俺ガイルSS 『思いのほか壁ドンは難しい』 その他 Part2
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2019/06/30(日) 01:02:30.19 ID:UuBroTXy0
「 ―――――― あの時?」
小さく首を傾げながら、今しがたの三浦の言葉をそのままなぞるように呟いたその声は、陽乃さんの口から発せられたものだった。
僅かに細められた目は冴え冴えとした冷気を湛え、その瞳から放たれる鋭い視線は ―――――― なぜか真っ直ぐ俺に注がれる。
心の奥底まで覗き込むような瞳に絡み取られる前にと、咄嗟に目をあらぬ方にへと逸らしはしたが、
陽乃「ふーん、なるほど。そういう事、ね」
僅かな顔色の変化から何を察したものか、陽乃さんの口角がすっと吊り上がるのが見えた。
陽乃「 ――― この子も、私達と隼人の家の関係を知っているんだ?」
誰にともなく独り言のように口にされ、それでいて明らかに断定するような問い掛けに、当然の如く答える声は皆無。
だが、言葉の余韻すらも残さずその場に落ちた沈黙こそが、そのまま彼女の求める答えとなっていることは誰の目にも明白だった。
陽乃「あはっ♪ そうだ。お姉さん、いいこと思いついちゃった♪」
それがいかなる状況であれ、この女性(ひと)が今のようにとびきりの笑顔を浮かべた場合、大抵は碌でもないことを言い出すに決まっていた。
その証拠に彼女をよく知る葉山がそっと眉を寄せ、雪ノ下も「またはじまった」とばかりに小さく頭(かぶり)を振りながらひっそりと溜息を吐く。
はたせるかな陽乃さんは常よりも紅く濡れたように艶を帯びたその美しい唇から、柔らかく、甘く、優しい声音で、喜々として残酷な言葉を紡ぐ ―――――
陽乃「 ――――― だったらいっそのこと、隼人がこの場で誰を選ぶか決めちゃえばいいじゃない」
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