346:名無しNIPPER[saga]
2016/08/18(木) 22:38:13.67 ID:IwnlMYSho
授業が始ったけど今日も私は集中できなかった。夕也の思惑や、浅井先輩の目的。それ
に、唯という女の子。私には何もわかっていないのだ。
私は先生の目を盗んで夕也の方に目をやった。彼は机に広げていたテキストに目を落と
している。彼が考えているのが授業の内容なのか、それとも二見さんを陥れる手段なのか
はわからなかった。それから私は麻人を眺めた。麻人はもう麻衣ちゃんのことを目撃した
時のような安らかで優しい表情はしていなかった。麻人が何を考えていたのかはすぐにわ
かった。彼の視線はテキストでも黒板にでもなく主のいない机の方に向けられていたのだ
から。それはもうホームルームで出席を点呼されることすらなくなった二見さんの席だっ
た。
私は割り切ろうと努めた。自分の気持ちがわからなくなることなんかこれまでだってよ
くあったことだ。それよりも今は、二見さんと麻人を巻き込んだこの一連の出来事が、い
ったい誰によって、何のために起こされたのかを考えるべきだ。そしてそのことが明らか
にならない限り、麻人はもとより私の気持ちさえもが救われなくなってしまっていたのだ
から。
私は放課後になったら浅井副会長に対して率直に疑問をぶつける気になっていた。それ
で、私は相当緊張して生徒会室のドアを開いたのだった。一度決めたこととはいえ、浅井
先輩に、夕也と先輩が交わしていた会話の意味を問いただすことを考えただけで相当スト
レスを感じていた。
ただ、意味を聞けばいいというものではない。ある程度深いレベルで副会長と会話を交
わすためには、麻人と二見さんの馴れ初めとか今現在二人が陥っている状況とかを説明し
なければならないだろう。副会長は麻人と二見さんのことをどこまで承知しているのだろ
うか。
あの時の夕也と浅井先輩の会話を考えれば何もかも承知しているのかもしれない。それ
でも、浅井副会長はこれまで私に対して、麻人や二見さんのことをはっきりと口に出した
ことはなかったから、私が浅井先輩にいろいろと質問するに当たっていきなり核心から話
し出すわけにもいかないだろう。
いったい何をどこから切り出せばいいのか。恐る恐る生徒会室に入った私にはその時に
なっても、どう切り出していいのか見当もついていなかったのだ。
「有希」
同じ学年の書記の女の子が私が入ってきたことに気づいてパソコンの画面から目を離
して言った。同学年の生徒会初期の祐子ちゃんだ。
「遅かったじゃん」
「そうかな。授業が終ってすぐに来たんだよ」
生徒会室には副会長の姿はなかった。祐子ちゃんの他に何人か生徒会役員以外で、各学
年から学園祭の実行委員に選ばれた数人が二人一組になって学園祭のパンフレットの校正
をしていた。早く真実を知りたいという気持ちはあったのだけど、同時に今この瞬間に副
会長と対峙しないですんだことに、私は安心した。
先延ばししてもどうせいずれははっきりとさせなければいけないことはわかってはいた
のだけれども。
468Res/896.79 KB
↑[8] 前[4] 次[6]
書[5]
板[3] 1-[1] l20