229:名無しNIPPER[sage]
2016/05/05(木) 03:51:42.68 ID:xBPO6ZLt0
 乙 
 大量投下で読み応えあったよ 
230:名無しNIPPER[saga]
2016/05/06(金) 22:36:13.83 ID:my8qAWPQo
  
  その日、僕はもう日が落ちて薄暗い通りを駅まで麻衣と一緒に帰った。彼女はもう何も 
 言わなかったけど、校舎から出ると黙って僕の手を握った。完全下校時間になっていたの 
 で、周囲には先生に注意される前に校門を出ようと下校を急ぐ部活帰りの生徒たちで溢れ 
 ていたし、校門の前には急いで生徒たちを校内から追い出そうとしている先生の姿もあっ 
231:名無しNIPPER[saga]
2016/05/06(金) 22:37:25.31 ID:my8qAWPQo
  
  自宅に戻った僕は、自分を捉えて離さない甘い感傷や将来へのはかない希望のような僕 
 の心を乱す要素を自分の心の中から排除して、なるべく冷静に今後取るべき手段を考え始 
 めた。 
  
232:名無しNIPPER[saga]
2016/05/06(金) 22:37:55.84 ID:my8qAWPQo
  
  麻衣が示してくれた好意に有頂天になっていた僕は、麻衣を助けている自分自身に生じ 
 るかもしれないリスクについてはこれまであまり考えてこなかった。でも一度それに気が 
 つくと、今まで冷静に優を破滅させる手段について考察していた自分が、いかに考えが甘 
 かったか理解できるようになった。これまで麻衣の甘い好意の片鱗に夢中になっていただ 
233:名無しNIPPER[saga]
2016/05/06(金) 22:38:43.77 ID:my8qAWPQo
  
  僕はそれに対して何も言い訳できなかった。本当は遠山さんなんて好きじゃなかった。 
 優と池山君の関係を知りたいために、僕は遠山さんに告白する演技をしたのだ。でもそれ 
 を告白すれば僕はもっと最低の人間として認識されてしまう。そして、どんなに否定しよ 
 うが僕が麻衣に惹かれてしまったことも事実なのだった。 
234:名無しNIPPER[saga]
2016/05/06(金) 22:39:13.88 ID:my8qAWPQo
  
  いったいこの子は何を言おうとしているのだろう。そして何が目的で僕をかばっている 
 のだろう。僕は混乱していた。 
  
 「先輩があたしのことを好きだとしても、それはお姉ちゃんとは関係ない先輩の純粋な気 
235:名無しNIPPER[saga]
2016/05/06(金) 22:42:31.29 ID:my8qAWPQo
  その日の昼休み、僕はこれでさっきから何度目かわからなくなっていたけど、朝の出来 
 事を思い返してそのことの持つ意味を考えていた。朝の校門の前で、どうして麻衣はあそ 
 こまで僕に肩入れしたのか。副会長と僕のトラブルなんか彼女には全くかかわりのない話 
 だった。麻衣はきっと、浅井君のことは生徒会副会長として知っていただけで、面識すら 
 なかったはずだ。副会長が僕が生徒会室に顔を出さないことで責めていた言葉を聞いて、 
236:名無しNIPPER[saga]
2016/05/06(金) 22:49:24.49 ID:my8qAWPQo
  
  あまり食欲はないけど午後の授業中にお腹が鳴ったりすると恥かしい。僕は購買で余り 
 物のパンでも買うことにして席から立ち上がった時、教室のドアから誰かを探しているよ 
 うに室内を覗き込んでいる下級生の姿に気がついた。 
  
237:名無しNIPPER[saga]
2016/05/06(金) 22:49:53.79 ID:my8qAWPQo
  
 「正直、ネットを見るだけならどんなのでもいいよ。普通に量販店で売っている安いノー 
 トとかでも十分でしょ」 
  
 「それがよくわかんないから聞いてるのに」 
238:名無しNIPPER[saga]
2016/05/06(金) 22:50:22.51 ID:my8qAWPQo
  
  その夜、僕はうちの部の副部長が密かに開設し管理人をしている裏サイトを覗いてみた。 
 そのサイトはくだらない校内の噂や、どうでもいい悪口で盛り上がっている低レベルの掲 
 示板だと僕は断定していたから、このサイトを見るのは久しぶりだった。 
  
239:名無しNIPPER[saga]
2016/05/06(金) 22:51:02.27 ID:my8qAWPQo
  
  典型的なリア充の麻衣を守ってあげるのは普通なら僕なんかに割り振られる役目ではな 
 かった。でも、優と池山君や遠山さんと広橋君の複雑な愛憎関係に巻き込まれている麻衣 
 は多分、今ではこんな情けない僕しか頼る相手がいなかったのだ。 
  
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