213: ◆EpvVHyg9JE[saga]
2018/05/25(金) 23:40:20.22 ID:SkvD6Y9Z0
 耳障りな金切り声が、暗闇を一気に駆け抜けた。誰かが襲われている。 
 跳ね起きた勇者を阻むように、横から刀が突き出された。三日月の如き弧を描く刀。 
 死神の鎌、と言っても相違ない。 
  
 男「手を後ろに回せ。抵抗するなよ。テメェの首が惜しいならな」 
214:名無しNIPPER[sage]
2018/05/28(月) 00:25:43.50 ID:5djHMLIDo
 あ、そう。一生懸命頑張ってね 
215:名無しNIPPER[sage]
2018/05/28(月) 13:30:59.33 ID:LZspTsuMO
 見てるぞ 
216: ◆EpvVHyg9JE[saga]
2018/06/02(土) 20:13:06.39 ID:rjs6CqC/0
 女盗賊「オラ、さっさと吐きな! あんたらが隠してる財宝、どこにあるんだい!」 
  
 逆さまに吊り下げられた、十数人の男女。集落の人間だ。 
 彼らの間を、褐色の肌の女性が鞭を片手に、行ったり来たり繰り返している。 
 尖った鼻に、澄んだ空色の瞳。南方系の人間か。 
217: ◆EpvVHyg9JE[saga]
2018/06/03(日) 15:05:34.32 ID:IMIN4WEW0
 サウナ。 
 中央に焼けた岩が置いてある。 
 その奥には勇者と魔女が見つけた変死体。 
  
 盗賊「この死体、両手のひらに火傷の痕があるな」 
218: ◆EpvVHyg9JE[saga]
2018/06/03(日) 15:19:29.58 ID:IMIN4WEW0
 地下は暗く、ひんやりと肌寒かった。盗賊が松明に火を点ける。 
 岩を荒く削った通路が、細長く伸びているようだ。 
 幅は2人が肩を寄せ合ってやっと収まる程度である。 
  
 盗賊「まさか、と思った。そんな地獄絵図がこの世に存在するのか。何かの間違いではないのか。夢を見ているのではないか」 
219: ◆EpvVHyg9JE[saga]
2018/06/03(日) 15:22:27.35 ID:IMIN4WEW0
 勇者の脳裏に、夕方目にした光景が蘇った。 
 宿屋の主人が必死に頭を下げていた相手。 
 あれは高級官員などではなく、非合法の商いを取り扱う闇商人だったのだ。 
 渡していたのも、おそらく麻薬だろう。 
  
220:名無しNIPPER[sage]
2018/06/06(水) 03:49:22.06 ID:bKe36NXDO
 乙 
221: ◆EpvVHyg9JE[saga]
2018/06/06(水) 16:44:00.31 ID:YxEXL6rxO
 盗賊「大当たりだ、魔女さんよ。俺達ハザラ族は、力のある騎馬民族でも交渉技術に長けた商業民族でもなかった」 
  
 盗賊「周囲の外敵に怯えながら小さな畑を耕す、泥臭い農耕民族だったんだ」 
  
 盗賊「金もねェ、人もねェ、住む場所もねェ。それでも、なんとか貧しいなりにやりくりできていた。瀬戸際の所でな」 
222: ◆EpvVHyg9JE[saga]
2018/06/06(水) 16:49:29.71 ID:YxEXL6rxO
 ハザラ族は闇商人の話を巡って、盗賊派と宿屋の主人派に分裂した。ハザラの魂を守り、鉄門街道で生きてゆく者。ハザラの魂を売り、闇商人についてゆく者。 
  
 半数の同胞が盗賊の下を離れた。妻も息子を連れ、出て行ってしまった。盗賊に残されたのは百名ほどの仲間と高潔なハザラの魂のみ。 
  
 盗賊「だが、気持ちだけでは仲間を養うことはできない」 
223:名無しNIPPER[sage]
2018/06/07(木) 01:47:07.16 ID:DVCYn8HDO
 乙 
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