【デレマス】「先輩プロデューサーが過労で倒れた」
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3: ◆Z5wk4/jklI[saga]
2017/05/01(月) 21:23:05.53 ID:z+wGLY660
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「……い、おい、寝るな、起きろ、おい」

 ――耳元でささやくような声がする。

「んがっ……」

 口元から無意識の声が漏れたのと同時に、俺は現実に引き戻された。はっとして顔をあげる。まわりの何人かがこちらをとがめるような目で見て、すぐに視線を外した。
 横にはあきれ顔の同僚の顔があった。片手で『悪い』と礼をして、俺は形だけ姿勢を正す。どうも、会社の会議中に居眠りをしてしまっていたらしい。
 照明が落とされ、暗くなった会議室。前方のスクリーンには、今期の社の収益や今後の方針を説明するプレゼンテーション資料が映されている。
 美城プロダクション、アイドル事業部。それが俺の所属する会社と部署の名前だ。多数の芸能人を抱える、日本でも有数の芸能プロダクション。
中でもアイドル事業部は、いまもっとも業績を伸ばしている花形部署だった。百名を超えるアイドルが所属し、いまもなお拡大中。業績も年々、それはもう経営陣の笑いが止まらないほどにめざましく成長し続けている。――俺の頑張りなんか、なくても影響がないくらいに。

「以上のように、アイドル事業部としては今後も、新人アイドルの発掘と、プロデュース、イベントの開催に力を注いでいく方針であり――」

耳の端っこで発表者の話を聞きながら、手元の会議資料をぱらぱらとめくり、居眠りして聞き逃した箇所を追いかけるふりをする。会議なんてものは、出席したという実績さえあればいい。
俺の立場は『アシスタントプロデューサー』だ。大仰な名前がついているが、要は敏腕な先輩プロデューサーの御用聞きをしていれば、一定の給料が約束される立場。部署の方針を聞いていてもいなくても、俺の仕事にほとんど影響はない。

「それでは、方針は以上、最後に諸連絡だ。病気休暇の者が出た関係で、一部人事を臨時に変更する。過労だそうだ。まったく、上層部が休めといくら言っても働き続けてこのざまだ、仕事好きなのは結構なことだが、倒れられて責任を取る立場にもなってもらいたい。――各自、休暇は適切に取得するように」

 上司の愚痴を聞きながら、俺は資料を閉じた。
 眼前に表示された、変更された人事のリストを見る。

「――は」

 思わず、声が漏れた。
 過労で病欠になったのは俺の先輩である敏腕プロデューサーで、その穴を臨時に埋めるプロデューサーの欄には、俺の名前がしっかりと書かれていた。



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