女「犠牲の都市で人が死ぬ」 男「……仕方のないこと、なんだと思う」
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名無しNIPPER
2017/09/09(土) 23:09:19.49 ID:43vqk7Yd0
三番が手を挙げる。
「いいえ違います。それはあくまで僅かな可能性の上昇のためにそこまでするのは合理的ではありません。実際、適当に考えて十パーセントほどの成功確率の上昇が見込めるならそうするぺきでしょう。しかし、そうではないのなら、生き延びる人数の期待値が目に見えて高い後者の方法をとるべきです」
まったく反対の、しかし状況をうまく分析した意見がでた。どちらを選ぶべきか、その答えは明確だ。組織のために、ここにいる人たちは地表の探索に来た。命を捨てる覚悟はできている。
しかし……。
「おまえたち、本気か?」
隊長と卓也はは静観し、残りの隊員たちが選択をする。二番を除いて、みな後者の選択を選んだ。
「俺たちは私情のためにきたんじゃないんだぞ……? 俺たちのために人が死んでいる。なのに、お前たちはそうするのか?」
二番の言葉を隊長が制止する。
「二番、決まったことだ。一度決めた約束事は覆せない。こんなところで決められた約束事は法と一緒だ。一度破れば取り返しがつかない。諦めろ」
「……! わかってますよ、それぐらい……」
誰しも、命を積極的に捨てたくはない。確かに、みんな覚悟はしていたのだろう。
だが、選択肢としてそれが吊るされたなら……?
彼らは自殺願望者ではない。あくまで地表という未知のために狂った冒険家だ。可能ならば死にたくないに決まっている。
きっと……彼女のことがなければ僕は前者の選択肢を選んでいただろう。重んじなければいけないものがある以上、二番の言う通り、私情の一切を捨てなければならない。それが僕の生き方だからだ。まあ、彼女のことがなければここにはいないだろうが。
「進もう」と隊長が宣言する。
そして何時間もの時間がたった。ワイヤーも、出発地点も、見つからなかった。真っすぐ帰れているのならもうとっくについているはずだった。
何度か方向を変えたり、そういうことをし始めるようになる。
こんな道、来るときは通っただろうか、と思う。
足場が悪い。進みずらい。でこぼこしていて、足を取られる。
最初に来るときは終始違和感を感じていて、それどころではなかったのかもしれない。だが今思えば、ところどころにこのような歩きにくい場所があったのなら、僕たちは最初から真っすぐ進めていなかったのかもしれない。
さらに時間は過ぎていく。トカゲを見る頻度が多くなった。蛇のような生物もなんどか確認している。
皆、それに大した反応はしなかった。一応警戒するだけだ。
気力などとうにない。だが生き延びなければならない。その一心で足を動かした。
きっとみんな気付いている。どうせ今していることは無意味だ。どうせこのまま死ぬ。もう未来も希望もない。
そして僕らが地上に上がって二日半、体調の不調を訴えるものが出始めた。
「この防護服は三日持つ、との話だったが」
ぽつりと、隊長が呟く。
もともと不確定要素が多い探索だった。起きても仕方がないハプニングともいえる。一番と三番は見るからに顔色が悪い。
「歩け、でないとおいていく」と厳しく隊長は言う。
誰もそれを咎めなかった。そうするほか、ないのだから。
不調の者も体を引きずって、追いかける。最初に脱落したのは三番だった。
「……おいていかないでください」
誰も返事をしない。卓也が僕を見た。なんとかしてやりたいと、きっと思っている。しかしその後、彼は首を振る。諦めなければならないと自分で理解したのだろう。卓也は現実が見えていないわけではない。
三番が一番を見る。一番は顔をそらした。
「進もう」と隊長が言う。
五人の集団が砂漠を渡っていく――。
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