442: ◆X5vKxFyzyo[saga]
2017/09/25(月) 20:53:31.73 ID:4fkctst+O
ーー午後二時四十分から午後三時。墜落するまでの機内の様子。
午後二時四十分。佐藤によるハイジャックを目撃した客室乗務員はドアまで走り、コックピットの中へ入ろうとする。扉は固定されていて、乗務員ひとりの力ではどうしようもない。しばらくドアと格闘していると取手を握る指の先が真っ赤になり、爪が痛みを訴え始める。乗務員は取手から手を離す。振り返ると、乗客たちが席から身体を乗りだし、自分の方を見ていた。その瞬間、機体がおおきく傾く。ハイジャッカーが旅客機の進路を変更したのだと、乗務員は察知する。
午後二時四十四分。吐き気をこらえつつ、乗務員はハイジャック対策のマニュアル通りに行動しようとする。インカムで同僚の乗務員たちにすぐに集まるように連絡。客室をパニックに陥らせないために数名は残す。次に地上との連絡。機内に備え付けられた地上との交信用の電話を手に取り、ハイジャック発生を航空管制官に伝え、警察や消防への連絡を依頼する。乗務員の話を聞いた管制官がもう一度機内の状況を説明してくれと要求してくる。だから、機長と副操縦士が殺されたんです、と言いながら、相手が一度の説明で十分に理解しなかったことにいらだっていたところで、客室乗務員は自分で自分の言葉に愕然とする。半分開いたドアから見たあの光景。あれが殺人の瞬間だったのだと、いまようやく脳が理解した。受話器を持つ手の震えがいよいよ大きくなりだした。
ほかの客室乗務員たち機体の前方に集まってきた。彼女たちは異変があったことは察しているが、詳しい状況はまだわかっていない。恐怖に身を震わせている客室乗務員を見て、集まった同僚たちも事態の深刻さに恐れを抱き始める。なかでも、現場に出て半年も経たない新人の動揺は大きい。
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