雀明華「スタンド・バイ・ミー」
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28:名無しNIPPER[sage]
2017/06/16(金) 19:12:09.79 ID:C7mt4QM40
私は先ほど買ったヒョットコのお面を装着し、りんご飴をペロペロ舐めながら一人でぺたぺたと歩きます

それにしても、舞々堂もかくやというほど面白そうな露店で満ちています

たこ焼きや焼き鳥、おっきな綿菓子の露店は私の食欲を刺激し、金魚すくいやお面、動物のオモチャの露店は私の好奇心を刺激しますーーーーーー動物のオモチャ?

「あら、久々津さんにネモさん」

動物のオモチャの露店を開いていたのは、一昨日公園で出会った人形師の久々津さんと語り部インコのネモさんでした。相変わらず久々津さんは紺色の浴衣に布で口を覆い、ネモさんは凛々しい顔をしています

『おや、風神のお嬢さんではないか』

ネモさんは私の事を覚えてくれたいたようです。鳥頭というわけではなさそうですね

久々津さんは相変わらずの無言で私に会釈をします

「ネモさん達もお祭りに出ていたんですね」

『うむ。夏祭りというものはいい。香具師がそれぞれの出すことのできる最高のものを披露し並び立つ事で、祭りの一体感を作り出す。そして祭りの参加者たちは露店を眺め歩きながら、日本の夏を堪能するのだ』

相変わらず饒舌に滔々と語るネモさん

私は周りの露店を眺め廻します

浴衣を着た人たちが和気藹々と食べ物を買ったり遊戯に耽り、その楽しそうな姿をお店の人たちは満足そうに眺めています

そういえば、ネモさんも久々津さんも、一昨日は人形のカラクリを私に披露してくれました

どうやら、職人というそういうものらしいです。皆んなを愉しませるのが好きなのです

すると、小さな子供がこっそりと久々津さんの背後に近寄りました。久々津さんもネモさんも気付いた様子はありません

「えいっ!」

掛け声と共に、子供は後ろから久々津さんの布を剥ぎ取ります

「こらっ!」

私が怒ると、子供は一目散に逃げていきました。どうやら夏祭りの熱気と興奮は、いたずらっ子の悪事も助長するようです

しかし、そんな事はどうでもいいです

布を剥ぎ取られ慌てて地面に落ちた久々津さんの素顔を見た時、私は気付いたのです

彼の顔はーーーーーー絡繰覚書の最後のページの写真の、左に写っていた男性にソックリなのです

「あの、この人に見覚えはありませんか?」

布を拾い口元に巻いてようやく落ち着きを取り戻した久々津さんに、私は絡繰覚書を取り出して写真を見せます

写真を見た久々津さんは、目を見開きます

『この男性は、久々津の曽祖父、道家 界雷(どうけ かいらい)だな』

ネモさんが解説します

確か久々津さんの道家家は、代々カラクリ技師でした。つまりーーあの辻垣内邸の洞窟のカラクリを作ったのは、この写真の左側の男性、界雷氏なのでしょう

久々津さんが、懐から写真を取り出し、私に見せてくれてます

それは人形を抱いた彼の曽祖父、界雷氏の写真でした

しかし私が注目したのは、彼が抱いている人形です。なんとその人形は、先日私が手に入れた人形。紫蓮人形なのです


財産を隠した月神小太郎
辻垣内邸のカラクリ仕掛けの洞窟を作り出した道家界雷
彼の抱いた人形と、金剛力士像の人形の文字
他国を渡った辻垣内時永と、様々な国を知らなければ解けないカラクリ


全てが一つに繋がりました

彼ら三人によって隠された埋蔵金

その計画が、この絡繰覚書だったのです



その時、空気を震わせる大きな音がしました

振り返ると、破裂音と共に夜空へ大きな花火が開きました

暗い夜空へと咲く花火に、私は無言で見惚れます




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