94: ◆AZbDPlV/MM[saga]
2026/02/09(月) 17:08:22.01 ID:GoST3vuW0
「風呂に入れなければならないな」
私はホームセンターに寄り、シャンプーとブラシを購入していた。シャンプーだけ浴室へ持ち込み、使用する際に手にし易いだろう場所に置くと部屋へ戻る。濡れてもいいように上を脱いで薄着になり、髪をアップに束ねれば、リュウを入浴させる準備は万端だ。蛇口の栓を捻り、水を温める間にリュウを浴室へ連れてくれば、洗うまでの流れもスムーズだろう。水が流れる音を背に浴室を出て、ゆったりと毛繕いをしていたリュウの元へ歩み寄る。
「リュウ、入浴するぞ」
(さて。猫は水を嫌うというが、リュウはどうだろうか?)
大人しいリュウを抱え上げ、浴室のタイルにリュウを離すと、水の音の方向に耳を向けてちょこんと座りこむ。ああっ!! 可愛いッ!!!!
心を乱してしまいながらも、出し放している流水の温度を確かめ、適温を探り当てると、シンクの栓をして湯貯めのスタンバイをしてからようやく、洗面台のシンクにリュウを乗せる。湯に触れてもリュウは大人しい。むしろ気持ちが良いのか、眼を細めている。
(ど、動画ッ!! 動画に収めねばッ!! いや、しかし、ストレスにならないように早く済ませ……あああああッッ!!)
私の脳内で煩悩と理性が刀を抜いて鍔迫り合いを繰り広げていた。その葛藤の末に私が選んだ答えは────
「リュウの初めての入浴だからな! これは記録! そう! 記録なのだ!!」
私は存在しない何者かに向けて言い訳をしながら、リュウの入浴を撮影することにして、洗面台に貯めた湯をリュウの身体全体に満遍なくかけていく。毛が濡れると、当然ではあるが、徐々に猫らしいシルエットのボリュームが減っていき、もふもふ感が消えてしまった。
「まずは、毛を濡らして……ふふっ、毛がペタンとなって、別の生き物みたいだな。それに……」
身体が温まったことで眠気に誘われたのか、リュウの眼は完全に閉じてしまっていた。
「んんん……っ! まったりとしたこの表情……っ!! あまりにも可愛い過ぎるっ!!!」
リュウの可愛さに震えながら、ペット用シャンプーの液を手に取り、ある程度手の中で泡立ててからリュウの洗毛をはじめる。
「どうだ、リュウ。気持ちイイか?」
リュウ 「ナーゥ」
「そうか。それなら良かった」
どんどん泡まみれになって、リュウはまた別の生き物に変わる。この姿もまた愛らしい。始終嫌がらずに洗われてくれるリュウに、私の心も暖まる。
一頻り洗毛を終えたら、痒みやできもののような、皮膚に異常を出さないようにするため、泡の濯ぎ残しがないよう入念に泡を流し落としていく。
「こんなモノかな……」
毛にたっぷりと湯を含んでずっしりと重くなったリュウをタオルに包んでワシワシと水分を取っていく。これからドライヤーで乾かし易くするための大事な行程だ。皮膚への負担は洗い残しだけではない。生乾きもまた痒みや臭いの原因となるようだからな。私の不手際でリュウを苦しめることがあってはならない。
用意していた新しいタオルでリュウの全身を覆っておくるみにする。私はその赤ん坊のようなおくるみ姿の堪らなく可愛いリュウを抱えて、カメラ前でばっちり記録に残してから、ホクホク顔で部屋へと戻った。
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