佐久間まゆ「凛ちゃん聞いてください! まゆ、プロデューサーさんとキスしました!」
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8: ◆E055cIpaPs
2017/10/29(日) 13:53:03.40 ID:T3zoKt8I0
 朝起きて、ご飯を食べて、友人と学生生活を過ごして、読者モデルとして活動をして。

 友人関係にだって、自分を表現する場所にだって恵まれていました。

 でも、あの頃はそんなことを考えたことがありませんでしたし、もちろん、物足りなさなさだなんて意識したこともありませんでした。

 ただ、同じモデルの友人やスタッフさんとの温度差とか、自分がこの先いつまで読者モデルをやっていくのだろうかという不安とか。

 そのようなものは感じていたのかもしれません。

 でも、まゆは自分の日常に十分以上の満足を覚えていました。

 だから、雑誌の特別企画として東京でアイドルをやっている女の子がモデルの撮影に来るというお話を聞いた時も、羨ましさも憧れも一つも感じはしませんでした。



 だから、びっくりしたんです。

 あの時、会社の廊下でプロデューサーさんにぶつかって転んだ時に見上げた光景が。

 きっとなんてことはない一瞬に覗いたプロデューサーさんと凛ちゃんの関係性が、本当にうらやましくてたまらなく思ったことが。

 この人の隣で歩いている自分こそが本当で、今の自分が選んで歩んできた人生なんてまがい物なのではないのか。

 気が付くと、そんな考えがまゆの全てを塗りつぶしていました。

 おかしいですよね、まだプロデューサーさんがどんな方なのかも、何をされていらっしゃる方なのかも全く分かっていないのに。

 でも、転んだまゆを起そうと差し出してくださったプロデューサーさんの手を掴んだときに胸に灯った、今この瞬間にこそ自分が生まれたのだという確信。

 それは、これがまゆの運命であると信じさせられる圧倒的な熱量をもっていました。

 何度も思い返したあの日のことを、まゆは改めて思い返しながら、再確認しながら。

 まゆは、一つ一つの気持ちを心に刻むように言葉に落し込んで話しました。

 そんなまゆを、凛ちゃんはなんだか情けない表情をしながら見つめていました。

 今になって思うと、あれはきっと同情だったのだと思います。


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