安部菜々「大宮サンセット」
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4: ◆Spitz/dbKQ[saga]
2017/12/27(水) 07:02:51.24 ID:p2Z72T7I0
 
 葉っぱの抜け落ちた木の、そのみすぼらしくなった体にグルグルと電飾が巻かれている、そんな季節。
 俺たちは外のきらきらとした光をたまに見守りながら、いつもは食べない、高価で大きな鶏に口をつけていた。

 世間的には大きなイベントの日で、それに乗じてこうして食事をしているのだけれど、俺たちの会話はいつもとあまり変わらなかった。

 俺の職場の出来事とか、彼女の好きなテレビの話とか。それに、彼女の好きなアニメの話とかも。

「やっぱり、年末は歌番組がたくさんあっていいですねぇ」

 ショートケーキが運ばれてきたころ、彼女はそう言って軽く微笑んだ。

「なあ」

 少し、語気が強くなっていたのかもしれない。
 呼びかけると、彼女はこちらに目を向けて、ちょっとしゅんとしたような表情になった。

「仕事の件、考えてみてくれたか?」

「……うん」

「……ごめん。べつに急かしているつもりはないんだけど。でも、菜々の仕事っていつまでも続けられるものじゃないし。俺の職場も、春には求人出すって話だからさ。だから……」

「うん」

 うん、うんと。
 怒られた子供みたいに、彼女は俯いたまま数回頷いた。
 
 会話はそれきりで、次に彼女が口を開いたのは食後のコーヒーを半分ほど減らしてからのことだった。

「あのね」

「うん」

「もう少しだけ、続けたいんです。もう少し」

「うん」

 でも、ありがとう。
 そう言って、彼女は悲しい目で微笑んだ。



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