351: ◆MOhabd2xa8mX[saga]
2020/01/17(金) 22:15:46.21 ID:bHG4HFzAO
 仕草の一つ一つ、体の挙動はステージの上で観客を魅了するには必要だと思う。 
  
 この人のギターは格好良い。 
  
 男「副部長、ただ立って演奏するだけでは足りませんよ。この人を見習ってください」 
  
 ギター「お前もな」 
 男「俺はこのバンドではボーカルなので片手間で教わる事になってしまうと言うか……」 
  
 ギター「は?てかお前声からして男性だよね??そうだよね?なんで女の格好してんの?」 
  
 男「着替えるのが面倒で」 
  
 ギター「相変わらず変なやつばっか集まってんな〜自由天文部」 
  
 ギター「でもな、“男”ならギターもボーカルもこなして見せろ。2人まとめてかかって来いよ」 
  
 男「……頑張ります」 
  
 副部長「凄い!ギターさんは凄いっ!」 
  
 副部長「2回しかミスしなかったし全然気にならなかったなー」 
  
 ギター「……」 
  
 副部長「でもどうして10分って言ったのに9分しか演奏してないの???」 
  
 男「え?本当に?」 
  
 そもそも副部長はどうしてミスの回数と実際の演奏時間を把握出来たのだろうか、そこまで細かく人を見るキャラクターだったか? 
 今まで本性を隠してきた節はあるけれども、会長達と演奏をした時も同じように気付いて居たのだとしたら腹立たしい事ではある。 
  
 ギター「お前、見所あるよ」 
  
 “ギターさん”は明らかに苛立ちを見せている、自分を上に見せたい気持ちは当然あるとしてもここまで見抜かれていたのだとしたら教える気も失せてしまうだろう。 
  
 ギター「未だに下手くそなのが理解できねーよ」 
  
 本音と反撃だ、初対面同然の後輩にそこまで言うのは大人気ないだろう。 
  
 副部長「……」 
  
 副部長「――私だったら6分も持たないし数えきれない程のミスをする」 
  
 副部長「だから……教えて下さい」 
  
 副部長「これ以上は下らないプライドと承認欲求の狭間で泣きたくない」ツ-ッ 
  
 副部長の頬に涙のが零れる、化粧も何もしていないであろう肌には分かりやすく雫の道筋が残っていた。 
  
 副部長「今の私にとってこれ以上にないチャンスだと思ってます……」ポロポロ 
  
 彼女の涙はもう止まない、枷が取れたかのように涙が溢れ出してしまった。 
 折角の魅力的な顔もこれでは台無しだ。 
  
 ここまで考えている人間に対して俺は言いすぎてしまっていたのだ、本当に悪い事をしてしまっていたとの罪悪感が俺自身の奥底を締め付ける。 
  
 副部長「いつかきっと必ず、何をしても授業料を返すから教えて下さい、私にギターを教えて下さい」ポロポロ 
  
 ギター「ヘラヘラしてると思ったら……」 
  
 ギター「次」 
  
 副部長「……はい」ポロポロ 
  
 副部長は涙でぐしゃぐしゃの酷い顔で“ギターさん”の呼び掛けに対して睨み付けるように答えた。 
  
 ギター「ロック・スターが終わった後に泣いたら許さねぇからな」 
  
 ギター「全力で教えてやる」 
  
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