90:名無しNIPPER[saga]
2016/11/27(日) 00:33:42.90 ID:FHyQmHZuO
  
 「勿論、また会えるよ」 
  
 「この夜が明けたら、きっとまた会える。だから、大丈夫」 
  
 にこりと笑いながら、勇者は嘘を吐いた。 
  
 おそらく最初で最後になるであろう、優しい嘘。 
  
 少年は、それが嘘であると気付いた。 
  
 彼の笑顔は、母が自分達を逃がした時と全く同じ類のものだったからである。 
  
 だが、自分に何かが出来るわけもない。 
  
 妹の手前、問い質すことなど出来るはずもなかった。 
  
  
 「勇者さん、頑張って。俺、一生懸命応援するから」 
  
  
 だから、少年も笑顔で応えた。 
  
 心配させないように、枷にならないように、安心して行けるように。 
  
 勇者は微笑み返すだけで、何も言わなかったが、少年はそれだけで充分だった。 
  
 自分の気持ちは伝わったと、そう思ったからだろう。 
  
  
 「そろそろ、お別れだね」 
  
  
 回転が収まると、二人の体が陣と同様に淡く輝き始めた。 
  
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