496:名無しNIPPER[saga]
2018/10/21(日) 18:10:41.00 ID:okyFMchY0
 必要最低限の回復手段を手に入れた一行は、元来た道を戻り、仮面の騎士が倒れた大広間に再び入場した。 
 大広間には音は無く、敵意を滾らせる者もいない。 
 長方形の両短辺にはただ、静謐を守る城門と、冷たい霧のカーテンが揺らぐだけである。 
  
  
 コブラ「鬼が出るか蛇が出るか……おっと、前も同じこと考えた気がするぜ」 
  
 ジークマイヤー「鬼とは、東国の悪魔か?貴公らの世界にもいるのか?」 
  
 レディ「概念としては存在するわ。本物は……まぁ、いるかどうかは人それぞれね」 
  
 ビアトリス「話の分かる方々であればいいが……」 
  
 コブラ「そいつは高望みってもんだ」 
  
 ビアトリス「?  なぜだ?」 
  
 コブラ「こっちじゃ、鬼や蛇も神と呼ばれるからさ」チャッ 
  
  
 コブラはマグナムを開けて急造弾を抜くと、代わりに本来そこに入るべきマグナム弾を装填した。 
 装填された弾丸は五発。これらを撃ち切れば、後は急造弾を使わなければならない。 
 三発撃ち込んでようやく銀騎士を怯ませる、いささか頼りない弾を。 
  
  
 ビアトリス「…それはまた、酷な話だな」 
  
 コブラ「俺もこのことわざが嫌いさ。今からその鬼や蛇に会いに行こうってんだからな。覚悟はいいか?」 
  
 ビアトリス「ああ、できてる」 
  
 ジークマイヤー「万端だ。このジークマイヤー、常に戦場に備えている」 
  
 レディ「ですって」 
  
 コブラ「よし、じゃあ参拝と行こう」スッ 
  
  
 コブラが霧に手を掛けると、淡く硬く閉ざされていた霧はコブラの腕を通した。 
 霧はコブラを通し、レディを通し、不死達を通し、大柱が立ち並ぶ大広間へ彼らを招き入れると、再び硬く閉じた。 
 大広間には薄暗い静寂が漂い、その静寂を、入って右手側の大窓から入る陽光が照らし、冷たい空間にわずかな暖かさをもたらしている。 
 広間最奥には、頭に冠をいただき大剣を地に立てた老王の像と、姿に豊満さをたたえる女神像が見える。 
 その二つの像の前に、小山の如くそびえて殺気満ち満ちる者が立っていた。 
  
  
  
  
 処刑者スモウ「………」 
  
  
  
  
 身の丈十七尺にも及ぶ巨体に、身体そのものと見紛う程に重厚な、黄金の重鎧に身を包む者。 
 コブラの胴より太い腕で支えるのは、鎧と同じく黄金色に輝く、象脚にも似た大鎚。 
 大鎚と言ってもその大きさは更に凄まじく、不死の身にあっては破城槌に、コブラの世界にあっては小型宇宙船にさえ匹敵する巨大さであった。 
 そのあまりの威圧感に不死達は圧倒され、背後に閉じた霧から離れることができない。 
 しかし、コブラは一歩踏み出した。 
  
  
 コブラ「英雄へのお出迎えにしては人数が少ないな。そいつは花束かい?」 
  
 ビアトリス「コブラ、そんな軽口を聞いては…」ヒソヒソ… 
  
 コブラ「構いやしないさ。あんなものを持ち出して来る時点で歓迎する気は更々ない。それともキミには本当に花束に見えるのか?」 
  
 ビアトリス「…そんな訳ないだろう……」ヒソヒソ… 
  
  
 金色の小山を刺激しないようにビアトリスは気を揉んだ。 
 だが、そんなこと知ったことではないと言わんばかりに、コブラは更に歩を進めつつ、小山に語りかけた。 
  
  
 コブラ「なぁ、あんたはどう思ってるんだ?あんたは俺たちの敵なのかい?」 
  
  
  
  
 ドガァン!! 
  
  
  
  
 敵意を含んだコブラの声に、応える衝撃が響く。 
 広間の二階から降ってきた騎士は金獅子の鎧に身を包み、右手に白金色の槍先を持つ長い十字槍を握っていた。 
 獅子の顔持つ兜からは真紅の長房が伸び、房は着地の衝撃で跳ねあげられ、陽の光を乱し、獅子騎士の金鎧に炎のような煌めきを映した。 
776Res/935.37 KB
↑[8] 前[4] 次[6] 
書[5]
板[3] 1-[1] l20