26: ◆97Mk9WqE8w[sage saga]
2017/09/07(木) 21:25:59.20 ID:qeoTwk+V0
バスに近づいたところ、ちょうど添乗員が出てきた。
「あ、あのっ、バスの中に黒い小さな紙袋が、ありませんでしたか?」
疲れと緊張から高まる胸の鼓動。
声が震えそうになるのをかろうじてこらえている。
すると、添乗員は「これですか?」と、黒い紙袋をひょいとかかげた。
その袋には、たしかに『Takeo Murata』とファッションブランドのロゴが印字されている。
「あ、あぁ……」
感動のあまり声が出ないまゆの様子を見て、若干申し訳なさそうにしながら、添乗員は説明した。
「落とし主の方ですか? お手数をおかけしますが、身分確認と記録をしておく必要がありますので」
「あそこの詰め所まで一緒に来ていただけますか?」
「――は、はい」
嬉しさと安堵のあまりに、絞り出した声はとてもか細かった。
そして、色っぽかった。
その色気の直撃を受けた添乗員は目の前の少女がアイドルだという事実を知ってか知らずか、声を漏らす。
「――応援しよ」
「はい?」
今度はまゆが不思議そうな表情を作る。
「あ、いえ、失礼いたしました。それでは、こちらに――」
添乗員が詰め所に向けて歩き出そうとした、その時である。
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