輿水幸子「ボクのなつやすみ」
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17:名無しNIPPER[saga]
2017/09/11(月) 17:43:10.19 ID:4sMggCAno
「そういえばまだ名前を名乗ってませんでしたね」

幸子は神社の裏手にある茂みをガサガサと歩き進みながら自己紹介をした。
しかし雪美は何も答えず黙ったまま、幸子が蜘蛛の巣に驚いてひっくり返りそうになっているのをじっと眺めているだけである。

「アイドルの輿水幸子って聞いたことありません? ない? そうですか……」

「…………」

佐城雪美はいったい無口な少女であった。
話しかければたまに返事はするけれどもまるで手応えがなく、会話が会話にならない。
表情にもほとんど変化がないので何を考えているのかさっぱり分からない。

とはいえ、必ずしも無愛想な気難しい子供というわけではなかった。

「…………」

「……あの、ちょっと、雪美さん。お、重いです……」

「…………」ムフー

幸子がもう一度拝殿の床下を見ようとしてしゃがみこんでいる背中へ、なぜか雪美がべったり抱きついてくるのである。
お互い見知ってからまだ間もないというのに、雪美はほとんど警戒する様子もなく幸子にひっつきまわった。
それがあまりに自然な流れですり寄ってくるので幸子も特に煩わしいなどとは思わなかった。
雪美が少々変わった子供という事はすでに十分承知していたし、そもそも子供に懐かれるというのは気分が良いものである。

ただし、ここでひとつ説明を加えておくと、雪美は元から人懐こい性格というわけではない。
むしろ普段は人見知りするようなタイプの子供である。

そんな雪美が、自分より四つ年上の幸子に対し、初対面でここまで馴れ馴れしく接近しているのは驚異的と言うほかない。

図らずも幸子のスーパーアイドル的愛され体質が功を奏したのである。


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