【モバマス?】一ノ瀬志希?「志希ちゃん、失踪したくなっちゃったなー」
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3: ◆Z5wk4/jklI[saga]
2018/01/08(月) 21:20:34.64 ID:MruIbyxGO
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 アイドルになるために、家族の反対を押し切って単身上京した。

 アイドルになる、という夢はすぐに叶った。プロダクションに所属すれば、少なくとも肩書だけは「アイドル」になれる。
 重要なのはその先だった。アイドルとして輝き、輝き続けるには、それだけの努力と才能が要る。
 努力するのは得意だった。だから、続けていればどうにかなると思っていた。

 でも、現実は厳しかった。努力をするための時間とお金すら、私には満足に得ることもできなかった。生きていくにはお金がいる。お金を得るためには、仕事をする。仕事をするためには、時間が要る。アイドルであるための努力をする時間を削って、生きるためのお金を得る。矛盾だった。
 そうして私は、肩書だけはアイドルだけれど、実際には何者にもなれないまま、ただただ時間だけを浪費した。浪費しているうちに、アイドルという夢は、どんどんすり減っていった。
 いまはもう、ほんのちいさなかけらしか残っていない。

「や、そうでしたか! どおりで。お美しい方だと思ってたんですよ!」

 スーツの男性は屈託なく笑った。

「では、改めて……アイドル、やりませんか? ウチで」

 男性はするどい目でこちらを見た。

「え……」私の胸がもう一度、強く鼓動した。「引き抜き……とか、ですか?」

「さあ、どうでしょう」男性は意味深に笑う。「ウチに来てくれるんでしたら、条件は弾みますよ! ひとまず、お話だけでも、いかがですか?」

「……」

 私は逡巡した。
 いや、急ぐ用事があったわけでもない。アルバイトの時間まで余裕はある。
 ただ、怖かった。緩やかに砕けていった夢が、もう一度、砕けるのが。

 それでも。夢は夢だったから。私は――

「わかりました、お話だけ、なら」

「ありがとうございます!」

 男性はほんとうに嬉しそうに笑った。それこそ、怖いくらいに。



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