【参加型】アイドルと僕のNext Prologue【ミリオンライブ】
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3:名無しNIPPER[saga]
2017/09/22(金) 01:46:36.49 ID:q/61NFkL0
木下ひなた×サイボーグ



またスカウトに失敗した。

木枯らしが吹く寒空の下、足を止めてくれる子は少ない。

声をかけてくるのが、私のような左手がドリルのサイボーグならなおさらだ。

さっきの子は私に搭載されている『アイドル適正感知センサー』にすごい反応があったのに、残念でならない。


次の子を探そうと駅の出口辺りに目をむけると、キャリーケースをひいた小さな女の子が困ったように右往左往していた。

アイドルセンサーに反応は無いが、良心回路にしたがって声をかける。

別の出口に行きたいが迷ってしまったらしい。

少女の行きたい出口への経路を口頭で伝えるが、あまり理解できていない様子。

目的地まで同行することを提案すると快諾してくれた。

サイボーグへの忌避感が無いとは珍しい少女だ。

途中、少女が人波に流されてしまったので、許可を得て手をひく。

私の右手は人間とほぼ同じ形だが、表面は金属そのままなので今日のような日は非常に冷たくなる。

寒い思いをさせて申し訳ないと詫びると、

「手が冷たい人はねぇ、心があったかいんだよぉ」

そう言って、少女は笑ってくれた。

陽だまりのような笑顔だった。


少女と別れた後も、どうしてかその笑顔がメモリーに焼きついたようにフラッシュバックする。

記憶メモリーは五日前に交換したばかりなのに、動作不良だろうか。


その夜、夢を見た。

アンドロイドは電気羊の夢を見るというが、サイボーグはアイドルの夢を見るらしい。

ステージで輝く、陽だまりの笑顔の夢。


二日後、私は彼女を探して駅にきていた。

今日帰ると言っていたから、もしかしたら――。

「あれぇ?さいぼーぐのお兄さん?」

偶然だねぇ、と言う少女は、メモリーに焼きついているままの陽だまりのような笑顔で。

相変わらず、アイドルセンサーに反応は無い。

科学的根拠は全くないし、非論理的な決断だと解っている。

しかし、それでも。

少女の言葉に、心を感じた。

少女の笑顔に、夢を見た。

だから、『僕』は――。

「あの……アイドルに、なってくれませんか?」


これが、彼女と僕のネクストプロローグ。


終わり


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