94: ◆DAC.3Z2hLk[saga]
2017/12/16(土) 01:17:25.91 ID:Qezuh/qr0
  
 「ブリッツェン〜? 何を飲んで…………あ゙」 
 「あら、お見事」 
 「うわっ全部飲んだのか!?」 
  
95: ◆DAC.3Z2hLk[saga]
2017/12/16(土) 01:18:22.40 ID:Qezuh/qr0
  
 「うわわわっ、ぶ、ブリッツェン〜!! もうちょっとゆっくり〜……あっ!」 
  
  直線上の遥か向こう、遠い座敷との距離がどんどん縮まってくるではないか。 
  イヴは手綱を握り直し、気合を込めて「ふすっ」と鼻息を吹いた。 
96: ◆DAC.3Z2hLk[saga]
2017/12/16(土) 01:19:31.17 ID:Qezuh/qr0
  
 「ブリッツェン、そのままそのまま〜! どうどう〜っ!!」 
 「ブッブモッ、ブモモッ!! ブモモモモーーーッ!!」 
  
  イヴのヤバイ級トナカイ操縦テクにより、ブリッツェンは速度と針路を一定に保つ。 
97: ◆DAC.3Z2hLk[saga]
2017/12/16(土) 01:20:12.73 ID:Qezuh/qr0
  
  狙いあやまたず、それは向こうの座敷にぼすっと落ちた。 
  すわ爆弾かはたまた煙玉か。狸どもは慌てふためくが、危険物ではないことにほっと胸を撫で下ろす。 
  だが……肝心の「それ」が何なのか、いち早く知ったご老体が目を見開いた。 
  
98: ◆DAC.3Z2hLk[saga]
2017/12/16(土) 01:20:58.89 ID:Qezuh/qr0
  
  和菓子を巡ってわちゃわちゃしだす狸を尻目に、美穂と蘭子が駆け出した。 
  蘭子が海老原さんの縄をほどき、美穂はご両親の檻へ飛びつく! 
  
 「女神よ、今こそそなたを封じ込める呪縛を解かん!」 
99: ◆DAC.3Z2hLk[saga]
2017/12/16(土) 01:21:34.47 ID:Qezuh/qr0
  
 「はいっ! 蘭子ちゃん、ぱーす!!」 
  
 「ふゎわ、運命の邂逅と継承せし飛翔の魔術!?」 
 (訳:初めまして……って言ってる場合じゃなくて!) 
100: ◆DAC.3Z2hLk[saga]
2017/12/16(土) 01:22:20.76 ID:Qezuh/qr0
  
 「座敷の揺れ方が変ですね。ガス欠が近いんじゃないかしら――美穂ちゃん、急いで!」 
 「は、はい!!」 
  
 「ならん! 逃がすわけにhぬわーっ!!」 
101: ◆DAC.3Z2hLk[saga]
2017/12/16(土) 01:22:59.47 ID:Qezuh/qr0
  
  
  誰が意図したものでもなかった。 
  空中座敷がガス欠を起こしかけ、狸が慌てて燃料補給し、茶釜エンジンが息を吹き返したその揺れだった。 
  
102: ◆DAC.3Z2hLk[saga]
2017/12/16(土) 01:23:46.92 ID:Qezuh/qr0
  
  
  俺はその時、もう何も考えていなかった。 
  
  
103: ◆DAC.3Z2hLk[saga]
2017/12/16(土) 01:24:17.38 ID:Qezuh/qr0
  
  美穂の手を掴み取り、抱き寄せる。 
  ギリギリで間に合った。 
  
  だが既に、俺の体を支えるものも何も無い。 
104: ◆DAC.3Z2hLk[saga]
2017/12/16(土) 01:24:49.83 ID:Qezuh/qr0
  
  腕の中の美穂は気を失っているようだった。 
  こっちも遠くなりかけた意識を繋ぎとめる。 
  
  絶対に背中から落ちようと思った。 
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