160: ◆8zklXZsAwY[saga]
2017/04/23(日) 20:51:07.07 ID:5HbT9nK2O
下村「あっ」
下村がそれ以上反応を見せるのを戸崎は睨みつけることで抑えた。実験室内の黒い幽霊が永井の感情に感応したのか、研究員の背後へゆっくり近づいていく。研究員は狙いを正確に定めようとこてを持ち上げたまま動かない。黒い幽霊は研究員に近づきながら腕を上げ、手で鉤爪を作るように指を折り曲げた。下村は研究員が引き裂かれると思い、眼をつむった。瞼の裏の暗いスクリーンの中に慧理子の病室での出来事が今このときのようにありありとよみがえる。戸崎の眼は冷徹に前に向けられたままだ。
黒い幽霊が腕を振り抜いた。と同時に幽霊の身体の構成が根本から分解されたのかというように幽霊の節々が瞬時に崩壊し、研究員はそのあおりを食らったが傷ひとつ負うことはなかった。
研究員3「風?」
研究員が室内にも関わらず風が吹き付けてきた現象の原因を求めるように腰をまわして大きく振り返った。しばらくのあいだ部屋の中のあちこちに視線をやったが結局何が原因だったのかはわからない。もしかしたら気のせいだったのでは、と研究員は思い始めたとき、見学室からまたリセットの指示が来た。研究員は気を取り直し、永井の胸部に金属こてを真っ直ぐ突き落とした。
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