285: ◆vVnRDWXUNzh3[saga]
2017/05/31(水) 01:40:33.37 ID:qbOhevfD0
便宜上【軽巡棲姫】と呼ばれている“彼女”は、初めて感じる得体の知れないものに戸惑っていた。
【全の意志】によって与えられる機械的な憎悪とは違う、「自分の身体の中」からせり上がってくるような奇妙な衝動。命令に忠実に、思い描いたとおりに人類に襲いかかる同胞達が、しかし彼女の思い描いた光景を造ることは出来ず跳ね返され、沈められていく様を目の当たりにしてわき上がってくる不快な感覚。
“彼女”は、脆弱なくせに頑強に抵抗する眼前の人間達の姿に、明らかに苛立っていた。
『………』
忌々シイ。
実際に言葉にこそしないが、眇められた彼女の眼がその“感情”を雄弁に語る。
言ってしまうなら非効率的な、しかし看過してしまうことが出来ない【個の意志】に基づく苛立ち。彼女は歯噛みし、地団駄を踏み、長く垂れた髪の奥から東の空を見上げる。
腹立タシイ。
無駄ナ足掻キヲ。
鬱陶シイ。
聞こえてくる同族のものでは無い砲声が、人間共が上げる歓喜と鼓舞の雄叫びが、空を飛び回る鉄の塊が。
全てが、“彼女”の精神を逆なでする。
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