518: ◆8zklXZsAwY[saga]
2017/12/22(金) 23:32:57.24 ID:OBzab0O/O
中野「ざまあ! 登ってやったぞ!」
コンテナの扉まで到達した中野がそらまでの鬱憤を晴らすかのように叫んだ。コンテナの内壁にはなんとか指を半分まで入れ込むことが可能な溝が入口から奥まで直線上に並んで延びていて、中野はその溝に指をかけ梯子を登るようにコンテナの頂上むけて登っていった。
だが、それは容易な行動ではなかった。横に細長い矩形の穴は断面が直角で、身体を持ち上げようと溝にかけた指に力を入れると、直角の断面が容赦なく指の肉に食い込んだ。
中野は朝からそれを何度となく挑戦し、落下して底に背中を打ち付けては、痛む身体を起こし、指の支えだけで再び登るのを繰り返した。何度も何度も登るうちに、指の肉はぱっくり裂け、傷口からの出血はだらだらと遠慮がない。中野はタオルを細く裂いて手に巻き付け、痛みに耐えながら血で滑った矩形の穴に指をかけ、登頂を再開した。落ちては登るを繰り返すうちに縦列に並んだ溝は血だらけになり、鼻を近くに寄せると錆びた金属の臭いに新鮮な鉄くさい臭いが漂っているのが感じられた。
光の届かないコンテナの内部を中野が登り詰めたとき、外では日が暮れなずむ時刻だった。このとき、中野は、正午過ぎから二時頃まで空腹を覚えていたことも、疲労によって身体がぎこちなくしか動かなくなっていることも忘れていた。ただ、外に出なければという意志のみで動いていた。
コンテナの底に置かれたランプ型の電灯から放たれた光彩が四方の壁を照らし、中野の肩から上の部分を巨大な影として、入り口の扉に投影していた。中野はバランスを崩さないように慎重に左手をあげ、コンテナの扉を押し上げようとした。中野の動きに合わせて影も動き、上腕が拡大された影となって扉全体に投げかけられた。
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