永琳「あなただれ?」薬売り「ただの……薬売りですよ」
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779:名無しNIPPER[saga]
2023/01/07(土) 20:31:12.44 ID:G+zmOxss0

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(……きっかけは、ただの御戯れだったのだと思う)


 姫様は、自他共に認める御戯れ好きなのは周知の事実です。
 なんでもかんでも遊びに変えてしまう姫の心構えは、見る者次第で批難と称賛とを延々と繰り返します。
 ですが、誰に何を言われようと、その声が届くことは無かった…………どちらに転ぼうと、姫は姫であり続けるからです。


(姫にとって、全ては巨大な玩具箱…………だから、何の躊躇もなく触れる事ができるのだろう)


 しかしそんな、大変に戯れ好きな姫でも、唯一人だけ例外がいました――――それが”私”。
 姫は、私に限り御戯れを仕掛ける事はありませんでした。
 実に単純な理由です。姫にとって、私の反応は至極「つまらない」物だったから。それ以外にありません。


(同時に、捨てる事も)


 そうです。私の対応はいつだって”完璧”だったからです。
 姫が望むのは、与えられた課題に対し、時に苦しみ、時に希望を見出しながら、相手が如何様に答えを導き出すかを眺める事。つまりは「過程の観察」にあると思われます。
 しかし私にそんなものはありません。何の苦悶もなくただただ正解だけを叩き出す私の姿勢は、その実姫の望みを叶えられていないのと同義。
 逆説的ではありますが、常に満点を叩きだす私の解答は、姫の目線に限り、見込み無き零点であり続けたのです。


(その対象は、自分自身にまで及ぶ)


 そんな姫が、私にだけ仕掛けてくる御戯れ――――否、それはもはや戯れと呼べない。
 言うなれば『対私用計略遊戯』とでも言いましょうか。
 姫が私に戯れを仕掛ける時。その時に限り、戯れは大きく意味を変えます。
 それは――――”絶対的な意思を押し通したい時”。つまりは”我儘の力”となるのです。


(あの時と一緒だ)


 そして…………御恥ずかしい限りですが、私は、姫の我儘を一度も抑えきれた事はありません。
 だって、そうでございましょう? 
 私が完璧な解答を示す事。それこそが姫の謀の要点であったなら、その時点で、抗う術など露に消える事になるのですから。


(いまはとて 天の羽衣着る折ぞ 君をあはれと 思ひ出でける)



(いまはとて…………………………………………)


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