19: ◆Xz5sQ/W/66[saga]
2017/09/12(火) 06:59:16.89 ID:UqQkvsyl0
千早の指がピタリと止まる。
彼女はタブレットの画面から顔を上げ、凛とした、
しかしどこか柔らかな印象も与える微笑みで春香のことを見下ろすと。
「ゲームの中の春香より、ここにアナタが居てくれることの方が嬉しいわ」
全くそれは、全くだ。心底世辞でも誇張でもない、ありのままの千早の告白で。
「わ、私も……。千早ちゃんと居れるのは嬉しいな」
だからこそ春香もしどろもどろ。照れ臭さに顔を真っ赤にしながら答えるのだ。
「そうかしら? さっきは凄くイライラした感じだったけど」
「それは、そのっ! ち、千早ちゃんがアレコレ引っ掻き回すから……!」
「引っ掻き回す? ……例えばドコを?」
「こっ、心をだよ! 私の繊細なガラスのハートを――」
残された時間は後僅か。およそ五分にも満たない程度だが、
今の春香にはその一分がいつも感じる倍以上。
例えば生涯忘れることの無い、素敵な想い出の一つになると確信をもって言えるのだった。
……これはチョコの代わりに手に入れた、飛び切り甘い体験であると――。
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