女「犠牲の都市で人が死ぬ」 男「……仕方のないこと、なんだと思う」
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名無しNIPPER
[saga]
2017/09/08(金) 20:22:21.35 ID:c9qxGCK40
「この都市の秘密はそれだけ?」
「いえ……もう一つあります」
「なに?」
「この政治は幼少期から専門の教育を受けた議員によって動き、王が決定を下します。大まかな方向はすべて王によって決められ、実質の独裁です。ここまでは知っていますよね?」
「はい」
「王は飾りです」
「……え?」
常識外のことをなんども話された。しかし、この話はその中でも特におかしかった。
「王は『誰か』から指示を仰いでいます。ここからは憶測ですが、王がそれに逆らったことがないのが不自然です。歴代の王は非常に人道的な方、あるいは逆の方もおられました。しかし、明らかにその『指示』に不満を覚えているように見えても、逆らおうとはしませんでした。昔は『誰か』が政治を支配していたのを議員は知っていました。しかし、長年の王の支配のせいで、その事実を知るものは少数ですし、選べと言えば王につく方が多いでしょう。ですが、愚直なほどに王は『指示』に従います」
不確定な情報を話してしまい申し訳ありません、とメイドの女は詫びる。こんなことまで話す意味はなんだろうか? もはやこれはある種の不敬罪になりうるというのに。……まあ、そこらへんに対応する法が、なにかあるのだろう。
……卓也が、弟が政治体制が変だ、と言っていたのを思い出す。これ以上先はメイドもしらなそうだし、実際どうなっているのだろう?
「変な話ですね」
「たしかに、この都市はなにかしらが特殊です」
メイドとはいろいろなことを話した。……犠牲についても、話した。
「あなたは非常にまれな魔力の質を持っています。あなたはいままでの犠牲者五人分の魔力を犠牲の装置に供給できるでしょう」
「……私が自殺したら?」
メイドが私の目を覗き込む。ほんとうのことをいっていいんですか、という表情。
私は頷いてそれに答えた。
「現在、犠牲になれるものの候補が不足しています。あなたがいなくなれば次に犠牲になるのは十にもならない少年です。しかし、彼では五年ほどしか持たないでしょう。その次も子供です。少年の犠牲を考えると年は十一を過ぎた状態で犠牲になるでしょう。彼は四年しか持ちません。あなたは二百年持ちます」
それを聞いて、震えた。「ここまで候補がいないのも異常な事態なのです」とメイドは付け足す。
私一人が犠牲になれば、数十単位で人が犠牲にならなくて済む。どちらにせよ、私は逃げられる状態ではなかった。メイドの言葉はせめてもの抵抗に私が自殺しないための嘘かもしれない……とは思わない。彼女はいままですべて本当のことをいっている。そう感じた。確かに根拠はない。でも……。
嫌になって考えるのをやめる。どうせ意味がないのだ。余計なことを考えて苦しみたくない。
せめて、と考え、この場所の娯楽を堪能した。見たこともないもの、普通に暮らせていたら経験できなかったであろうことをたくさん経験した。……だけど。
私は普通に暮らしたかった。彼と一緒に笑って、手を繋いで。彼の困ったような顔をみて、満足そうな顔をみて。それらすべては、もはや絶対に叶わないものだ。……考えてはだめだ。胸が、苦しくなるだけだ。
私はひとり、綺麗な景色を見つめていた。でも、ここに彼はいない。
メイドには近づかないように言っておいた。といっても、自殺しないように見張りぐらいはついているし、それが可能な道具に私が近づけば、きっと彼女はここに来る。
目頭が熱くなる。私は、死ぬのだ。なんでこんなことになっているんだろう? 彼さえいてくれればよかった。多くは望まなかった。
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