喜多見柚「アタシにとっての奇蹟」
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37: ◆tues0FtkhQ[saga]
2017/12/25(月) 18:38:55.90 ID:WtWlSgcZ0


 スタッフさんたちがぞろぞろと動き出す。その隙間の向こうに、きっとこのドラマの主演の人なんだろうなぁって思えるような女の人が見えた。オシャレして、お化粧して、アタシでも息を飲むようにキレイで眩しい人だった。


 街を歩くシーンの撮影が始まる。メインのスポットライトは女優さんに当たっていて、アタシはその横を通り過ぎるように歩いていく。たったそれだけのことでも、ちょっぴり不安で。そんな気持ちを、選んでくれたあのヒトを信じることで楽しいに変えていく。


 目の前の女優さんは、やっぱり素敵で、トクベツで、すごく羨ましいなって思った。


 でも、見たことも、聞いたこともない、どこにあるのかも分からなかったスポットライトをやっと見つけた。眩しいライトの当たる場所。アタシがいけなかった『本気』で『全力』の眩しさ。


 今は、名前もない、セリフもない、ただの通行人A、脇役でもないエキストラ。

 自分の何が良いところなのかも正直良く分かんないけど。あのライトはアタシを照らしてはくれないけど。

 アタシはアタシを演じていくんだ。

 今、とっても楽しい! それはちゃんと何かにつながっていくような気がしてる。


 アタシはきっと楽しそうに女優さんを追い越していった。そうやってカメラからアタシの姿が消える。


「カーット! はい、オッケーです」


 おしまいの合図を聞いて、振り返ってにぱっと笑った。


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