799: ◆8zklXZsAwY[saga]
2019/01/26(土) 22:46:06.03 ID:ymR8HEsBO
コーヒーサーバーからカップにコーヒーを注ぐと黒い液体がにわかに泡立った。淹れたてで熱々のコーヒーから湯気があがり、カップの内側を水滴で濡らした。ほんのちいさな一ミリくらいの泡がはじけ、コーヒーの水面が完全に静まり黒い円形として停止すると、佐藤はソーサーにのせたカップを持ち上げ、キッチンから休憩室に戻っていった。
アジトの休憩室は雑然としていた。整理整頓はおざなりで、歩くスペースは確保してあったが、パンの袋やコピー用紙などが隅のほうに放置されたままになっていた。
休憩室を通り過ぎ、ゲーム機のある部屋に戻ろうとしていた佐藤は長机の上に置かれた携帯電話に留守番メッセージが新着していることに気がついた。佐藤はさして考えもせず携帯電話を手にとると、メッセージを再生した。
『佐藤さん!』
奥山の声。焦燥で大声になっている。
『なぜか永井圭がいる!』
メッセージはそのあともすこし残っていたが、佐藤はそれを聞かず携帯電話とカップを机に置いた。カップを置いたとき、中身が跳ね溢れそうになった。コーヒーの波間はやがて落ち着き、そして黒い液体が揺らされることはもう二度となかった。
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