ほむら「Enemy=Me」
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13: ◆2DegdJBwqI[saga]
2016/12/16(金) 11:23:39.67 ID:ZBdgAUZjo

3
 耳を澄ましても、澄まさなくても、私は存在しない音を聞くことがある。
それもただの音じゃなくて、多分誰かの声なのだろう。
だって私のことを呼んでいるから。

 その声はどこにも存在しない音だから、その声らしきものに音節の区切りはない。
そもそも音らしい意味での音ではない。
例えば、両手で自分の耳を塞いで、海浜のさざめきに似た音がそこから聞こえたとする。
貝殻の虚ろな中身を思わせる響き。
その音を、段々どこまでも小さくしていって、
手のひらと鼓膜を隔てる空気に残された微弱な波紋――そのような残滓の響きがもたらす、音に最もよく似た無音の語り。

 偽物の音
 寄せては返し、寄せては返し、次第にどこまでも伝わっていって、何かをどこかへ連れ帰ろうとする呼び声。
それだけのために生まれた音。耳では聞こえない音。どこにあるわけでもない音。

 そんな音。
 それが、私を呼ぶことがある。
 呼ばれるたびに私はそっと息を潜めて、小さくなって、誰のものかもわからないその声から身を隠そうとする。
 どこから聞こえる音なのだろう。
 きっとその音は、この世界が生まれた瞬間から、何かを求めて広がり続けている。



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