253: ◆EpvVHyg9JE[saga]
2018/08/19(日) 23:36:48.16 ID:JbrWqG6U0
 魔女は一冊の本を取り出した。 
  
  
 『昔々、あるところに、とても仲良しな男の子と女の子がいた 
  
 いつものように二人で花畑を歩いていると、森の奥から魔王が現れ、たちまち女の子を闇の国へさらっていってしまった 
  
 魔王にさらわれた女の子を救うべく、男の子は道端で会った賢者様と一緒に、冒険の旅へ出発したのだった 
  
 険しい岩山を越え、極寒の湖を渡り、知らない魔物に襲われながら、ようやく男の子と賢者様は魔王の城へ辿り着いた 
  
 魔王は男の子が忌々しい賢者様を連れているのを見て、顔を真っ赤に染めて怒り狂った 
  
 そして、その夜 
  
 怒った魔王は二匹の毒蛇で賢者様を殺してしまったのである』 
  
  
 魔女「おしまい」 
  
 勇者「え、それでおしまい?」 
  
 不気味な小説だった。 
 小難しい文字を用いたがる妹にしては、珍しく簡単な文章だ。 
 題名も目次もない。 
 羊皮紙の端切れに、小さな文字で物語がつらつらと書いてあるだけだ。 
  
 魔女「昨夜見た夢を書き起こしただけ、かもね」 
  
 勇者「この『賢者様』がお前でないことを祈るよ」 
  
 魔女「ひょっとしたら、殺されるのはキミかもしれない」 
  
 勇者「変な冗談はよせ。どう考えても俺は『男の子』で、あんたが『賢者様』だろ。俺より自分の心配した方がいいぞ」 
  
 魔女「うんうん、用心しろってことだよね。国王が本格的に動き出した。サマルカンドで、一悶着あるかもしれないよ」 
  
 勇者「流石、厄介事を招き寄せる天才は言うことが違うな」 
  
 魔女「それはキミだろ」 
  
 勇者「いいや、お前だね」 
  
 魔女「キミ!」 
  
 勇者「お前!」 
  
 女盗賊「あんたらガキか!」 
  
  
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