203: ◆8zklXZsAwY[saga]
2017/05/16(火) 20:52:14.01 ID:AMJLL1TVO
ドアが開いた。そこから飛び出してきたのは、手術用ガウンを身につけた二人の研究員だった。先頭にたつ研究員は、一刻も早く佐藤から逃げるため振り向きもせず走った。後から出てきた方、手術帽とマスクをつけた研究員は黒のマジックインキのキャップを外した。
研究員2「何してんだ!」
研究員3「約束しただろ」
研究員2「逃走幇助とか……おれは責任とんねーぞ!」
同僚を無視して、マスクの研究員は左手に持ったマジックの先を壁に当てる。キュッというフェルトの擦れる音がして、研究員の走行に従って壁に黒い線が引かれていく。
備品室のなかにいる永井も、研究員たちと同じ方向に後ろ向きでよろめいて、壁に背をつけると膝がかくんと落ち、ずるっと太い赤線を引きながら、はやくも後悔していた。
永井「やめとけば……よかった……!」
脇腹にはブッシュナイフが貫通した傷があり、出血で意識がなくなるのを防ごうと左手と右肘そして壁をつかって三方向から圧力をかけていたが、新鮮で鮮やかな赤い血はゆっくりと壁に広がり、三つの隙間からたらたらと滴が垂れ落ちていっている。
永井「くそ、くそっ! なんでこんな目に……!」
佐藤が目の前に迫ってきた。あからさまにナイフを持つ腕を大きく振りかぶって、気持ちの良い断頭を目論む佐藤の態度は、その振りかぶりといつもの笑みが合わさったせいで、余裕たっぷりにみえた。
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