京太郎「死んでも生きる」良子「死んでも一緒」
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257: ◆Bc4KZX4MNU[saga]
2020/10/08(木) 01:34:06.62 ID:iYX4OPw+0

そっと、胸を押さえて深呼吸

伝えるべきこと、伝わってほしいこと、頭の中で整理して吐き出すような器用な真似は今の京太郎にはできない

故に、対面に座る戒能良子を見つめて、言葉を紡ぐ


「戒能さんは俺の唯一なんです」

「唯一……?」

「はい、俺のことを知って助けてくれて、受け止めてくれて、一緒に考えてくれて」


半周を周り終えて、下るだけの観覧車

その風景など一切視界に入ることもなくただお互いがお互いの瞳を見つめあう


「それだけじゃなくて一緒に麻雀しようなんて言ってくれたり教えてくれたり、親身になってくれたり」


京太郎の膝の上の拳が握りしめられる

今までのことを思い出して感極まった、というのもあるがそれだけではなく


「そんな、そんなことしてもらって……逃げ出した俺を追いかけて、手を引っ張って連れてってくれて」


まっすぐに、それでも須賀京太郎は戒能良子の瞳を見続ける

彼女の潤んだ瞳、紅潮している頬、それらを視界にしっかりと焼き付けつつ、言葉を放っていく

悪霊として受け止められたのは彼女がいたからならば―――


「俺が生きたいって思うのは戒能さんといたいから、なんです」

「っ……」

「きっと、俺は戒能さんのこと……」


先ほど“違う”と言ったが結果的にはなにも相違なかった

事実は自分の中にあった。前からも、今も、きっとこれからも……


「ラブです……大好き、です」ニッ

「ッ〜! わ、私―――!」


ガタン、と揺れると同時に扉が開かれる

笑顔で迎えてくれる従業員になんとも言えぬ感情を抱く良子

しかし時間は戻らないし、これ以上は進めない


「降りましょう?」

「……はい」コクリ


そうして“一人で乗った観覧車”から降りて、“良くないモノ”の後ろを着いていく

繋がれていた手はすでに離れていて、手を何度か伸ばすが掴むに至らない

そしてそのまま、出口から遊園地を出る


「……帰りましょうか」フッ

「……はい」フッ



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