crQa4o
  
  ・・・・・・いったい池山さんは何を考えているのだろう。僕にはよくわからなかった。でも、 
 僕が今では彼女のことを気にしていることだけは確かなようだった。僕の当初の意図であ 
 った優のことを調べたいという目的に加えて、池山さんのことを知りたいという新たな目 
 的が僕にはできたのだった。僕は実は気が多いのかもしれない。僕は初めてそういう感想 
199:名無しNIPPER[saga]
2016/04/17(日) 23:03:50.44 ID:GO5crQa4o
  
  池山さんは、優とかその他の、僕に告白してきた女の子たちとはタイプが全く違ってい 
 た。どういうわけか僕が好きになる、あるいは僕を好きになる女の子は容姿は様々だった 
 けど、基本的にはしっかりとした性格のお姉さんタイプの女の子が多かった。でも、遠山 
 さんはちょっと違っていた。 
200:名無しNIPPER[saga]
2016/04/17(日) 23:05:15.37 ID:GO5crQa4o
  
 「じゃあ専ブラのインストールからしてみようか」 
  
  僕はマウスを持つ彼女の細く華奢な手をじっと見つめながらも、なるべく冷静に聞こ 
 えるように言った。 
201:名無しNIPPER[saga]
2016/04/17(日) 23:08:07.56 ID:GO5crQa4o
  
 「はい。というか、もう見たことはあるんです。でも、画像は削除されてるみたいで一枚 
 も見られなかったんですけど」 
  
  池山さんは相変わらず真面目な表情でとんでもないことを話し続けた。「ああいうのっ 
202:名無しNIPPER[saga]
2016/04/17(日) 23:08:36.10 ID:GO5crQa4o
  
  ようやく僕は部長らしい言葉を池山さんに対して口にすることができたのだった。 
  
  池山さんは僕の言葉を聞き再びうつむいてしまった。その時初めて僕には周囲のことを 
 気にする余裕が生じてきた。 
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