70: ◆saguDXyqCw
2017/06/18(日) 21:45:51.87 ID:5UUNa7QZ0
くみちーは、自慢げに微笑んだ。
指は滑らかに、そして力強く音色を生み出していく。
サビを終えたところで、余韻を残すように鍵盤を押さえてから、じれったそうに指を離した。
「どう?」
「凄いよくみちー!」
拍手をした私に、照れくさそうな笑みを浮かべた。
「良く弾けるね。アドリブってやつ?」
「まさか。暇な時に練習してたの」
「他にも色々弾けたり?」
「もちろん」
次に弾いたのは響子ちゃんのソロ曲だ。サビの部分だけ弾いてみせてくれた。
「それから……これもね」
そして、指が奏でだした。跳ねるような出だしに、私は嬉しくなる。
私の歌、『ミツボシ』だった。
元気いっぱいなんだけど、どこか穏やか。
ピアノだからそう聞こえるのか、くみちーがそう弾いているのか。
体が自然とテンポを取り出す。
それを予期していたかのように、くみちーが私に振り向いた。
誘うような表情。私も笑みを返した。
メロディーに合わせ、私は歌い出した。ピアノの音色はいつもよりゆったりテンポ。
私も気軽に歌う。散歩中、ちょっと口笛を吹くように。
それが初めてだなんて思えないほど二人の呼吸はぴったりで、サビまで歌いあげた。
今度はくみちーが私に拍手をしてくれる。
答えるように両手を上げてから、壁際の椅子を客席に見たて、くみちーを紹介。そして私も拍手を送った。
それからなんだかおかしくなって、二人で笑い合った。
「舞台、三人で立てるといいね」
くみちーの言葉に、私は頷いた。
「立てるよ、絶対。私たちなら」
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