1: ◆z4l4K/HkZ2[saga]
2017/12/24(日) 21:56:35.05 ID:3B1YHSO30
速水奏「誰にでも優しいプロデューサーさん」  
  ex14.vip2ch.com  
    
    
  このSSは上記のSSの続編となります。 
SSWiki : ss.vip2ch.com
2: ◆z4l4K/HkZ2[saga]
2017/12/24(日) 21:57:38.16 ID:3B1YHSO30
  
 「え?アイドルを目指した理由……ですか……?」 
  
 「ああ。何かきっかけがあったのかなって思ってな」 
  
3: ◆z4l4K/HkZ2[saga]
2017/12/24(日) 21:59:55.12 ID:3B1YHSO30
  
  
 「だから周りとも距離を置いて……とっても暗かったと思います。……あ、今も暗いのは暗いですけど」 
  
  
4: ◆z4l4K/HkZ2[saga]
2017/12/24(日) 22:01:42.48 ID:3B1YHSO30
  
 優しい人。 
  
 その評価が俺の全てだった。 
  
5: ◆z4l4K/HkZ2[saga]
2017/12/24(日) 22:03:35.23 ID:3B1YHSO30
 そういう風に立ち回る事こそが正解だと社会で生きていくなかで学んだし、事実そうする事で周りの人間を傷つけずにここまで来れた。 
  
 そうして立ち回った結果が今の自分の居場所だ。 
  
 不満は無い。 
6: ◆z4l4K/HkZ2[saga]
2017/12/24(日) 22:05:47.52 ID:3B1YHSO30
  
 このまま装置として機能していく事が、社会で生きていく事なのだと思っていた。 
  
 一見周りには必要とされているようで、本当は誰にでも代わりが出来る。 
  
7: ◆z4l4K/HkZ2[saga]
2017/12/24(日) 22:07:30.64 ID:3B1YHSO30
 「誰にでも優しいのは、自分以外に関心がないから。けど、その肝心の自分の中には、何も入っていない」 
  
  
  
 「本当の貴方は、からっぽ」 
8: ◆z4l4K/HkZ2[saga]
2017/12/24(日) 22:09:46.02 ID:3B1YHSO30
 優しい人。 
  
  
 そう呼ばれながら、本当は優しさなんて、どういうものなのかわからなかった。 
  
9: ◆z4l4K/HkZ2[saga]
2017/12/24(日) 22:11:52.49 ID:3B1YHSO30
 あれから少し時は過ぎ、担当アイドルは何度か代わり、俺は少しだけ出世していた。 
  
  
 やっていることはプロデューサーで、変わらない。 
  
10: ◆z4l4K/HkZ2[saga]
2017/12/24(日) 22:14:18.55 ID:3B1YHSO30
  
 「倒産、ですか」 
  
  
 「ああ、比較的新しいプロダクションだったが、先日破産手続きが行われたらしい」 
11: ◆z4l4K/HkZ2[saga]
2017/12/24(日) 22:17:21.78 ID:3B1YHSO30
  
 「確かにあそこの事務所はあまり良い噂は聞きませんでしたね」 
  
 「ああ、有力アイドルがいるにはいたが、そのアイドル以外の娘には冷や飯を食わせてるとか」 
  
12: ◆z4l4K/HkZ2[saga]
2017/12/24(日) 22:19:04.02 ID:3B1YHSO30
  
 一人の看板アイドルを抱えていたが、そのアイドルは実績を盾にしてやりたい放題で、他のアイドル達は非常に立場が弱かった……という話だった。 
  
  
 「ああ、それで、そのアイドルが他所に更なる好待遇で引き抜かれたらしい」 
13: ◆z4l4K/HkZ2[saga]
2017/12/24(日) 22:21:54.59 ID:3B1YHSO30
 「あ、はい。今の所は……コミュニケーションを取れていると思います」 
  
 急に話を振られ、返答する。 
  
  
14: ◆z4l4K/HkZ2[saga]
2017/12/24(日) 22:23:59.21 ID:3B1YHSO30
 「全く、しっかり頼むよプロデューサー君。……それより、潰れたプロダクション、例のあの『疫病神』が所属していたらしいじゃないか」 
  
 「えっ、疫病神って……もしかして、今までも所属したプロダクションを全て潰してきたっていう、あの娘か?」 
  
 参加者達はまた身も蓋もない噂話に戻っている。 
15: ◆z4l4K/HkZ2[saga]
2017/12/24(日) 22:25:33.73 ID:3B1YHSO30
  
 本当にこの娘は俺を信頼してくれているのか? 
  
  
 本当はこの娘も俺の本質の希薄さに気づいていないか? 
16: ◆z4l4K/HkZ2[saga]
2017/12/24(日) 22:27:44.10 ID:3B1YHSO30
 会議が行われてから1,2か月経った。 
  
  
 その日は都内のテレビ局に足を運んでいた。 
  
17: ◆z4l4K/HkZ2[saga]
2017/12/24(日) 22:30:12.27 ID:3B1YHSO30
 「ええ、どうやら撮影の時間とっくに過ぎてるのに主役の娘がドタキャンしたみたいで……」 
  
  
 スタジオを覗いてみると、ディレクターと思しき男性の怒号と何処かへと電話を掛けるスタッフ達、そしてその端に少女が一人申し訳なさそうに俯いている。 
  
18: ◆z4l4K/HkZ2[saga]
2017/12/24(日) 22:32:09.65 ID:3B1YHSO30
 バーター。 
  
 この業界では別に珍しい話ではない。 
  
 それにバーター出演から人気を獲得して一気に駆け上がる者もいる。 
19: ◆z4l4K/HkZ2[saga]
2017/12/24(日) 22:34:52.02 ID:3B1YHSO30
  
 「……まぁあの娘の場合はちょっと仕方ない所もあるんですけどね」 
  
  
 スタッフは若干口の端を吊り上がらせながら言った。 
20: ◆z4l4K/HkZ2[saga]
2017/12/24(日) 22:37:14.36 ID:3B1YHSO30
 そこで話を遮るように、ディレクターの怒声が響く。 
  
  
 「おい!スタッフ!」 
  
21: ◆z4l4K/HkZ2[saga]
2017/12/24(日) 22:39:20.33 ID:3B1YHSO30
 「……白菊、さん」 
  
  
 先日プロダクションが潰れた時の会議で聞いた名だった。 
  
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