207:名無しNIPPER[saga]
2016/12/12(月) 09:05:19.40 ID:DIY4vn380
 旅の一行を受け入れ、半時が経った。 
 炎を纏った蜘蛛の魔女は、自身の腹を貫いた男を歓迎などしていない。 
 しかし、病に伏せる蜘蛛の魔女に説かれ、怪しげな二人と、ただの不死四人に篝火を許した。 
 だが、説かれただけでは無い。クラーグにはコブラという男を知る必要があったのだ。 
 何よりも、妹のために。 
  
  
 コブラ「冗談を抜きに聞くがね、そのお腹の傷はどうやって塞いだんだ?お腹に巻いた炎で治したのなら、そいつの名前ぐらいは教えてほしいね」 
  
 クラーグ「この『ぬくもり』に名などありはしない。貴様の格好に名など無いのと同じようにな」 
  
 コブラ「こりゃ一本取られた……っと言いたいところだが、この服の名前ならあるぜ」 
  
 クラーグ「くだらん。どのような名があると言うのだ」 
  
  
 コブラ「一張羅っていうんだ」 
  
  
 クラーグ「やはり下らんな」 
  
 屁理屈の如きコブラの軽口にクラーグは呆れたが、それでもコブラの一行を追い出す気にはなれなかった。 
 超常の存在に囲まれ、事実として四人の不死達はそれらに怯え、部屋の隅で居どころなさそうに縮こまっているというのに、少しも臆せず堂々と下らない言葉を連らせるこの男。 
 その存在の服装、背景、人格、能力、そして秘する何かに、魔女は惹かれているのだ。 
 叶うなら灯の下に照らしだし、隙あれば奪わんと… 
  
  
 クラーグ「貴様は何者だ?」 
  
 コブラ「その言葉にはちょいと飽きてきたな。耳にタコができそうだ」フッ… 
  
 クラーグ「何故我らの指輪を使える?指輪に力を寄せ、己以外にも魔女の声を聞かせるなど、本来の我らにしか出来ぬことのはず」 
  
 コブラ「さあな。少なくとも俺に魔女の親戚はいないはずだ」 
  
 コブラ「正直言って、本当に心当たりが無いのさ。指輪に好かれる覚えは無いし、指輪に命令できる呪文も知らない」 
  
 コブラ「手品は出来るがね」 
  
  
 クラーグ「この私に嘘は通じぬぞ」 
  
 コブラ「俺はこれでも真実を語ったつもりだ」 
  
  
 クラーグ「ならば貴様の内に潜む大いなるソウルと、輝く『人間性 』はどう語るのだ?」 
  
  
 レディ「人間性?」 
  
 コブラ「そいつには自信があるぜ。友達は沢山いるが敵もいっぱいいる」 
  
  
 クラーグ「そういう者では無い。人間性とは、言わば人の本質となる『精霊』を指すのだ」 
  
  
 コブラ「精霊ねえ…」 
  
  
 混沌の娘「人間性は、人を人たらしめるもの……ソウルが減れば、不死はソウルに餓え、人間性を失えば、不死は亡者になる」 
  
 混沌の娘「そして両方を失い、長い時をすごせば、不死は亡者という姿すら留められず灰になってしまうの」 
  
 コブラ「俺の聞いた話と違うなぁ。ソウルを失って死に続けると体の再構成の精度が落ちてきて、最期は灰になると聞いたぜ」 
  
 混沌の娘「それも正しいはず。見方がそれぞれで違うだけなの」 
  
 コブラ「ややこしいなぁ」 
  
  
  
 クラーグ「人間性は、暗く、暖かい者だ。それらは互いを求め、寄り添い合う」 
  
  
  
 クラーグ「だが貴様に見える人間性は、それらとは異なっている。炎のように光り輝き、寄り添うので無く惹きつける者なのだ」 
  
  
  
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