15:名無しNIPPER[saga]
2018/01/18(木) 21:20:18.56 ID:3iKMEwHU0
それからも節々で盛り上がったり、悲鳴をあげたり、賑やかな時間が続く。
何度目かのMCが入り、落ち着いた。奈緒さんが渇いた笑いを漏らす。
「いやぁ、それにしても、凄まじいな……自分でみよう言い出したけども、ここまでとは思わんかったで」
「同感です。稽古より疲れましたよ……」
心なし、お互いにげっそりしている。コタツに入ってライブみてただけなのに、とてつもない疲労感だ。
奈緒さんはころりと天板に頭を預ける。そのまま、器用にこちらを見上げてきた。
「稽古ってことは、また新しい仕事あるんか?」
まだ表に出てないので守秘義務はある。でも、奈緒さんだしいいか、と思った。そのうち発表されるし。
「えぇ、舞台に。演出が――さんで、共演が……」
「はぁー、ほんまかいな。あんま詳しくない私でも知ってるで。ほんとう、大女優様やねぇ……」
10年経ったしなぁ、と奈緒さんは続ける。
ふと、その時間は一体何を変えたのだろう、なんてことを思った。
年齢はもちろん。立場だってそう。仕事も変わった。見た目も、一部の人を除いて、相応に大人になっただろう。
なら、考えていることは変わっただろうか。
奈緒さんと話していると、彼女はそうでもないな、と思う。
じゃあ、私自身はどうだろう。
「……まぁ、仕事は順調なようでなによりや」
奈緒さんがぽつりと言う。
視線の先、ライブ映像は鮮やかなオレンジで染まっている。
『自分REST@RT』――翼、海美さん、エミリーが、ステージをこの日最高潮の盛り上がりへ導いていた。
私は奈緒さんの呟きに何を返そうか迷って、ふと、全然関係ない話をしてしまう。
「みんなとは会ったりするんですか?」
「んー? せやなぁ、中々機会はないけど……年2回くらいは予定あわせて、一緒にご飯とか食べてるよ。
仕事も偶にはあるかなぁ……あっ、静香がこの前エミリーとロケした、って言うてたな。
うどん二人で作って楽しかった、いうてたよ」
ディスクの再生が終わった。確か一日分の映像が2分割で収められているはず。
もぞもぞ、と芋虫のように奈緒さんがコタツから這い出る。
まだ見るのか、と思ったけれど、なんとなく止める気にもなれなかった。
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