神谷奈緒「晴れは雨があってこそ」
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9:名無しNIPPER[saga]
2017/09/16(土) 23:16:15.77 ID:KS3A+iW2O
どれだけ走っただろうか。気づけば息は乱れ、足はガクガクと震えている。辺りを見回すと、いつの間にか知らない土地に来てしまったようだ。戻らなければ、そう思うやいなや、今日起こった出来事がフラッシュバックする。不調の自分。トレーナーの言葉。プロデューサーの眼差し。そして横目でちらりと見た加蓮の驚きにも似た表情。全ての記憶が目まぐるしく暴れだし、感情の奔流はついに奈緒の自制心を少しずつ削り始め、声にならない声を上げながら奈緒はよろよろと並び立つビルの間の路地裏へ入り込み、ヒビの入ったセメントに背中を預けながら座り込んだ。

「あぁぁぁぁぁぁ!」

叫ぶ奈緒に周りの人間はこちらを見るが、丁度路地裏のパイプに阻まれ奈緒の姿は通りからは見えない。収まりのつかない感情は奈緒の中を暴れ回った挙句、とうとう口から強引に外に出たのであった。
どれほどの時間が経っただろうか。ひとしきり叫んだ後、唐突に平生を取り戻した奈緒はまた全てを後悔し、自分の不甲斐なさに絶望する。

「あたしは……最低だ……」

「そうだね、最低だ」

「っ!」

口を衝いて出た言葉に答える声。今一番聞きたくない声でもあり、聞きたい声でもあった。心の中で奈緒は自嘲的に笑う。声だけで誰だかわかってしまう。でもそれを確かめるのが怖くて、顔を上げられない。膝の間に顔を埋める奈緒に向かってその声は告げる。


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