【デレマス】「先輩プロデューサーが過労で倒れた」
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5: ◆Z5wk4/jklI[saga]
2017/05/01(月) 21:29:36.96 ID:z+wGLY660
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 俺は病気休暇になった先輩プロデューサーの机を片付けていた。
 乱雑に詰みあがった書類の山の高さが半分になったあたりまで片付けて、ようやく俺は先輩の現状を把握することができた。
 先輩は病気の直前に大きな仕事をあらかた片付け、いまは新規ユニットのプロデュースに集中するための準備をしているところらしい。
 上司にも確認したので間違いはない。

 先輩が復帰するまで、それとなくこなしていれば、なんとかなるだろう。
 そう考えた俺は、ひとまずすべきことの整理をしておくことにした。

「……ユニットの資料は……これか」

 口のところに刺繍のようなデザインの入った、白と青の社内の普段使いの封筒を開く。
 中からはユニットの企画書と、プロフィールシートが数枚。まずは企画書に目を通す。

「ユニット名……未定、メンバーは五人……弊社所属歴の浅いアイドルと新たにスカウトしたアイドルで、これまでの美城にない新鮮さ、斬新さをアピール……」

 一見すると中身のないあやしい文句だが、先輩にはそれを押し通すほどの実績がある。
 このような文章でも、上層部なら先輩を信用してGOを出すだろう。
 先輩はプロデュースするアイドルたちの特性を察知し、きっちりとユニットとしてまとめ上げてしまう。

 企画書にはアイドルの名前が並んでいた。プロフィールシートと同じアイドルだろう。
 アイドルの名前はあとでプロフィールとあわせてみることにして、先に概要を把握することを優先した。

「……レコ発ライブイベント……この時期ってことは、次のフェスに出すことを想定してるのか……ん」

 プリントされた文字の横に、手書きでメモが書かれている。

「……会場、作編曲者、確保済み……」二度読み返す。「……もう、ケツが決まってるってことか」

 小さく溜息をつく。

「そのほかは……」

 スケジュールをチェックしていくが、ほかに動かしがたいものはなさそうだった。
 プロフィールシートを見ていくことにする。封筒からそれらを取り出そうとし……

「……う」

 思わず、眉間を押さえた。取り出そうとしたシートがきらきら光ってるかのように錯覚したのだ。
 俺にも疲れが出ているのかもしれない。今夜は早めにあがろう。体は資本だ。

 あらためて、封筒の中身を取り出す。社の所属アイドルに使用する書式のシートが三枚と、オーディションの際に使用される書式のシートが一枚。

「まずはうちの所属アイドルから……上条春菜……」

 Tシャツを着て、ピンクのセルフレームの眼鏡をかけた少女だった。
 セミロングよりやや短いくらいのストレートの黒髪で、素朴な印象を受ける。
 シートのアピールポイントには何度となく『眼鏡』の文字が登場し、そのどれもがわざわざ太字にアンダーラインで装飾されている。
 本人のこだわりなのだろうか。

「で……、関裕美」

 プロフィールの写真は不安げな表情でカメラを見つめている。
 強くウェーブのかかった豊かな栗色の髪は上条のそれとは対照的だった。
 額を大きく見せていて、少女らしく明るい印象を狙いたいのだろうが、表情が硬いのが難点といったところだろうか。
 先輩ならうまく彼女の魅力を発揮させられるのだろう。

「白菊ほたる」

 三枚目の写真は、幸の薄そうな色白の少女だった。
 関裕美よりもいっそう不安げ、いやこちらは『不幸そう』といったほうがいいかもしれない。
 写真はゴシック調のグレーの服を着ているが、表情のせいでまるで喪服のように見える。

 プロフィールシートを机に並べて、俺は唸った。

「……この三人を、先輩はどうプロデュースするつもりだったんだ?」

 思わず口をついて出たが、先輩の考えなんぞ悩んでもわかりっこない。
 俺はオーディション書式のシートを見る。

「荒木比奈……んんー?」

 シートの写真を見て、声が漏れた。写真に写っているのは、ジャージ姿で髪もぼさぼさの眼鏡をかけた女。
 写真から推察するに、どうもメイクを一切していない。写真の表情は不安や不幸などではなく『不満げ』なレベルだ。

「芸能部門の書類が紛れ込んだのか?」

 芸人や役者部門なら、役どころによってこういう応募もありえなくはない。
 俺は書類のタイトルを確認する。しかしそこには、確かに『アイドルオーディション応募シート』と書かれている。

 俺はもう一度企画書を引っ張りだし、ユニットメンバーを読み返す。
 そこにも『荒木比奈』としっかり書かれていた。



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