新田美波「わたしの弟が、亜人……?」
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781: ◆8zklXZsAwY[saga]
2019/01/26(土) 22:17:18.64 ID:ymR8HEsBO

 戸崎はイヤホンを指で押さえながら永井の作戦を聞いた。歩く速度はゆるめずセキュリティ・サーバー室への通路を下村とともに歩いている。こっこっこっこっ、と足音が壁に反響する。合わせ鏡で無数に増幅された像のように、迷宮的に反響が連鎖していく。

 無線連絡を終えた永井は中野に振り向くと、まだ制御盤の操作を続けていた。永井がスマートフォン取り出しメールを打とうとしたとき、中野が声をかけてきた。


中野「永井、始められるぜ」

永井「わかった」


 永井は喫煙スペースから持ってきた脚部がパイプ製のスツール運びながらもう片方の手でスマートフォンを操作した。大型送風機のまえにスツールを置き、腰を下ろすとテキストを確認しメールを送信した。


中野「誰にメール?」


 背後に立った中野が訊いた。


永井「アナスタシア」

中野「え、アーニャちゃん、ここにいんの?」

永井「本人が言ったんだよ、佐藤と戦うって」


 永井は中野がぐだぐた反対するまえに先回りして言った。それでも中野は納得しきらず、戦闘という行為においてはただの女の子でしかないアナスタシアがこの要撃作戦に参加するのは、本人の意思がどうだという問題とはまた別だと思った。


永井「詳しく聞いてないけど、佐藤のテロで知り合いが死んだそうだ」
 

 中野の懸念を察した永井はだめ押しするように言った。中野の性格を考えれば、こう言っておけば、一〇〇パーセントの納得は得られずとも承知はするだろうと知っていたからだった。事実、中野は押し黙った。アナスタシアのそれは、中野が佐藤と戦う動機と重なるところがあったから。

 永井は中野の無言の承諾を感じながら、ふと、中野とアナスタシアの動機についてわずかな時間、十数秒ほど、思考の何パーセントかを傾けた。



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