【モバマス】カワイイボクらは斃れない【アニデレ】
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27: ◆ZDnQS3y4DE[sage]
2017/09/10(日) 22:37:36.48 ID:RU5x15+CO
 幸子は常務にとって、自分が無視できない存在になったと確信を得た。それだけで十分だった。

「……君のイメージは我が社に重大なダメージを与えかねない。」

「……は?」

 そのため、次に常務の口から放たれた言葉に、幸子は動揺を隠せなかった。

「君は世間から自分がなんと呼ばれているかしっているかね?」

「そ、そりゃもう、世界一カワイイアイドルとか超絶カワイイ幸子ちゃんとか……」

「不死身のアイドル、346のおもちゃ、スタント売女、私が見たところ、そういったあだ名が多かった。」

 もちろんこれがすべてではない事を常務は知っている。しかし、悪評は好評より声が大きいのも事実なのだ。

「世間は我々が君を見世物小屋の獣として扱ってる。もしくは、君が自分の生命を売り物にして仕事を稼いでると思っているようだ。」

「ボ、ボクはそんな事!」

「解っている。君の実力は本物だ。私が胸を張って保障しよう。」

 これは常務の本心だ。アイドルとしての実力はもちろん、人を巻き込む力や相手の利益を基準に会話のできるビジネス力は、プロデューサーとしても大成できるだろう。

「……常務にはボクがそう見えたのですね。」

「だが、タレントにとって世間のイメージは絶対だ。根も葉もない噂なら耳を傾ける価値などない。しかし、危険なスタントや体を張ったバラエティーの仕事は君の人気に少なからず影響している。」

「それはボクがカンペキに仕事をこなしているからです。」

 幸子の言葉はいつしか動揺は薄れ、とても落ち着いた、しかしひどく冷たいものになっていた。

「仕事そのものの質を話してる。君のスタンスは仕事を選ばないことのようだが、仕事を選ばなければ自分の経歴に大きな傷をつけることになる。もっとも、これは君ではなく君のプロデューサーにいうべき

 常務の台詞は幸子が机を叩いた大きな音でさえぎられた。

「ボクは人前に出して恥ずかしい仕事をした覚えなどありません!どんな仕事も胸を張って自慢が出来るようにカンペキにこなしています!」

「き、君の仕事にケチをつけるつもりは、」

「では、あなたはネットに転がってるくだらない嫉妬や僻みからでた戯言を鵜呑みにしたんですね?楓さんや夏樹さんがあなたの仕事を蹴った理由がよく分かりましたよ!」

 幸子の怒りの前にもはや常務の発言は許されない。

「ボクはてっきりちょっと人気が出たアイドルが勘違いして、わがままが通らなかったから逃げ出したのだと思ってました。プロならば多少自分を押し殺してでも与えられた仕事をカンペキ以上にこなすべきだとおもってましたよ。」

「ですが、あなたをみて解かりましたよ、あなたの言うとおりプロならば仕事を選ぶべきですね。」

「楓さんも夏樹さんも涼さんも正しかった。」

「あなたの仕事を受ければそれこそ経歴に傷がつきますよ!」

 幸子は常務を睨みつけると踵を返して、執務室の出口に向かった。

「…………私はこのプロダクションを任された立場だ、このプロダクションを守る義務がある。」

 常務が呟いた言葉にドアノブに手をかけた幸子が返事をする。

「哀れなものですね、あなたはなぜ常務になったんです?」

 幸子の問いかけに常務は答えられない。

「このプロダクションのほぼすべてを自由に出来る立場に居るのに、その立場にがんじがらめに縛り付けられてあなたは自分の意見も通せない。」

「手段の為に目的を捨てるつもりですか?今のあなたはとても間抜けに見えます。」

 ドアの締まる音がして、執務室に静寂が訪れた。


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