7:名無しNIPPER[sage]
2017/12/16(土) 00:35:29.07 ID:hko7hO0B0
 どうして、わたしに、指輪を。 
  
 そう聞けないまま、10年間過ぎた指輪。 
  
 右の指先が、何にもはまっていない左の薬指をなぞった。 
8:名無しNIPPER[sage]
2017/12/16(土) 00:36:13.03 ID:hko7hO0B0
 あの日から十年経ったけれども、果たしてわたしは『おとな』になれたのだろうか。 
  
 身長は160センチを越した、あの日から覚えたメイクはそこそこ様になってると思う。 
  
 小学生だったわたしは、大学生になって。 
9:名無しNIPPER[sage]
2017/12/16(土) 00:36:47.80 ID:hko7hO0B0
 「なんか失礼なこと考えなかった、今」 
  
 ジロッとこっちを睨むマイフレンド。 
  
 エスパーだったりするのマイフレンド? 
10:名無しNIPPER[sage]
2017/12/16(土) 00:37:32.81 ID:hko7hO0B0
 「いつ言ったのさ」 
  
 「卒業会で」 
  
 卒業会。 
11:名無しNIPPER[sage]
2017/12/16(土) 00:38:15.91 ID:hko7hO0B0
 顔をこっちにむけて桃子ちゃんは、わたしに答えを促す。グロスを塗ったリップが何か言いたげに開き、結局閉じた。 
  
 口にしたかったのは「どうするの?」かな、多分。 
  
 「今日まではさ、本気だったよ。本気で狙うつもりだった。でもさ……」 
12:名無しNIPPER[sage]
2017/12/16(土) 00:38:56.65 ID:hko7hO0B0
 そうだったのだ。 
  
 わたしが琴葉さんにライバル宣言をしたあの日から、じゃあ何か変わったかと聞かれたらなーんにも、これっぽちも変わらなかった。 
  
 琴葉さんはちゃんとお化粧することが増えたし、お料理だって美奈子さんに教わって、あの人にお弁当だったりを作ってたりしてた。 
13:名無しNIPPER[sage]
2017/12/16(土) 00:39:32.88 ID:hko7hO0B0
 けれども、そんなわたしの姿はもしかしたらプロデューサーさんの目には入ってなかったかもしれない。 
  
 いや入っていても、それを琴葉さんと張り合って、とは思わなかったんじゃないかな。 
  
 ただの子供の背伸び。そう思われていたのなら心外である。 
14:名無しNIPPER[sage]
2017/12/16(土) 00:41:19.16 ID:hko7hO0B0
 「桃子ちゃんはさ」 
  
 「うん」 
  
 「この指輪、どうしたらいいと思う?」 
15:名無しNIPPER[sage]
2017/12/16(土) 00:42:05.17 ID:hko7hO0B0
 「やっぱり失礼なこと考えてない?」 
  
 親友はまたわたしの心をお見通しのようだった。 
  
 「ちがうよー。それでどうしたらいいと思う?」 
16:名無しNIPPER[sage]
2017/12/16(土) 00:42:34.45 ID:hko7hO0B0
 何たって私の方がお姉ちゃんなんだから、とイタズラっぽくわたしの頭をくしゃくしゃにした。 
  
 もーせっかくセットしたのにー、と思う気持ちが3割。 
  
 後の7割は、桃子ちゃん、自分とこのプロデューサーさんと同じことしてるって微笑ましい気持ち。 
17:名無しNIPPER[sage]
2017/12/16(土) 00:43:25.57 ID:hko7hO0B0
 「……わたしね、失恋旅行に行こうと思うの」 
  
 「失恋旅行?」 
  
 ゆっくりと、わたしの言葉を繰り返す桃子ちゃん。 
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