269:名無しNIPPER[saga]
2016/08/08(月) 22:46:14.99 ID:qy5Wh6HY0
coat博士「その押し花は、お前が誰かを救った証だ。お前が、誰かにとってのヒーローとなり、感謝を受けたという証だ」
彡(゚)(゚)「......うっ」
coat博士「お前は、みじめなんかじゃない。哀れな被害者なんかじゃない。お前は立派にヒーローをやっているよ。......だから、まぁ、そうだな」
270:名無しNIPPER[saga]
2016/08/08(月) 22:47:50.25 ID:qy5Wh6HY0
~~~~
(´・ω・`)「ふーぅ。寝る前にきゅうりを10本、は食べ過ぎたかな。深夜なのに、お手洗いに行きたくて起きちゃったよ」
(´・ω・`)「こういう時って、なかなか寝つけない上に、かといって起きているのも眠いから辛いよねぇ。......ん?」
271:名無しNIPPER[saga]
2016/08/08(月) 22:48:24.09 ID:qy5Wh6HY0
......そして、原住民が去ったのとほとんど同時の、日本時間午前3時34分のこと。日本の、そして世界の各報道局に、衝撃的なニュースがもたらされた。
『日本発、中東のプエルトルコ共和国※行きの飛行機が、原因不明の墜落事故を起こした。墜落場所は、プエルトルコ共和国への経由国であるローレンスアラビア※域内の、アッシリヤ※との国境付近であった。
機体は、ANAL航空893便。搭乗者はキャビンアテンダント及び補助担当乗員11名、交代要員を含めた操縦士が4名、乗客が514名と確認されている。搭乗者の大部分は、日本人であったとされる。
搭乗者の生存はほぼ絶望的であり、現在は『テロリスト国家アッシリヤ』との関連性を疑いながら、原因の究明を急いでいる状態である。続報を待つべし』 by各国の報道機関、ローレンスアラビア支部より
272:名無しNIPPER[sage]
2016/08/12(金) 05:50:16.09 ID:LEGeicWo0
いいゾ~これ
273:名無しNIPPER[sage]
2016/08/14(日) 15:14:30.01 ID:sG5vcpCPo
ほんま面白いな
274: ◆aL7BEEq6sM[saga]
2016/08/15(月) 07:58:26.79 ID:gdPF9xX/0
【21話】ANAL航空893便墜落事件
深夜のアラビア半島の空を、一機の飛行機が横断していた。機長を務める増永は、操縦席に座りながら、眼前に広がる夜空を呆と眺める。が、アラビアンナイト、などと情緒ある言葉を紡ぐには、高度1万mの風景は変わり映えに乏し過ぎた。
自動操縦技術が著しく発展して以来、パイロットの背負う緊張感や忙しさも、数年前に比べてかなり褪せている。弛緩した空の旅の中、増永は管制塔との通信ボタンに手を伸ばした。
275:名無しNIPPER[saga]
2016/08/15(月) 08:00:51.31 ID:gdPF9xX/0
増永達が早く針路を変更しようとする理由は、アッシリヤの危険度にあった。世界で唯一、『テロリスト国家』の蔑称で呼ばれる、アラビアの汚点アッシリヤ。
彼の国の国境線の内側では、常に貧困、紛争、虐殺、民族対立の嵐が吹き荒れる。そして外側の世界に向けて、内側で溜め込んだあらゆる負の感情を、テロという形でぶつけては、諸外国の反感を一身に受けるならず者であった。
この国とだけは関わりたくないと、マトモな国ならどこでも思う。テロとの戦いに際限は無く、一度その泥沼にハマれば、出口の無い戦いの淵へと引き擦りこまれてしまうからだ。
当然、日本も『奴らと関わりたくない』と思う国家の一員である。「アッシリヤは国家の体を成していない」と、多くの先進国同様、日本もアッシリヤとの国交は断絶している。
国交が無いということは、アッシリヤに航空の許可が取れないということであり、アッシリヤ空域で事故が起きても、責任を取るべき国家が日本にとっては存在しない、ということだ。
276:名無しNIPPER[saga]
2016/08/15(月) 08:02:08.38 ID:gdPF9xX/0
機体が、大きな衝撃に見舞われたのだ。悪天候時のそれと全く異なる、ズシンとした衝撃が二度、三度と走る。ただ事では無い振動の収まりを待っていると、宮田が悲鳴をあげた。
増永さん! と、計器を見つめながら叫ぶ宮田に続き、増永も計器の確認をする。そこに表示されていたのは、絶望的な知らせであった。
増永「なんだ、これは。何故だ」
277:名無しNIPPER[saga]
2016/08/15(月) 08:02:59.38 ID:gdPF9xX/0
例え事故が起ころうと、一縷の望みに懸けて、最期まで墜落の運命に抗う。それが機長たるものの責務であり心構えだと、宮田は養成学校で腐る程聞いてきた。
それを今、増永は放棄したのだ。熟練の操縦士によるこの行為が意味するのは、この機体が完全に詰んでいる、という絶望であった。
増永『本機は、確実に墜落します。最期の時を、家族と、友人と、共に過ごしましょう。そして可能ならば......皆で共に祈りましょう』
278:名無しNIPPER[saga]
2016/08/15(月) 08:03:58.37 ID:gdPF9xX/0
宮田は理解した。増永は、自分が間も無く死ぬという事実から目を背ける為に、何かをしていなければならなかったのだ。自らの気を紛らわせる為だけに、増永は乗客500名を死の絶望に叩き込んだのだ。
宮田「なんだよ、これは」
死に直面した人間とは、こんなにも脆いのか。こんなにも、普段の姿からかけ離れた、哀れな程情けない男になってしまうのか。
279:名無しNIPPER[saga]
2016/08/15(月) 08:04:30.20 ID:gdPF9xX/0
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『テロリスト国家』が誕生した発端は、弱肉強食の時代における、弱国の政策の失敗にあった。
湧いては溢れる資源を貿易に注ぎ込む、富める国ローレンスアラビア。
紛争と民族対立の負の螺旋に陥った、病める国アッシリヤ。
数千年の歴史を共にし、現在も国境を隣り合わせる両国に差が生まれたのは、ここ僅か100年ばかりのこと。20世紀の西欧列強による、植民地支配の時代の出来事であった。
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