30:名無しNIPPER[saga]
2015/12/16(水) 00:24:33.96 ID:OtBfvlRMo
  
  二見に財布を渡せたのはいいけど、結構時間を食っちゃったようだ。麻衣は待たされて 
 怒ってないだろうか。待ち合わせ場所のはずの冷凍食品売り場には、麻衣既にいない。ま 
 さか、勝手に帰っちゃったんじゃねえだろうな。そう思った俺が雑誌売り場の方を見ると、 
 麻衣がいた。何か雑誌を立ち読みしているようだ。すげえ夢中になって立ち読みしてるみ 
 たいだ。・こういうところは麻衣は可愛いい。それにしても、いったいあんなに夢中にな 
 って何を立ち読みしているんだろう。 
  
  俺は麻衣が読んでいる雑誌の表紙が読めるまで、麻衣の方に近づいた。 
  
  ・・・・・・ヤング・レディース。巻頭特集「鬼畜な兄貴:お兄ちゃんもう許して」) 
  
  おい。いったい何の話を夢中になって読んでるんだあのバカ妹は。このことは知らなか 
 ったことにした方がいい。そうっとこの場から離脱しよう。俺がそう思ったとき、俺は麻 
 衣に見つかって話しかけられた。 
  
 「お兄ちゃん?」 
  
 「おう」 
  
 「・・・・・・遅いよ」 
  
  麻衣が立ち読みしていた雑誌を棚に戻して言った。 
  
 「ああ、悪い。」 
  
 「何を探してたの」 
  
 「あ、いや。うん」 
  
  買いたい物があるわけじゃなく、二見が財布を落としたからだとは言いづらい。何で麻 
 衣に言いづらいかはわからなかった。 
  
 「はい?」 
  
 「・・・・・・いやちょっと欲しかったものがあったんだけど見つからないからいいや」 
  
 「欲しかった物って? あたしが探してあげようか」 
  
  やばい。欲しい物なんか何にも思い浮かばない。 
  
 「何を探してたの」 
  
 「・・・・・・それよかさ、おまえは何を夢中になって読んでたんだよ」 
  
  話を逸らすにしても最悪の選択肢じゃねえか。口に出したとたんに俺はそのことを後悔 
 した。 
  
 「漫画の雑誌」 
  
  妹はしれっと答えた。何の躊躇もなく。 
  
 「これ。これに連載されてる漫画がすごく面白いの」 
  
  表紙を見ただけで俺には何の論評も出来ないのだと悟る。 
  
 「クラスでも流行っているんだよ」 
  
 「な、何ていう漫画?」 
  
  よせよ俺。そこに触れるな。 
  
 「これこれ。『鬼畜な兄貴:お兄ちゃんもう許して』っていうやつね」 
  
 「・・・・・・あ、ああ」 
  
  何で麻衣は、わざわざこんなもののページを開いて俺に見せるのか。 
  
 「禁断の恋に陥る兄妹の心理過程を丁寧に描写してるんだよ。ほらちょっと見てみ」 
  
  ・・・・・・おいおい。もういい加減にしろ。 
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