50:名無しNIPPER[sage saga]
2018/10/27(土) 00:38:59.33 ID:tpe1QzXHo
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 「カンパーイ♪」 
 「……乾杯」 
  
  
  居酒屋で、向かい合って、乾杯。 
  私はハイボール、彼はビール。 
  二つのジョッキが、カチンッと音を立てる。 
  ……ああ、美味しい。 
  
  
 「まさか、お誘い頂けるなんて」 
  
  
  思ってもみませんでした。 
  しかも、奢り。 
  自分のお給金で飲むのとは、また、味わいが違いますね。 
  ふふっ! 味わいは違っても、どっちも味は良い……うふふっ! 
  
  
 「私も……自分でも、そう思います」 
  
  
  ジョッキが、トンッと置かれた。 
  琥珀色の液体は、もう、残り半分になっている。 
  良い飲みっぷりじゃないですか。 
  これは、私も負けてられませんね。 
  
  
 「ですが、思えば……良いタイミングでした」 
  
  
  良いタイミング? 
  お通しの、小さな小鉢に入った煮物を口に入れたタイミングでの、一言。 
  だから、少しだけ首を傾けて、何言わずに質問する。 
  どういう事ですか? 
  
  
 「……以前のお礼も、出来ていませんでしたから」 
  
  
  お礼? 
  一体、何の……あっ。 
  この、ひじきとお豆の煮物、美味しい。 
  ……ええと、お礼……お礼……。 
  
  
 「お礼をされる様な事をした覚えが……」 
  
  
  思い出そうとしても、覚えがありません。 
  けれど、何か良いことをしたんですよね。 
  それで、美味しく、楽しく、お酒が飲めるなら。 
  
  
 「ふふっ! ちくわを、ただちに食わねば……うふふっ!」 
  
  
  小さな、可愛らしい磯辺揚げ。 
  それを口に放り込むと、 
  
  
 「私は、たこわさを……たこはさっと、食べます」 
  
  
  なんて、下手っぴなダジャレが聞こえてきた。 
  流れる、沈黙。 
  彼は、ビールのジョッキをグイと煽ると、 
  
  
 「……頑張ります」 
  
  
  なんて、顔を赤くしながら言った。 
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