美玲「To give you」ありす「Answer」
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9: ◆S6NKsUHavA[saga]
2017/05/30(火) 23:53:20.80 ID:McTk8PE80
 話のつながりが見えないありすは、困惑の声とともに目を白黒させる。

「ど、どうしてさっきまでの話の流れからそうなるんですか!? それに、さっきも言いましたけど、初対面でそんな」
「ダメかッ!?」
「だ、ダメって言うか、その、そう言う問題じゃ……」

 強まる美玲の勢いに押され、ありすは一歩後ずさる。彼女が何を言っているのか、何を求めているのか、ありすには全く分からなかった。いきなりやってきて「自分と向き合ってない」などと非難したかと思えば、その非難した相手に一緒に歌ってくれと言う。彼女で無くても理解しがたいと思っただろう。
 妙な緊張感だけが高まる中、一緒に来てまだ一言も発していない小梅が、心配そうな表情で美玲の袖を引っ張った。

「美玲ちゃん……もう少し順番に話さないと、ありすちゃんも混乱しちゃう、よ」
「え、あ……ゴメン。ちょっと突っ走りすぎた……」

 そう言って素直に一歩引き下がる美玲に、ありすはほっと胸をなで下ろす。「ゴメンね」と一礼して遅れた自己紹介をする小梅に、冷めぬ混乱を振り払うようにして、ありすは挨拶を返した。
 若干興奮した状態を深呼吸で整えてから、美玲は改めてこれまでの経緯を話した。今回の宮城公演が美玲にとって地元への凱旋ライブになる事。ユニットの欠員のため、一緒に歌ってくれる仲間を探していたこと。新曲『∀nswer』にふさわしい人選を望み、そして、友紀や周子を通じてありすへと繋がったこと。
 その上で、美玲はもう一度ありすに話した。

「ウチはこの歌が、少しでも誰かが自分たちのカラを破るための力になれれば良いと思ってる。それは、この歌を聴いてくれるファンにも、それに、この歌を歌ってくれるヤツらにも」
「カラを、破る……?」
「そうだッ! 限界を超える、って言っても良い」

 美玲はそう言って、友紀の時と同じように眼帯を外して見せた。彼女の普段の姿を知らないありすにとってそれがどういう意味かは分からなかったが、ここへ来て初めて見せた彼女の両目は、しっかりと迷い無く前を見据えているように見えた。

「ウチは、自分に自信のない弱い自分を、この眼帯とか、爪とか、そう言うので隠してるんだ。けど、この歌を歌うとき、ウチはいったん眼帯も爪も外す。臆病だった自分と、向き合うんだ」
「臆病な自分と向き合う……」

 反芻するありすに、美玲は言う。

「シューコから聞いたぞ。アリスは、自分の名前にコンプレックスがあるって。だから、クール・タチバナとかって自分の名前を誤魔化すんだろ?」
「ちょ、そんなに何度も言わないでください! それに、別に誤魔化してるわけじゃ」
「じゃあ、ウチと話すときだけでいいから、アリスって呼ばせてくれ」
「それは……」

 言い淀むありすを見据えながら、美玲は先を続けた。




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