314: ◆8zklXZsAwY[saga]
2017/07/08(土) 13:33:05.54 ID:8mPTevMeO
いまの祖父はきっとグラスの数が数えられないだろう。グラスは分裂に分裂を重ね、計上できる段階はとっくに過ぎ去り、おそらく万華鏡を覗き込んだときのように乱反射の小宇宙を形成している。アーニャは心配して祖父に近寄ってみる。祖父はがっくりと項垂れ、魅入られてしまったかのようにグラスを見下ろしていた。アーニャはなんだか見てはいけないものを見ているような気分になった。
と、突然アーニャの身体が宙に浮いた。父親がアーニャを抱き上げて、ベットまで連れていく。アーニャは台所から連れ出されるまで祖父から視線を外さなかった。ベットの上にはきれいに折りたたまれたパジャマがあって、父親がパジャマのボタンを外すあいだにアーニャはひとりで服を脱ぐ。パジャマに袖を通し、上のボタンからとめる。手こずってると下からボタンをとめていた父親がアーニャを手伝う。ベットにはいったアーニャは枕に頭を預けながら、自分を見守っている父親に尋ねてみる。
「死ぬってどういうこと?」
「パパもよくわからないんだ」
父親はそう言いながらアーニャの頭を撫でた。父親はアーニャが眠りにおちるまでずっと髪をすくようにやさしく手を動かしていた。やがて、アーニャはうとうとしだし、瞼が重くなってきた。そして、目を閉じて、いよいよ眠ろうとする瞬間、父親がボソッとつぶやく声が耳に入った。
「おまえは決して死なないよ」
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